FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜 作:桜大好き野郎
青い空の下、気持ちよさそうに飛ぶ鳥。暖かい日差しを浴びて泳ぐように自由に飛ぶ姿は見ているだけで和むもの。
周囲を見れば青々とした樹々の姿。地図上では砂漠地帯であるのだが、どういう訳か完全に緑化したこの地は樹々の影響もあるのか心地よい風をよこしてくれる。
なるほど、のどかな光景だ。前を歩くウェンディやルーシィが感嘆の声を上げるのも頷ける。かくいうカイト自身も必要ないとはわかってはいてもつい深呼吸をしてしまった。せっかくならばお弁当を持ってくればよかったと少し後悔。日和も相まって最高のピクニック日和だ。
(まぁ、2人のせいで美味しさは半減かもしれないけどねぇ)
ちらり、と後ろを歩くナツとグレイを横目で見る。どうやらまだ怒りは治らないらしく、今日も今日とて元気に喧嘩中だ。
「オレの肉食っただろォ‼︎」
「てめえのモンなんか食うかよ‼︎」
「てか服着ろよ‼︎」
「髪の色が目に痛ェ、なんとかしろよ‼︎」
「いい加減にしないか。これからとても位の高い人に会うんだぞ」
エルザの注意が飛ぶが聞く耳持たず。殴り合いをしないだけマシか、と諦めを。
「2人だけじゃ心配だから着いてきたけど………」
「カッカッカ♪先が思いやられるねぇ………」
「アンタが言えた事じゃないでしょ」
隣のシャルルからの言葉に、痛いところを突かれたと苦笑いを溢すカイト。あの日以来ウェンディとの関係は良化の兆しが見えず、今も話に混ざりたそうに視線をよこすウェンディに目を向ければ慌てたようにそっぽを向かれてしまった。
彼女たちの好意に応えることはできないと決めてはいるが、カイト自身別に嫌われたいわけではない。エルザの暴力はコミュニケーションの一環だと思っているが、こうして無視されるのは初めてで心に来る。打てる手は殆ど尽くしているため、いっそ時間が解決してくれるのを待つしかないのかと空を見上げた。
「問題の先送りだと思うよ、オイラは」
「カッカッカ、手厳しいねぇハッピー」
顔に出ていたのだろう、ハッピーからの鋭い指摘により一層胸が抉られる。思わず胸を抑えてしまうほどのダメージだ。
「……!っ………‼︎………っ‼︎」
「………心配ならさっさと声かけなさいよ」
「し、心配じゃないもん‼︎」
「可愛らしい反抗よね。それに比べて………」
「てめえなんかエルザに食われちまえ‼︎」
「てめえこそエルザのクソにまみれてろ‼︎
「はぁ………なんであんなのに指名依頼が」
「今、私がディスられているのか?」
心配そうに、不安気に、申し訳なさそうに、表情をコロコロと変えるウェンディにいい加減に仲直りしろと促すシャルル。それを微笑ましく見守るルーシィが視線を投げ掛ければ、いまだに喧嘩を続けるナツとグレイ。まさかの飛び火に困惑するエルザ。
そんな騒がしい一行は暫くして道の先、ぽつんと立つ一軒家を見つける。建物の中からいくつかの樹が突き破り、煉瓦造りの壁や屋根を覆うように苔に包まれたそここそ今回の依頼主であり、聖十大魔導序列4位ウォーロッド・シーケンの家である。
「ごめんください。魔導士ギルドフェアリーテイルの者です」
挨拶と共に扉を潜れば中は植物だらけ。人の生活できる範囲以外は全て緑、どころか外から見えていた樹木の根が侵食している様子。生活にはやや困るかもしれないが、草木の発する清涼な空気は外とは段違い。呼吸が楽だとばかりに思わず深呼吸する一同。
「しー………静かに。草木は静寂を好む。理解したならその忌々しい口を閉じよ」
部屋の中央、聖十魔導士の称号でもあるマントを羽織る人物が声をかけたのはそんな時だった。背中を見せジョウロで草木に水を注ぐ姿は真剣そのもの。声の厳格さも相まって全員が口を閉じ、呼吸を止める。そしてーーー
「なんてな。冗談じゃよ、冗談。草木も花も、人間の声は大好きなんじゃ」
ぷふー、と笑いを隠さずこちらを振り返るのはウォーロッド・シーケン。それを合図に部屋中の花が一同を迎え入れるように咲き乱れる。
「わははははっ‼︎」
「…………木?」
「なんだこのじっちゃんは?」
