IS 《神器の少女》   作:ピヨえもん

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05 第一回モンド・グロッソ

〔20XX年 夏 地球:日本 東京 由良川邸敷地内〕

 

 

side 雪華

 

 第一回モンド・グロッソが開幕し、日本の国家代表は【ブレードさん】こと、織斑千冬さんに決定しました。私はお姉ちゃん達と一緒にリビングのTVで観戦中です!すごい熱気ですよ!

 

「あれぇ・・・?織斑選手のISが打鉄じゃない?」

 

 シャロが疑問を口にします、確かに日本が公式採用している打鉄ではなくもっとシンプルな姿をしています、カラーも違いますし・・・。

 

「ひょっとして、専用機かしら?新規に開発したものを使っているのかも・・?」

 

 刀奈ちゃんの見立ては正しいかもしれません、私はアカシック・レコードに潜って織斑選手の使用しているISをサーチしていきます。

 

「・・・・【暮桜】?篠ノ之博士が織斑選手のために自ら製作した第一世代型?わざわざ制作して政府に送り付けたらしいですね、織斑選手の専用機はこれ以外は認めないって・・・」

 

 なんて我儘・・・しかもこれ、世代は第一ですけれど性能が世界で現在開発されているISを上回ってますよ・・・、単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)零落白夜(れいらくびゃくや)が使える?

 

「うわ・・・単一仕様能力がエネルギーを消滅させる刃・・って。なかなかにエグい性能だよこれ、しかも織斑選手のスタイルと完全に一致してるから接近されたら終わりだ~」

 

 思わずサーチで見つけた内容に声がでます、織斑選手の身体能力からなる驚異的な機動とそれを支えるISの性能、挙句の果てに一撃必殺ともいえる単一仕様能力の発現、篠ノ之博士って相当身内贔屓が過ぎますね。

 

「え、なにそれ・・単一仕様能力ってまだ世界中探したって発現してない理論上の物じゃなかったの??ていうか雪華はそんなことまでわかるの?」

 

 バレたのなら仕方がないです、このアカシック・レコードには世界の機密情報から隣の家の昨夜の食事内容まで全て載っていますので・・・。でも大事なのはそこじゃないんですよ、暮桜というISを篠ノ之博士が織斑選手のためだけに自ら作成したという現実。極端な人間嫌いで極一部の身内以外は路傍の石ころ程度の認識しか持たない篠ノ之博士にとって織斑千冬という人間は特別であるということなのです、そんな人を政府がぞんざいな扱いをしてみたとしましょう・・・簡単に想像できるはずです、地獄絵図が。それを回避するために日本政府はおそらくあの手この手で織斑選手を懐柔しにかかったことでしょう、涙なしには語れませんね。

 

「この専用機のせいでパワーバランスは一気に日本に傾いたわね、あの篠ノ之博士がわざわざ送り付けてきたISが普通であるはずがないもの・・・残りの試合は茶番になるかもしれない」

 

 刀奈ちゃんはすでに結果が分かったといった顔で試合を眺めます、その気持ち、わかります。

 

「・・・それでも可能性があるとしたら、イタリアの代表・・・同じ近接格闘型IS《テンペスタ》・・・、想定されている間合いとコンセプトが同じなら、あとは純粋な技量の勝負」

 

 かんちゃんはイタリア代表の【アリーシャ・ジョセスターフ】さんが唯一対抗できるのではないかと予想。独自の情報収集では選手の技量という1点において織斑選手とアリーシャ選手は二強といえる存在らしいです。

 

 


 

 モンド・グロッソは順調に試合を消化していき残るは決勝戦のみとなりました。かんちゃんの予想通りのカード、【織斑千冬】vs【アリーシャ・ジョセスターフ】。唯一予想と違ったのは、織斑選手は単一仕様能力である零落白夜をただの一度も使用せずに勝ち上がっていったこと。バリアを切り裂く刃というのはIS相手には絶対的な威力を発揮すると同時に、SBと絶対防御に守られたISというのは第二世代以降極端に装甲の概念を削っていったため、バリアを斬り裂く刃が直接生身の体に当たれば操縦者はひとたまりもないと言えます・・・。それを理解しきっているからなのか、使用する必要性がないのか、あるいは両方なのか、織斑選手は近接ブレードの【雪片】だけで戦っています。

 

「さすがにアリーシャ選手相手にブレード一本は厳しいようだね、織斑選手が押されてるよ」

 

「テンペスタは近接格闘型だけれどスピードがすごいわね、それだけなら暮桜にまったく引けを取ってないわ」

 

 シャロと刀奈ちゃんはアリーシャ選手有利の状況に歯がゆい表情です。それにさっきからテンペスタの周囲を風が舞っているように見えます、これはおそらく・・・。

 

「単一仕様能力に目覚めてるのかもしれないです、テンペスタの周囲に風のエネルギーの流れが見えるから・・・そうなると近づくのも厳しくなりそう」

 

 さっきから暮桜が近づこうとするたびに風に吹き飛ばされて思うように攻撃できていないのです。織斑選手もかなり厳しい表情をしていますし、アリーシャ選手だって余裕があるようには見えませんが自分の優位ははっきり自覚している様子です。このままだと・・・・。

 

「あれ、なに・・・?」

 

 TVの画面の中にはいつのまにかテンペスタの姿が増えていました。大きなエネルギーの塊を感じます・・・これは?

