IS 《神器の少女》   作:ピヨえもん

41 / 45
久しぶりの更新です。
さすがスパロボとクロスすると登場人物が多くて駒の管理が大変です(お目目ぐるぐる)


38 学年別タッグトーナメント(前編)

   イギリス ロンドン郊外

 

 イギリスはロンドンにある五つ星ホテルの最上階、そのペントハウス型スイートルーム。豪華な内装と広々とした間取り、1泊や2泊する場所ではなく裕福な家族が中長期滞在するためのものだ。

 だがその豪華なスイートルーム内で明かり一つ付けず、ベッドで膝を抱えて座りロンドンの夜景をじっと見つめる人物がいる。

 

 人物の名はマリリン・キャット。

 

 かつて彼女は悪逆非道なんでもありの傭兵団ファイヤ・バグ隊の隊長であった。

 しかしそれは過去の話。解散し、自身が最後と決めた戦いで散り、幸か不幸かなぜか生まれ変わり、二度目の人生を開始することになって年月の経過した今はただのマリリン。自由気ままにやりたいことをやって生きる、そんな人生を歩んできた。

 

 あの日、あの戦闘で翡翠色の暖かい光に満ちた何かに触れるまでは・・・。

 

 

「暖かいスフィアの光・・・。あれは尽きぬ水瓶・・・」

 

 

 あの光、間違いない。何度も思う、今までなぜそんな大切なことを忘れていたのか。

 自分の命を捧げてでも助けたいと唯一願った大切な大切な人物の名前を・・・。

 

 

「殿下・・・私は」

 

 

 ユーサー・インサラウム。聖インサラウム王国の正統継承者にして最後の聖王と呼ばれた偉大なる青年。

 彼と最初出会ったときは軽んじていた。温厚で思慮深く、思いやり溢れる人柄ながら気弱で情けない男。

 

 しかし彼のただ一人の腹心、ジェラウド・ガルス・バンテールの壮絶な最後を機に、激的に、まるで別人と言えるほどに変わった。

 あの時からだ、マリリンの心の中で彼に対して敬愛が芽生えたのは。

 

 誰かのために戦う、それは勝手気ままに生きてきたマリリンの人生で初めての事。

 誰かのために生きたい、そんな気持ちを抱いた相手も人生でユーサー唯一人。

 

 結果としてマリリンはユーサーの最後の盾として散っていった。

 そう、確かに自分はあのときあの戦いで命を失った・・・。それなのに・・・。

 

 

「マリリン、いるの?・・・明かりもつけないでどうしたの?」

 

 

 その時ペントハウスに侵入する人影があった。

 パチン、と部屋の電気のスイッチを入れ明かりをつける。美しく輝くような彼女の金髪が光を受けて艶やかに揺れる。

 

 部屋に入ってきた人物の名はスコール・ミューゼル。

 亡国機業の幹部で実働部隊『モノクローム・アバター』のトップだ。

 

 

「・・・ミューズちゃん」

 

 

 気だるげに視線だけ送り姿を確認するマリリン。

 マリリン自身は今となっては不本意だが、亡国機業の新興部隊である『ゴライクンル』に属している。本来ならばモノクローム・アバターのスコールとは行動を共にすることは無い。

 しかし今回の任務では、最近になって普段と様子の違うマリリンを心配したスコールが直談判して作戦期間中自分の手元に引き込んだ形だ。

 

 

「本当に最近おかしいわよアナタ。そんなに萎れちゃって、普段とまったく別人じゃない」

 

「・・・ミューズちゃんには関係ないと思うなー。マリリンちゃんだってたまにはアンニュイな気分になることだってあるよ」

 

「たまに、ねぇ。ゴライクンルの連中とも距離を置いてるって聞いたわよ?」

 

「それこそミューズちゃんには関係ないよ。元々あの連中はいけすかないし。」

 

 

