なかなかストーリーが進みません、申し訳ない・・・。
IS学園整備室 プロディキウムシミュレーター室
戦果 ジェニオン vs ベリアル 両者パイロット喪失 引き分け
リザルト画面に次々と表示される詳細なデータの数々、それが判明していくにつれ、異様なほど際立つ雪華の戦闘能力。
今回の戦闘で雪華は何一つZ-BLUE隊が持つ特殊技能は発揮していない、それは束が持つスキルカウンターでも確認されている。つまり雪華自身がもつ力のみ、素の状態でベリアル相手に崖っぷちから引き分けに持ち込んだということ。
それは雪華の射撃命中率が
「最後、あのΛDという防壁はなぜ発生しなかったのだ?」
「TAROSが損傷、もしくはグレイヴ自身がパイロットに直撃した可能性が高いですね。ASというのはちょうど首と胴のつなぎ目がスライドして開くコックピットハッチがあって、全身を包まれるパワードスーツタイプになっています。そしてパイロットの動きをアシスト機能で増幅して操縦するために、ほぼ胴体部分に直立で立っているような状態になります。ですから胴の装甲が破損するというのはパイロットが損傷するのと同義なんですよ」
「あれ・・・?じゃあその損傷を与える前のグレイヴはなぜ直撃したのですか?それまでは全ての攻撃が無効化されていましたよね?」
「おそらくトドメを刺す段階になって絶対的な優位を自覚したのでしょう、手刀部分以外はΛDに意識が向いていませんでしたね。それを誘発するためにあえて直撃を受けて見せるというのも考え物ですが・・・」
「セツカは最後青い光に包まれてたように見えたケド、アレはなんなのサ?」
「黒の英知による身体能力強化ですよ。聞いた話では10秒間だけ10倍以上に能力を引き上げるものだそうです」
「10倍!?それチートじゃないノサ!?」
ASにも詳しいレイナに対し、教師陣から次々と質問が飛ぶ。一つ一つ丁寧に疑問を解きほぐしていくが教師陣は完全に理解しきれない内容だったのか、議論に進展してしまっている。
その喧噪に満ちた部屋の中、ポツンと蚊帳の外に身を置く箒だけは複雑な心境のまま、壁に寄りかかりリザルトを見つめ何やら考え込んでいる。
「結果は相討ち、か・・・」
先ほどの雪華の戦闘結果を見届けた箒がほっと安堵の溜息をつく。
なぜ安堵なのか?という疑問は今の箒の心には湧き上がってはこない。ただ、ほんの僅かにちくりと棘のようなものが刺さった気がした、という程度。
「まぁ、そうなるよねぇ。束さんがそうなるように注文を付けたわけだし?あれで圧勝してもらったら逆にISの現状戦力を誤認しちゃいそうだよ」
「注文・・・、確か『第三世代ISとして』戦うこと、でしたか。しかしそれが注文になるのですか?そもそも由良川のジェニオンはDEMコーポレーション製の第三世代型だったはずです」
箒はジェニオンのカタログスペックしか調べてはいないため、注文の意味が理解しきれない。しかし束がわざわざ釘を刺すほどのことに意味が何もないはずがないという謎の信頼があるから、それで余計に混乱するのだ。
「箒ちゃんほんとはね、ジェニオンは第三世代の枠に無理やり押し込めた機体なんだよ」
「は?」
箒は束の発言に戸惑いを隠せない、なぜなら束の言葉はどう考えても『第三世代より遥かに進んだ世代の機体を第三世代だと言い張ってるだけ』としか捉えられないから。
ISの世代理論は第一世代が《兵器としての完成を目指した世代》
第二世代は《
そして第三世代は《イメージ・インターフェースによる特殊兵装の搭載を目的とした世代》
束は順に説明を続け、箒の理解度を確認していく。箒とて一念発起してISに関する勉強を続けてきた身、そして学園入学後も座学は欠かさず続けている真面目な少女だ、だからこの程度の知識は当然の如く備えている。
「じゃあ未だ見ぬ第四世代は何か?箒ちゃんはわかる?」
「第四世代・・・、たしか《装備の換装無しでの全領域、全局面展開運用能力の獲得を目指した世代》でしたか。まだ机上の空論でしかない世代で、実用化はおろか研究の目処もたっていない技術のはずです」
