校庭で兼一と一子が対峙してるのを見て英雄は正直驚いていた。
「け、兼一殿!?、まさか一子殿と闘うことになるとは・・・」
「英雄様・・・」
英雄は一子を愛しており兼一の実力も知っていた、英雄はこれまで何度も一子にプロポーズしていたが一子本人が英雄を尊敬してはいるが英雄を恋人としては見られないとプロポーズを断り続けていた、そしてあずみも英雄の事を愛していた、だがとうの英雄はあずみとの絆を主従の絆としてしか見ておらず二人とも叶わぬ恋をしていた。
校庭では兼一と一子の決闘を見ようと風間ファミリーのメンバーが見物していた。
「どう思う?」
「ワン子には悪いけど今回は勝てないと思う、相手はモモ先輩を触れずに倒すぐらいだし」
「ふむ、だが犬も兼一殿と実力の差が違うのは百も承知だろ、恐らく犬は知りたいんだろう、自分のたどり着きたい場所の距離を」
「キャップ止めた方が良いんじゃ・・・」
「安心しろモロ、兼一さんは何か考えてるみたいだぜ」
「まあワン子が決めたことだからな俺様たちが口は出せないだろ」
「源さんは止めなくても良いの?」
「あれはアイツの戦いだ俺の出る幕はねぇよ」
風間ファミリーは各々に一子の事を心配していた、そして翔一の予想通り兼一はあることを考えて一子の決闘を受けていた。
「この決闘の見届け人はこのワシ川神鉄心が勤める、そしてこれは武器有りの決闘じゃ、色々な武器のレプリカを持ってきた、双方好きなものを選ぶとよい」
一子は自分の使う薙刀のレプリカを選び、兼一の武器は己の拳なので武器を選ぶのを拒否した、そして二人はある程度距離をとり何時でも闘えるように拳と武器を構えた。
(お姉さまがお爺様以外に負けた事はなかった、私も武人としてこの人に挑んでみたい、それに良い機会だし・・・)
(凄い闘志だ、才能がない僕と同じで血の滲む特訓をしてきたのがよく分かる)
「双方とも悔いのない戦いをするのじゃ、始め!!」
鉄心の合図と同時に動いたのは一子だった、兼一は一子の出方をうかがうため待ち構えた。
「一瞬十七撃!!」
(素早い攻撃だ、やはり一子さんはスピードを重視して闘うタイプだな)
一子の素早い連続蹴りが炸裂した、たいして兼一は腕をコロのように回して一子の攻撃を全て捌いていた、S組の教室では英雄が兼一と一子の戦いを見ていた。
「化勁か・・・」
「流石英雄様ご存じなのですね」
「我も中国拳法を学んでいるからな」
「化勁とは腕をコロのように回し相手の攻撃を反らし威力を無効化する中国拳法独自の技ですね」
ところ変わり校庭で見ている風間ファミリーのメンバーも一子の攻撃がいなされてる事に驚いていた。
「じゃあその化勁で一子の足技が無効化されてんのか?」
「うん、でもワン子の素早い足技を全部化勁で反らすなんて、普通はできない」
翔一の疑問に京が答えていると大和の拳が強く握られているのに京は気づいていた。
(大和、ワン子の事が心配なんだね)
とうの一子は全ての足技が無効化されると兼一から少し距離をとり薙刀を構えた。
(まさかあんな形で私の技を反らすなんて、お姉さまを倒したのは伊達じゃないわね、なら!!)
一子は薙刀を回しながら兼一に向かって突進した。
(なるほど薙刀を回し勢いをつけて攻撃する気か)
「川神流 大車輪!!」
一子は兼一の目の前まで近づくと回転の勢いを利用して斬り上げを放った。
「あまい!!」
兼一は一子の攻撃を見切り躱すだけではなく一子の腕を掴んだ。
「四方投げ!!」
兼一は腕を絡めて一子を投げ飛ばした、投げ飛ばされた一子は校舎に向かって飛ばされた。
(くっ!?大車輪でもダメなの?、でも諦めないわ!!)
一子は校舎にぶつかる寸前に薙刀の柄を校舎の壁に突き薙刀の棒の部分をバネのようにしならせた、一子はそのバネを利用し兼一に向かって再度突撃した。
(薙刀をそんな使い方するとは、でも突撃してくるのは想定通りだ!!)