 膝を立て、顔を伏せるマリリン。

 そっとそんな彼女に後ろから近づき両肩に手を添えるスコール。そのままゆっくりと彼女の肌を優しく撫でる。

 

 

「・・・ミューズちゃんはサ、ISって何だと思う?」

 

 

 されるがままの状態でスコールに問いかける。スコールは肩を撫でる手をそのままに僅かに思案した後にこう告げる。

 

 

「どうしたのいきなり?そうねぇ・・・私にとっては、だけど。ISは盤上を覆す大逆転ツール、かしら?」

 

「大逆転?」

 

 

 肩を撫でる手を止め左手を彼女の左腰に添えて自身の元に引き寄せるようにしてベッドに腰かけ長い脚を組む。

 スコールは優雅だ。ただベッドに腰かけただけの姿なのに妖艶で美しい。露出の高いドレス姿も良く似合い、彼女の気品を損なうことはない。

 

 

「そうね。10年前にISが発表されて世界がガラリと変わったわ。良くも悪くも今までの男尊女卑から正反対の女尊男卑へ、軍事力のほぼ全てをISに依存しそれを扱える女性が幅を利かせる。そして・・・」

 

 

 右手の親指、人差し指を使いくるり、と上下に反転させる。

 

 

「今度は今年現れた世界で唯一の男性IS操縦者の存在。今まで虐げられてきた男の、ただ一つの希望の芽でありジョーカー。世界中の研究者が彼がなぜISを動かせるのか、その謎を解明したいと躍起になっているわ。場合によっては再び世界は大逆転する可能性を秘めているわね」

 

「・・・織斑一夏がキーマンねぇ。私はハッキリいってあり得ないと思うけど?ミューズちゃんは可能性があると思う?」

 

「可能性が無い、とは言い切れないけれど・・・そうね、彼の交友関係を洗えばその理由もおのずと・・、それに彼、エムと違って例の計画の成功例だから。」

 

「ああ、そういえばあの子犬ちゃんのお兄さんだっけ?」

 

 

 例の計画、その内容を知る二人は一夏という存在を特別視しながらも、ISの謎を解明する鍵にはなり得ないとの認識を示す。

 

 

「マリリンにとってはどうなの?」

 

 

 自身の見解を述べたスコールは今度はマリリン自身に問う。彼女を引き寄せていた左手はいつのまにかマリリンの白い太腿をゆっくりと撫でている。

 

 

「私にとってのIS・・・。あの日までは唯の道具、自分のやりたいことをやるための・・・。でも」

 

「あの日?」

 

 

 スコールの左手に自身の手を添え動きを止める。俯いたマリリンの表情は見えないが、そこにスコールは何か強い決意を感じ取る。

 きゅっとスコールの左手を握りしめるマリリン。力はそれほど強く入れていないが拒絶の意思が確かにある。

 スコール・ミューゼルという女性は同性愛者だ。オータムという恋人がいるものの、彼女たちは恋多き人である。しかしスコールはマリリンのこともそれなりに気に入っているため無理に手籠めにするような行動は起こさない。

 

 

「私がIS学園を襲撃したあの日、あの子とやり合って・・・、あの光に包まれた時に思い出したの。私にとってのIS、私の『パールファング』は私を守るためのもの、そして・・・」

 

 

 顔を上げるマリリン、その瞳は強い意志を宿している。

 

 

私が(・・)守りたいものを守り抜くための力。命を投げうってでも助けたかった人との絆」

 

「マリリン・・・?」

 

 

 ふ、とマリリンの表情が柔らかくなる。普段の飄々として掴みどころのないヘラヘラ笑いとは違う、どこか悲し気な、それでいて優しい優しい微笑みだ。

 スコールはドキっとした。良くも悪くも彼女たちは自分に正直に自分のために生きている、そこに他者を思いやる気持ちを優先させることなどはない。スコールと強い絆で結ばれているはずのオータムとスコール自身を天秤にかけたとしても、はっきりと自分へ傾くのが確信できるくらいなのだ。

