株式会社ミスリル 格納庫(体育館)
「・・・ここ、体育館なのでは?工房って言ってませんでした?」
雪華の声が妙に響く、ここはミスリルの買い取った学校跡地の最大規模施設である体育館内、障害物のない広々とした空間故に音は反響する。
ミスリルの面々は体育館にあるドアを全て閉じる、元々様々な場所に扉が存在する建造物で、内部は基本的に運動するための物なので普段は風通し良くするために開放されるべきものだ。
ガッシャンと大きな音を立てて扉が閉じられ、鍵を掛けられる。残されたのはカーテンが閉じられ自然光の入る余地のなくなった暗い空間と合計15名の人間。体育館というものは光が入らなくなっただけで随分と心細さを感じる空間になる。レナードは体育館内の小部屋の一つに向かって歩く、その扉の上には「用具室」と書かれたプレート、そして扉の横にはこの空間には似つかわしくない最先端機器が備えられている。
「ん~?そこだけ生体認証って、警備面から考えたらちょっと意味不明だねー。普通建物ごと厳重にしないかい?」
束が疑問を口にし、問題点として指摘する。通常、機密を扱う施設というものは外部からの侵入者に対して過剰なまでに神経を尖らせるものだ。そもそも建造物に入らせること自体が敗北と見なされるほどに水際で防ぐことが重要な世界だ、故にどこにでもある学校の体育館という時点で扉のみ厳重なロックを掛けたところで意味がない、束が指摘しているのはそこだ。
「警備の事を言っているのなら大丈夫ですよ、許可無くこの会社に侵入することは不可能です。先ほど雪華さんに渡した社員名簿の中にある警備部門の顔ぶれをみれば納得していただけるかと。ただ、過剰防衛と言われても困るのですがね・・・」
あはは、と乾いた笑いで締めくくるレナード。実際この会社に所属するメンバーは生粋の化け物揃いと言っていい。たとえ世界中のISが一斉に襲撃してきたところでほぼ勝ち目などないレベルだ。さすがに無傷で、というわけにはいかないだろうが・・・。
「・・・なんだろう、怖くて中身見れないのにすっごく納得しちゃってる自分がいるのですが」
「私もよ・・・。聞かなかったことにしたい・・・」
雪華とセツコは互いにミスリル警備部門に対する好奇心より恐怖心が勝っている模様で、カタカタと震えながら目のハイライトを薄くしている・・・。実際の所、IS学園格納庫で生身で千冬やアリーシャを完封した存在がいる時点で覚悟はしていたらしい、そして先ほど開発部門のメンツをざっと見ただけで確信したようだ。
科学者として異次元レベルにある名前が書いてあり、フロンタル用にシナンジュが用意されていて、GNドライヴを搭載しているデュナメスを再現しきる。そんな連中が研究開発を行っている施設に対して、外の警備システムはぱっと見ただけで分かるほど何もないのだ、その理由は警備部門のメンバーがいればまったく
「さて、ここから先はちょっと全員連れていくわけにはいかないんだ。悪いけれど連れていけるのは雪華さんと、後は織斑さんと篠ノ之博士。他の皆さんはここで待っててくれないかな?サビーナ、ここはお願い」
「畏まりました。何かあれば通信を入れますので」
恭しく一礼し、主であるレナードを見送るサビーナ。レナードは生体認証をパスし、何かを入力し始める。するとゴゴンッと少し大きめの音が鳴り、何かがセットされたような僅かな揺れが起きた。
「え、ここまで来ておいて?セツコさんもダメなの?」
レナードの一言にシャルロットが反応する、他の面々も同じような様子だ。イギリスの国家代表候補生であるセシリアは仕方がないと言えるが、シャルロット、ラウラ、簪の3人はDEMコーポレーション所属となっているものの、開発部長の肩書を持つ雪華に許可を出して3人はダメというのは理解ができない。
「あー、言い方が悪かったね。《工房》の中は重要機密が溢れていてね、
ロックを外した扉を開けると、そこにはこれまた場違いな頑丈そうなエレベーターになっていた。先ほど外した生体認証のロックはエレベーターの扉らしい、この体育館は上に積み上げる建造物ではないため行先は地下なのだろう。
