FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜 作:桜大好き野郎
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大魔闘演武5日目。一日の休憩を挟んだ後に行われる最終決戦。それを目前としたフェアリーテイルだが、その心中は穏やかではない。なにせルーシィが囚われてしまったのだから。
相手は他でもない王国。気安く喧嘩を売れる相手ではないのだ。大会参加のメンバーに加え、ルーシィたちと行動を共にしていたグレイたち。そしてメイビスやマカロフなど主要メンバーを加えた作戦会議は困窮していた。
「さて、まずは状況を整理しよう」
宿から借りたホワイトボードに情報を書き込み、皆の前で司会を務めるのはカイト。いつになく真剣な様子のカイトというのは違和感を覚えるが、それだけ怒りを溜め込んでいることは周知の事実。暴走しないための監視として皆の目の届く場所に置かせているのだ。
余談ではあるが、ルーシィを助かるためにひとり王城へと強行突破しようとしたナツは柱に括り付けられた上猿轡をされ、会議には実質不参加である。
「まず、ガジルの案内の元ナツ、ウェンディちゃんに加え、グレイ、ルーシィ、そしてハッピーたちで会場の地下深く、大量のドラゴンの遺骨が埋まっている場所に行った。それは間違いないね?」
「ああ。そこでチビ助の魔法、ミルキーウェイでジルコニスっつードラゴンと対話した」
「本人じゃなくて魂とか思念の類ですけど」
カイトの言葉に頷くのはガジル、そして補足するのはウェンディ。4日目の昨日、ナツの手によりトロッコに乗って何処かへと消えていたガジル。その先にあったのは何体ものドラゴンの遺骨が眠る墓所だった。何か関係があるやもと滅竜魔導士であるナツとウェンディ、そして野次馬としてグレイとルーシィ、ハッピー、シャルル、リリーも連れてその場へと赴いたのだ。
ここまでは間違いはないのだろうとホワイトボードに書かれたデフォルメされた墓場とナツたちに丸をつける。
「そしてそのドラゴンから大魔闘演武の元となった竜王祭、そしてその祭りの主役であり、開催のきっかけとなったアクノロギアの正体を知ったと」
ウェンディの魔法ミルキーウェイ。それは死んだ魂と会話する魔法。それによってジルコニスから聞いた話ではかつて大陸を支配していたドラゴンたち。人間などエサ程度の扱いしかなかった時代。しかし、人間とも手を結ぶべきだというドラゴンたちと戦いになり、その末に人間に与えられたのが滅竜魔法。
それによって融和派の勝ちは見えてきたが、ここで誤算がひとつ。ドラゴンは人間の残虐性を見逃していたのだ。
敵のドラゴンを滅ぼし、味方のドラゴンさえも手にかけ、その力に酔いしれて数多のドラゴンの血を浴びた末に生まれたアクノロギア。
人の身を脱ぎ捨てドラゴンとなった今も暴虐を尽くしているのだから、その精神にはある意味感服してしまう。
「滅竜魔法を使い過ぎればドラゴンとなってしまう。これはかなり有用であり厳しい情報だけど、今は横に置いておこう。ジルコニスとの会話が終わった後に現れたのはクロッカス駐屯部隊桜花騎士団の団長アルカディオス、そして元剣咬の虎の星霊魔導士のユキノ。そして王城に案内した彼等からエクリプス計画の話を聞いたと」
「そのエクリプス計画ってのはなんだ?」
「過去と現在を行き来する魔法、つーか魔導具だな。それを使って400年前に渡って不死になる前のゼレフを殺すつもりだったらしい」
ラクサスの問いにグレイがそう答えればカイトがホワイトボードに描かれた門のような絵の横に注釈を継ぎ足していく。
「付け加えれば、大魔闘演武はそのエクリプスを起動させる為に開催されていたそうよ。使われた魔力を吸収して備蓄してるわ」
「ナツがそこで魔法を使おうとしたら身体の魔力ごと吸収されちゃったんだ!」
「王城から会場までの距離があっても吸収していたんだ。その近場で魔法を使えば、ということらしい」
シャルル、ハッピー、リリーの言葉も付け加え、そしてその下に矢印を付け加える。