 今のマリリンの微笑み、その中に垣間見えた感情は『献身』だ。洞察力の鋭いスコールだが、この予想外の表情に自信が揺らぐ。

 

 

「ミューズちゃん。この世界はあなたが思っている以上に限界ギリギリ、すでに分水嶺に立たされている。IS神話を信じちゃダメ、今のISは所詮オモチャだよ。ゴライクンルの連中、特にあの駄狐・・・イラドーヤは絶対に信用しちゃダメ」

 

「どういう事?マリリン、話が見えないわ・・・?」

 

 

 マリリンはスコールの頬に手を添えてゆっくりと撫でる。優しい、慈しむような感触にスコールはくすぐったさを覚える。

 一体マリリンに何があったというのか?スコールは別人ともいえるほどに変貌した彼女の人格に些か不安を覚えるが、なぜか今のマリリンからは目を逸らしてはいけないという本能にも似た直感を感じている。

 

 

「この世界でISは最強、ISを動かせる女は特別な存在、ISを超える兵器など存在しない。そんなものは全てまやかし、思い込みだよ。間違えないで?今もう目の前まで迫ってるの、男だとか女だとか関係なしに戦火に巻き込まれる騒乱の時代が・・・」

 

「まやかし・・・、ISを過信するなってこと?貴女の口ぶりだとまるでIS以上の兵器が存在してるような、・・・まさか」

 

 

 ピタリ、とスコールの艶やかな唇にマリリンが人差し指を当てる。それ以上は口にしてはいけない、とでも言うように。

 すっと立ち上がりそのままスコールの頭を優しく抱き寄せるマリリン。先ほどとは逆の立場だ。

 

 外見上はスコールのほうが年上に見える、しかし彼女たちはどちらも外見年齢=実年齢ではない。意外にも二人は似た者同士だったりする。

 

 

「知ってるよ・・・。ずっと、ずっと守ってくれてたよね?組織の中で新参者の私を、正体不明の化け猫扱いだった私を、見えないところでずっと・・・。ありがとうミューズちゃん。今まで言えなかったけど感謝してるんだ」

 

「ばれてたのね、・・・ふふっ。でも別に感謝なんてしなくてもいいのよ、女尊男卑に傾いているとは言ってもあの組織の中では女である私たちへの風当たりが強いのは昔からだもの。それに貴女はすごく使える子だったからよ?私の下心からくるものだわ」

 

「それでもだよ」

 

 

 優しく抱きしめていた腕を下しスコールに背中を向ける。

 一歩、二歩とベッドから離れてバルコニーに移動する。煌びやかに輝く地上の夜景とゴシックロリータファッションのマリリンが一枚の絵画のように馴染む。

 マリリンは再びスコールに振り向き、今までの彼女であれば絶対に口にしないはずだった言葉を放つ。

 

 

「これから先、私は命を懸けてあなたたち(この星の人々)を守るよ。私のIS・・・、『パールファング』と『インサラウムの騎士』の誇りに誓って」

 


 

   IS学園アリーナ

 

 空中に浮かぶ白式は周囲をCGドローンに囲まれ全方位から攻撃を受ける。CGなので実際のダメージは無いが、それを換算すればすでにシールドエネルギーは尽きかけている程度には被弾を重ねている。

 使用されているCGドローンはレベル4。10段階なのでまだ中間に満たない難易度ではあるのだが、ドローンの数が多く、加えて射撃武器を持たない白式では数字以上の難しさとなって跳ね返ってくる。

 

 

「ハァッ!ハァッ!・・・くそっ!また失敗かよ!」

 

 

 白式を纏った一夏は先ほどから汗だくになりながらドローン相手に同じ動作を反復練習している。

 本日の授業は終わり、クラスメイトであるセシリアや別クラスの鈴、シャルロット、簪と共に2時間ぶっ続けの猛特訓を終えた後も一人アリーナに残り特訓を続けている。

 