「それじゃあ、しばらくお待ちを。
ひらひら、と手を振ってエレベーターに乗り込む。行先は地下、動き出したエレベーターはスーッっと一瞬無重力を感じる。
5分ほど下降し続けているだろうか、エレベーターはまだ目的地には到着しない。怪訝に思った雪華たちはエレベーター内を観察するも、どこにも階数表示が無い。雪華は疑問を感じてレナードに質問をする。
「ねえ、地下ってどのくらい深さなの?」
「かれこれ5分、6分?潜り続けてるよねえ。どんくらいの速度で下降してるのか知らないけどさ、ちょっと深すぎない?」
「私はそういったことはさっぱりわからんが・・・、そういうものなのか?」
束も同じ疑問を持っていたらしい、重要機密を扱うとはいえISのような機体を開発する空間としては深すぎる事、そして先ほどの「普通の人間を入れることができない」という発言の意味を照らし合わせる。
「そうだな、ISを開発するだけならば地表であっても問題はない。だが我々がこの先で開発しているのはISではなく【MS】だ。雪華君のジェニオン、セツコ君のバルゴラ、ラウラ君のレーバテインを見れば解るように雪華君の作ったISコアは素となる機体を選ばない。それならわざわざISを作る必要など無いのではないか?」
「この先にある施設は通常よりずっと過酷な環境を再現していてね、だから「
フロンタルはこの先にある目的地で作っているものはISではなくMSだと言う。そしてレナードは《特殊な環境下を人工的に生み出した空間》と言っている。通常MSであっても特殊な環境でなければ建造できないものではない、よほど《特殊な技術》が詰め込まれたものであるなら別だが・・・。
「なるほど、デュナメスが再現されてるってことは【GNドライヴ】ですか。そうじゃないとこんな深い場所に作る理由はないですね・・・。それじゃあ木星並の重力下にあるってことですから、普通じゃない人間である私たちしか入れないのも分かります。それに装甲は従来の【Eカーボン】ですか?・・・それなら無重力空間も必要ですね・・・。ひょっとして高度な重力制御が可能なEOTを導にゅうにゃああ!?」
「GNドライヴ?なにそれ??ていうか木星並のって、地球の2.4倍じゃないか!そんなのどうやって再現したのさ!?」
初めて聞く単語に敏感に反応する束、科学者としての血が騒ぐのだろうか、勢いよく雪華の背中にぴょんと飛びつく。教えて教えて!と頬擦りしながら猫なで声でおねだりする姿は、独特のファッションも相まってとても24歳には見えない痛々しい姿になっている。
「ちょっと待て!束はともかく
「そんな!ひどいよちーちゃん!?」
束と同列扱いされショックを受ける千冬と「非常識な生物」扱いされショックを受ける束。実際のところはどちらも普通の人間からは程遠い位置にある存在なので五十歩百歩だ。背中に張り付いた束をそのままに雪華はさらに爆弾を投下する。
「もう!普通の人間じゃないっていう括りはそういう意味じゃないですよ!束さん、持ってきてもらった【白騎士のコア】を貸してください」
「ん~、ちょっとまってね~」
おんぶされたまま束は自身の豊満な胸元に手を突っ込みゴソゴソと漁る、健全な青少年が見れば鼻血が出そうなほどの迫力をもつお山は、胸元が大きく開けたドレスのせいもあって零れ落ちそうな状態になってしまっている。
少ししてお目当ての物が見つかったらしい、スポッっと手を引き抜き持っているコアを雪華に手渡す。束の胸元のどこに収納していたのかは不明だが、人肌に温められたそれを受け取った雪華は心なしか頬を染めてしまってる。健全かどうかはさておき、元は男であったレナードやフロンタルはさしたる興味もないようで平然としているが、念のため「はしたないぞ」と、軽く束の頭を小突く千冬、あきれ顔だ。
「ありがとうございます束さん。この白騎士のコアがそもそもの原因なんですよ、お二人が
