FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜 作:桜大好き野郎
時間はかかったけど、内容は薄い。
筆を取る時間がない………っ‼︎
ーーー大会4日目、競技パート
舞台中央に設置された宙に浮かぶ球状の水の中。内容は単純に最後まで水中に残っていた者が勝者というもの。
フィールドが水中ということもあり、参加者の9割が女性。となれば身に纏うのは水着しかない。そんな二重の意味で大衆の目を集める競技にて、それは起こった。
【競技終了‼︎勝者、ミネルバ‼︎剣咬の虎、やはり強し‼︎ルーシィ選手……さっきから動いていませんが、大丈夫でしょうかっ‼︎⁉︎】
水中の中で賞賛せよとばかりに腕を広げるのはミネルバ。そしてその手の先、水中から出された腕にはボロボロとなったルーシィの姿。
水中に残された者が2人になった場合に発動した特別ルール。五分以内の決着が着いた場合、負けた方は最下位となるもの。最終的に残ったルーシィを、ミネルバは時間ギリギリまで痛めつけたのだ。
場外に飛ばされようになろうと魔法で自身の目の前に転移させての殴る蹴るの暴行。さしもの観客も歓声よりも心配の声が強い。そしてそれを観客席で眺めるしかできなかったカイトは固まっていた。
怒るでもなく、心配するでもなく、感情を全て削ぎ落とした虚無の表情。しかし、視線はミネルバに注がれており微動だにしない。戦うのであれば怪我はする。それはカイトも承知の上であるし、そも心配することなど相手に失礼だ。
だが、今回のは必要以上の、ただ自身の実力を誇示するためだけの暴力。それにギルドの誰かが巻き込まれたとなると話は別。星霊を呼ぶ鍵も奪われ、為す術のないルーシィに行って良いことではない。
手摺を握っていた手に力が入り、音を立てて変形する。今にでも飛び出して報復でもしかねないカイトを止めたのは、他でもないミラジェーンだった。
「カイト。他のみんなは行ったわよ。私たちもルーシィのとこへ行きましょう」
「ミラ、ちゃん………」
「気持ちはわかるわ。けど、今はルーシィの無事よ」
カイトの肩に置かれたミラジェーンの手。微かに震えるそれからは怒りが伝わってくる。しかし、このまま感情任せに報復に出ることは不可能。現状出来ることと言えばルーシィの治療に参加することくらいだ。
「………うん、そうだね。ありがとう」
手摺から手を離してミラジェーンの手にそっと乗せる。胡散臭いと言われる笑みの仮面を被り、怒りは感情の奥底へ。そうして向かった先は会場に備えてある医務室。カイトたちが到着した時には既に粗方の治療はウェンディとシェリアの力により終わっており、今は奪われた鍵を大事に抱き抱えて眠っている。
「剣咬の虎……」
「気に入らねぇな」
大会だから仕方がない。
そんな楽観的な思考は誰も持っていない。復讐とまでは行かないが、それでもやり返さないと気が済まないと皆が闘志を燃やす中、扉から現れたのはマカロフ。
「AチームBチーム全員集まっとったか。丁度よかった」
「マスター」
現れたマカロフは少し不安を交えながら言葉を発する。両チームの合併、再編成を行うと。
曰く、大会運営委員会より大鴉の尻尾が抜け奇数となった今大会。それでは競技が上手く回らずその為の措置らしい。ポイントはAチームの35ポイントが引き継がれるとのこと。Bチームよりも低い点数なのは気になるが、この後の競技や試合で全勝すれば逆転の目はあるのだ。
そうして選出されたのはナツ、グレイ、エルザ、ラクサス、ガジルの5人。贔屓目なしに優勝を狙えるメンバーである。そうしてカイトとは言うと。
「さてさて、どうなることやら」
医務室にて、ルーシィの眠るベットの近くの椅子に腰掛けていた。試合は魔法で作り出した鴉の視界共有で観戦できるとはいえ、本音は生でみたい。しかし、それができない理由はある。
大会2日目、人攫いが発生したためである。下手人である傭兵はナツの手により即逮捕。攫われかけたウェンディ、シャルル、ポーリシュカにも別状はない。下手人の言によれば狙いは医務室に