「うんうんそのと~り♪よっく勉強しているね箒ちゃん!束さんも鼻が高いよ~♪」
満面の笑顔で箒を褒める束だが、今の束は箒より小柄で並んでしまうと妹のようにしか見えない。そんな束が自身より背が高い妹の頭を愛おしそうに撫でる姿に箒は苦笑いを浮かべる。
「束、話が脱線してるよ。篠ノ之さん、ジェニオンはISの世代では語れないオーバーテクノロジー、というより束や僕以上の天才、ジ・エーデル・ベルナルが《次元科学》の粋を集めて作った、文字通り《神》を倒すための機体なんだ」
「神・・・」
「おっぱい眼鏡や赤雌猫が乗ってるボン太くんだって、本来の性能で言えばジェニオンよりずっと上なんだよ?ただ使いこなせていないからボロ負けしただけで。これだから凡人ってのはダメなんだよね~」
唐突な束の余計な一言にピシリと室内の空気が凍る、しかし真耶とアリーシャは先ほど不甲斐ない結果が出ているためぐうの音も出ない。
「束が提示した《第三世代ISとして》戦うというのは、ジェニオンが本来もつ性能の1割も発揮できない大きな枷なんだ。だけど2戦目の注文ではその枷が外される、それがどういう事かその目でよく見て、そしてよく考えてみて欲しい。その神とは、この世界にまもなく訪れる根源的災厄そのものなのだから・・・」
レイナが箒の常識という池に投げかけた小石は波紋となって箒の心を揺り動かす事になる。
シミュレーター内 月面
side 雪華
「うぅ・・・、さっきはひどい目に遭いました・・・」
1戦目での惨劇を思い浮かべると思わず涙目になってしまいますね・・・、戦闘不能を演出するためにわざとシールドバリアも絶対防御もカットして直撃を受けたんですから。そうでもしないとあれほど無防備な状態になってくれないですから、グレイヴが刺さるなんてこと期待できないんですよね。
狙い通りΛDの意識を手刀一か所に集中させて、吹き飛ばされた時瓦礫の中に隠しておいたグレイヴをうまい事TAROSに直撃させることができましたが、あれを外してたら100%敗北してましたから、ほんとギャンブルもいいとこですよ・・・。
このシミュレーター空間に現れるプレイヤーたちは、シュロウガの不死のカラクリと同じで並列世界の同じ存在が事象制御によって重なり合い続けることで不死の実体ある分身を作り出し、さらにそれをプロディキウム内に反映させて一つの平行世界を箱庭として作り上げた空間に出現させる。
そしてプレイヤーと対戦相手はアカシックレコードからのダウンロードを通じた本人とまったく同じ分身のようなもので、ゲームで言うところの「直前までセーブされたデータをロードし続ける」事でこの空間に限り自分そのものを何度でも再構築することができる、という実体を持つ現実空間でありながら平行した同一存在による虚像と仮想空間であるという矛盾を内包した世界。
だから実際にダメージを受ければ痛いですし、出血もします。それに致命傷を負えば当然のように死んでしまいます・・・。
その結果、先ほどの対戦で私は一度死んでいるんですよね~。
ううう・・・、あれは本当に、痛かった・・・。痛いけど虚像でよかった・・・。
本来ISならシールドバリアも絶対防御もあるので、こういったシミュレーターに向いている機体と言えるのですがね。
先程の痛い思い出を頭から無理やり追い出し、再び月面にて生成されたベリアルと回顧する。
だけど・・・アレェ?おかしいな~、ベリアルとは別にジオンマークが煌びやかな赤い彗星の再来が1700m程上方の宇宙空間にいる気がするんですが・・・。
「ねえレイナちゃん?なんで赤い彗星の再来=サンがこちらにいらしてるんですか?」
私は半分虚ろになってることを自覚した表情でシミュレーター室で機材を操作するレイナちゃんに疑問を突き付ける。
『僕からの愛を込めたサービス♪せっかくだから株式会社ミスリルの全戦力とやってみたらどうかな、と。10分後に増援のち、5分経過ごとに追加増援ていう設定にしてみました♪』
「・・・・・・こんちくしょう!」
レイナちゃんは本来こういう人でしたよ!ええ!
