IS 《神器の少女》   作:ピヨえもん

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大変遅くなりました、8月デスマーチが明けてようやく休日を手にすることができた作者です。

ああ、休日って、本当に、いいものですねぇ・・・(しみじみ)


34 この世界の現在地

  IS学園 1年1組教室 放課後

 

side 箒

 

「それじゃ篠ノ之さん、お先に~♪」

 

「ああ、お疲れ様・・・」

 

 

 一日がかりで行われた1年生合同のIS実習授業が終わり、ISスーツから着替えをしている。だがモタモタと手の動きは鈍く、私は制服姿に戻るのも億劫なほど疲れ切っていた。バスタオル一枚剥ぎ取れば下着すら身に着けていない姿だ・・・。すでに教室内に他の生徒の姿は無く私は窓の外を眺めて溜息をつく、頭の中をぐるぐると纏まらない考えが渦巻く。

 考え事の理由はいくつかある。まず一つは一夏のこと・・・。今日の演習で見せた一夏の動き、負けはしたがあれは山田先生という元代表候補生の中でもトップクラスの実力者が相手だったからだ。それを差し引いても動きのキレ、剣速、読み、反応速度などは以前とは比べ物にならないほど成長している。

 

 IS学園に入学し、今日初めて実習で実物に触れた私がなぜそんな分析が出来るのか。自分でも今まで自覚がなかったのだが、今日はっきりとソレを意識することができたのだ。

 

 私は子供の頃、家族の生活を一変させたISというものを憎んでいた。姉さんが開発し、世界に向けて発信した宇宙用マルチフォームスーツであるIS。そして白騎士事件を経て姉さんの夢だった宇宙とは程遠い場所で兵器として運用されるに至った軍用IS。

 それが原因で姉さんは世界から最重要人物に指定され、あらゆる国家から引き抜きや脅しが相次いだ。日本政府はそれを快く思わず、篠ノ之束という一人の天才科学者をあの手この手で日本に縛り付けようとした。しかし姉さんは一人で身を隠し、世界を相手に逃亡生活を送るという選択肢を選んだのだ。

 そして姉さんの技術力を独占しようとした日本政府は私たちを人質に取ろうとした・・・。当初は私一人が姉さんを釣る餌として泳がせられるという計画だったのだが、ある人物からの口添えと支援があったことによって両親と離れ離れにならずに済んだ。

 

 両親は決して姉さんに対して恨み言を言うことは無かった。そして『今まで束と向き合ってこなかった報いだから甘んじて受け止める、束に会うことがあったら今度こそ向き合って話をしたい』と言っていた・・・。

 住居を転々と移し転校を繰り返しながらも、私は両親の元で日々を過ごすうちに幼い日に姉さんを恨んでいたことを改めるようになった。そんな私にISに対する認識を改める出来事が起きる。

 

 ある日TVを付けるとそこにはISの国際試合、第一回モンド・グロッソの中継が映し出されていたのだ。

 

 日本代表は一夏の姉である千冬さんだった。

 

 私は画面に釘付けになった・・・、千冬さんが手足のように自由自在にISを操り対戦相手を圧倒していく姿に、姉さんの姿を重ねて見ていたのだ。

 姉さんは宇宙に行きたいという願いを込めてISを開発した。世界はそのISを本来の目的ではない軍用に価値を見出してしまったのだが、ISを纏い地を蹴り、空を飛び、自由自在に動き回るその姿こそが姉さんが追い求めていたISの姿なのだと。

 

 その日から私はISに関する勉強をするようになった。本来の学業や、転校を繰り返しながらも続けていた剣道の傍らなのでなかなか成果が出るものではなかったのだが、警護に着いていた女性職員の方たちから特別に教師を紹介してもらったりしてだんだんと知識を身に着けられるようになっていった。

 そして貪るようにISに関する情報や知識を吸収していき、千冬さんの試合は欠かさず録画して観戦、戦い方などを研究する。いつしか私はIS操縦者の動きを直感で分析できるようになっていたのだ。

 

