FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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冥府の門編
冥府の門ー①


 

 

 過去最高の激戦を見せた今大魔闘演武。国王も注目し、感激のあまり出場者たちを城に招くほどと言われれば、例え見ていない人物であろうとその結果を知りたくなるもの。自ずと本戦に出場したギルドの名声は高まり、それに伴って依頼も増える事態となった。

 特に顕著なのは優勝したフェアリーテイル。優勝の前と後の依頼数は天と地の差。比べる対象が悪いかもしれないが、それを差し引いての大盛況ぶりだ。

 

 その中でも多いのは本戦に出場した者への名指しの依頼。本来であればミラジェーンやエルザなど、実力やメディアへの露出などで限定されるのだが、やはりそれだけ個々人の名前が売れたということなのだろう。

 元々実力のあるラクサスはもちろん、滅竜魔導士ということでも名が売れるナツとガジル、剣咬の虎のルーファスを下したグレイなどなど。以前は見られなかった名指しが入るようになったのだ。

 

 しかし、当人達のキャパシティは限られており、何十もの依頼を連続してこなせる訳はない。そう言った場合は仕方なしに余人に振られるのだが、ここで少し問題が起きた。

 

 

「えぇ、アンタかよ」

 

「うぇ、よりにもよってかぁ………」

 

「あ、依頼キャンセルで。アンタより剣咬の虎に頼むわ」

 

「カッカッカ………」

 

 

 いくつもある依頼の中でほんの一部ではあるが、カイトが現場に向かった際にこう言われる事が多くなったのだ。ギルドの仲間でも何でもない、ただの依頼者に舐められる現状は頭に来ており、マカロフとの約束(契約)がなければ暴れ回っているほど。

 

 フィオーレでは騎士道精神が広く知れ渡っているせいか、戦いは正々堂々というものが好まれる傾向だ。それもあってかカイトのように策を巡らせて、相手の裏をかいて転ばせるような戦い方は受け入れ難いらしい。

 ならそうすればいいではないか、と言われても欠点が浮き彫りに。火力不足を補えば攻撃の間隔が遅くなり、攻撃一辺倒では得意の魔力操作が活かせない。結果としてカイトは策を弄するしかないのだ。例外として本性を現せばスペックでのゴリ押しも可能だが、少なくとも事情を知らない人前で披露するつもりはない。

 

 しかし、そんなカイトの事情など知らず、好き勝手に自身の理想を押し付ける輩に対して腹の内から燃えるような怒りが喉元まで迫り上がるが、しかし隣を見てしまえばそれも消えてしまう。

 

 

「むー‼︎」

 

 

 頬を膨らませて、力強い足取りで前方を歩くのはウェンディ。誰がどう見ても怒ってますよ、という心情を全身で表していた。他人が怒る素振りを見れば落ち着くと言っていたのは誰だったか。思い出せないが少なくとも戯言の類ではないようで、現にカイトは落ち着きを取り戻している。

 

 

「はぁ………なんとかしなさいよ、アンタ」

 

「カッカッカ、無茶を言う」

 

「アンタの自業自得が招いた結果でしょ」

 

「うーん、それを言われたら弱いねぇ」

 

 

 肩で風を切る様に歩くウェンディの後ろ、カイトの隣には呆れた様子のシャルルに急かされて肩をすくませるとウェンディの隣へ。側から見ればぷんぷんと可愛らしく怒っているように見えるが、本人は至って真剣。あまり茶化すものではないな、と心に決めながら。

 

 

「ウェンディちゃん、そんなに怒らないの。可愛いお顔が台無しだよ?」

 

「だって!みんな、カイトさんにあんな……あんな‼︎本当はカイトさんだって凄いのに‼︎」

 

 

 先ほどカイトが言われていた言葉を思い出したのか、遂には地団駄を踏みそうな位に足音が強くなる。可愛い、と言って少し意識がそらすことができればと思っていたが、どうやら怒りは相当らしい。前途多難だと天を仰ぐカイトに、ウェンディから鋭い視線が刺さる。