普段濃ゆいメンツに囲まれて気苦労が絶えないポジションにいるせいで、こういう時にドSな本性が現れるんですね。って、なんで私の周囲にはそういうSな人が多いんですか!?
「株式会社ミスリルの全戦力って地球滅ぼせるレベルじゃないですかね・・・ええ、ええ、やってやりますよ、やればいいんでしょう?その代わり勝ったらレイナちゃんだけ裸で縛ってサビーナと24時間密室に放置しますからね」
『!?ちょ・・---「通信切りま~す」ブツッ』
通信を切り心を落ち着かせる。
大丈夫、誰が相手でも私は負けるわけにはいかない。
シミュレーター開始の
「オリジン・アクト・・・、全てのスフィアを並列に・・・」
12のスフィアを覚醒させて「いがみ合う双子」を中心に並列稼働させる。
ここからは私自身、《太極》としての希望を見せなければならない・・・。
この世界にまもなく訪れる《根源的災厄》による大崩壊。
ミスリルの全戦力
「Z-BLUE隊の皆、一緒に行くよ。力を貸して!」
『シミュレーター開始!』
「まずはベリアルを速攻で仕留める!!」
シミュレーター室
「な!?いきなりベリアルに向かって突撃だと・・・!」
2戦目は先ほどとは違う戦いになると踏んでいた千冬は開始後真っ直ぐベリアルに向かっていくジェニオンに動揺する。
「それではさっきと同じ結果になるんじゃ・・・」
真耶もまた先ほどの圧倒的な性能差からくる蹂躙が頭から離れていないため、雪華の判断が無謀そのものに見えてしまう。
しかし二人の想像とは全く真逆の光景がモニターに映し出された。
真っ直ぐベリアルに向かっていったジェニオンは、フロンタルが駆るシナンジュの上方からの射撃を回避しつつベリアルに肉薄。
その間ベリアルはアイザイアン・ボーン・ボウを構え、確実に当てるために狙いを定める。
しかしジェニオンから翡翠色の光の粒子が迸り、ベリアルが構えたΛDの矢は不発に終わる。
「・・・【知りたがる山羊】のスフィア。ΛDの斥力場を『
そのカラクリを理解している束は何が起こったのかを口にするが、その心中は外面ほど穏やかではない。
それは束自身がサードステージに至ることが出来なかったほどの強力無比なスフィアを、いとも容易く制御しきる雪華に僅かながら芽生える嫉妬の感情。
かつて束がリアクターだった【知りたがる山羊】のスフィア、そのアクトによりベリアルが発動させたはずの斥力が霧散する。
あれほど千冬達が、先ほどの雪華が苦戦を強いられたはずのベリアルが瞬く間に胴を貫かれ爆発、開始から僅か60秒足らずで撃破される。
「ハァ!?一体何が起きたのサ!」
「嘘だろう・・・?まるで何の障害もなかったかのように撃墜するとは・・・」
千冬は信じられないものを見たように、そしてアリーシャは思わず立ち上がりデスクに手を突きモニターを覗き込む。真耶はポカンとした表情で「え?え?」と呟いている。
【知りたがる山羊】のアクトによる斥力場の無効化、それがどれほどの意味を持つ効果なのか、一人だけ思い至る千冬の背中を冷や汗が伝う。
「(こんなものをIS同士の戦いで使用されればシールドバリアや絶対防御など紙きれ程の効果も無くなるのではないのか・・・?)」
ベリアルを撃破したジェニオンが上方に存在するシナンジュに向かって方向転換する。
シナンジュはすぐさまブースターを点火し最高速に至る。青い軌跡を描きながら変幻自在の立ち回りを見せる深紅の美しい機体、まさに赤い彗星と呼ぶに相応しいそのままの速度から、正確無比な射撃を繰り出してジェニオンの機先を制する。