「本当にスゲーやつなのか?」
「カッカッカ、なんとも言えないねぇ………」
グレイとナツの言う通り、魔導士として高い称号と地位を持っているとは思えないひょうきんさ。まるで樹木の幹に人の顔ができたような風体のウォーロット。
「いやぁ、よく来てくれたねぇ、フェアリーテイルの魔導士たちよ。ナツ君とグレイ君というのはどちらかね?ややっ!予想よりもネコっぽい‼︎ーーー冗談じゃよ、冗談‼︎わはははっ‼︎」
「テンションの高いおじいさんね………」
「う、ウム………」
ハッピーとシャルルを持ち上げて笑うウォーロッドのテンションに流石のエルザも着いていけない。それでも何とか気を取り直すと念の為の確認を。
「失礼ですが、あなたが聖十大魔道のウォーロッド・シーケン様ですか?」
「いかにも‼︎ワッシこそがウォーロッド・シーケンーーー冗談だけどな」
「えーーーっ⁉︎」
「…………というのは冗談じゃ」
「疲れるじーさんだ………」
リアクションに疲れてへたり込むルーシィとウェンディ。本人確認も取れた事もあり話はお茶をしながらでも、と案内されたのは裏手にある庭。切り株のような丸テーブルを囲み、まずは依頼内容の説明がされた。
「ワッシは引退してからずっと砂漠の緑化活動を続けてきた」
「引退?ウォーロッド様も昔はギルドに?」
「はっはっは‼︎いいギルドじゃったよ。ワッシの緑の魔法を使って砂漠の広がりを止めておる。自然活動と言えば聞こえはいいが、実はただの趣味じゃ」
なるほど、とカイトは道中の景色を思い浮かべる。ここら一体は地図上では数キロ範囲で砂漠地帯だったはず。それがこうして緑豊かな土地へと変貌しているのだから腕は確かだ。
そんな人物が自分たちに寄越す依頼とは一体、どれだけの危険性があるのかと少し身構える。
「そんな訳で何年もあちこちの砂漠を旅しているのだがね、この前奇妙な村を見つけてのう。文献によればそこは太陽の村。永遠に燃え続ける炎を守護神として信仰していた村だった」
「太陽の村?」
「カイト、聞き覚えは?」
「あるにはあるけど、御伽話に片足突っ込んでるほどの古い文献だよ。それこそ秘境の奥にあるかもしれない、程度の知識しかないよ」
カイト達の住む大陸は広大であり、王国が統一しているとはいえ隅々まで網羅しているわけではない。故郷の霧の谷を初め、全貌を把握していない秘境というのはいくつも存在するのだ。
それは見つかりにくい場所であったり、探索困難な場所であったり、危険なモンスターが跋扈している場所であったりと理由は様々。件の村もその辺りが理由で調査されていないのだろうと当たりをつける。
よく勉強しているとウォーロッドは笑い、話を続けた。
「しかし、天災なのか人災なのか………人も動物も植物も、村を守護する永遠の炎さえも凍りついていた」
「炎が凍りついて⁉︎」
「そんな………」
「その村で何があったのかはわからん。だが、氷の中で村人は生きておった。その村を救ってほしい、それがワッシの依頼じゃ」
「なるほど!それなら簡単だ‼︎オレの炎で全部溶かしてやる‼︎」
「そーゆー事ならオレは必要ねーだろ」
「いや、アレはただの氷ではない。君の力も必要になる」
これ以上ナツと共に行動するのはごめんだとばかりのグレイを、ウォーロッドが引き止める。しかし、ウォーロッド程の実力者であれば自力で解決できるような事件。なぜわざわざ依頼を出したのかとエルザが問い掛ければウォーロッドは笑いながら不可能だと告げた。
「君たちは勘違いしているかもしれんな。聖十大魔道といえど万能ではない。評議院が勝手に定めた10人にすぎん。この大陸にはワッシ以上の魔導士は山ほどいるし、大陸を出たらそれはもう、ワッシなどとても小さな存在」
現に攻撃魔法をほとんど知らない自身では、君たちと武力で勝てる自信もない。謙遜ではなく、純然たる事実として述べるウォーロッドの言葉。
「誰にでも得意不得意はある。それを補い合えるのが仲間、ひいてはギルドであろう」
その言葉にふと、全員が顔を見合わせる。近くにいることが当たり前過ぎて忘れていた事。いがみ合ったり、時には喧嘩もするが、それでも仲直りできるのはきっとそういう事なのだろう。
「おっしゃる通りです」