 しかし一夏の成長は喜ばしいものの、今度は専用機を持たない私との明確な差を自覚するようになってしまっていた。実際にISに触れてみて分かった、見るのと動かすのではやはり大きな違いがあるのだ。入学後に行われた一夏とオルコットたちの試合、初心者である一夏があそこまで動けたのは才能によるものだったのか・・・?私は今日一日かけてようやく動かし方に慣れ始めた所だというのに、なぜ一夏はあれほどまで自在に動けるのか疑問が沸きあがって来た。

 私のIS適性はC、これは学園に在籍している生徒たちの最低ラインらしい。対する一夏の適正はB、一般的に代表候補生と呼ばれる者達の最低ラインはここだ。そしてオルコットたちのような適正A以上というのは世界中を探しても一握りしかいない最高ランクともいえるもの。そして千冬さんは唯一の適正S、まさに世界最高峰に君臨する絶対女王だ。

 

 学園にある量産機は数に限りがあり、貸出手続きを含め順番待ちが当たり前で何時自分の順番がやってくるか分からない。だが専用機があれば自由な時間は好きなだけ訓練に当てることができる。現に一夏は千冬さんにメニューを組んでもらい、毎日特訓漬けでメキメキと実力を着けて行っている。

 このままでは自由にISの訓練に時間を割ける一夏と量産機の順番待ちを余儀なくされる私との差は開くだけで埋まることなど決してないだろう・・・。

 

 

 ストンと肩を落とす。ぱさり、と羽織っていたバスタオルが床に落ち、私は生まれたままの姿をさらけ出すも、それを隠す気力が湧いてこない。

 

 

「専用機、か・・・。しかし代表候補生でもテストパイロットでもない私に専用機など、どこの誰が与えてくれるというのか・・・。私は一夏の隣に立つ資格が無いのか・・・?」

 

 

 自覚する一夏と私の明確な差、喉から手が出るほど欲しい専用機だが、私は何の変哲もないただの適正Cの女学生だ、そんな酔狂な企業や国家など存在しないだろう。私にある価値など「篠ノ之束の妹」というエサとしての利用価値しかないというのか・・・?

 

 

 誰も居ない放課後の教室で一人憂鬱になって黄昏ているその時、私の背後から抱き着くように″にゅっ″と白い手が伸びてきた。考え事をしていた私はそれが何なのか一瞬判断が付かず、反応も遅れてしまった。

 

 

「隙あり~♪」

 

 

 もにゅん

 

 

「おお~!これは・・・、もっちりと柔らかく、それでいて滑らかでハリがある。そして驚くべきこのサイズ!これは、よいものだ~~~♪」モミモミモミモミ

 

 

 自分に何が起きているのか、そして何をされているのか、しばらく理解が出来なかった。

 モニュモニュと私の胸を揉みしだくその白い手をぼんやりと眺める、どこか現実離れした光景・・・、私の身に何が起きているのだ?

 

 そして思考が肉体の感覚にようやく追いついてくる。こ、これは・・・!?

 

 

 

 

「・・・—————きゃああああああああああアアアアアアアア!?」

 

 

 背後から何者かに胸を鷲掴みにされていた!?誰だ、こんなことをす・・ふきゅん!?やっ!そ、そこは・・・!?ぅゃん!?

 

 

「あはっ♪箒ちゃんってば珍しく可愛い悲鳴だね~!うへへへへへへ~♡よいではないかよいではないか~♪」モニュモニュモミモミサワサワ

 

 

「ひうっ!?こ、このっ!!いい加減に~!しろォ!!」

 

 

 左右に体を揺さぶり背後から抱き着いてくる不埒者を振り回す、どうやら私よりも小柄なようで浮いた足が視界の端に入る。そして振り子の要領でそのまま体勢を入れ替えて背負い投げで床に叩きつける!

 

 

 

 ビターーーーン!!!