「だけどさすがフロンタル、僕より数段パイロットとして優秀だね。実際に彼の戦闘を見るのは初めてだけど、これほどまでとは・・・」
機体性能自体はベリアルと比較しても遜色は無いが、ベリアルよりさらに上というわけではないはずのシナンジュで、これほどジェニオンを寄せ付けない立ち回りを見せる。
純粋なパイロットとしての卓越した技量とシャア・アズナブルのクローン、つまり強化人間としての優れた直感でカバーしていると言える。
「ミスリルで会った少女、フル・フロンタルと言ったか?出会ったときに奇妙なプレッシャーを感じたが、彼女は何者なのだ?先ほどからとんでもない速度で動きながら正確な射撃を繰り返しているが。・・な、なんだあの不自然なまでの急加速は・・・!・・な!?デブリを足場にしているのか!?」
「
驚愕の表情を浮かべる千冬を他所にピントのずれた所に反応するアリーシャ、性格的に真逆のような二人だが、実は外は冷静だが中身は熱い千冬と、外は熱いが中身は冷静なアリーシャはある意味似た者同士、そんな二人は言葉を交わさずとも意思の疎通が出来るほどには信頼関係が築けている。
お互いモニターに視線を釘付けにし、このハイレベルな戦いを、どんな些細な変化すらも見落とさないよう一心不乱に観察する。
全身にスラスターが搭載されたシナンジュ自体凄まじい加速性能を誇るMSだが、パイロットがその膨大な負荷に耐えられないなど、まさに暴れ馬と呼ぶにふさわしい。そもそも人知を超えた存在が乗ることを前提に設計されたとしか言えないこの機体、そんなものを十全に扱うパイロットなどフロンタル以外に存在しない。
ジェニオンは全ての射撃を回避しているが、まったく距離を詰めることが出来ていないのだ。そんな状況となっては今回の戦闘で登場するミスリルの増援前に撃破することなどできるはずがない。
レイナはチラっと経過時間に目をやり、膠着状態に陥っている戦場に迫る新たな脅威を告げる。
「・・・そろそろ10分です。増援が・・・、来ました」
シナンジュとの鬼ごっこ、という表現では収まりきらない超越者同士のバトルに変化が訪れる。
別モニターに映る戦場ステータスに表示される敵機。
白と黒。洗練されたデザインのASが2機、白いほうは両手肘部分から展開している大口径のキャノン砲、そして黒いほうは日本刀に似たブレードを装備している。
《プラン1065 エリゴール》 それが両機の名称。搭乗者は白がサビーナ・レフニオ、そして黒がリー・ファウラー。
そしてもう1機、肩に2枚2対の大型バインダーを装備した鮮やかなグリーンカラーのMS。マリーダ・クルス搭乗機である《クシャトリヤ》。
これで1対4、依然としてジェニオンはシナンジュを撃破できていない。
だがレイナはそれでも雪華の勝利は疑っていない。かつて神と呼ばれた存在をたった4機で打倒できるのなら、前世であれほどの絶望を味わう事などなかったのだから。
「雪華にとってマリーダは戦いにくいかもしれないけど、ね」
side 雪華
「さすが赤い彗星!単純な追いかけっこじゃどうしようもないですね・・・!」
先ほどから青い線を漆黒の宇宙空間に引きながら動き回る赤い彗星を追いかけていますが、一向に距離が縮まりませんね。
単純な推力の差だけはどうしようもない、搦め手でいかないと・・・。
でも、あれ?そろそろ・・・。
「10分経過するんですね・・・、何が来るか分かりませんけれど、あの手でいきますか!」
ホログラムウィンドウに警告メッセージが表示される。
敵正反応、数は3。
「プラン1065 エリゴール・・・、サビーナと・・・リー・ファウラー。それにクシャトリヤ、相手はマリーダお姉ちゃん・・・ですか」