 

「こんなんじゃダメだ、鈴の時は不意を突いたってこともあるけど初見だから通用しただけなんだ。山田先生やセシリアには完璧に読まれてるし、シャルロットや簪だって対処できてる」

 

 

 一夏と共に特訓をすることになって、セシリア達はお互いを名前で呼び合う仲にまでなった。ズブの初心者と言っても過言ではない一夏が、まがりなりにも中国の代表候補生である鈴と互角以上に渡り合えたのは彼女たちとの猛特訓のおかげだと言っても過言ではない。

 一夏は自身のIS『白式』がブレード一本という極端すぎる機体であることから、一撃離脱を確実に効率よく決められるように『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』を覚えさせられた。

 だが瞬時加速という技術は代表候補生クラスの操縦者でも使える者は半分に満たない高等技術だ、鈴との試合の時はぶっつけ本番で成功させたに過ぎず、まだまだ精度も低く挙動もギクシャクしている。

 

 

「どうしても瞬時加速に入るために一瞬動きが止まる・・・、射撃が得意な操縦者相手だとそこを狙い撃たれる。頭ではわかってるんだけどなぁ・・・」

 

 

 瞬時加速はスラスターから放出される推力を再び取り込み、都合2回分のエネルギーを一気に放出することによって爆発的な加速を生み出す技術。

 しかし放出されるはずだったエネルギーを取り込むということは、一度加速が途切れるということ。上級者にはその一瞬の隙を逃さず狙われ、カウンターを合わせられる。

 一夏はそれならと、瞬時加速しながら切り返しを取り入れればいいんじゃないかと提案するもあえなく却下されてしまった。

 

 瞬時加速中に方向転換するというのは操縦者に多大な負荷をかける、下手をすればG負荷に耐えれず骨折してしまう。それが却下された理由だ。

 

 

「セシリアの瞬時加速をお手本にと思ったけど、滑らかすぎてまったく参考にならないし、シャルロットや簪の場合はスラスター自体の構造が違いすぎて瞬時加速のやり方までまったく違うんだよなあ・・・。鈴は瞬時加速できねーし」

 

 

 加えてセシリアの説明は非常に細かく理論的で、どちらかといえば感覚派の一夏はその説明をかみ砕いても呑み込めない有様。それだけで頭がショートしてしまうかと思ったほどだ。

 しかし瞬時加速の習得は一夏が白式で戦うにあたって絶対にクリアしなければならない最低条件だ、これがなければそもそも白式での戦術は成り立たない。

 

 

「呼吸するくらい頭で考えなくても自然にできるようにならないと話にならねぇ、そのためには反復練習あるのみなんだが・・・」

 

 

 頭を押さえて唸る一夏だが、先ほどから居残り練習をしていても成長の実感が無さすぎる。録画した映像を見てもはっきりと分かるくらいぎこちなく、自分でもカウンターを合わせられそうなくらいバレバレな動き。鈴との試合で使った瞬時加速は、当事者の一夏が自分でやったとは思えないくらいいい動きだったというのに・・・。

 

 

「あっははは!なかなか煮詰まってるねーぇ♪」

 

 

 自身の成長の無さに嫌気がさして堂々巡りの思考に嵌まっていた一夏だったが、背後からの能天気な声にハッと我に返る。

 振り返れば一夏の視界には赤と白にカラーリングされた『疾風の再誕(ラファール・リヴァイヴ)』を纏った少女の姿。

 

 ツーサイドアップにした髪は燃えるような赤、そばかすが年齢を幼く見せるものの、勝気な性格をそのままに反映したかのような釣り気味で金色の両目。そしてピンクベースのISスーツから浮かび上がる小柄ながらも艶めかしい肢体が、少女から大人の女性へと移り変わる様を醸し出し美少女っぷりに拍車をかける。

 

 

「あー、ごめん。邪魔だったか?」

 