 

 

「ふぎゃん!?」

 

 

 受け身も取れずに不審者は叩きつけられた。そのまま追撃をするため涙目になりながらも裸体を隠すことなく飛び掛かる。

 

 

「おのれ乙女の敵め!成敗してくれ・・・・る?」

 

「・・・・・・きゅぅ~・・・・・」

 

 

 床に叩きつけられた衝撃で目を回して気を失っている不審者の姿を捉えて私の動きが止まる。

 

 その姿は今朝がた1組に転入してきた「東雲束」を名乗った姉と思しき少女だったのだから。

 

 


 

 

 私の憂鬱な理由その2が目の前で正座している。疑惑の転入生がノビている間に手早く着替えを済ませておいた私は椅子に座り、ふつふつと沸く怒りを懸命に堪えつつソレを睨みつける。

 

 

「いたたたた・・・さすがにこの体は別物か~。感覚がまだ追い付かないや・・・」

 

 

 背中がまだ痛むのだろう、しかし自業自得だ。一夏のために大事にしている私の純潔を穢そうとしたのだから万死に値する!

 

 

「で?なぜあんな真似をしたのだ?私のこの怒りはどこにぶつければいい?目の前の東雲束とかいう偽名を名乗る正体不明の指名手配犯か?」

 

「い、いやあ~・・・、箒ちゃんの成長が喜ばしくてつい手が、その~・・・あの~・・・・・。てへっ♡」

 

「よしトドメを刺すか」

 

「ちょ!?冗談!冗談だってば~!そんな物騒なものはしまってしまって!」

 

 

 椅子から立ち上がり木刀を構えた私を、正座したまま両手で制して必死に命乞いをする東雲。表情は青ざめている所を見ると余裕はないのだろう。

 

 

「まったく、悪ノリなどするからだ!・・・さて、聞きたいことがいろいろとあるが・・・、まずあなたは篠ノ之束、私の姉さんなのか?だとしたらなぜそんな姿に?」

 

「・・・うん。箒ちゃんの姉、正真正銘、本物の束さんだよ。訳あってこの姿になっているけど、そこは箒ちゃんには関係ないから気にしなくてもいいよ。ただ・・・、本来の細胞レベルでのオーバースペックなボディじゃないのだけは分かった、もう無茶はしない」

 

 

 先ほどの激痛を思い出しているのだろう、しみじみと心から反省した様子の姉さんはどこか新鮮だった。

 

 

「で、なんでIS学園に来たのかってのは、そうだね~・・・。いろいろと理由はあるんだけど、いずれ来たる脅威に対して出来得る限りの対抗策を講じるため、かなぁ?」

 

「・・・なんで疑問形なんです?いつも無駄に自信に満ち溢れてた姉さんとは思えませんが」

 

「さすがに未来予知は束さんだって出来ないよ。ただ、今までがそうだったからね、必要な備えを怠るのは無能のすることだよ」

 

 

 よくわからない、姉さんは昔から自分だけが分かって自分だけで物事を進める人間だった。今回もきっとそうなのだろう、しかし・・・。

 

 

「その脅威っていうのはIS学園に対するものなんですか?全世界に指名手配されている姉さんが、わざわざ学園のためにその身を晒してまで守ろうとするなんて、姉さんの性格からまったく想像できないのですが」

 

 

 姉さんは自分を細胞レベルでオーバースペックの世界一の大天才だと自負している、そして他人というものにまったく関心がない、その存在すら無価値だと決めつけている。

 そんな姉さんが自ら矢面に立って何かを守ろうなどと信用できるとでも思うのだろうか?千冬さんと一夏と私以外は文字通り視界にすら入らない姉が、だ。

 

 

「・・・信じられるとでも思いますか?そんな与太話を・・・、もしそうなら証拠を示してください、納得がいくだけの証拠を」

 

「そう、だよね。今までの束さんの行動から考えればあり得ないような事だもんね。・・・うん、わかったよ、証拠になるかどうかわからないけど・・・」

 

 

 そう言って姉さんは立ち上がり私の手を握る。柔らかく、白魚のような細く綺麗な指で、そっと包み込むように優しく・・・。まるで心から大切なものを慈しむような・・・。

 