「このエクリプスには魔力の他に黄道十二門の鍵、そして日蝕という条件が必要。そのためにルーシィの力を借りたかったけど、大臣を含めた過去改編反対派によってユキノとルーシィは投獄。返して欲しければ優勝して王に直訴しろって話だけど………ここまでで質問あるかな?」
「ひとついいか?」
「なんだい、エルザ」
「絵が可愛いすぎやしないか?」
エルザの指摘した通り、ホワイトボードに描かれた絵はどれもファンシーにデフォルメされており、幼児向けの絵本ならまだしもこの場では悪ふざけしているようにしか見えない。
「少しは和むだろう?」と本人なりの配慮であり、至って真剣である。そこがわかっているからこそ深くツッコむことはできず続けて質問を投げかける。
「私たちが優勝したとして、ルーシィを釈放する確率はどのくらいだ?」
「五分五分………っていいたいところだけど、こればかりはわからないねぇ。何せ国が絡む一大プロジェクト。一度成功したら二度三度がないとは限らない。そうなるとルーシィはギルドよりも国に所属させた方が都合がいいよ」
「でも、国防大臣さんは反対してましたよ?」
「確かに発言は無視できないだろうけど、最終的な決定権は国王さ。野心に囚われて、なんてこともあるさ」
「いや、それはないじゃろう」
ウェンディからの質問にそう返したカイトの言葉を、マカロフが否定する。
「国王様の民を憂う気持ちは本物じゃ。いままでの政策がそれを示しておる」
「なら、ルーシィはこのままでいいってことかよ?」
「そうは言っとらんよ、ラクサス。優勝して直談判すれば聞き入れては貰えるという話じゃ。じゃが、保険は打つべきじゃろう」
そうして決まる、大会組と王城侵入組に別れる二正面作戦。大会に優勝すればよしではあるが万が一それを逃した場合、ルーシィを救出するメンバーを選定するが中々上手くいかない。
「オイ、オメェなら王城内を探れるンじゃねーか?」
「無理だねぇ。国の中枢部ともなると魔法用の結界が貼ってある。無理に侵入すれば一発でアウトだよ」
「それに警備の兵士の数も強化されてるわ。夜ならまだしも昼に侵入するとなると………」
「メンツはどうする?大会メンバーは出れねェとして、他となると………」
「隠密に徹した者はいないな」
「カイトさん本人なら侵入できるんじゃないですか?」
「いや、迷って出て来れなくなるのがオチだ」
「「「あー」」」
「カッカッカ。誰もフォローしてくれないのね」
「むーーー‼︎むがーーーー‼︎」
「あんまり暴れたらまた怒られるよ、ナツ」
あーでもない、こーでもないと案を出し合うが立ち塞がる数々の壁。頭を悩ませる一同だったが、そこに一つの声が響き渡る。
「ーーー決まりました」
喧騒の中、透き通る様な声に視線が集まる。その先にいたのはメイビス。普段の緩い雰囲気は形を顰め、数々の視線をものともせずに言葉を続ける。
「今回の二正面作戦。そのメンバーと作戦、それを今から伝えます」
そうして告げられたメイビスの作戦。反対意見も出ず、今まで出ている案の中でも勝率が高いということで採用されたのだった。
◇◆◇◆
大魔闘演武5日目。最終日となる本日に競技パートはなく、出場ギルド全メンバーでの総当たり戦。舞台はクロッカスの街全域。
街を捜索し鉢合わせてしまえばバトル開始。倒せば1ポイント、各チームの決められたリーダーならば5ポイントが換算され、最終的にポイントが1番高いチームが優勝だ。
さて、と指定されたスタート位置に到着したカイトが身体をほぐしながら後ろを振り返る。そこにいるのはラクサス、エルザ、グレイ、ガジルの4人。それぞれ気合いは充分らしく、目には闘志が燃えている。
それを尻目にちらりと王城の方に視線を向ける。今頃はルーシィ救出舞台としてナツ、ウェンディ、ミラジェーン、ハッピー、リリー、シャルルたちが潜入を開始する頃合いだ。
これは負けてはいられないと笑みを浮かべるとラクサスに肩を叩かれる。
「カイト、わかってんな?」
「カッカッカ♪勿論だよ、ラクサス。君の方こそ、作戦は頭に入っているんだろうね?」
「たりめェだ」
互いに笑みを返すと拳の甲をぶつける。
「皆、準備はいいな?行くぞ‼︎」
「「「おお‼︎」」」
