IS 《神器の少女》   作:ピヨえもん

4 / 45
独自解釈と独自理論を含みます


02 私の中のスフィア

〔20XX年 地球:日本・東京 由良川邸〕

 

side 雪華

 

 由良川家にお世話になって2週間が過ぎました。新年を迎え、入院していたセツコお母さんもしばらく車いす生活ではありますが退院し、改めて由良川家で私たち二人は生活させていただいています。

 お向かいにあるこれまた大邸宅の更識(さらしき)さんの二人の娘さんと、その従者の家系である布仏(のほとけ)さんの二人の娘さんとも仲良くさせていただいています。この世界はとても平和です、元居た世界とは比べ物にならないほど平和です。

 

 ISと呼ばれるパワードスーツがあるようですが、MS(モビルスーツ)PT(パーソナルトルーパー)AM(アーマードモジュール)のような機動兵器はありませんし、宇宙進出もまったく進んでいません、当然異星人の侵略などもないようです。

 

 そんな目下の脅威も存在しない平和な世界、平和な地球、平和な日本において今、私は絶体絶命のピンチに陥っているのです・・・

 

 すでに私は狭い空間に追い詰められ、たった一つの出口すらその外をそれぞれの得物を携えた狩人たちによって塞がれています。周囲に私の味方はいません・・・、きゅっと目を瞑り早鐘のように鳴る胸にそっと手を当てます。

 そこに狩人達が待ち構えている外から何度目かの降伏勧告が届きます、無駄な抵抗は止めて早く出てこいと・・・私に対抗する手段はなく、頼みの綱であるセツコお母さんは由良川邸でお留守番中。

 

 ついに進退窮まった私はやむなく降伏勧告に応じて出口を開けて外に出ました・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「か、かわいいいいいいいいいいいいい!!!!」」」」」

 

 

 黄色い歓声が沸き起こりました・・・

 

 

 パシャパシャとそれぞれの狩人が得物(カメラ)を私に向けてシャッターを切ります、様々な角度から何度も何度も・・・、いろんなポーズを要求され、狩人の一人が私に1mはあるような熊のヌイグルミを抱えさせます。そして再び狩人達は得物(カメラ)を構えてシャッターを切るのです・・・

 

 

 

「はうぅぅ・・・////お姫様みたいな格好、恥ずかしいよぉ・・・////」

 

 

 

 立て籠もっていた試着室から外に出た私は本日何度目かの抗議の声をあげます、ですが狩人達はまったく聞く耳を持ってくれません・・・ううぅ・・・。

 

「何言ってるの雪華!どの服もすっごく似合ってるよお!もうカワイイ!最高カワイイ!!」とは狩人A(シャルロットお姉ちゃん)

 

「ハァハァ・・・///こ、こんなにフリルとリボンをふんだんにあしらったドレスでさえ着こなすなんて・・恐ろしい子・・・///」と狩人B(刀奈お姉ちゃん)

 

「・・・猫耳付きヘッドドレスを付けて真っ赤な顔で照れる美幼女・・・これが・・・萌え・・・///」と狩人C(簪おねえちゃん)

 

「・・・・・パシャパシャパシャパシャ」無言で写真を撮り続ける真顔の狩人D(虚お姉ちゃん)

 

「うわ~~、かわいいよ~せっちゃ~ん♪とっても似合ってる~」と満面の笑みで私にぬいぐるみを持たせる狩人E(本音お姉ちゃん)

 

 ふわふわの大きなクッションの上に座らされて写真を撮られます、私はさっきから褒められすぎて頭がショート寸前です。茹でダコのようになっている顔を熊のぬいぐるみに押し付けてプルプルと震えてしまいます・・・。(もうやめて)と涙目になってお姉ちゃんたちに訴えますが聞き入ってくれそうにありません。

 

「このアングル・・・熊のぬいぐるみを抱きしめて涙目で見つめる美幼女・・・。ドレス姿でクッションに膝を立てて座って、隙間から見えるまぶしい純白のチラリズム・・・す、すばらしいわ////」

 

 なにやら不穏な一言が聞こえた気がするのです・・・ああ、刀奈お姉ちゃん・・鼻血が・・・、ふるふると口元に両手を当てて感涙している虚お姉ちゃん、あれ・・・この目線って・・・?

 

 

 あう////

 

 ささっと両膝を抱えてコロンと横になって抗議の目線を送ります、じと~。それすらも「ご褒美ありがとうございます!」とか言って取り合ってくれないなんて・・・

 

「ねぇねぇ~せっちゃんせっちゃん、次はこれ着てみよ~♪」

 

 そういって今度は本音お姉ちゃんが犬のキグルミ??を抱えて持ってきました。

 

「本音・・・ぐっじょぶ!」とかいってサムズアップを向ける簪お姉ちゃん

 

「犬か~、雪華は猫っぽいけど・・犬もいいかも~」と期待の眼差しのシャルロットお姉ちゃん

 

 私はまだまだこの賑やかで心が温まる宴からは逃れられない運命のようです///

 

 


 

〔同時刻 由良川邸〕

 

side セツコ

 

 