 

「着いてきて箒ちゃん、束さんが人生を懸けて挑む大きな大きな壁を見せてあげる」

 

 

 


 

 IS学園格納庫 最奥

 

「ここは・・・格納庫?関係者以外の立ち入りは出来ないのではないですか?」

 

「ちゃんと許可は貰ってるから大丈夫だよ。それに無差別に連れ込んでるわけじゃないし、せっちゃんも箒ちゃんならOKって言ってたから」

 

 

 せっちゃん?確か由良川(雪華)の愛称だったはずだ、4組の布仏がそう呼んでいた。

 そういえば由良川と姉さんの関係も聞きそびれていたな・・・、こ、婚約者とか言っていたが本気なのか?女同士で・・・、いや女尊男卑が進んでいる現在では女性同士の結婚など珍しい出来事でもないのだが・・・。

 

 

「着いたよ箒ちゃん。この扉の向こう側にその理由があるんだ」

 

 

 ガッシャン、と重厚な扉を開いて私を招き入れる。その部屋の中は所狭しと並べられた機械類の数々とカプセル状のベッドのようなものが数台置いてあり、カプセルの中には千冬さんや山田先生、ジョセスターフ先生が横になって眠っている。

 その脇にある物々しい巨大な機械を操作するもう一人の転入生であるテスタロッサの姿、その隣には由良川と布仏が。そして3人が視線を送る大きなモニターには、先ほどのボン太くんなるものを含む3機のISと何かの戦いの光景が映し出されていた。

 

 

「ああ束さん、おかえりなさい。・・・あら?箒さんもご一緒ですか?ずいぶんと早かったですね」

 

「ただいませっちゃん、のんちゃん(本音)。れーちゃん、シミュレーターの調子の方はどうかな?」

 

 

 どこからか取り出した紙袋を由良川たちに手渡す姉さん、それを受け取ってゴソゴソと中身を取り出す3人。紙袋の中から紙おしぼりを取り出して手を拭き、続いてサンドウィッチとパックの牛乳が出てきてさっそくそれにかぶりつく3人。テスタロッサはちょっとはしたない様子だ。

 

 

「むぐむぐ・・・、そうだね、さすがに瞬殺ってわけじゃないけれど・・・モキュ、今の3人じゃあ無理だね、機体性能が違いすぎて子供のお遊びだよ、・・・じゅるじゅる・・・ずぞぞぞぞ」

 

 

 喋るのか食べるのかどっちかにしたほうがいいぞテスタロッサよ・・・。

 

 

「まじか~・・・、ちーちゃんでも無理っぽい?バージョンアップしたとはいえさすがに打鉄じゃ敵わないのね~。うーん・・・どうしよっかなー?」

 

 

 画面の中では形状の違う打鉄を纏い必死に回避を続ける千冬さんの姿と、先ほどの試合で見せた武装ではない、さらなる重火器を使って戦う山田先生、そして目で追えないほどの高速移動と両手に持ったブレードで斬撃を加えるジョセスターフ先生の3人が、たった1機の黒い人型ロボット相手に押されている様子が見える。

 

 

「現状の武装で【ベリアル】のラムダ・ドライバを打ち破れる可能性があるのはツインバスターライフルのみです、ですがパイロットデータはレナードのものですからそう簡単に捉えられるものではないですよ」

 

「レイレイってば強いんだね~、織斑せんせ~たち3人掛かりで手も足も出ないんだよ~、すごいね~?」

 

「いやいやそれほどでも・・」

 

 

 布仏に頭を撫でられなぜか得意げな表情のテスタロッサ、ふんす、とドヤ顔が心なしか腹が立つ。しかしあの黒い機体のパイロットデータはテスタロッサのものなのか・・・。

 

 一方的な蹂躙といってもいいほど3人の教師陣は押されている、機体サイズは2倍ほどの差があるとはいえ10m前後、そして黒い機体が使っている武装はクロスボウのようなものだけだ。そのクロスボウからは凰の甲龍の武装である「龍砲」のように、見えない矢が発射されているように感じる。

 

 先ほどからジョセスターフ先生が一撃離脱で斬撃を加えているがまったくダメージを与えられていないように感じる。逆にすれ違う度に先生のIS,山田先生と色違いの黒と金縁のボン太くんなるものは装甲が吹き飛び大きくシールドエネルギーが削れている・・・。これは何が起きているんだ?