サビーナとファウラーは前世ではZ-BLUE隊の敵だったので思うところは無いのですが、マリーダお姉ちゃんは・・・。
「うう、やりにくいなあ・・・。けどやるしかないのかぁ」
お姉ちゃん、ごめんね?これ、シミュレーターだから。
「ともかく、まずは合流させないとですね」
左右から挟み込むように2機のエリゴールが加速し、距離を詰める。
左のサビーナ機は中距離砲撃型、そして右のファウラー機は近接のスペシャリスト。サビーナはともかくファウラーは織斑先生に匹敵か、ひょっとしたらそれ以上の剣の使い手です。
「クシャトリヤは背後に・・・。これで四方を囲まれましたがここは宇宙空間、360度どこにでもスペースは存在しますよ」
サビーナが一撃でASを屠れる威力の武装、GAU-8ガトリングキャノンによる弾幕を張りながらアイススケートを滑るように滑らかな機動で距離を保つ、それを回避しつつ牽制のためパイクを撃ち込む。反対方向のファウラーの接近戦が怖いのでパニッシャーによる弾幕で足止めし、前後の2機に意識を集中させる。
すぐに前方からは多数のビーム、そして後方からメガ粒子砲による膨大なエネルギーの奔流を感じ取る。ギリギリで回避しつつ注意深く観察する。
しかしまだ、確実に仕留めるには距離が足りない。
「ファンネル確認、それとシナンジュが急接近・・・。ファウラーは様子見かな?じゃあ仕込みを開始しますか」
せっせと3方向からの弾幕を回避しながら牽制を繰り返し、来るべきタイミングに向けて神経を研ぎ澄ます。
すると意識の外側である死角からクシャトリヤに搭載されたファンネルが牙を剥く。
4つのバインダーに搭載されたソレは6基ずつの計24基という、BT兵器適正が高いセシリアでも真っ青な数。
これだけのファンネルを同時に、しかも正確に操作しきるマリーダお姉ちゃんはさすがの一言ですね。
「BT兵器だと!?なんだあの数は・・・!」
千冬が驚愕の声を上げる。無関心を装う箒ですら引き攣った表情を浮かべモニターに釘付けになる。
BT兵器は高度な並列思考が要求される超上級者向けの兵装だ。実際イギリスでは試作機であるブルー・ティアーズに関してはセシリアというパイロットが居るのだが、2号機サイレント・ゼフィルス、3号機ダイヴ・トゥ・ブルーは未だパイロットが決まらず選定に四苦八苦する有様。
しかし平行世界ではビット、あるいはファンネルやドラグーンというものは割とメジャーな兵装と言える。
人類の活動範囲が地球だけにとどまらず、宇宙に進出したことによる進化の産物。
ニュータイプと呼ばれる者達や、それを模した強化人間、さらにはコーディネーターやイノベイターという人種を産み出したことで、さらなるステージへと上り詰める機動兵器の質の向上が理由だ。
だがこの世界でBT兵器というものはナンセンス扱いされる程度にマイナーな兵装だ。理由は先ほど挙げたとおりだが前提が違う。
IS自身が女性にしか扱えないという大前提のもとに、高いIS適正、さらに高いBT適正という
これではセシリア以外の人材が居ないのも無理はない。
それほど珍しい兵装扱いのこの世界で、24基ものファンネルを自在に操るマリーダの技量に度肝を抜かれる教師陣。しかし画面の中の雪華はそれを当たり前のように回避し、グレイヴで斬り払っている。
「なんですかこれ・・・、私はさっきから何を見せられているんですか・・・?由良川さんて、何者なんですか・・・?」
雪華の事を聞いているはずの真耶でさえ思考を放棄し、只々モニターを眺めるだけとなっている。