初日以降、医務室を利用した少女といえばウェンディとルーシィ。即ち、また狙われる可能性があるのだ。その対策としての待機。仮に再び人攫いがあろうものなら捕えるだけではすまさない腹づもりである。
「しっかし、マカロフのやつも物好きだね。アンタみたいな厄種まだ手元に置いとくなんて」
「カッカッカ♪心外だねぇ、ポーリシュカさん。どちらかと言えば俺はストッパー役だよ♪」
「他と比べればってだけで、十分暴れてるだろうに」
医務室の奥で鍋を掻き回すポーリシュカ。独特な薬草の匂いが充満するが特に気にすることなく、カラカラと笑うばかりのカイトに眉を顰める。
元より他人が嫌いなポーリシュカにとって、胡散臭いカイトも当然その対象に入っている。今も片目を瞑り笑みを深めるカイトへの苛立ちを薬草を混ぜるボウルにぶつけていた。荒々しい手つきながらもその実中身は一滴たりとも溢れていないのは流石の一言である。
(ウェンディも、なんでこんなのに惚れたのかね)
育て親のグランディーネと同じ名前のせいなのか、それとも他の人間よりも可愛げがあるせいなのか、認めようとはしないがポーリシュカはウェンディを気にかけている。
そのウェンディが事カイトを思っていることなど火を見るよりも明らか。やめておけと遠回しに言っても聞かない頑固さは誰に似たのやら。聞く耳を持たないウェンディにいくら言葉を重ねても最早意味はないと悟り、せめて良い終わりを迎えられたらと常々思う。
「………アンタ、ウェンディを泣かせたら承知しないからね」
「ん?どうしたんだい、突然?まぁ、彼女を泣かせるような事はしないさ。女の子の涙には弱いからねぇ♪」
どこで学んだ台詞やら。絶対に思っていないだろうと苦虫を噛み潰したような顔をしてポーリシュカは薬草を練る。それを尻目にカイトは視界を共有した先を見てほくそ笑む。
本日のバトルパートはタッグマッチ。各チーム2人を選出して戦う試合だ。青い天馬の秘密兵器、大会初日からいたウサギのぬいぐるみの中身が一夜そっくりのエクシードニチヤであったり、人魚の踵と蛇姫の鱗が激戦の末にドロー試合だったりと見どころはあるが、何より目を引くのはやはりフェアリーテイル対剣咬の虎。それもナツ、ガジルvsスティング、ローグという全員が滅竜魔導士という試合だ。
会場の床を打ち抜く程の激しい試合を制したのはフェアリーテイル。それも途中ガジルを彼方へと追いやったナツの勝利である。くつくつと喉奥で笑い喜びを隠しきれないカイト。その声が耳障りなのか、少しうなされながらルーシィが覚醒する。
「う、うーん………なに?どうしたの?」
「おや、ルーシィ。お目覚めかい?丁度いいタイミングだね。今、剣咬の虎と決着がついたところだよ♪」
「ホント⁉︎いたっ‼︎‼︎」
「怪我人が騒ぐんじゃないよ‼︎」
ベッドから飛び起きようとしたルーシィ。しかし傷は消したとはいえまだダメージは残っていたのだろう、肩を抑えて蹲る。ポーリシュカの怒りが飛ぶが早く結果をとルーシィの視線が告げている。
「安心しなよ。ナツたちの勝ちだよ♪お陰でフェアリーテイルが現在1位だ♪」
「はぁ〜………よかったぁ」
安堵からまたベッドへと身体を沈めるルーシィに笑いかけ、カイトは再度片目を瞑る。ゼレフに似た魔力を持つ者の捜索だ。大会も残り1日。今日を逃せば後はない。
けれどその姿はどこにもなし。魔力の痕跡すらも見当たらない。
(………いや、見当たらないんじゃない。どこかに流れている)
会場の運営に使われた魔力、そして魔導士たちが使用した魔法の残滓。通常霧散するはずのそれらが僅かではあるが指向性を持ってどこかへと流れている。
ゼレフの魔力はそれに紛れてしまっているのだ。これでは近づかない限り気づけない。まずはその流れの原因をと確かめようとした時だった。
「ルーちゃん‼︎」
「レビィちゃん‼︎」
扉が壊れるかと思うほどに開かれた。その先にいたのはレビィ含めたチームシャドウギアだ。どうやら勝利の喜びを分かち合いに来たらしい。すぐさまルーシィに駆け寄り話出すレビィたちを微笑ましく思いつつも嘆息を。