「ん~、今来たとこだから気にしなくてもいいよ。それより瞬時加速の練習してるみたいだけど芳しくないみたいね」

 

 

 赤毛の少女はシュンと一夏の元まで瞬時加速でたどり着く。一夏は思わず「うおっ!?」と言ってしまう程には滑らかな、それでいて静かな瞬時加速だ。

 

 

「すげっ、上手いな」

 

「機動力重視のラファールならこれくらい出来るのがフツーだって♪それにしてもキミ、下手ね!」

 

「うぐっ・・・」

 

 

 人懐っこい笑みを浮かべる赤毛の少女の口からズバリ「下手」と断言されるが、思い当たる節がありすぎる一夏はぐうの音も出ない。

 ジロジロと観察するように顔を覗き込む赤毛の少女に一夏はたじろぎ後ずさる。しかし赤毛の少女はおもむろにISを纏った一夏の手を取り自分の元へと引っ張る。

 

 

「え、ちょ・・・」

 

 

 つんのめるように前傾姿勢になった一夏は赤毛の少女に引かれるままふわり、と宙に浮かぶ。

 引っ張られるままに一瞬で加速し、気が付いたときにはアリーナ中央にたどり着いていた。

 

 

「あれ、いつの間に・・・?」

 

「気づいてなかったの?今瞬時加速で移動したんだよ」

 

「え!?まったく気が付かなかった、てか意識してなかったけど・・・」

 

 

 赤毛の少女があまりにも自然に加速していたため、手を引かれていた一夏も同じ速度で着いて行かざるを得なかった。しかしそれが功を奏したのか、頭で考える前に身体が反応していたのだ。

 繰り返し反復練習して覚えた動きは体にはしっかり染みついていたものの、順序立ててああしよう、こうしようと複雑考え慣れない機動パターンを組み立ててしまっていた。

 元々一夏は剣道をやっていた時から余計な事を考えず、無心で動く程良い結果が生まれていた。しかし慣れないIS学園という環境と、周囲の期待、そして織斑千冬の弟という立場が否応なく一夏を追い立ててしまっていた。

 そのせいで本来の勝負強さや思い切りの良さを含めた直感は鈍り、加えて自分と全くタイプの違うセシリア・オルコットや山田真耶という超一流の操縦者の動きを真似ようとした結果、いつのまにか型にはまってしまっていたのだ。

 

 

「そうそう!そんな感じ!うんうん、なかなかいいんじゃない?」

 

 

 赤毛の少女に誘われるままに瞬時加速を繰り返す。一夏は枷が外れたかのように自然に、そして無駄な動作が段々と削げ落ちていく。

 世界が変わった気がした。プレッシャーのあまり一夏はいつの間にか視野が狭まっていた。手を引いている赤毛の少女はまるで一夏とワルツを踊るかのように楽し気に動き回る。

 

 

「そうか、そういうことだったんだな・・・俺、何で今までこんなことにも気づけなかったんだろう」

 

 

 それから30分程経過しただろうか。瞬時加速を完全に習得した一夏は晴々とした表情で動きを止める。すでにその顔に不安の色は無くい。

 

 赤毛の少女は一夏の手を離し両手の装甲を部分解除する、そしてパチパチパチと拍手をした。

 悪戯っ子がイタズラに成功したようなニンマリとした笑みを浮かべながら、年相応かそれより幼い顔で得意げに・・・。

 

 

「おめでとう♪これでキミも立派なISマイスターだね!これだけ動けるようになればブレードオンリーなその機体でも十分戦えるようになるんじゃな~い?イチカ・オリムラ君!」

 

 

 二人は地上に降下し、アリーナ出口へと移動する。いつの間にかアリーナ内に他の人影は無く、食堂もすでに終了する時間になってしまっていた。

 ISを解除しタオルで汗を拭きとる。明らかなオーバーワークだったが今の一夏は充実感が満ちている、本音を言えば感覚を忘れないうちにまだまだ練習していたいくらいだった。