 今日、私はこの世界にやってきた事情を伝えられる範囲で由良川将秀さんと更識家当主の楯無さんに打ち明けました。いつまでも隠しきれるものではないですし、監視カメラの映像やザクの残骸という物的証拠があるのですから。

 

「以上が、私たちがこの世界へとやってきた理由です・・・信じられないかもしれませんが嘘は言っていません」

 

 連邦軍から逃れてきたこと、軌道エレベーター付近で攻撃を受けザクが大破したこと、突如現れたゲートによって無秩序な転移に巻き込まれたこと、ある程度は想定をしていたのでしょうか?楯無さんは大きくは驚いていないようです。

 

「おおよその流れはわかりました、あなた方が追われる理由については詳しくは話せませんか?」

 

「私たちが、というよりは・・・雪華が追われていると言ったほうが正しいですね。私はそれを手引きしたわけですが・・今では私も追われる立場でしょうね、対外的にはMIA扱いではないかと」

 

 その言葉を受け、信じられないといった表情で将秀さんが訊ねてきた。

 

「あの子に、雪華ちゃんに軍に追われるような理由があるんですか?」

 

 もっともな感想だ、あの子は外見はただの少女だから・・・でもその【ルーツ】を問題視されているのだ。

 

 

「その質問には・・・長くなりますがまず私について説明をしなければいけませんね・・・。私は幼いころに戦災孤児になりまして・・・、その後地球連邦軍に所属してパイロットの訓練を受けていました。私のいた世界の地球は宇宙進出が進んでいたのですが、地球球圏全体を支配する一つの軍隊を地球連邦軍と呼びます」

 

「それはまた・・・壮大な話ですね」

 

「簡単に説明すれば、です。もっと複雑で今では内部は腐敗しきっています。ともかくそこで私は成績が評価されまして、地球連邦軍戦技研究班に配属されました。それが私の身分証に書いてあった【グローリー・スター】です。グローリー・スターは文字通りの戦技研究、【バルゴラ】という機体を試験運用するのが目的でした。在籍していたのは私を含めて当時3名、すでに二人とも故人となっていますが隊長のデンゼル・ハマー、同期のトビー・ワトソンが僚機です。【バルゴラ】は全長20m程の機体で動力を【ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉】というものを使った高出力機です。兵装と呼べるものは一つだけ、【ガナリー・カーバー】と言う全領域対応汎用武装システムのみですが、これは設定スペックの倍以上の高出力をもって駆動するというコンセプトでしたが、従来の動力ではその性能を発揮できない状態にありました・・・」

 

「・・・それは、あなたが乗ってきたザクと呼ばれる機体と比べるとどれほどの性能なのでしょうか?」

 

「そうですね・・・単純に性能だけで比較すればその差は歴然です。ザクはMS開発の黎明期を抜け出した世代の名機と呼ばれるものですが、そのものはあくまでも旧型です。特に私が乗ってきたものは本来の姿ではなく運搬作業用にダウングレードされたものですので・・・対してバルゴラはジェネレーター出力によって性能が大幅に変動します。あくまで叩き台の試験機の域を出ないものだったので、機体性能自体はその世代では特筆すべきものではなかったと思います」

 

 そう、ザクはよい機体と言えるものですがやはりバルゴラが運用された当時においてはすでに骨董品扱い・・・。特にバルゴラ・グローリーの段階なってしまうとVWFS(V Wing Flight System)とカーバーに搭載されたスフィアの影響もあって別次元のものですから。

 

「それでその後、私の機体の大幅改装とカーバーを運用するための動力として【悲しみの乙女】のスフィアを搭載したものが【バルゴラ・グローリー】と言います。これはスフィアという無尽蔵のエネルギーを生み出す規格外の動力源を運用しているために、試験機バルゴラとはもはや別格といってもいい性能差となっています。おそらく、この時点でこの世界にあるISに正面から挑んで一方的に蹂躙できるほどのものだと思います」

 

 2人は絶句している、当然だ。自分たちの住んでいる世界の兵器の常識を覆したと言われるIS、そのISを真っ向から蹂躙できる機体が別世界とはいえ存在するということ・・・

 

「そしてそれはごく一部です、もっと上位の機体も存在しますし、ほかの世界にも様々な強力な機体があります。私の愛機であるバルゴラもその後さらに改装を受けていますので。そして雪華が狙われる理由なのですが、それはあの子がスフィアを魂に宿しているからです」

 

「なっ!?魂に宿すとは一体・・・それに貴女の言葉を借りるならそのスフィアというものは動力源だと・・・!」

 

「スフィアは全部で12個ありました、かつて至高神ソルと呼ばれる人造の神の心が自我を持ち、自壊したために多元世界に散った黄道十二星座の名を持つ心の欠片に分類される神器です。それぞれ【偽りの黒羊】【欲深な金牛】【いがみあう双子】【沈黙の巨蟹】【傷だらけの獅子】【悲しみの乙女】【揺れる天秤】【怨嗟の魔蠍】【立ち上がる射手】【知りたがる山羊】【尽きぬ水瓶】【夢見る双魚】、スフィアはそれぞれの感情を司ります、そしてそれぞれが事象を制御できるのです。連邦軍は雪華自身を超兵器として扱うためにあの子を捕獲しようとしたのです、あの子を制御できれば全宇宙を手中に収めたも同じことですから・・・」