まったく予想していなかった答えを聞いてポカンとした顔で雪華を見る束と千冬。「ああ、やっぱりか」といった風に納得顔のレナードとフロンタル。それぞれの表情を見比べて雪華は言う。
「そもそも黒の英知は全ての次元、全ての平行世界に散らばっていました。今でこそ、このコアの中身である黒の英知は私の元に戻っていますが、束さんが初めてコレに触れた時にISの作り方が頭に流れ込んできたのではないですか?そして千冬さんは白騎士に乗った時に黒の英知に触れていますね」
白騎士のコアが黒の英知である。そのことは雪華と出会い、雪華のルーツを聞かされたときに束は直感的に理解していた。白騎士のコアだけは束が作ったものではない、幼い頃に実家の庭に落ちていた不思議な宝石を拾った、それが白騎士のコアだったのだ。
だが千冬まで黒の英知に触れたということにショックを受けていたのだ。束は千冬を無二の親友だと思っている、幼少期に他人と打ち解けることが無かった束が唯一心許した幼馴染だ。その千冬まで気づかないうちに巻き込んでいたことに血の気が引く思いだった。
「いやちょっと待て雪華、私が白騎士の操縦者だと知っていることは今更驚かんが、私のこの身体能力は生まれつきのものだぞ?白騎士に乗ったときに黒の英知とやらに触れたというのならば説明がつかん!」
「黒の英知がもたらすのは何も人間離れした身体能力だけではないのですよ。束さんの「細胞レベルでのオーバースペック」というのも、千冬さんが「世界で唯一の適正Sで初めて乗るISを手足のように自由自在に動かせる」のも同じ黒の英知の影響です。千冬さんの場合は限定的な影響に収まっているようですが、束さんの場合はレナードのような【ウィスパード】が近いかもしれませんね・・・」
千冬は唖然としている、そして束は雪華の背中から降り、そんな千冬をなんとも言えない表情で見ている。エレベーター内には少々落ち込んだ空気が満ちているのだが、そんなことなどお構いなしに時間は進む。エレベーターは目的地に到着し、頑丈な扉が開く。
そこは全世界の技術力の粋を集めた研究施設ですら遠く及ばないような未来の光景が広がっていた。
その頃IS学園では・・・
side 一夏
「今日こそ決着着けるぜ、鈴!」
「それはこっちの台詞よ一夏ァ!!この1年間修業を重ねた私の実力を思い知らせてやるわよ!」
俺は鈴とにらみ合う、この勝負は絶対に負けられないんだ!だが鈴の実力はよく知っている、そして1年間の修行・・・想像を絶する過酷なものだったに違いない、鈴の背後に炎が見える気がする。
「なんて気迫だ・・・!」
凄まじい圧力を感じる、小柄な鈴の姿がとてつもなくデカく見える・・・!コイツ!今までの比じゃない!?
だが俺だってこの日のために様々な対策を練ってきた。綿密に組まれた
「・・・では、判定をしよう」
審判の箒が神妙な表情で告げる、自信はある、だが鈴のあの表情。冷や汗がでる、空間が緊張感に包まれる。
「勝者は・・・・一夏だ!」
「いよっしゃあああああオラアアアアアアア!!!」
「そ、そんな!?なんでよ!!!」
全身で喜びを爆発させる、これが!俺の!本気の実力だぜェ!!
鈴はよほど自信があったのだろう、必死に判定を下した箒に詰め寄って抗議の声を上げる。
「凰の敗因か・・・、それはな」
「それは・・・!?」
「私は酢豚にパイナップルは否定派だからだ!!」
バアァァァァァァアアン!!!
という効果音が箒のバックに見えた気がするほど清々しい理由だった。鈴は膝から崩れ落ち、両手を床に付けて慟哭する。
「なんで・・・!なんでよ・・・!?酢豚にパイナップルの何がいけないっていうのよ!?中〇一番でも絶賛されてたじゃないの!」
「鈴・・・」
「正直言って味のバランス、風味、火の通し加減、全てにおいて一級品といってもいい酢豚だった。むしろ一夏のものよりも完成度としては高かっただろう。だが凰、料理とは己の矜持のみを貫くものではない・・・。料理とは、振舞う相手への愛情こそが大事なのだ!」
バアァァァァァァアアン!!!