 しかし赤毛の少女はびしっと一夏に釘を刺す、「織斑先生が見回りに来るよ」と。

 

 効果は覿面だった。見つかったら説教だけでは済まない、と一夏はびびったようにブルリと震えそそくさとアリーナを後にする。

 そんな一夏の後ろからシャワーも浴びずに赤毛の少女が着いてきた。ひょっとして部屋が同じ方角なのだろうか、と一夏は考えた。

 しかし赤毛の少女はトテテと一夏の正面に回り込み、小柄な体躯を一夏の顔に目いっぱい近づけて覗き込んできた。少女特有の甘酸っぱいような汗の匂いと共に。

 

 

「ねぇねぇキミ。今度の学年別タッグトーナメントのパートナー決まってる?」

 

「え?いや、別にまだ決まってないけど・・・。それがどうかしたのか?」

 

「そっか♪じゃあさ、あたしとかどーお?タッグなら前衛後衛に役割分担が必要だし、支援型のあたしはきっと役に立つよ♪」

 

 

 悪戯っ子のような笑みを再び浮かべる赤毛の少女。

 一夏とてタッグを組む相手の候補を考えなかったわけではない、しかし優勝最有力候補のセシリアはイグニッションプランに出す機体の最終調整のためイギリスに一時帰国。シャルロットは簪と組み、鈴は一夏をライバル視していることもありクラスメイトのティナ・ハミルトンとタッグを組むらしい。

 ならば、と雪華やラウラに声を掛けたが二人は不参加だと言う。そして箒は今日の放課後一度も顔を見ていないために声をかける事もできなかった。

 

 

「うーん、箒に声かける前だけど・・・。まぁいいか!瞬時加速のお礼もまだだったしな!」

 

「決まりだね♪よろしくねイチカ!」

 

「ところで君の名前は?まだ教えてもらってなかったよな、そういえば」

 

 

 握手をする二人、ぶんぶんと上下に振り上機嫌の赤毛の少女は「あ、それもそうだ」と今更気付いたようだ。

 

 

「改めましてイチカ、あたしは3組のオーストラリア代表候補生。名前はネーナ。ネーナ・トリニティ!よろしくね、マイスター♪」

 

 




ファイヤ・バグ隊:かつてマリリンが率いていた何でもありの傭兵団。火の無いところに煙は立たないなら火をつけてしまえ、という無法者の集まり。

ユーサー:Z再世編の序盤はとにかく弱く、まともに戦う事もできないまま撤退しまくる。しかし覚醒した殿下は機体性能も相まってまさに王の名に恥じない圧倒的強さを誇る。

ジェラウド:聖インサラウム王国騎士団のナンバーワン、ナイトオブナイツ。専用機ディアムドを駆るイケオジ。礼節、教養、武芸、そのすべてに秀でた完璧な人物で王の信頼も厚い。気弱で臆病者なユーサーにとことん忠誠を尽くしたが、同じくスフィアに覚醒したクロウと戦い敗れる。ゲーム内ではまさに鬼神の如き強さで、最大改造したダブルオーや異能生存体が発動したキリコですら回避不能でワンパンされるという有様に阿鼻叫喚。

マリリン:ユーサーに対する恋心を描く二次創作が多く、ファンの間では揺らがないカップリングとなっている。

ミューズちゃん:ミューゼルという名前とヴィーナスのような美貌から名付けた。

雨×マリ:キマシタワー不発、無念。

エム:散々な扱い、報われる日は来るのか・・・?

瞬時加速:IS二次創作では一夏がこれを使えるかどうかで展開が全く変わってしまう重要なスキル。一夏アンチではほぼ覚えさせてもらえない。

ネーナ:ガンダム00に登場、トリニティ三兄妹の末っ子。CVは釘宮理恵。ビジュアルの良さと声から人気のあるキャラだが性格が非常に残忍で身勝手。あんまりにもあんまりな子。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。