 

 もはや口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子です、しかしこれは伝えなければいけません。あの子のためにも、あの子が利用されないようにするためにも・・・

 

「雪華はその人造神ソルが自壊した際に散った【記憶の欠片】【心の欠片】【コア】【残り火】【抜け殻】という5つの神器を魂の根幹にもっています。あの子はやろうと思えばこの銀河そのものを消すことだってできてしまうのです。私がこうやって生きているのもあの子のスフィアの力によるものです、おそらく【傷だらけの獅子】、痛みに耐える生命の力の伝播のおかげでしょう。たしかに超常を制御する異能をもった子です、ですがあの子は誰が何と言おうと人間です。皆さんと同じ、喜怒哀楽をもった一人の女の子です・・・どうか、あの子を守ってあげてください。あの子を再び人造の神などにしないでください、お願いします」

 

 私は頭を下げる、車椅子に乗り背中の傷のこともあるので首から上しか動かせないのがもどかしい。今の私ではあの子を守ることができない・・・あの子を連れて逃げることもできない。雪華が笑って過ごせるなら、私は元の世界に戻れなくても構わない。

 

 

「雪華ちゃんは、とても良い子ですね。私はあの子が大好きだ。妻のリタも宝物が二人に増えたととても喜んでいる・・・。息子の将彰は今まで以上に親馬鹿だし、クリスも毎日が楽しそうだ。なによりシャルロットが生き生きしている・・・、雪華ちゃんは我が家にとって神様が授けてくださった天使です。セツコさん、どうか顔を上げてください。あなたが気に病むことなど何もない。楯無君、どうかあの子のことを私たちに任せてくれないかね?」

 

「そうですね、実はうちの娘たちも雪華ちゃんにベタ惚れでしてね。布仏の子たちも同じですよ、あの子たちは今日も張り切って出かけていきました。シャルロットちゃんとも仲良くさせて頂いてますから、お互いに良い関係を築けているようで私としても喜んでいるんですよ。今後とも是非うちの子たちをよろしくお願いします由良川さん」

 

 私は驚いた、あの子をちゃんと見てくれている人がこんなにもいるのだと。

 

「ありがとう・・・ございます・・・。どうかこれからも、雪華をよろしくお願いします」

 

 あふれる涙を拭って顔を上げる、私の心は晴れやかだ。ああ、トライア博士・・・あの子は、雪華はとても良い子に育っています。

 

 

 

 

 

 

 

 




MS:モビルスーツ、ガンダムにでてくる機動兵器。15~20m

PT:パーソナルトルーパー、スパロボに出てくる機動兵器。アナハイム・エレクトロニクスのスパロボ版ともいえるマオ・インダストリーが開発。戦車から進化したロボット

AM:アーマードモジュール、スパロボオリジナル人物の天才科学者ビアン・ゾルダーク博士が異星人の技術を組み込み開発した機動兵器、テスラ・ドライブというPICの類似品を搭載している。キサラギ重工ならぬイスルギ重工が開発している。PTとは違い航空機から進化したロボットといえる

狩人たち:雪華大好きお姉ちゃん部隊。日々雪華に可愛い服を着せてファッションショーをさせることが生きがい、尚、拒否権はない。

ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉:ガンダムに出てくるミノフスキー粒子の生みの親であるミノフスキー博士の名前をとったもの。MSの動力はだいたいコレ。

ガナリー・カーバー:それ一本で近接から射撃、実弾からエネルギー弾までなんでもござれな兵装。バルゴラの主兵装で命綱、バルゴラ本体にほど近いサイズの巨大な武器。

デンゼル・ハマー:通称チーフ、スキンヘッドのイカしたおっさん(34歳)上司にするとすごく理想的な人。後にアサキムに殺されてしまう。

トビー・ワトソン:通称トビー、金髪で陽気な22歳のお兄さん。セツコが惚れていたがチーフの弔い合戦でアサキムに挑み返り討ちに会い死亡する。

VWFS:V Wing Flight System、通常飛行を可能にした背部ウイングユニット。凄まじい速度を叩き出す。

至高神ソル:神様の使いが考えたさいきょうのかみさま。自我を得て神様の使いの考えに絶望してしまったために鬱になって自滅した。

記憶の欠片:黒の英知のこと、まさに全知

心の欠片:スフィアのこと、強い意思で力を引き出す

コア:ヘリオースというスパロボZのラスボスが乗ってる機体、とても強い。

残り火:黒い太陽、本来の太陽よりずっと小型、次元力と言われる無尽蔵エネルギーの塊、心臓のパーツ

抜け殻:プロディキウム、黒い太陽の台座。体としての役割
    条件付きだが銀河を消滅させるだけの力がある。

喜怒哀楽:至高神Zとなった神の使い4人、喜びのアドヴェント、
     怒りのドクトリン、哀しみのサクリファイ、楽しみのテンプティ


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。