再び箒のバックに効果音が見えた、何だか知らないがすげえ勢いだ!そして鈴は目から鱗が落ちたかのような表情で「料理は・・愛情」と呟いている。
紙一重の戦いだったってことか・・・。俺は膝をついて項垂れている鈴に手を差し出す。ナイス、ファイトだ!
「鈴、いい勝負だったぜ・・・!」
「一夏・・・、今度は・・・今度こそは負けないわよ!」
ぐっと力強く握手をする、鈴は俺の最大最高の
ミスリル地下工房【ソレスタルビーイングⅡ】
「今何か一夏が馬鹿なことをしてたような気がする」
「何言ってんのちーちゃん・・・」
唐突に場違いな事を言い放つ千冬、呆れる束。いつもとは真逆の立場となっている。実はNT的な直感も黒の英知による副産物なのだがそれは千冬は知る由もない。
「さて、ここがミスリルの工房、通称【ソレスタルビーイングⅡ】だ。ようこそ3人とも、我々はあなたたちを歓迎します」
レナードとフロンタルが一礼する。ソレスタルビーイングⅡと名付けられた工房内は広く、言葉にたがわぬ強烈な重力を感じる。そして千冬や束でさえ不思議なエネルギーの奔流を感じとっている。
雪華は気付いている、この工房内は【次元力】を使った装置があること、そしてこれほど強烈なエネルギーを生み出すには高度な科学力を必要とする事・・・。
「とてつもないエネルギーの流れ・・・、それにオリジン・ローを感じる。すごい安定感・・・、相当高度なレベルで次元科学を使いこなせる人材がいる?」
「ふむ、やはり気付くか。そのファイルに目を通していれば誰か分かっただろうが、ばらしてしまえばガイオウが協力してくれたからだ。彼もこの世界に生まれ変わり我々と共に行動している。警備部門の所属だがよほどのことがないと出番はないな」
「普段は食べ歩きばかりさ。まあそのほうが平和でいいよ、彼が本気で戦えばこの星が粉々になってしまう・・・。ほとんどの事は警備部門のメンバーが誰かいれば解決するからね、それに彼は元々心優しい男だ」
警備部門の一人、次元将ガイオウ。桁外れの戦闘力を持った《並行世界を渡り戦う戦士》だ。彼もまた、散り際に強く世界の平和と当時のZEXISの勝利を強く願い、そして自身に一かけらの未練を残した。彼は日々のなにげない平和な日常を殊の外愛していた、願わくばもう一度、ホットドッグが食べたかった・・・と。
「そうですか、ガイオウまで・・・。それならこのオリジン・ローの奔流も納得です。次元力を抽出、操作できるなら重力操作は自在にできますね」
「むむむ・・・この束さんがまったく会話についていけないなんて、そんなことがあっていいのか!?いや、ない!せっちゃん、束さんにも分かるようにはよう解説ぷりーず!さっきからワクワクが止まらないよお~!」
「落ち着け束!」
べしっ!と束の頭をはたく千冬、軽くやっているように見えるが、強い重力の影響でまるでハエ叩きで叩き落された蝿のように床に叩きつけられる。束は「ひどいよちーちゃん!?」とすぐに復活する、ダメージはさほどないらしい。
「今工房の奥では作業中だね、博士たちはそっちに掛かり切りか・・・。さて、あのハンガーに待機してる機体・・・赤いのがフロンタルの【シナンジュ】、そして白と緑の機体が【デュナメス】、ロックオンとグラハムのだよ。で、IS学園に、というより織斑千冬さん個人に提供したい機体、開発部門の連中が【可能性のケモノ】と呼んでいるものが・・・・あれだよ」
「え!?ちょ・・・可能性の獣って・・・!まさかユニ・・・こ・・・・んんん??」
レナードが一つ、二つと指差して説明していく、そして三つ目・・・。IS学園に提供ではなく、織斑千冬個人に供与すると言っている件のIS用の素体。雪華は思い当たる節があるのかバッと指さす方向に目を向けて反応したのだが、なぜか尻すぼみになって最後は疑問形になっている。
