教室に帰ると一子が兼一に修行をつけてもらおうと待っていた。
「やあ一子ちゃん待たせてごめんね」
「ううん、ところで兼一さん今日もロードワークかしら?」
「それなんだけど何処か広い所がないかな?、そろそろ巻藁を突いたりしてほしいんだけど」
「川神院は?」
「うーん、これからの修行は他の人に見られると誤解を生じるおそれがあるんだよ」
(ど、どんな修行なのかしら、でも怖くて聞けないわ・・・)
「なら俺が良い場所を提供するぜ!!」
後ろから声がしたので兼一は振り返った、するとそこには仁王立ちした翔一が立っていた。
「風間君?」
「応よ、ワン子が強くなるためなんだろ?、なら俺も協力するぜ」
「協力は良いけど、何処を紹介するつもりなのキャップ?」
「俺たちの秘密基地にしてるビルでどうだ、あそこなら水も通ってるし俺の部屋からクッキーをビルに住まわせれば修行の手伝いもできるだろ、それにビルの外は広場もあるから兼一さんとの修行にはもってこいだろ、しかも廃ビルだから人も来ないしな」
「クッキーて何?」
「九鬼君がアタシにくれた世話焼きロボットなんだけどアタシには必要ないからキャップにあげたの」
「そんなことまで面倒見てくれてありがとう、風間君」
「ああ、ワン子のために協力するぜ」
「早速今日から使っても良いかな?」
「分かった、クッキーには連絡しとくぜ」
「ごめんねキャップ」
「あ?」
「私のために協力してもらって・・・」
「良いって、頑張れよワン子、俺はお前の事を応援してるぜ」
「じゃあ行こうか一子さん」
「はい!!」
「じゃあありがとう風間くん」
兼一と一子は秘密基地に向かって走っていき、翔一はその後ろ姿を見て、小さな声で頑張れよと呟いた。
秘密基地に着いた兼一と一子は、まず入り口に立っていた卵形のロボットを見つけ、面識のある一子が話しかけた。
「クッキー!!」
「やあ一子、聞いたよ百代を倒すって言ったんだって?」
「ええ、でもアタシ本気よ」
「知ってるよ一子はそういうことを冗談じゃ言わないからね、頑張って、僕に出来ることなら何でもするからさ」
「ありがとうクッキー」
一子と話が終わるとクッキーはくるりと兼一の方を向き今度は兼一と話始めた。
「君が白浜兼一君だよね?」
「はい、クッキーさんですよね?」
「クッキーで良いよ、キャップから一子の修行の手伝いを頼まれたから何でも言ってよ」
「ありがとうクッキー、じゃあ僕も兼一でいいよ、じゃあまずはこの棒を建てたいんだ、手伝ってくれる?」
「うん」
兼一とクッキーは二本の柱を広場の真ん中に建てた、そして柱と柱の間に棒を取り付けて鉄棒を作った。
「鉄棒でもやるの兼一さん?」
「いや、これだけじゃないんだ」
すると兼一は一斗缶を取りだした、その中にはたくさんの薪が入っており兼一はそれを鉄棒の下に置いた。
「分からないわ何をしたいのか」
「すぐわかるよ、それとこれに着替えてくれる?」
「サラシと胴着の下だけ?」
「そう、胸にサラシを巻いて服の上だけ脱いで、スカートも危ないからこの胴着を履いてね、後髪の毛も垂れ下がらないように纏めて」
「構わないけど、危ないって?」
兼一の真意は分からなかったが一子はビルの中に入り着替えた、そして外に出ると兼一は鉄棒に一子の足を結び、一子は鉄棒からぶら下がった状態になった、そして兼一は一子の真下に一斗缶を置いた。
「ま、まさか兼一さんその一斗缶に火をつけるんじゃないわよね?」
「よく分かったね、これは腹筋と背筋をしないと身体が焼ける仕組みになっていてね、僕もこれをやるときは服が燃えるから上半身だけ脱いでやるんだ、名付けてスルメ踊り」
「兼一いくらなんでもこれは」
兼一の提案する修行に否定的な言葉言うクッキーとは裏腹に一子は何かを考え込んでいた。
「でも僕はこの修行で強くなったから、一子ちゃんにも少し厳しい修行が必要だと思うんだ」
(確かに普通の修行は川神院で散々やったわ、でもアタシは思ったより実力が伸びなかった、変わった修行も良いかもしれないわね)
「でもいくら強くなるためでもそれはあぶないよ」
「やるわ」
「ええ!?、一子危ないよ」
「アタシはどうしても強くなりたいの、その為ならどんな修行も恐れないわ」
(いや、多分僕がしてきた修行を見たら少しは恐れると思うよ)
そして兼一は薪に火をつけた、そして一子は腹筋背筋をし始めた。
「くっ!、はっ!(かなりきついわ、少しでも腹筋、背筋のペースを落とすと身体が焼ける)」
「うーん岬越寺師匠の言う通り火加減が難しいな」
「これは人が見たら警察に通報しそうだ」
「でも、ここは人が来ないから修行の邪魔にならなくて助かるよ、クッキー悪いけどもう少し薪を持ってきて」
「う、うん」
それから一時間後、スルメ踊りを終えた一子はうつ伏せになり激しく息を乱していた。
「ハア!、ハア!、ハア!、ハア!」
「じゃあ一子ちゃんもう十分したら次の修行を始めるよ」
「は、はい」
兼一は汗だくの一子の頭の上にタオルを落とした、だが一子はまだしゃべるのもやっとの状態だったそして十分後、息を整えた一子は次の修行を始めようとしていた。
「次はこの地蔵を使っての修行だ」
「ただの重石じゃなかったのね?」
「これはうちの師匠が作った、投げられ地蔵と呼ばれるもので、これで柔術の基本の投げの練習が出来るんだ」
「柔術?、アタシ柔術は・・・」
「うん、一子さんの基本は薙刀だ、でも徒手空拳で戦わなきゃならない時も出てくると思うんだ、それに柔術や中国拳法には武術の基礎の体捌きや脚捌きなんかも練習できる、決して無駄にはならないから」
「分かったわ、お願いします!!」
「じゃあまずは柔術の摺り足から始めて、最後は投げられ地蔵を投げてみようか」
兼一は少しずつ一子の体に負担がかからないように教えていくつもりだった、自分の師匠がそうしてくれたように、兼一と一子の修行は夜まで続いた。
とりあえずこの話は一子の修行を書きました、次回なのですが十連勤のせいか少し体調が良くないので少しお待たせしてしまうかもしれません、それではまた二十話でお会いしましょう、感想、評価お待ちしています。