 

 

「・・・困ったなあ、これほどまでにレベルが違うと何をすればいいのか分かんないや。あっはっは♪」

 

 

 やけくそ気味に笑う姉さん、一体何をしようとしているのだ?

 

 

「・・・ねえ箒ちゃん、専用機欲しい?」

 

「えっ・・・、そ、それは・・・」

 

 

 ドキリ、とした。心の中を見透かされたのかと一瞬思ったが、姉さんは一連の流れの中で予測でも立てたのだろうか?

 

 

「箒ちゃんはいっくんを守りたいんだよね?でも現状は逆の立場、いっくんは白式があるけれど箒ちゃんには何もない。IS学園に在籍しているとはいえ量産機の数には限りがあって、加えて思っていたよりずっと操縦に苦戦してる」

 

「それは・・・だけど私は・・・。今の私には専用機を受け取るだけの理由がない」

 

 

 そう、専用機が欲しくないわけではないのだ。だがISのコアは数に限りがあり、その中から選ばれた者達だけが乗ることが許されるのが専用機だ。IS開発者の妹というだけの理由で専用機を与えられていいはずなどないのだ。

 

 

「本当はね、箒ちゃんの専用機は用意してあったんだ。紅椿っていってね、本当は白式と対を成すISなんだけど・・・でもいろいろあってね、それを箒ちゃんに渡すわけにはいかなくなったんだよ」

 

「え?」

 

 

 一夏の白式と対を成すIS、しかし私に渡すわけにいかなくなったとは一体?いつもの姉さんなら私が拒否しようとも私用に何かを作ったのなら無理やりにでも押し付けてくるはず、しかし今回はそれがない、姉さんの心境にどんな変化があった?

 

 

「理由は今先生たちがシミュレーターで対戦している相手、レイナのデータを使ったAS(アームスレイブ)、ベリアルにあるんです」

 

 

 由良川が説明を引き継いで答える。ベリアルというのはこの黒い機体の名前か、しかしASとは一体?ISとは違うのか?

 

 

「ASというのはこことは違う時間軸に存在する世界、もう一つの地球で開発されていた軍用兵器でね。ISのようなパワードスーツ扱いの、言うなればISの親戚のようなものかな。で、ベリアルはその中でも僕が自分専用に開発したものでASの中でも特に規格外と言える性能を持った機体なんだ」

 

 

 まて、今なにか聞き捨てならない言葉が出てこなかったか?

 

 

「ASの頂点、そしてラムダ・ドライバという黒の英知を搭載した特別中の特別な機体に、この世界のISが果たして勝つことができるのかという実験でシミュレーションしている最中なんです」

 

 

 テスタロッサと由良川が画面から目を離さずに回答する。そのモニターの中の映像ではすでにジョセスターフ先生が、纏っていたISを粉々に粉砕されて床に伏し、千冬さんは満身創痍といった様子で膝を着き、山田先生は壁に出来たクレーターの真ん中にめり込んだままピクリとも動かず沈黙している。

 

 冷や汗が出た、シミュレーターではなく現実の戦いだったとしたらすでに2名の死者が出ているのではないだろうか・・・?それにこの世界で頂点から数えた3人が手も足も出ずに敗北するような相手がいるとは・・・。

 

 

「先生方ありがとうございました、一度シミュレーターを中断します。お疲れ様でした」

 

「ちーちゃんおつかれ~、おっぱい眼鏡と赤雌猫もおつかれ~。さーて、アレに勝つビジョンがまったく思い浮かばないなあ・・・、どうしろっていうんだろコレ・・・」

 

 