その雪華の視線の先、レナードが指差す先、そこに鎮座している機体は目の覚めるようなオフホワイトのカラーをベースに、グレーがかった斑模様、ずんぐりとした二頭身の胴パーツ、なぜか胸元には蝶ネクタイ、つぶらな瞳。そしてなぜか帽子を被ったネズミなのかクマなのかわからない顔パーツ・・・
「・・・・ボン太くんじゃないですかーーーー!!!!!」
「なにあれ・・か、かわいいぃ・・・////」
頭を抱えてツッコミを入れる雪華、なぜか頬を赤らめキュンと来ている束。そしてその後ろに居た千冬は思わず後退りしてしまっている。
「あれこそが我がミスリルが誇る最新鋭中の最新鋭機、「V2アサルトバスターボン太くんゼロ」です・・・ちなみに中~遠距離を想定したIフィールドやゼロシステム搭載火力型です」
「そしてもう1機、「ランスロットアルビオンボン太くんジャスティス」だ・・・こちらは近距離に特化した機体でVPS装甲とブレイズ・ルミナスによる二重のバリアを持つ、燃費の良い優良機だ」
棒読みで説明をする二人の目が死んでいる、甚だ不本意な機体なのだろう。何種類かの別の機体の特性を移植するようなとんでもない魔改造を施しているが、それ以前に元となった素体の意味などまったくない機体だ。
「なんで・・・ボン太くんなんです・・・?」
ふいっと雪華から視線を外す二人、この時雪華は察してしまった、ボン太くんになった原因もララァなのだと。雪華は心の中で千冬に合掌した、たしかにあの変態技術者や変態科学者が総出でやりたい放題作ればそれはとてつもない機体が出来上がるだろう。だが筆頭であるビアン・ゾルダークの美的センスは非常に独特のものがあることを知っている。そこに可愛いもの大好きなララァがコラボすればどうなるか・・・。
「わ、私がアレを・・・操縦するのか・・・?ほ、他の、他の機体は・・・!?」
「すみません織斑さん、わが社の開発陣は技術力は抜きんでているのですが・・・いかんせん金銭感覚が皆無なんです。つまりあの2機を作るのが精一杯、そこにあるシナンジュも武装が一つしかない状態なんです。なんとかデュナメスは完成したと言えるのですが壊したりしたら修理する予算がないような状況です・・・」
「さすがに食玩メインの商売ではいかに人気があっても利益が薄い、肝心のパワードスーツのほうもFBIとマイアミ市警に売れただけだ」
「パワードスーツってわざわざ聞く必要もないでしょうけど・・・ボン太くんですよね?」
コクリ、と頷く二人。どの世界線であってもその二か所にしかボン太くんは売れないのか、それとも商売のセンスがないだけなのか、理由は不明だ。だがもはや千冬にとってはそのあたりの事はどうでもいいことなのだ。どうにかしてあの着ぐるみISを装着することだけは回避したい、ブリュンヒルデの称号を手にした世界最強の女ではあるが、千冬とて年頃の乙女なのだ。
だがその時千冬に天啓が降りた。頭で考えるより先に体が動くタイプの千冬にしては嘗てないほどにフル稼働した頭脳だが、そこから導き出された最適解はなかなかにポンコツだった。
「そう、そうだ!私は一応、有事の際はIS学園教師陣の陣頭指揮を任される立場にある、本来ならIS部隊に指示を出すのが仕事だ!だからその、あれだ、実際に現場でISを装備して戦う者にその専用機を供与してやって欲しい。うん、そうだ、それがいい!それにそのISの元となる機体も戦闘タイプが真耶とアーリィに合っている!ばっちりだ!」
必死になって身振り手振りで言い訳をする千冬。それを見ている者達はあまりの必死さに居た堪れなくなりつつも、別に千冬に無理に操縦させなくてもよいのでは?との思いには納得がいっている。なぜなら真耶とアリーシャは2機のボン太くんとまさにタイプががっちりはまるからだ。
「ふむ。我々としては別に織斑千冬という個人に供与した、という形であればそれを経由してミス・山田、ミス・ジョセスターフ両名が操縦するのは構わんが・・・」
「うーん・・・。機体のデータが取れるならそれぞれのスペシャリストに扱ってもらったほうがいいですし、そうですね・・・。わかりました!ではお二人に使ってもらいましょう。ただし、できるだけ大事に扱ってくださいね。とても維持費が出ませんので!」
