次の日の朝兼一は寮の前に立て掛けられていた布にくるまれた棒状の物を抱えタイヤと地蔵を引きながら川神院を目指して走っていた。
程なくして川神院が見えてくると正門の前には一子が兼一を待ち構えていた。
「やあ一子さん、早いね」
「朝練だもの、ところで兼一さん何を持っているの?」
「これ?後で教えてあげるよ、さて手始めにタイヤ引きしようか」
「ええ、兼一さんが来る前もタイヤは引いてたから得意よ!」
「そうそりゃよかった、じゃあ」
兼一はタイヤ三本に地蔵を三体くくりつけ、それを一子に結んだ。
(うっ!?重い地蔵ね一体十キロ以上はあるわね、こんなのを兼一さんは六体も引いてきたの!?)
「どうしたの?」
「な、何でもないわ、で兼一さんこれで何処まで行くの?」
「そうだな、今回は始めての修行だから軽く流す感じでやろうか」
「じゃあ川原を走る感じ?」
「そうだね、じゃあ川原を」
(この地蔵の重さも考えたら三周ぐらいかしら)
「軽く十周行こうか」
「じゅ、十周!?」
「大丈夫、大丈夫僕が来る前にもやってたんなら軽いよ」
兼一はにこやかな顔で一子と共に川原を十周走った、走り終えて川神院に着くとスカッとした顔の兼一とは裏腹に一子はふらふらになっていた。
「一子さんちょっと」
「はぁ~い」
一子はふらふらになりながら兼一の方に行くと兼一は朝持っていた布にくるまれた棒状の物を一子に渡した。
「それを一子さんにあげる」
(少し重いわね何かしら?・・・・これは!?)
一子が巻かれていた布をとると中には薙刀が入っていた。
「兼一さんこれは?」
「一子さんの訓練用に僕の武器の師匠が作った特製の薙刀だよ」
一子は薙刀を振り回した、少し今使っている物より重いが振ることに支障はなく使いやすい物だった。
「いいわこれ」
「でしょ、それと僕が一子さんに修行をつけるにあたって二つ守ってほしい事があるんだ」
「な、何?」
「一つ、強くなることも大事だけど学生だから勉強もおんなじくらい大切だ、だから修行で疲れていても授業は寝ちゃダメだよ?、もし寝たらそこで僕は修行を止める」
「うーん一番キツい条件だわ、でも頑張ってみる!!」
「二つ、僕も僕の師匠も活人拳を掲げているんだ」
「人を生かす拳ね、川神院もそうだわ」
「でも武術家の中には人を殺す殺人拳を掲げる者もいる、どんなことがあっても活人拳を忘れちゃダメだよ?」
「分かったわ、私も自分の力を人殺しのためには絶対使わない」
「ならよかった、じゃあそろそろ僕は帰るよ」
「そろそろ朝御飯の時間ね、後で登校の時に会いましょう」
兼一と一子はその場で別れた、そして朝御飯を食べ川神大橋を昨日と同じ面子で登校していた、昨日と違うのはその中にジークが加わっていた事だろう、ジークは一通り自己紹介を済ませるとクリスが昨日のマルギッテの事を謝りだした。
「ジークさん昨日はマルさんがすまなかった」
「いえいえ、あの方の野性味溢れるロックまた聞きたいものです」
「マルさんも次は負けないと言っていたぞ」
「あの~ジークさん?」
「何でしょうモロさん」
「確か去年出たゲームのエンディング歌ってますよね?」
ジークは学校を卒業する前からプロの音楽家として活躍しており、この頃は更に有名になりゲームや他のメディアにもよく顔を出ている。
「良くご存じですね」
「僕CD持ってますから」
「それは嬉しいですね」
「今度CDにサインもらって良いですか?」
「構いませんよ」
モロとの話を終え、今度はジークが義経の方に近づいた。
「義経さん今朝偶然聴いてしまったのですが、貴女の笛の音を」
「聴かれていたのか!?義経は恥ずかしい///」
「素晴らしい音色でした、あの音色を聴き新しい曲のインスピレーションを得ました」
「ほ、本当か!?」
「どうでしょう、今度私のバイオリンとセッションしてみませんか?」
「是非!」
「これは楽しみが増えました」
ジークは義経と話していると隣で自転車を押している清楚の事が気になった。
(やはりこの方からは、我が魔王と同じ王の音色が聞こえています、まあ正体は名前からあの英雄でしょうからこの音色も当然なのですが、彼女の性格とは合いませんね)
「あの~何か私の顔についてますか」
「いえ、何でもありません、ジッと見てしまい申し訳ありません」
「い、いえ」
「皆ー!!」
「空から美少女の登場だ!」
そんな事を話していると後ろから一子がそして空から百代が突如現れた、そして百代と一子を加え学園に向かって歩いた。
「貴方がジークさんか、マルギッテ倒したそうですね」
「ええ、あの方との戦いは中々楽しめました」
「確か貴方は変則カウンターの使い手とか」
「ええ、貴女も挑んでみますか?」
「ええ今度是非!」
(なるほど、総督の言う通り少しバーサーカーに似ていますね)
そんな話をジークとしていた百代を尻目に風間ファミリーのメンバーは朝兼一との修行を終えたであろう一子に注目していた。
「一子修行はどうだ」
「うん、確かにキツいけどやっていけそうよ」
「そうか・・・」
「源さん心配だったんだな」
「うるせえ直江」
「俺もすげえ修行してみてぇな!!」
「俺様は勘弁してほしいな」
「同じく」
一子に色んな質問を投げつけている風間ファミリーのメンバーだった、それを兼一は後ろから見ており、大和は兼一に歩くペースを合わせて話しかけた。
「どんな修行を?」
「簡単なものだよ二十キロの地蔵三体がくくりつけてあるタイヤを引いて川原を十周するだけ」
「うわぁ~こりゃワン子授業中大変だな」
「いや大丈夫だよ」
「え?」
「運動した後疲れて眠くなるってことはまだ眠る体力が残ってるって事だから、その眠る体力も残さないようにすれば良いだけだから」
「じゃあそれを見越してその修行を?」
「うん、学生だからね授業中寝させるわけにはいかないでしょ」
そんな事を話しているうちに皆は学園に到着し、各々の教室に向かっていった、教室の決まっていないジークは新島が学長に頼みS組に入れる事にした。
次はとうとうお待ちかね闇の勢力が一人川神に現れます、それではまた十六話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。