「カッカッカ♪腕がなるねぇ」
「その依頼引き受けた‼︎」
「おう‼︎」
「あたし達に任せてください‼︎」
ナツとグレイが拳を付き合わせて応え、真っ直ぐな瞳がウォーロッドを見つめる。安心したかのように深く頷くと、ゆっくりと腰を上げた。
「太陽の村はここから2,000kmほど南。移動くらいは手伝ってやろう。そこに集まって、荷物も忘れんようにな」
ウォーロッドの指示に従い指定された場所に集まる一同。途中、回れ右などの冗談が入ったがそれはさておき。ウォーロッドの呪文に合わせて足元に魔法陣が展開されると、その中央からひょっこりと新芽が顔を出す。
それは劇的な速さで成長するとあっという間に一同を葉っぱの上に乗せ、更にさらにと成長する。
「頼んだぞ、フェアリーテイルの若者たち」
そして次の瞬間、一同を乗せた樹木は目的へと向けて一気に成長する。それは最早植物というよりは一種の乗り物のようで、空を飛ぶ鳥さえ置き去りにしてぐんぐんと伸びて行く。
これぞ大自然を操るウォーロッドの真骨頂。謙遜していたが、その肩書きに陰りはない。
「すげぇ‼︎」
「木が生き物のように………」
「うほーーーっ‼︎‼︎」
「カッカッカ♪落ちないようにね、ナツ」
枝が絡み合い、葉っぱがクッションになって乗り心地はいいとはいえ、振り落とされる危険性はあるのだ。立ち上がって風を楽しむナツを嗜めるカイトだが、ふと袖を引かれているのを感じた。
「あの、カイトさん………」
何かと思えばウェンディである。どこか後ろめたい気持ちがあるのか、緊張の面持ちの彼女を見てああ、と心の中で呟く。続けられる言葉を察したカイトは二の句を告げようとするウェンディの口にそっと人差し指を当てる。
謝罪の言葉など、元凶である自身に向けられるべきではないからだ。
「ごめんね、ウェンディちゃん。俺がちゃんとしないから、君に辛い思いをさせてしまったね。解決策は………すぐには思いつかないけど、君に誇ってもらえるように努めるよ」
「そんな!私の方こそ………」
「いや、君は俺のために怒ってくれていた、ただそれだけだよ。それでもと言うなら、そうだねぇ………今度、週ソラのインタビューを受けるから同行してもらえるかな?」
「っ‼︎はい‼︎」
気にしていない、と言っても気にするだろうと出した交換条件。知名度回復のために入っていたインタビューの依頼に同行してほしいと言えば、ウェンディは喜んでそれを了承した。
「カイトさんの良いところ、沢山言いますね!」
「カッカッカ、絞り出そうとして無理しないようにね?」
「大丈夫です!カイトさんの良いところ、沢山ありますから!」
「ああ、うん。ありがとう」
普段エルザを筆頭にギルド内でも雑に扱われているせいか、こうもストレートに褒められると嬉しいよりも気恥ずかしさが勝ってしまう。顔が赤くなることはないが、照れたように少し視線を逸らせば視線の先にいたグレイ、ルーシィが面白いものを見たとばかりにニヤついているのが見えた。
これはギルド内で広められて弄られるな、と諦めてその時の為に心の準備を決めるカイト。そうこうしている内に、目的地である太陽の村へと一同は到着するのであった。
◇◆◇◆
「着いたのか」
「あっという間だったな」
「すごい魔法でしたね」
「流石はイシュガル四天王の1人だねぇ」
「ぅぷ」
「酔ったの⁉︎」
ウォーロッドの魔法での移動により目的地へと到着した一行。岩肌に囲まれた土地は緑ひとつなく、枯れ果てた大地と呼ぶに相応しいだろう。周囲の岩肌には苔が生えていることから、ここら一帯は大河のようではあるが河上が凍った影響で流れてくる様子はない。
予想よりも広範囲に影響が出ていることから、一筋縄ではいかないようだと気を引き締め直す。
「見て、岩肌が凍りついてる」
「村はこの先ね」
凍りついた岩肌を目印に奥へ奥へと進む。ただでさえ岩が突き出した傾斜の悪路だというのに、その上滑るおまけつき。四苦八苦しながらようやくたどり着いたのは山の麓。ここらまで来れば木々の姿も見えるが案の定どれも凍りつき、それを糧とすると小動物たちもまた時を忘れたように凍ったままだ。