 バシュ・・・とカプセル状ベッドの蓋が開き、中から3人の先生たちが頭を押さえながら起き上がってくる。どうやらショックを隠し切れないようで顔色は悪いままだ、それに深く沈んでいるようなオーラがにじみ出ているぞ・・・。

 

 

「インチキだって!あんなのどうやって倒せっていうのサ、近づいただけでダメージ食らうなんて無理ゲーじゃないノサ!?」

 

「そうですよ、あのレベルの敵がそんなゴロゴロと居てもいいんですか?世界情勢が一変しますよ!?」

 

 

 二人の先生が呆れた様子で感想を口にする、千冬さんは未だベッドに腰かけたままピクリとも動き出す気配はない。そんな3人を宥めつつ由良川がさらりととんでもない事を口にする。

 

 

「それじゃあ私がお手本やってみますね、レイナちゃんセッティングお願いね。ジェニオンで行くから」

 

「ああ、わかったよ。どっち(・ ・ ・)のデータを使うんだい?」

 

「そこは私がやります、レイナちゃんは本音とフィールドのセッティングをお願いします、宇宙空間・・・月がいいかな?」

 

「了解だよ、じゃあベリアルのほうも宇宙仕様で準備しとく」

 

 

 軽い調子で由良川がアレを倒すと言っている、なんの疑問も抱かずにテスタロッサと布仏が機材をいじりだす。

 千冬さんは目を見開いて硬直し、ジョセスターフ先生は信じられないものでも見るかのようにあんぐりと口を開け、山田先生はしきりに目を瞬かせている。

 

 姉さんは特に言葉を挟まず成り行きを見守っているようだ・・・、姉さんはニコニコと微笑みさえ浮かべている。

 

 

 そして私はこれから起こる信じられない光景を二度と忘れることが出来なくなるのだった・・・。

 

 




モッピーの裸:健康的にエロい

イッピーの活躍:一夏君だってちゃんと成長しているんだよ

IS適性:原作では適正Sというのはチッピー含めて若干名だけ存在するが、この作品ではチッピーのみがSである

生まれたままのモッピー:モッピーの スタイルは ばつぐん だ!

モッピーのOPPAI:でかぁい!説明不要!

束さんの運動神経:本体は生身でISと戦えるレベルだが、マテリアルボディに黒の英知はコピーできないのでこちらはノーマルな性能

モッピーの木刀:どこから取り出しているんだろうね?

束さんが挑む壁:かつてフロンタル達が絶望した世界の滅びそのもの

カスタムされた打鉄:チッピー用に急遽誂えたカスタム機、基本性能は第二世代機の中では突出して高く、しかし運動性を重視するため両肩のシールドは撤去されて自由度が増している反面防御力は低く、ほぼ2発攻撃をもらえば撃墜されるほどの紙装甲

のんちゃん:束さん的な本音の愛称、のほほんさんは通り名

れーちゃん:レイナの愛称

何処から取り出した:束さんの四次元胸元ポケットではなかろうか?

レイナの食べ方:染みついた食事癖は抜けきらない、時間に限りがある職業の人は耳に痛い話

ベリアル:レナード・テスタロッサ専用AS、全ての攻撃、防御、機動にラムダ・ドライバを乗せることができるために手刀で装甲を破壊できるほど、そして近づいただけで斥力による力場で大ダメージをもらう

クロスボウのような:【アイザイアン・ボーン・ボウ】と呼ばれるラムダ・ドライバを使用した砲撃兵装。原作主人公の宗介は「見えない矢を防御するイメージ」が出来ずに苦戦を強いられた

頭なでなで:実はチョロいレイナちゃん

紅椿:原作では臨海学校のときに押し付けられるISだが、この世界の結末を知っている束は思いとどまりさらなる改装を施すことになる

箒に専用機を渡せない理由:世界最強の3人がベリアルに手も足も出ないなら、モッピーに紅椿渡したって危険なだけで力になりはしないね

どっちのデータ:一つはジェニオン本来の操縦者「ヒビキ」、もう一つは「セツカ」


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