「上手に押し付けたなー・・・」
「ええー・・・。ちーちゃんがアレ来てる姿見たかったな~。写真に一杯取ってアルバム作ろうとおもったのに♪」
束の言葉にぞっとする千冬だったが、なんとか矛先を躱すことに成功して内心ガッツポーズを取っていた。ただ強化人間であるフロンタルやNT能力を持っている雪華には筒抜けであったのだが・・・。
こうして2機のボン太くんはIS学園教師である山田真耶とアリーシャ・ジョセスターフの二人に押し付けられる事になった。他でもない二人が慕う千冬の手によって・・・。
体育館:当然エアコンなど設置されていないので扉の重要性は増すばかり。
GNドライヴ:ガンダム00に登場する永久機関、別名「太陽炉」。天才科学者イオリア・シュヘンベルグが基礎理論を提唱し、設計された機関。莫大なエネルギーとGN粒子を半永久的に生み出すことができる。
Eカーボン:ガンダム00に登場する装甲材質。現実に存在するカーボンナノチューブの20倍の引張り強度を持つとされ、軌道エレベーターの構造材やMSの装甲にいたるまで様々な分野で活用されている。GN粒子を装甲表面に展開し防御力を飛躍的に上げるGNフィールドの応用技術が使用されており、非搭載型MSとは一線を画する性能を誇る。
木星の重力:質量が大きいため比例して重力も大きくおよそ2.34Gある。接近してくる隕石や彗星のほとんどは木星の重力に引きこまれていくため、木星が無ければ地球はすでに隕石などで滅亡しているだろう。
束さんの胸元:夢がいっぱい詰まっている。そして柔らかく、暖かい。
白騎士のコア:原作では当然束が作ったもの。スパロボ時空ではだいたいストーリーの影響を受けるために設定を改変した。
ウィスパード:フルメタルパニックに登場する設定「囁く者」。生まれながらにして、「存在しえないはずの知識」、オーバーテクノロジーをその記憶に刻みつけている人々のこと。「ある技術が未来からウィスパードを通して過去に伝わる」→「その技術が発展する」→「発展した技術が再び過去へ伝わる」を何度も繰り返すことにより、異常に発達したものである。
IS学園でのバトル:一夏と鈴による「酢豚対決」。優劣が生まれたのはジャッジする箒の好みの問題なだけ。
酢豚にパイナップル:嫌いな人はとことん許せないらしい。
中華一番:その昔少年マガジンで連載していたいろいろ壮大な料理ギャグ漫画。
ソレスタルビーイングⅡ:GNドライヴ作ってるんだからそれでいいだろ、という適当な理由で名付けられた。仲間内だけの名称なので実際なんでもよかったらしい。
オリジン・ロー:スパロボZシリーズに登場する概念。次元力と同じで、次元力の本質は「霊子を介した意志による事象の制御・法則の変換」であり、これはすなわち因果律の操作に等しい。
ガイオウ:スパロボZ破界編~再世編に登場したキャラ、スパロボ界の範馬勇次郎。本名は次元将ヴァイシュラバ。生身でも東方不敗を凌駕するチートキャラだが人間味に溢れ子供が怖がるからとサングラスを着用して街を歩いたりホットドッグを食べてたりする。
ボン太くん:フルメタルパニックシリーズに登場するマスコットでスパロボ補正の塊ともいえる性能を持つ。主人公の宗介が中の人なのだがスパロボでは時々ヒイロだったりキリコだったりする。劇中かなりの女性陣(マクロスクォーターの女性クルーやミヒロ、涼音、いぶき、C.C.、更にまさかのレイやアンナロッタまで)を虜にするという恐るべき愛くるしさを見せた。
V2アサルトバスターボン太くんゼロ:V2アサルトバスターガンダム+ウイングゼロ+ボン太くん。
ランスロットアルビオンボン太くんジャスティス:ランスロットアルビオン+ボン太くん+ジャスティスガンダム。
ビアン・ゾルダークの美的センス:実の娘のために直々に設計建造したヴァルシオーネの姿を見れば解る。
ちーちゃんの策:二人は生贄にされたのだ。