「NT能力に加えて【夢見る双魚】のアクト、正確な未来予測による最善の選択か。凄まじいね」
レイナが束のスキルカウンターを見ながら理由を説明する、しかしもはや超人の領域に突入したバトルは、千冬ですら未来予測したところで反応できるのか?との疑問しか浮かばない。
「増援から3分が経過、あと2分で再び増援だ。さて、雪華はどうするかな?」
「さすがに何機か減らしておかないと次は詰みそうだね~。今でもかなりギリギリに見えるよ?」
徐々に包囲が狭まりジェニオンの回避運動に制限が掛かり始める。
目まぐるしく攻守が入れ替わるが多勢に無勢、しかもジェニオンに手数で攻める兵装は無いため包囲から抜けることも出来ないようだ。
クシャトリヤのファンネルと胸部Iフィールド発生器を利用した拡散メガ粒子砲により逃げ道を完全に塞がれ、近距離まで接近し格闘戦を仕掛けていたシナンジュはビーサーベルから手を離し、瞬時に展開したビームバズーカをゼロ距離から撃つ。
それを身を捻るようにギリギリで回避したジェニオン、だが均衡が崩れたその一瞬の隙を見逃さず爆発的な加速でファウラー機が突っ込む。
3機しか存在しなかった特別なASであるエリゴール、そのΛDを纏った刀身が淡く光り、居合いのようにジェニオンが両断され翡翠色の光の粒子が溢れ爆発する。
ハイパーセンサーでも捉えられない達人による斬撃。まさに電光石火ともいえる、ほんの一瞬の出来事だった。
「・・・!撃墜され・・・・・・え?」
箒はその一瞬の出来事に瞠目するも、目に映る光景に理解が及ばない。
ジェニオンは確かに今斬られたはず、しかし翡翠色の光の粒子が収束し、両断され爆発した機体はなぜかフロンタルが駆るシナンジュだった。
「今のは!?・・・【偽りの黒羊】!全員の認識を『騙した』!?」
偽りの黒羊の真骨頂ともいえる事象制御、極めれば目の前にある現実すら偽ることが出来るという究極のスフィア・アクト。
ジェニオンだと認識して両断したのはシナンジュだったが、いつの間に入れ替わっていたのか誰にも分からない。それほど自然に、なんの違和感もなく受け入れていたのだ。
雪華を除くシミュレーター内の全員が、誤認され機体を両断されたシナンジュのパイロットであるフル・フロンタルでさえも。
「偽りの・・・、なんの違和感もなく全てを騙すなど、本当に出来るというのか・・・・」
モニターの中の雪華は息を切らして包囲網を離脱する、すでにSEは半分を切りパイロットの疲労もかなりのものなのだろう。
それでもまだ目の光は消えていない、一瞬の油断も慢心も存在しない強い目だ。
これで残りは3機、しかし無情にも時間は経過して新たな増援が戦場に現れる。
《ギャラハッド》、《アビスガンダム》、《カオスガンダム》、《ラピエサージュ》、そして《ブレイヴ》の5機。
「だけどスフィア頼みの戦術はいつまで通用するかな?特にギャラハッドやラピエサージュ、『ビスマルク』達は強いからね」
今までのMSやASとは違う機体、《
KMFとはレアメタル《サクラダイト》を使った機動兵器であるため、本来ならこの世界では作ることが出来ない機体だ。しかしこの世界を構築する因子《ズフィルード・クリスタル》によって搭乗者の記憶からKMFに進化する可能性は捨てきれない。
円卓の騎士の一人、ギャラハッドの名前を冠するこの機体はMSより小型なAS、それよりさらに小型なISと同じ程度のサイズの機動兵器。当然だが使われている全ての技術はこの世界にとってオーバーテクノロジー。ISを凌駕する機動性と柔軟性、そしてMSに匹敵する火力に両腕に搭載されたブレイズ・ルミナスによる鉄壁の防御。まさに『ナイトオブワン』の名に恥じない驚異的な戦闘力を持つ機体。