兼一は構えを解かずに一子を待ち受けた。
(何かする気ね、でももう何があろうと止まれない)
「川神流 水穿ち!!」
一子は兼一に近づきながら薙刀を横に振りかぶった、そしてすれ違い様に兼一に向かって斬りつけた、だが兼一はまるで斬る場所が分かっていたかのように完璧に躱してみせた、そして兼一は一子が自分に飛び込む寸前に片足を引いて掌を一子のお腹の来る位置に突き出した。
「!?」
「退歩掌破」
一子は自分から兼一の掌に突っ込み自分で腹に掌底を入れてしまった、新島はそれを教室から見ていて少し違和感を覚えた。
(兼一の奴珍しいな女相手にマジになるなんて)
そしてとうの兼一は勝負が始まる前教室で一子の眼を見て流水制空圏を発動し一子の心を見ていた、そして兼一は一子があることを覚悟し兼一に勝負を挑んできていることを知っていた。
(本気で向かってくる人に手を抜くのは失礼だ)
(アタシには届かないの?・・・)
「・・・勝者白浜兼、!?」
一子が意識を手放したのを見た鉄心は兼一の名前を告げようとしたその時、一子はふらふらになりながらも立ち上がった、そしてそれを見ていたファミリー全員が一子に声援を贈った、そして教室にいた英雄も校庭に降り応援に加わった。
「頑張れーワン子!!」
「相手が達人だからって負けんなワン子!!」
「一子諦めんな!!」
「ワン子お前はこんなもんじゃないだろ!!」
「ワン子頑張って!!」
「こんなところで負けるな犬!!」
「頑張るのだ一子殿!!」
皆の声援が一子に届いたのか一子は立ち上がり何かを呟き始めた。
「ひ、光灯る街に背を向け、我が歩は果て無き荒野、奇跡もなく標もなく、ただ夜が広がるのみ、揺るぎない意志を糧にして、闇の旅を進んでいく、勇、往、邁、進!!」
(何かの詩かな始めて聞く、でも何故だろ力が込み上げてくるものがあるな)
川神魂を掲げ一子は闘志の炎を燃やし兼一を真っ直ぐ見据えた、兼一は少し一子から距離をとり拳を構えた。
(次の技で最後、全力の顎を食らわせてやるわ)
(一子さんのあの身体では次で終わりだな、一子さんを最低限のダメージで終わらせるにはあれしかないな)
「川神流 奥義 顎!!」
次の瞬間一子は全力で兼一に向かって突撃した、そして兼一の懐に入ると兼一に向かって素早い斬り上げ放った、兼一は流水状態でそれを躱すとすぐに薙刀の斬り落としが兼一を襲おうとした。
「白刃流し!!」
兼一は腕を捻りながら薙刀の棒の部分の側面に拳を捻り上げ薙刀を払った、本来の白刃流しはこのまま相手に拳を叩き込むが、兼一は拳を開いて掌底を一子の腹に当てた。
「浸透勁!!」
掌底が一子の腹に当たると衝撃が一子の身体を駆け巡り一子は倒れた。
(アタシじゃ届かなかった・・・)
「勝者白浜兼一!!」
鉄心は一子が意識を完全に手放したのを確認し勝者の名前を告げた、そして決闘が終わると風間ファミリーのメンバーは一子に近寄った。
「大丈夫かワン子!!」
「しっかりしろワン子!!」
「保健室に連れていこう」
一子は保健室に連れていかれ兼一もそれについていった、そして保健室に一子が着き先生が身体を治療するために男性陣を外に出した。
「兼一さんやりすぎなんじゃ」
「大和君ごめん、でも一子さんの本気に答えたかったんだ」
「まあ今回ワン子の眼は何時も以上に本気だったからな」
「うん、僕たちも怖いくらいだったよね」
すると廊下を走る音が聞こえてきた、音のする方を見ると百代が走ってきた。
「ワン子は無事か!?」
「今中で治療してるよ」
大和の言葉に黙って頷くと百代は保健室に入っていった、そして少しの間沈黙が男性陣の中に流れた、すると保健室の先生から入室許可が出て兼一たちは中に入った、中に入ると一子はベットで寝息を立てていたそれを見た男性陣はホッとした。
「先生の話ではたいした怪我はしていないらしい、兼一さんが加減したからだろう」
「ねえ兼一さん」
「何、椎名さん?」
「貴方は確か女性に手を上げないって本には書いてあったけど何でワン子と戦ったの?」
「一子さんは大事なものをかけて勝負を挑んできた、その覚悟に真剣に向き合わないのは失礼だと思ったから受けたんだ」
「何だよその大事なものって?」
「それは・・・僕からは言えないよ風間君」
「う、ううん・・・」