 

 

「む〜‼︎カイトさんは悔しくないんですか⁉︎」

 

「あー、君たちが怒ってくれるからねぇ」

 

「むーっ‼︎」

 

 

 どうやらカイトが怒るつもりも弁解するつもりもないとわかったのだろう。悔しさと怒りを滲ませた呻き声を上げると、また一段とギアを上げて先へと進んでしまう。

 

 

「はぁ………何やってんのよ」

 

「カッカッカ、失敗だねぇ。偶には真面目に慰めようとしたんだけども」

 

「どこがよ、胡散臭いの間違いでしょ。それより早く行くわよ、ウェンディに置いていかれる」

 

「あぁ、そうだね。次は確かエルザが呼んでるんだっけ?」

 

「そうみたいね。何の用かは知らないけど。ほら、早く追いかけないと迷うわよ」

 

「カッカッカ♪案内役が先行しすぎるとロクな事にならないからねぇ」

 

 

 そう。カイトとウェンディ、そしてシャルルがこうして行動を共にしている理由。それはカイトの迷子防止のためである。

 フェアリーテイルの名が過去最高に売れている今、依頼の期限に遅れるということがあってはならない。そのため、カイトが依頼に赴く際にはこうして案内役が追加されることとなったのだ。

 

 案内役はほとんどの場合ウェンディではあるが、これにも理由はある。他のメンバーと違い幼い彼女、それに加入前は殆ど森の奥にあるギルドにいたのだから人の悪意というものに鈍感だ。これがもし自身や仲間を傷つけるものであれば気づくのだが、悪意というものはそんなわかりやすいものではない。

 

 例えば報酬をお金がないのでと予定より低く渡したり、その見目に心奪われて言葉巧みに誘い込んだり、難癖つけて無償で追加の依頼を渡したりと枚挙することは不可能。

 そして、人の良い彼女は騙される可能性が危惧され、カイトとペアを組んでいるのだ。無論、一番は本人たっての希望だというのが大きいのだが。

 基本的に仲間以外を信頼していないカイトにとって、他人の言葉など信じるに値せず、寧ろ悪意には悪意を返して容赦なく詰め寄るので騙される心配は少ない。

 

 そんなこともあり行動を共にする3人。機嫌を損ねたウェンディをどうするべきか、と頭を悩ませながらその後ろ姿を追いかけるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ふむ、話はわかった。カイト、確か週ソラのインタビュー依頼が来ていただろう?」

 

「カッカッカ、それで改善するとは思えないけどねぇ」

 

「しかし、やらないよりはマシだ」

 

 

 それはそうなのだが、記者のジェイソンの鬱陶しいほどの高いテンションに辟易とする未来しか見えず、あまり気乗りしないカイト。

 アレからエルザと合流を果たし、依頼を終えた一同。報酬の限定スイーツに目を輝かせていたエルザとウェンディだったが、いかんせん量が多い。同じチームとしてお裾分けしにルーシィの家に集まっていた。

 

 ウェンディの機嫌は今の今まで治る様子はなく、カイトが話しかけてもツーンとそっぽを向くばかり。流石にお手上げだとエルザに相談すればそんな言葉が返ってきた。だが、このままでは関係は悪くなる一方。背に腹はかえられぬかと諦めのため息を吐いた時だった。キィ、と音を立てて玄関の扉が開く。どうやら家主の帰還らしい。

 

 

「ルーシィさん、お帰りなさい」

 

「邪魔をしているぞ」

 

「おかえり、ルーシィ。冷蔵庫にプリンがあるよ」

 

「なんか懐かしー‼︎‼︎」

 

 

 そう。今の今まで家主不在の中、カイトたちは集合していたのだ。余談であるが、鍵は大家にサプライズをしたいと事情を説明して開けてもらった。少しこのアパートのセキュリティが心配になった一件である。

 