加えてパイロットである『ビスマルク・ヴァルトシュタイン』の技量。
リー・ファウラーに匹敵する剣の腕、そして極めて高いKMFの操縦技術、さらに【極近未来予測】のギアスによって死角が無い。
ギャラハッド1機でも凄まじい戦闘力を有するというのにもう1機、《ラピエサージュ》の存在も大きい。
アサルト・ドラグーンと呼ばれるマン・マシンインターフェースを搭載された航空機から進化した機動兵器。
その元はアシュセイヴァーを改修した機体ではあるが、ATX計画の様々な機体のデータが流用されており、元の機体の名残はほとんど見られない。
元々の機体の2倍以上の機体重量と装甲の厚さ、それでいて極限まで突き詰められた機動性と運動性を持ち、
ラピエサージュの意味はフランス語で《つぎはぎ》という、そのままの意味の魔改造機。
このシミュレーターに現れたラピエサージュは《ゲイム・システム》が搭載されている機体なので、パイロットである『オウカ・ナギサ』の持つ天才的な技量が増幅され、無類の強さを発揮する。
こちらもただの1機で戦況を覆すほどの機体、そんなものが2機同時に襲い掛かる・・・。
「僕だったらもうこの状況を自力で覆すのは無理だね。ただでさえ1対8、しかも正真正銘の化け物が2機、ある意味化け物が1機混ざってるんだ、逃げるが勝ちだよ」
レイナは自嘲気味に呟く。隣の束は冷や汗を垂らしながら増援機のデータを読んでいる。
雪華が使用したスフィア・アクトは3種類、事象を制御するこの御業は膨大な次元力を必要とし、決して乱発することが出来ないものだ。それを立て続けに3回、通常のリアクターであればすでに次元力が枯渇して廃人になりかねないほどだ。
いくら黒い太陽によって次元力が無尽蔵に供給される体質とはいえ、疲労と無縁ではないのだから。
「なあにこれえ・・・、ジェニオンの単一仕様能力が表示されてるよ?《いがみ合う双子》?スフィアと同じ名前だね、どういうこと?」
「!・・・なるほど、ついに「枷」を外すのか」
枷、という言葉に千冬達は緊張が走る。
まだ見ぬ神の領域、その封印が解かれようとしている・・・。
広大な宇宙空間を全速力で逃走しながら雪華はジェニオンに搭載されたTS-DEMONを操作していく。
背後から凄まじい速度で追いすがるブレイヴとギャラハッドの2機、少し遅れてラピエサージュ、散開して離れた場所にクシャトリヤ、2機のエリゴール、カオスとアビスの5機。
追い付かれたら終わる、雪華はひしひしと敗北の予感を感じ取っている。
ギャラハッドは射撃武器が無いため追い付かれなければ大丈夫、しかしグラハムが操縦するブレイヴは様々な射撃武器を搭載し、
立て続けに3つのスフィア・アクトを使った雪華は疲労の色が濃く、そしてミスリルの戦力はまだまだ尽きることが無い。
むしろまだ「先遣隊」としか言えないほどの層の厚さ、もはやこれ以上のリスクは取ることができない。
「スフィアをセカンドステージへ、
TS-DEMON GLITTER ARMAMENT INFINITY MODE APPROVED
スフィアを覚醒させISとしてのジェニオンのリミッターを1段階解除する。するとひと際大きな翡翠色の光に包まれジェニオンに搭載されたTS-DEMONが本格的に稼働を開始する。
眼前のホログラム・ウィンドウに赤い文字列にて表示されるなぜか見慣れた光景。
スフィアに刻まれたリアクターたちの記憶の残滓。
「ヒビキさん、あなたが超えた希望と絶望・・・。今度は私も超えて見せます」
「見せてあげます!
