保健室での兼一と一子のやりとりを聞いた新島はその後クラスに戻り授業を受けた、そして一日の授業が終わり放課後新島は帰りの支度を始めていた、すると新島の目の前に軍服を着た赤い髪の眼帯をつけた女性が立った。
「マルギッテエーベルバッハ、クリスティアーネフリードリヒと同時期に転入、転入理由は父親のフランクフリードリヒ中将とアンタがクリスが遠く離れた日本で暮らすのは心配だったため、着けている眼帯は目に疾患があるわけじゃなく自身の強さを抑えるハンデ、外せば戦場で恐れられた猟犬が顔を出す、因みに始めて日本に来た時川神百代とは対戦するなという命令を無視し一度川神百代と対戦、しかし眼帯を外しても敵わなかった、こんなところかな今のアンタのデータはマルギッテさんよ」
「そこまで調べているとは、やはり貴方は油断なりませんね」
「情報収集は俺様の得意分野でね、油断がならないならどうするんだい、まさか決闘とか」
「ええ、私が勝ったら学園から出ていってもらいます」
「悪いが俺様は利のない戦いはしない、それに俺自身も戦えないしな、だが」
「だが何です?」
「その勝負俺様の忠実な僕が相手をするのと、勝ったらアンタが俺様の言うことを聞いてくれるなら受けても良いぜ」
「良いでしょう、貴方の僕が勝てば言うことを聞きましょう」
「決まりだな、なら・・・」
新島は腕時計に眼を落とすと良い時間だと良いながらマルギッテを校庭に連れ出した。
「そろそろだな」
「何がですか?」
新島が空を指差すと学園の上空に一台のヘリがやって来た、そして次の瞬間誰かが飛び降りたのがマルギッテの眼には見えた。
「なっ!?」
驚いたマルギッテは落ちてくる人影を見つめていた、突然の飛び降りにも驚いたがマルギッテが一番驚いたのはその人物はパラシュートを着けてないことだった、程なくしてその人物は地面に落ちそして受け身を取りながら新島の前まで転がった。
「だ、大丈夫なんですか?」
「ん?コイツの事か?、この程度高さならコイツなら無傷で着地出来て当たり前だ、なあジークよ」
新島の言葉に倒れていたジークはむくりと起き上がり、そして新島に膝をついた。
「無論です、我が親愛なる魔王よ」
そしてジークは自分の身体についている砂を払いながら立ち上がった。
「ところで総督ご用はなんでしょう?」
「お前を呼んだ用とは別にまずはそこにいる奴と戦ってくれ」
「分かりました」
ジークはくるりとマルギッテの方を向きマルギッテに近寄った。
「私の名前は九弦院響、通称ジークフリートと申します、ジークと呼んでください」
「マルギッテエーベルバッハです」
「なるほど」
「何がなるほど何ですか?」
「お名前からしてドイツの方ですね、そして軍人、ですか」
「臆しましたか?」
「いえ、総督に刃向かうものは例え神であろうとも私が叩きのめします」
「面白い!!」
マルギッテは強者であるジークと戦えることにうち震えていた。
「そうだマルギッテよ、ジークはまだここの生徒じゃねぇからこれは決闘じゃない、だからこの勝負の見届け人は川神の先生じゃなく俺が勤める」
「構いません」
ジークとマルギッテは向かい合いマルギッテは自分の武器であるトンファーを構えた、ジークも自分の両腕を上げて独特の構えをとった。
「マルギッテさん、貴女との戦いで良いメロディが奏でられることを祈っています」
「私との戦いにそんな余裕は無いと知りなさい」
「それじゃあ行くぞ、始め!!」
新島の合図で最初に動いたのはマルギッテだった、マルギッテは両手のトンファーを振りかぶった。
「トンファークロス!!」
次の瞬間マルギッテは両手のトンファーでジークの首に十字の打撃を与えようとした。
「涅槃の遁走曲・縦!!」
「くっ!?」
トンファーの打撃をジークは受けたように見せかけて後ろにバク転をしながら躱した、そして躱しながらマルギッテの顎を蹴り上げ吹き飛ばした、飛ばされたマルギッテは顎を攻撃されたことにより脳が揺れふらふらと立ち上がった。
(くっ!?まさかあんなカウンター技を持っているとは、脳が揺れてるせいで平衡感覚が・・・)
「その状態ではもう何も出来ないでしょう、諦めなさいマルギッテさん」
「そう易々と諦めるわけにはいき、ません!」
マルギッテは不屈の闘志でジークに向かって連続でトンファーによる攻撃を繰り出した、しかし狙いの定まらない攻撃はジークに当たることはなかった。
(残念ですが彼女の音色もここまでですかね・・・!?)