 

「てか、なんでカイトもここに?吸血鬼は家主の招きがなかったら家に入れないんじゃないの?」

 

「へぇ、そうなんだ。まぁ、純正ならいざ知らず、半吸血鬼だからね。問題なく入れるよ。けど………」

 

「けど?」

 

「不法侵入にすっっっごい後ろめたい気持ちはあるよ………」

 

「何気にアンタ、まともなのよね………」

 

 

 ちらりとルーシィが横目に見るのは悪びれた様子もなく報酬の限定スイーツを食べ終えたエルザ。続けるようにカイト作のプリンに手をつけているところから、反省はないようだ。

 その隣、ウェンディも同じく美味しそうにプリンを頬張っているが、カイトが見ていることに気づいては思い出したようにそっぽを向き喜んでいないようにアピールしている。何があったのかカイトに視線を向ければ、困ったように笑いながら答えた。

 

 

「彼女、どうやら俺に怒ってるらしくてね。ご機嫌取りのスイーツ作ったんだけど、上手くいってないみたい」

 

 

 これまでの経験からカイトが何かやらかしたのだろうと当たりをつけるルーシィ。しかし、作戦は上手くいっているらしく、ウェンディの機嫌は治っているのだろう。今は怒ってしまった手前、引っ込みがつかなくなっているだけだ。カイトの人柄に甘えている、というと厳しく聞こえるが、それだけ信頼しているということだろう。

 

 

「あ、そういえばナツたちは?」

 

「ん?ここにはいないけど、ギルドにも顔を出していないのかい?」

 

 

 3日前、ナツ、グレイ、ハッピーの3人で依頼に向かった事は知っている。内容はスタンダードな魔物退治。家畜被害が出ているから早急に、という案件だったはずだ。ハッピーはまだしも、あの2人が魔物相手に遅れを取っているとは考え難いが………。

 

 

「ふむ、あの2人の実力でこれほど遅いとなると、いささか気になる」

 

「何かトラブルでもあったんですかね?」

 

「寧ろ、トラブルを引き起こしてそうなんだよねぇ………」

 

「待って!あたしも行く」

 

 

 それぞれの心配を抱え、一行が目指すのは街から少し離れた森の中。何か痕跡はないだろうかと捜索を初めてすぐ、それは見つかった。

 

 

「でかっ‼︎」

 

「これは………」

 

「依頼書のモンスターです」

 

「もうとっくに始末済みのようね」

 

「だとしたら、3人はどこだろうねぇ」

 

 

 二足歩行の豚のようなモンスター。民家のひとつやふたつなど容易く破壊できるであろうその巨体はものの見事に地面へと横たわっている。呼吸も鼓動も感じられず、間違いなく死んでいる。

 けれど、依頼を達成し残るは報告だけのはずの3人の姿はどこにも見えず。さて、どこにいったのだろうかと辺りを見渡せば近場の草陰から姿を表すハッピーが。

 

 

「シャルル………助けてー………」

 

「ハッピー‼︎」

 

 

 棒を杖代わりに歩くハッピーは明らかに憔悴している。しかし、周囲にナツとグレイの姿は見えない。何があったのかとハッピーの案内のもと向かった先にはーーー。

 

 

「いい加減にしろよ、このクソ炎‼︎」

 

「こっちのセリフだ、ヘンタイ野郎‼︎」

 

 

 互いに顔を腫らし、それでも尚殴り合いを続ける2人がそこにいた。

 

 

「てめーはいつも考えなしに突っ走りやがるから‼︎」

 

「オメーがもたもたしてっから‼︎」

 

「ああ」

 

「いつもの事か………」

 

「心配してたのに………」

 

「3日もコレやってんの?」

 

「寝たり、ご飯食べたりはしてるよ」

 

「カッカッカ♪器用だねぇ」

 

 

 ともあれ、何かに巻き込まれた事はなく、無事は確認できた。このまま心ゆくまで続けさせてもいいが、しかしそれでは依頼達成とはならない。報告まで済まさなければ。

 