そして更に奥へと進めば見えてきたのは巨大なアーチと家屋。道すがらの景色と変わらない白銀の世界だが、ここが件の太陽の村なのだろう。
「本当に何もかも凍りついてる」
「何があったんでしょう?」
「ふー………禄でもない事は間違いないねぇ」
「ん?なんだカイト、震えてンのか?」
「なっさけねぇ。この程度何ともねーだろ」
「カッカッカ、君たちを基準にしないで欲しいよ」
道中もそうだったが、あまりの寒さに防寒具を羽織っても尚震えるカイト。しかし、全員がそうというわけではなくナツやグレイをはじめ、他は寒がる様子はない。
そも、半吸血鬼のカイトも本来は暑さ寒さというものに鈍感であり、多少の気温で応えるような身体の作りではない。これもこの現象と関係あるのだろうかと周囲を見渡すが、巨大な家屋の他には特になく、精々通り道を塞ぐように邪魔な壁が乱立しているだけ。
よくこんな暮らしの悪いところに住み着いているものだ、と不意に空を見上げる。
「あ………」
「何か見つけたのか?ーーーはぁ‼︎⁉︎」
言葉を失って見上げるカイトに釣られて、ナツたちも同じ方向を見上げる。そして気づいてしまった。
「でかーーーッ⁉︎」
「ここは巨人の村なのか‼︎⁉︎」
今まで壁だと思っていたのは脚であり、その上には身体が。自分たちが小人に思えてしまうほどの巨大がよく見ればそこら中で凍っているではないか。なるほど、階段にしろ家屋にしろ何もかも巨大だったのはこういうことかと現実逃避気味に納得を。
「ああ、そういえばここら辺は巨大生物が活況していて調査不可能とされていたねぇ」
「そういう事は早く言え‼︎」
「まさか巨人がいる、だなんて関連付けできるわけないだろう。巨人なんて、御伽話にしかいないと思ってたんだから」
「………それはひょっとして冗談で言っているのか?」
エルザからのお叱りが飛ぶが不当だと声を上げる。御伽話の中にしか居ないはずの巨人が現実にいるなど、予想できるはずがない。同じく御伽話の中でしかないはずの吸血鬼に言う資格はないのだが。
「とにかく早いトコ助けてやらねーとな。オレの炎で溶かしてやるァ‼︎」
「ナツーがんばれー!」
それはともかくとして。とりあえず助けねばならないと得意の炎で巨人の内の一体を溶かそうとするナツ。ハッピーの声援のもと炎を噴出するが変化はなく、ならばと火力を上げるが効果はない。
「どうなってんだ、こりゃ………」
「あい」
いくら炎を当ててもうんともすんとも言わない氷に、流石のナツも白旗を上げた。
「木のじーさんが普通の氷じゃねぇって言ってたけど………何だ、この氷の感覚は。今までに感じたことの無い魔力………」
氷の造形魔導士ならばあるいは、とグレイが氷像に触れるが違和感を感じるのみで溶かすことは不可能のようだ。
両腕を擦りながら辺りを見渡すカイト。ナツの炎でも溶けず、グレイでも解析できないとなると単純な力技ではどうこうできないのだろう。試しに氷に触れた瞬間、手から伝わる灼熱に反射的に手を離す。見ればまるで自身を拒むかのように手は爛れ、白い煙を上げていた。
「とことん、この場所とは相性が悪いみたいだねぇ………」
グレイが触れても何もない事からこれはカイトのみに作用しているのだろう。なぜ自身だけが、と考えるまでもなく半吸血鬼であるが故と考える。
悪魔払いの魔法は確かにあるが、しかしその誰もが聖属性であり、しかも悪魔にしか効果を発揮しないものばかり。広範囲の白銀に染めることなど不可能なはずだ。
(
脳内にこの様な魔法はあったか検索をかけるが、結果は0。そも、伝聞も書物も数少ないのが失われた魔法。その内のいくつかを知っているだけでも上等であるのだが、そんな慰めなど今は何の役にも立たない。
さて、どうしたものかと考える一行に、声がかけられた。
「おや?先客か。これはまいったね」
「超女子供ばかりだと?」
「ドゥーンドゥーン」
「何者だ?」
振り返った先、崖の上に立っていたのは3人組。弾薬を肩から下げたロン毛のバンダナ男、剣を携え腕を組むとんがり頭の男、拳の様な武器を携えた四角い顔のリーゼント大男。個性は揃いの3人はエルザの問いに答えるように名乗りを上げる。
「トレジャーハンターギルド」
「
「ドゥーン」