 

「分身ですね。おそらくテンペスタの単一仕様能力で生み出した物です、大きな力を感じるのであれに触れただけで大ダメージを受けますよ」

 

 画面の中で織斑選手は必至に回避を続けています。でも分が悪いのは変わらず、少しずつ追い詰められている様子。

 

 そんなピンチの中、織斑選手は何かの覚悟を決めたかのような表情で居合いの構えを取りました。凄まじい緊張感が画面越しに伝わってきます、ひょっとして・・・。

 

 


 

side 千冬

 

 私は今、絶体絶命のピンチというやつだ。敗色濃厚の現実に目の前が暗くなりそうな恐怖を味わっている。すでにSEは3割、暮桜の装甲は至る所が破損し、砕け、丈夫なISスーツすら傷がついている。私はアーリィに近づくことも儘ならず状況を打開できる策も無い。目の前にいる赤い髪の女は勝利を確信している様子でゆっくりと風の分身とともに私を追い詰めていく。

 

「ネェ、千冬。そろそろ終わりにしないかイ?私はあまりいたぶるのは趣味じゃないサ、それに千冬みたいな子はタイプだからサ、その綺麗なお肌に傷をつけたくないのサ////」

 

 ・・・待て、今この目の前の女は何を言った・・・?敗北の恐怖とは別に鳥肌が立ったのだが・・・。ごくりと喉が鳴る、アーリィはなぜか発情した猫のような色香を放っている。私たちは今モンド・グロッソ初優勝を賭けて真剣勝負をしているのでは?私は訝しんだ。

 

「あァ・・・いいネ、その顔。ゾクゾクするヨ・・・////」

 

 その意味を悟った瞬間、私の中で何かが弾けた

 

 【絶対に負けてやるものか!】と。

 

 

 

 

 私は枷を解く

 

 


 

side 雪華

 

 追い詰められている織斑選手の雰囲気が変わる。一瞬でテンペスタとの間合いを詰めた暮桜は眼前の分身を一刀に斬り伏せる。本来エネルギーの塊である風分身を実体剣で斬ることはできない、手にしている雪片は白いエネルギーを纏っている。

 

 零落白夜だ

 

 一瞬前まで勝利を確信していたアリーシャ選手は驚愕の表情を浮かべる、その時にはすでに織斑選手は懐にてブレードを振るっている。

 

 まさに一閃、駆け抜けた暮桜は零落白夜でテンペスタのSEを削り切る。あまりの逆転劇に会場は一瞬しん、と静まり返った。

 

 

 そして爆発するように沸きあがる大歓声、それが画面越しに伝播して私たちのいるリビングを包み込む。由良川家はお祭り騒ぎ、狂喜乱舞するお姉ちゃん達、そして私は大歓声が響くTVと歓喜に包まれるリビングで・・・

 

 

 

 なぜか脱がされてもみくちゃにされてキスの雨を降らされてぐったりするのでした////

 

 

 

 

 

 ・・・余談ですが、モンド・グロッソ決勝後のインタビューにて、イタリア代表のアリーシャ・ジョセスターフ選手が織斑千冬選手に対して公開プロポーズをして世間を沸かせたのはまた別の話。

 

 

 そしてお姉ちゃん達はISに興味を持ったのか自分たちもISに乗ってみたいと言い出し、それなら自分たちで作っちゃおう!と将秀おじいちゃんに掛け合った結果。

 

 なぜかお祖父ちゃんがセツコお母さんを代表にすでにISの会社を作っていて、そこで思う存分やりなさいとGoサインを出され3つのISコアを渡されていたという意味不明な出来事に遭遇して、身内贔屓が過ぎるのは何も篠ノ之博士だけに限った話ではないのだな~と戦慄することになるのでした

 

 

 




隣の家の昨夜の食事内容:そんなことに容量を使わないでほしい

テンペスタ:イタリアが生んだ傑作機、世界最速のISとの異名を持つ

アリーシャ:アリーシャ・ジョセスターフ、イタリア国家代表。燃えるような赤い髪をツインテールにして口にはキセルを加え、右目に眼帯の美人さん。胸元まで開けた気崩した着物にピンヒールというアレなファッションと年齢を考えないツインテールに謎な口調となかなかキャラが立っているはずなのに飼い猫のシャイニィしか印象に残らない

発情した猫のような色香:想像してみて

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