箒の心の中:まだちーちゃんが最強だと疑っていないので素直になれない。
第四世代IS:紅椿がそうだけど、まだお預け。12巻で収拾つかなくなってるけどどうするんでしょうねえ・・・?
ジ・エーデル・ベルナル:正真正銘の天才。束とは違った意味で天災でもある。
ボン太くん:その性能は完全に引き出せればベリアルだってねじ伏せる。
雪華ドМ説:わざわざ痛い思いをするなんて・・・。
ミスリル:魔人の巣窟。
裸でサビーナと24時間・・・:〇〇〇〇しないと出れない部屋かな?
知りたがる山羊:スパロボではバリア無効化という表現がされる。
ベリアル:実はΛDが無いと歩兵でも破壊できる。
赤い彗星:よく通常の3倍の性能と言われるが、実際は3倍でもなんでもない。原作では「追われる機体との相対速度(通常比1.3倍前後)の認識による錯覚」と言われる。
プラン1065 エリゴール:ΛD搭載型AS、性能はガーンズバックを凌駕する。
クシャトリヤ:クィン・マンサの進化型MS、性能の向上と小型化が図られユニコーンガンダムを押さえつけるほどのパワーもある。
リー・ファウラー:スパロボVで顔グラが初公開された超イケメン。なぜレナードの部下なのか分からないほど常に紳士で礼儀正しく高潔な武人。クルーゾーを接近戦で圧倒するほどの技量をもつ剣士。性能の劣る機体で自身と渡り合うクルーゾーを賞賛し、敬意を払っていた。また、クルーゾーも彼のことを「最後の相手として悔いはない」と高く評価していた。
イギリスのBT2号機と3号機:なぜパイロットもいない機体を開発した!言え!
夢見る双魚:スパロボでは敵の運動性の低下という形で現れる。リアクターの未来を求める力の現れ。
偽りの黒羊:反則級なアクトがスパロボでも一杯だった。認識を騙し、シナンジュをジェニオンだと思い込んでいたらしい。
ギャラハッド:コードギアスに登場するKMF。劇中最強のビスマルクと相まって鬼のような強さを誇ったが、スザクの「生きる」というギアスにより潜在能力が開放され、エクスカリバーごと両断されて敗北する。
ラピエサージュ:フリッケライ・ガイストに似た雰囲気の機体、スパロボボスにありがちな何でもありの性能。
ビスマルク・ヴァルトシュタイン:平時は左目をピアスで封印してギアスを封印している。行動原理としては優しさや規範意識を第一とする高潔な武人。
オウカ・ナギサ:艶やかな長いストレートの黒髪、美巨乳、大和撫子でお姉さんという属性てんこ盛りのスパロボ屈指の人気キャラ。ゲイム・システムにより強化措置を受けすぎて人格崩壊するなどあまりの悲惨な扱いと、自我を取り戻した直後に犯人を巻き込んでの自爆による最後というあんまりな結末に全オウカ姉さんファンたちによる一斉抗議が殺到したらしい。おのれ寺田ゆるすまじ。
ある意味化け物:グラハム・エーカーはここだああああ!!
GAIモード:ジェニオンがいがみ合う双子のスフィアを覚醒させて初めて可能になる戦闘モード。「ガイ」は「GAI」と書き、「Glitter Armament Infinity(光り輝く無限の武器)」を略したもの。また「規格外」と「鎧」という意味も持たされている。