すわ襲撃かと思い視覚共有を切ってしまったのだ。再度視界を繋いでも魔力の流れは捉えられない。これは諦めるべきだろうと捜索を切り上げるカイト。
「それで、どうしたのかな?まさかお話だけしに来たわけじゃないだろう?」
「あ、そうだった!これから今日の祝賀会があるんだけど………」
「はぁ………いいよ、行きな」
不安気にポーリシュカを見つめるルーシィとレビィ。それに許可を出せば途端にぱぁっと花が咲くような笑みを浮かべる。そも、ウェンディとシェリアの働きにより傷は殆ど塞がっているのだ。
「言っておくけど、あんまりはしゃぎすぎるんじゃないよ。あと、食後に薬を飲むこと。わかったらさっさと出ていきな」
「はい!ありがとうございます!」
失った血を補充するための薬を渡すと手を払って出ていくように促すポーリシュカ。冷たい態度ではあるが彼女の人間嫌いは周知の事実。それにさして気にすることなく礼を言うと医務室を後にするルーシィたち。
しかし医務室で後片付けをするポーリシュカを扉近くのカイトが見つめる。
「…………」
「なんだい、アンタもさっさと出ていきな」
「いやぁ、なんだかんだで優しいねぇと思ってね」
「出てけェ‼︎」
ポーリシュカの怒声にカラカラと笑い扉の向こうへと姿を消すカイト。一頻り笑った後はルーシィたちの案内の元宿へ。すっかり陽も落ちて始められた宴に参加して騒ぐ皆を眺める。
さて、毎夜のことながら騒がしいこの宴。最初は楽しんでいたカイトだったがしかし、途中からどこか物足りなさを感じ首を捻るカイト。
「どーしたの、師匠?」
「ああ、リサーナ。いやねぇ、なんだか物足りないような、いつもより少しだけおとなしめな宴会のような………」
座っていたカイトの肩から覗き込むようにして現れたリサーナ。カイトの言う通り全体を見渡すが、むしろ暫定一位の宴会というだけあって普段より大騒ぎしている気がする。
「そう?向こうでマスターやマカオたちが次々酒瓶開けてるけど?」
「いつものことだろう?」
「カナは酒樽20個目に突入したよ?」
「それもいつものことだねぇ」
「お酒の入ったフリードがエバーやビックスロウにラクサスを熱弁してるよ?」
「素面でもやってるだろう?」
「改めて聞くと頭が痛くなる現状だな」
「おや、エルザ」
近くで聞いていたのだろう。現れたエルザは言葉通り頭を抑えているが、反対側の手にはしっかりとワンホールのケーキが乗せられている。はしゃいでいるのは君もだろう?と茶々を入れれば必ず拳が来るので黙ってはいるが。
さしものエルザもこの雰囲気に水を差すような真似はしないのか、それよりもと告げカイトに問いかける。
「カイト、ナツたちは見なかったか?」
「………あー、そうだ。ナツたちがいないんだ」
漸く合点がいったとばかりに手を叩くカイト。よく見れば確かにナツを初めとしたハッピー、ルーシィ、グレイ、ウェンディ、シャルル、ガジル、リリーがこの場にいない。
攫われたなどという線はこのメンツの場合除外してもいいだろう。宴そっちのけでどこかに遊びに行ったとも考えづらい。さて、ではどこに姿を消したのか。
「うーん、見てないねぇ。探すかい?」
「頼めるか?またどこぞで暴れられてはたまらん」
「つい昨日もプール壊したばかりだもんね」
リサーナの言葉にカイトは肩を落とす。
何せ自身が迷っている間にギルドの殆どのメンバーはフィオーレ有数のサマーレジャースポットに遊びに出かけていたのだ。誘われなかったショックと勢いのあまり破壊した施設の修繕費。それらを思い出してカイトは落ち込んだ。
ただでさえ借金の多いギルドだ。また被害額を増やされては溜まったものではないと魔法を発動。しかし、目的の人物はすぐに見つかった。
「大変だァアーー‼︎」
慌てた様子のグレイとハッピーに始まり、簀巻きにされて運ばれるナツ。そしてナツを運ぶガジル。続くウェンディも心配そうにしており、シャルルとリリーもどこか心あらず。
なんだなんだと視線が集まる中、息を整えたグレイが言葉を発する。
「ルーシィが、王国に捕らわれた‼︎‼︎」
「…………はい?」
かくして祭りをカモフラージュに進められていた計画は、こうして日の目を見ることとなったのだった。