エルザの号令を合図に、開始のドラが街全体に響き渡る。そうして動き出す各ギルドの面々。単独行動を行う者もいれば、ツーマンセル、スリーマンセルで動く組も。誰もが動き出し、ポイントを狙う中フェアリーテイルの面々はーーー
『あーーーっと、これは………⁉︎ど、どうしたのでしょうかー⁉︎フェアリーテイル、全員目を閉じたまま動かないぞーーーっ‼︎‼︎』
実況のチャパティの言葉通り、フェアリーテイルは動き出さずその場で待機しているだけ。一位の座に甘んじての行動かと野次が飛ぶが、そんなものお構いなしに状況は進む。
既に蛇姫の面々は四つ首の仔犬を潰しにかかり順位を上げ、天馬も人魚を倒して順位を上げる。そして仔犬のバッカスもスティングに倒され剣咬の虎が一位の座を取り戻したのだ。
目まぐるしく動く点数と順位、そしてようやくフェアリーテイルが動き出す。
「妖精の星作戦、発動‼︎」
「「「了解‼︎」」」
観客席のメイビスの声を合図に、散開して動き出すフェアリーテイル。だが、それを邪魔するのが1人。
「私の索敵能力を侮ってもらっては困るね。まとめて片付けて差し上げよう」
その場から動かずとも全ての状況を把握していた剣咬の虎のルーファス。
「
造られたのは星のような瞬きを煌めかせる魔法。一度上空へと飛んだ魔法は分裂し標的へと降り注ぐ。しかし、ルーファスの行動は既に読まれていた。
「上空の光を目視してから2秒以内に緊急回避で躱せます」
メイビスの言葉通り、ルーファスの攻撃を躱す面々。しかし、その中で1人ラクサスだけは攻撃を受けきる。何を隠そうこの魔法、属性は雷。雷の滅竜魔導士であるラクサスには効果がないのだ。
「何⁉︎受け止めた⁉︎」
「敵は動揺し思考を乱します。この思考の乱れによりルーファスは68%の確率で我々への接近を試みます。32%の確率で現位置にて待機………しかし、その場合も私たちの作戦にさほどの影響はありません」
メイビスの読み通りルーファスはその場から動き出し、その後も作戦通りに接敵、順調にポイントを稼いでいた。その天才的な戦略眼をもって数々の戦を勝利にもたらした妖精軍師の異名を持つメイビスの真骨頂。
同じく作戦を練る事を得意とするカイトではあるが、メイビスと違い自身を軸とした作戦を得意としており、このように全体を見渡して仲間を使う様な戦闘には向いていない。
そして、通常であれば方向音痴を発揮して作戦を乱すカイトではあるが、それさえもメイビスは作戦に組み込み利用する。
「お、おい、あれ………」
観客の1人が違和感に気がつく。街の各所が映し出されている中、大通りを悠々と歩くカイトの姿。しかし、その姿は同時に離れた建物の上にも。路地裏に、広場に、時計塔に。気がつけば幾人ものカイトが王都を練り歩いていた。
『おおーっと、これはどう言うことだ‼︎カイト選手が沢山いるぞ⁉︎』
『
『実際、そのつもりなんじゃろうて』
実況のチャパティ、ゲストのマトーくん、解説のヤジマの言う通り、そこかしこに出現した複数のカイト。その正体は影で作り出した偽物だ。
「ケッ、こんなモン‼︎」
目障りだとばかりに剣咬の虎のオルガが近くにいたカイトへと攻撃を仕掛ける。しかしそれを認識した瞬間、カイトは無数の蝶へと姿を変えるとオルガを取り囲み爆発を起こす。
「グオッ⁉︎ヤロウ……ッ‼︎」
大量の分散のためか威力は虚仮威し程度。それでも音と光にやられて怒りを顕にするオルガ。絶対に本体を叩いてやると息巻いて更なる突撃を。
「彼の役割は探索と撹乱。極度の方向音痴故に作戦には向きませんが、こと工作をはじめとした手数の多さは強みです。彼には他のチームの注意を集めて頂き、そしてーーー」
「ちょっとちょっとちょっと‼︎なによアレェ⁉︎」
「初代の言った通りだな。恐ろしい方だ」
「げーっ‼︎エルザ‼︎」
カイトの爆破に巻き込まれてはたまらないと逃げ出したジェニーの前に現れたエルザ。呆気なく撃破したエルザは作戦通り次のエリアへ。カイトの嫌がらせの攻撃とメイビスの作戦、それによってフェアリーテイルは再び一位へと輝くのであった。
◇◆◇◆
多数の偽物に紛れ込むように、カイトは街を練り歩く。その方向音痴は健在であり、やはりというべきか迷子である。しかし、今回はいくら迷おうとも問題はない。