「トレジャーハンターギルドって………」
「宝探しが専門ってトコかしら?」
「廃墟や秘境なんかに押し入っては何かしらを強奪していくコソ泥だよ、コソ泥。はぁー、やだやだ。こんなトコにまで湧くなんて」
「随分な言い草だな。なンかあったのか?」
「その類の輩が何度か地元に来てたからねぇ」
嫌悪感増し増しの侮蔑を口にするカイト。実際、故郷の霧の谷には何度かその手の輩が押しかけており、もれなく全員餌となっているのだが。しかし、我が物顔で土地を徘徊し、横暴な態度で接してくる輩を好きになるはずがない。人間嫌いなカイトの中でも上位に入るほどに苦手なのである。ちなみに1番はこちらの事を根掘り葉掘り探ろうとする礼儀知らずのマスメディアだったりする。
どうやら3人の目的は永遠の炎。炎を守る巨人たちが凍っている今こそ好機とばかりにやってきたのだという。
「でも、その炎はこの村の守神で、とても大切なものだと聞きました」
「勝手に取っちゃうなんてドロボーじゃない」
「トレジャーハンターに宝とるなと言いたいのかよ⁉︎」
「そんなモン、盗られた方が超悪ィに決まってンだろーっ⁉︎」
「ドゥーンドゥーン‼︎」
なるほど、やはり言葉は通じても話が通じない。呆れた様子で空を見上げるカイト。少しでも攻撃姿勢を見せればすぐさま周囲の罠で捉えられるのだが、早くしてくれないかと言う気持ちとは裏腹に、こうしてはいられないと逃走を図る3人。
その永遠の炎も凍っているのだがどうやらそれは対策済みらしく、あらゆる封印や魔法を解除する
「あれがあれば村を元に戻せんじゃねーか‼︎‼︎」
「追え‼︎トレジャーハンターを捕まえるんだ‼︎」
「奪えーーっ‼︎」
「アイツら、さっきまでの超綺麗事どこいったんだ⁉︎」
「ドゥーン………」
3人組を追いかける一同。そしてその場に残るのはエルザとカイトのみ。全員で月の雫を手に入れるより、他の方法を探す判断だ。
それに、2人は察している。見せられたビンの中身は極少量しかなく、村全体を溶かすには明らかに足りていないことを。
「ふむ………全員が武器を持ち、同じ方向を向いている。敵はあちらから来た、ということか。カイト、上空からは何か見えるか?」
「ダメだねぇ。視界が悪すぎる。地上も周囲が大きすぎて探せないよ」
元々深い森の中ということもあり、高度をだしても周囲の巨木に視界を遮られてしまう。上空に飛ばした鴉からは有意義な情報を得ることはできず、また地上を走らせる影犬も目線の高さに比べ周囲が巨大すぎるため情報が拾えない。
いつもの様に情報を集まることは不可能と悟り、早々に魔法を解除した。
「さてさて、巨人たちが何かと戦っていた。いや、この場合戦おうとしていたかな?………何のために?これだけの被害を出す相手なら逃げる事も選択肢に入るだろうに、全員が武装しているね」
「ふむ……村のためか?いや、大切なもの………」
カイトの言葉に思考するエルザ。村を守る為、もっと言えば大切な物を守る為、と連想を続けていく内にはっと周囲を見渡す。全員が例外なく一点へと向かおうとしている。そして巨人達の背後には一際巨大な山。間違いない、あそこに巨人達の宝、永遠の炎があるはずだ。
「カイト、向かうぞ‼︎」
「ん?………ああ、そういうことか。あ、ちょっと待って‼︎エルザ?エルザー⁉︎」
エルザの号令に考えを察したのはいいが、凍えている現在普段と同じ様なパフォーマンスができるはずもなく。到着した山の前には他の巨人達よりも鍛えられた2人の巨人が何かを守る様に槍を構えている。
恐らく炎は山頂にあるはずだとエルザが先行していた探すが、どこにも見当たらない。いや、そも永遠の炎も凍っているという話だ。見つけ出したところで打つ手はないのだ。いささか勇み足すぎたか、と反省しながらふとカイトがいないことに気がつく。
また迷ったのか、と自身が置いていったことに気が付かず憤りのまま下山しようとしたその時だった、
「な、なんだコレは………?」
水晶の様に突き出す氷に映るのは幼い時代の自身の姿。遅れるように足元に身につけていた鎧が散らばる。白銀の世界に包まれた村で起きた怪奇現象。目の前の光景が信じられず、ただ呆然とするしかないのだった。