そんな話をしていると一子が目を覚まし辺りを見回した。
「ここは保健室?、アタシ負けたのね・・・」
「ワン子良くやったよ、相手はモモ先輩を倒しちゃうような人なのに」
「それは関係ないわモロ、アタシは負けた、ただそれだけよ」
「どうしたんだ犬、いつものお前らしくないぞ?」
「そんな事ないわ、ねえ皆お願い兼一さんと話がしたいの」
「分かった、ほら皆教室に戻るぞ」
百代は一子の頼みを聞き皆を外に追い出した、そして兼一とすれ違い様に兼一にだけ聞こえるように妹を頼むと言い残した、兼一も頷いて答え保健室の中は兼一と一子だけになり、兼一は一子の隣にあった椅子に腰を掛けた。
「僕に話したいことがあるんだね一子さん」
「ええ、お姉さまから兼一さんの事を聞いて信じられなかったわ、あの強いお姉さまが一撃も当てられない人がいるなんて、でももしアタシがまぐれでも一撃当てられればまだ可能性はあると思ってた・・・」
「可能性?」
「アタシの夢は川神院の師範代になること師範代になってお姉さまを支える事が夢なの、でもアタシにはお姉さまと違って武術の才能はない、正直私を教えてるルー先生も何処かでアタシは師範代にはなれないと思ってる、でもお姉さまが一撃も当てられなかった兼一さんに一撃でも当たればまだ師範代になる可能性があると思ったの」
すると一子の目から大粒の涙が流れ出した、そして涙を流しながらも言葉を続けた。
「これでアタシの武術家としての道も終わってしまった」
兼一は一子の言葉を黙って聞いていた、そして一子の話が終わると今度は兼一が話し出した。
「一子さんの気持ちは良く分かります」
「え?」
「僕には六人の師匠たちがいるんだけど皆が口を揃えて言うことがあるんだ、何だか分かる?」
一子は首を横に降る、すると兼一は笑いながら話を続けた。
「僕には武術の才能はない」
「そんなに強いのに?」
「僕は昔いじめられっ子でね、高校時代にある人に会ってそれをきっかけに武術を始めたんだ、でも僕は一子さん以上に才能がなかったからね、人の何千倍もキツい修行をしなくちゃ達人にはなれなかった、僕の師匠の言った言葉があるんだけど、この世に才能のある人はたくさんいるけどその全ての人が大成するかと言えばそうじゃない、でも技を極めた達人に共通するものがひとつだけあるんだ」
「そ、それは何?」
「信念だよ、僕にはそれがあるから師匠たちは諦めずに僕を鍛えてくれた、良い師弟関係というのは弟子が師を信じ師が弟子を信じる、そして共に成長していくものだと僕は思う」
一子は兼一の話を聞いて正直羨ましかった、自分を信じそして自分も信じる事の出来る師がいることが。
「ところでほんとに良いの?」
「え?」
「武術家の夢を諦めても」
「・・・・・」
「僕は一子さんの中にも揺るぎない信念があると思うよ」
「アタシは・・・強くなりたい!!」
「一子さんどうだろう僕の弟子になってみない?」
「え?」
「本来なら僕から言うのは可笑しいんだけど、どうだろう?」
「アタシでも強くなれるかな・・・」
「それは一子さん次第だよ、それと自分の可能性を諦めちゃダメだ、諦めなければ百代さんにだって勝てるようになる」
「お姉さまに・・・」
兼一の言葉に一子は胸を打たれた、すると今まで元気の無かった一子が兼一の眼を見て答えた。
「アタシいつのまにかお姉さまには絶対敵わないと思ってた、だからお姉さまの横に立てないならすぐ近くにいれる師範代になろうと思ったの、でも出来ればアタシもお姉さまと同じ場所に立っていたい!!」
「じゃあ」
「よろしくお願いします師匠」
ここに新たな師弟が生まれた、そして保健室の外で壁にもたれながらその話を聞いているものが一人。
「やれやれ、才能の無いものどうし引き合うのかね?、まあ面白くなってきたけどな、ひゃはははは!!」
話を聞いていた新島はこれから起きる出来事を思い浮かべ笑いながら自分の教室に戻っていった。
兼一は女性を殴れないので今回は書くのにかなり勇気がいりました、でも一応殴ってはいないし一子も本気だったのでこれで大丈夫かなと思いました、次もバトルシーンです、しかし戦うのは兼一ではありません、それではまた十三話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。