ジークがマルギッテに見切りをつけようとしたその時、狙いの定まらない攻撃をしていたマルギッテが急に狙いが定まった一撃をジークに繰り出した、ジークはそれをバク転で躱しながらマルギッテから距離をとった。
(最後の一撃、今までの単調だった軍歌じゃなく、野性味溢れるロックに変わりました)
ジークがマルギッテを見るとマルギッテは左目の眼帯を外した、その目はまさしく獲物を捉えた猟犬のように鋭かった。
「やはり達人相手に眼帯を着けたままでは敵いませんね、しかしここからが私の本気だと知りなさい!!」
「なるほどこのロックこそが貴女の本質、という訳ですか、ならこのジークフリートもその本気に答えましょーう♪」
ジークとマルギッテはにらみ合いを始めた、最初に行動したのはマルギッテだった、さっきと同じようにトンファーのラッシュをジークに浴びせた、ただしさっきの攻撃と明らかに違うところがあった、それは狙いの定まらない攻撃ではなく一撃一撃が急所を狙っていからである、しかしジークはその攻撃も難なくいなしていた。
「トンファーキック!!」
マルギッテはラッシュの最後に回し蹴りを放った、すると今まで捌きに徹していたジークがマルギッテの蹴りを躱しながらマルギッテの足を掴んだ。
「行きますよー♪、コン・アレグレッツア!!(快活に)」
ジークはマルギッテの足を掴むとドリルのように回転した。
「涅槃の遁走曲!!」
ジークは遠心力を利用しマルギッテを投げ飛ばした、投げられたマルギッテは地面を転がりながら受け身をとった。
「野性味溢れるロック中々のメロディでした、しかしまだ粗いですね」
「ま、まだ私はこんなものではないと知りなさい!!」
マルギッテはふらふらと立ち上がりトンファーを構えた。
「Hasen Jagd」
マルギッテは両手のトンファーを回しながらジークに向かって突撃した、そしてすれ違い様にジークの急所に二撃与えた。
「やったか・・・ぐあ!?」
攻撃を終えたマルギッテがジークに振り返ると二つの衝撃がマルギッテを襲った。
(バ、バカな何故私にダメージが、まさかあの一瞬で私にカウンターを、しかも私が攻撃したところと同じ場所に当てるとは・・・)
「因果応報のマルチストレイン~♪」
流石のマルギッテもこれほどのダメージを受け倒れてしまった、新島がマルギッテに近寄り気絶をしたのを確認すると勝者の名前を上げた。
「勝者ジークフリート!!」
ジークはマルギッテを担ぎ上げると校舎に向かった、新島もニヤリと不敵な笑みを浮かべながら校舎に戻っていった、すると校舎の前に兼一と一子と額にバツ印のある小さな女の子が待っていた。
「ジークさん!!」
「おお、兼一氏お久しぶりですね」
「あの兼一さんこの人は?」
「ああ一子さん、紋白ちゃんこの人はジークフリートさん」
「凄い名前ね」
「ん?お前は九弦院の」
「おや、貴女は九鬼家のお嬢さん」
紋白とジークフリートは社交界などでたまに顔を会わせるので面識があった。
「ジークフリートさん、私は川神一子って言います」
「ジークフリートこと九弦院響と申します、ジークで結構です」
「ほんとにジークさんとは久しぶりですね」
「ええ、私はコンサートで各地を転々としていましたからね」
「やっぱり新島に呼ばれたんですか?」
「はい、総督に呼ばれればどこでも駆けつけるのがこのジークフリートです」
「ハハハ、変わらないなジークさんは」
兼一がジークと話していると紋白が兼一の袖を引いた。
「どうしたの紋白ちゃん」
「そろそろ我は帰る時間だ、今日は会えて楽しかったぞ兼一♪」
「また明日ね」
そう言うと突如ヒュームが現れて紋白と一緒に帰っていった。
「じゃあ兼一さん私も帰るわ、明日からの修行のことおじいさまたちに話さなきゃだし」
「うん、明日の朝川神院に迎えにいくからね」
「はい」
一子は元気一杯の返事で川神院に帰っていった、そして校庭には気絶したマルギッテと兼一とジークと新島のみになった。
「では私はこの方を保健室に連れていきます」
「俺様もいく、そうだ兼一今日の夜少し飲まねぇか?、これからのことをお前と相談してぇ、ジークも良いな?」
「私は構いませんよ」
「分かった、じゃあ僕が夜九鬼の本部まで迎えにいく」
新島たちと夜に会う約束をすると兼一も島津寮へと帰っていった、そしてジークとマルギッテの戦いを給水塔の上から見る影があった。
「兼一って人もあの帽子の人も外から来た達人は半端ないね、アタシも少し試してみようかな、それに闇の武術家にも興味があるしね」
その人物はそう言い残すと給水塔飛び降りて姿を消した。
こんな感じで終わらせました、因みに次回はジークとマルギッテが戦っているとき兼一はどうしていたかを書きます、本当はもっと早く紋白を出したかったのですが、作者の技量不足で遅くなってしまいました、それではまた十四話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。