街に繰り出す偽物はマーカーであり、予定通りの相手を見つければ即強襲が可能なのだ。流石は初代様と言うべきか、今のところは作戦は順調。偽物を追いかけ回すオルガも順調に誘導できている。鼻歌でも歌い出したい気持ちで足取り軽く歩くカイト。その背後を背後から強襲する影ひとつ。
「
両手に黒い風を纏って現れたのはシェリア。それを視認することなく横に躱すと入れ替わるようにシェリアの背後に立つ。
「おや?おやおや?君はシェリアだね。そうそう、ウェンディちゃんと友達になったんだって?同じくらいの年の子の友達なんていなかったからありがたいよ♪」
「天神の
会話をする気がないのか、立て続けに放たれるシェリアの滅神魔法。なるほど、神を殺す為の魔法というだけありその威力は並の魔導士の比ではない。しかし、当たらなければどうということもなく、ふわりと跳躍したカイトは王都を流れる川の橋の手すりの上に着地すると頭を捻る。
試合だからこそ意気込んでいるのならわかる。だが、今の魔法にこめられていたのは嫌悪感にも似た否定の感情。はて、彼女に何かした覚えはないのだがと頭を悩ませる。
そんなふざけた様子のカイトにシェリアの怒りは膨れ上がる。
「っ‼︎なんでそんなにふざけてるの⁉︎」
「おいおい、いきなりだねぇ。ふざけてなんかいないよ。俺は俺なりに精一杯やらせてもらっているさ」
尚もおどける様な口調のカイトに、シェリアはキレた。別にカイトに何かされたわけではない。けれど、そんな調子のカイトだからこそ頭に来るものがある。
「そんなので、ウェンディに愛される資格があると思ってるの⁉︎」
シェリアの怒りはそこだ。従姉妹のシェリーの影響もあるのか、人一倍愛というものを尊く思う彼女。初めてできた同世代の友達、ウェンディがカイトを愛していることは知っている。本人に直接言わなくとも雰囲気でわかるものだ。
けれど、目の前の男はどうだ。愛を向けられているというのに応える気もなく、飄々と立ち会い、のらりくらりと躱しているだけだ。それがシェリアには許せない。愛される資格がないとさえ思ってしまう。
「ウェンディの愛を汚すのなら、私はあなたを許さない‼︎あなたはウェンディを愛してるの⁉︎答えて‼︎」
両手に纏う黒い風を推進力に突っ込むシェリア。勢いそのまま繰り出した攻撃はカイトのいた手すりを破壊するが、カイトはまたしても跳躍して躱す。
「こんな大観衆の中、愛の告白しろだなんて中々の羞恥プレイだねぇ」
そんな軽口を叩きながら偽物たちの視界から状況を確認。作戦通り本体を探り当てるルーファスはグレイが撃破。オルガも誘導通りラクサスの元へ。ガジルもローグと相対していた。
しかし相方のスティングの姿はどこにも見えず、エルザが相手するはずだったミネルバは人魚のカグラも加わり乱戦へ。その他にもラクサスとオルガの前に現れたジュラなど作戦が崩れ始めている。ここまで崩れてしまっては作戦もクソもない。立て直しも不可能だ。
最早残っているのは実力者ばかり。嫌がらせ目的の偽物は意味をなさないだろうと観察のための一部を残してその姿を消す。さて、このまま予定通りシェリアを撃破しても良いのだが相手はウェンディの初めての友達。攻撃するのは気が引けると完全にシェリアを舐め切っていた。
「ッ‼︎はぁああああ‼︎‼︎」
暴風が渦巻き、嵐のような連続攻撃。それさえも魔法を繰り出すどころか躱されてしまうだけ。それが頭に来て尚更攻撃を繰り返すシェリア。
さて、一見無傷のようなカイトではあるが、実のところ躱し切れていない攻撃はあり喰らってはいる。しかし、そのダメージは微々たるもの。回復するまでもない。
竜が竜を殺す為に授けられたのが滅竜魔法。ならば滅神魔法は神が神を殺すための魔法なのか?いや、違う。神の敵は悪魔であり、滅神魔法は悪魔の魔法だ。故に悪魔であるカイトには効果は薄いらしい。
「こンのぉおおおおお‼︎」
(さてさて、どう動くべきかねぇ)
シェリアの猛攻をいなしながら、カイトは思考を深めるのであった。
滅神魔法のくだりは独自解釈です。
そう言ったタグつけた方がいいのでしょうかね?