 

「コラ、おまえたち。その辺にしないか」

 

「「うるせえ‼︎‼︎」」

 

 

 仲裁に入ろうとするエルザだったがしかし、熱中のあまり周囲が見えていなかったのだろう。いつもならばすぐさま肩を組み合い仲が良い事をアピールする2人だが、今回は手が出てしまった。

 同時に放たれた拳は完全に油断していたエルザの顔面を直撃。その場の全員が息を飲んだ。

 

 

「………ほう」

 

「え、エルザーーー⁉︎」

 

「何でここにーーー⁉︎」

 

 

 ここにきてようやく気付いたのか、そして自分たちが何をしたのか理解した2人。喧嘩をしていたら突然クマが乱入してきたようなものだ。

 

 

「カッカッカ、さてみんな。後はエルザに任せよう」

 

「そ、そうね!プリンまだ食べてないし‼︎」

 

「あの、えっと………ごめんなさい‼︎」

 

「ほら、行くわよ」

 

「あい。頑張ってね、ナツ、グレイ」

 

「ま、待てお前ら‼︎せめてフォローを‼︎」

 

「この薄情者‼︎あ、ああぁあぁ‼︎」

 

 

 悲惨な現場など見たくない。そう言わんばかりに背を向ける5人。背後から聞こえる悲痛な悲鳴など聞こえないフリをして、ただ胸の中で静かに2人の冥福を祈るのであった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 翌日。

 顔面を重点的にボコボコにされ、一瞬誰なのかと言われるオチがあったものの2人は無事に帰還。エルザが襟首掴んで引きずって帰ってきたため当然のごとく話は広まり、話題の的である。本人達は至って面白くなさそうではあるが。

 

 

「もう2度とコイツとは仕事いかね」

 

「こっちから願い下げだバカヤロウ」

 

「ナツ‼︎グレイ‼︎またお前ら2人を指名の依頼じゃ‼︎」

 

「「またかよ‼︎‼︎」」

 

 

 まぁ、2人がどれだけ嫌がろうと指名の依頼は舞い込んでくるもので。ヒラヒラと件の依頼書を呑気に振るマカロフ。しかし、その依頼主の名前を見た瞬間、何かの間違いである事を祈るように見返すが書き起こされた文字は変わらない。

 

 

「これは………‼︎」

 

「何だよ、じっちゃん」

 

「オレはもうこいつとは行かねー」

 

「オレも行かねー」

 

「触んな」

 

 

「いや、行かねばならん………。そして、絶対に粗相の無いようにせよ………」

 

 

 おや、とカウンターで皿を拭きながら不思議に思うカイト。マカロフがこれほど緊張する相手となると真っ先に出てくるのは王族。しかし、先日破壊された街の復興に忙しく、魔導士を呼ぶ余裕などないはずだ。

 ならば次点で評議院。遂に問題児に対して強硬策に出たのかと勘繰るが、だがこれも依頼など遠回しな事をせず、出頭するように連絡すれば良いだけ。だとしたら誰が?と思考に耽けるカイトを他所に、マカロフの口から依頼主の名が告げられる。

 

 

「依頼主の名はウォーロッド・シーケン。聖十大魔道序列4位、イシュガル四天王と呼ばれる方々の1人じゃ」

 

「なっ‼︎⁉︎」

 

「なんで聖十大魔道が⁉︎」

 

「カッカッカ、ホントにねぇ」

 

 

 まさかのビッグネームの登場、そしてそんな人物からの指名依頼など聞いた事がない。下手な魔導士に頼むより、聖十大魔導士1人で事態を解決した方が早いからだ。

 何事なのかと不安を募らせ、そして指名された2人を見る。互いになんでまたお前と、と言わんばかりに睨み合ってまさに一触即発。これは本当に先が思いやられると更に不安を募らせるカイトであった。

 

 

 

 

 

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