魔法科高校の副風紀委員長   作:伊調

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ご無沙汰しております。伊調です。生きています。

長くなりますが読み飛ばしても何の問題もないということをここに明記しておきます。

取り敢えずまず最初に言うべきは気になっている方が二人くらいはいるであろう投稿していなかった理由でしょうか。有り体に言えばスランプでした。言い訳から入る事に少なからず抵抗を覚えますが、いかんせん説明責任は果たすべきかなと思いまして。
嫌悪感を覚えた方は遠慮なく私をビンタしてください。

話を戻します。私、夏頃からとても忙しく、同時に欠片も納得のいかない作品しか書けなくなっておりまして。56話くらいまでは書いてはいるんですが……自分がある程度納得がいかないと投稿できない病を患っているため長らく投稿できませんでした。

やっと自分に譲歩と譲歩を重ねまして、生存報告を兼ねた上で今日日新しい話を投稿するに至りました。
スランプから復帰するまで以前よりかはかなり頻度は落ちますが、投稿は続けて行く所存です。だってこの作品は一番私に刺さるように出来てますからね。私が書かないとこの作品の続きを私が読めないので。

たま〜に「あの作者生きてっかな?」くらい気楽に肩の力を抜いて閲覧しに来ていただければ幸いです。

このように私、心身共に元気ですので。あまりに低評価と批判の嵐でモチベが墓地に送られない限りぼちぼち書いていきます。

では……と言っても今回も別に話が大きく進む訳でもないですが、五十二話です。どうぞ。



第五十二話

「では、不肖ながらこの九重八雲が審判役を務めさせてもらうよ。勝敗の条件はどちらかが降参するか戦闘不能になること。殺すのは無しだよ。遺恨を残してしまうからね」

 

仲間はおらず、一人だけで決戦場となる河川敷に連れてこられたリーナはどうも不安げだったが、それをフォローするほどでもない上に仕方の無いことだろう。

淡々とルールを告げる八雲に深雪は真剣に、対してリーナは意気揚々と応じる。

場合によってはリーナの殺害も辞さない態度を一度は取った芺だが、今考えてみれば浅慮だったと大変反省していた。相手は他国の戦略級魔法師。もちろんその魔法師の生き死には世界に大きな影響を及ぼす。あそこで彼女を殺せば達也達にどんな悪影響があったかは想像したくない。芺はリーナの“達也を殺す”発言に対しては深雪の方がまだ冷静だったことを深く恥じていた。

と言っても今もし深雪が万が一敗北して殺されそうになったとしても達也は必ず介入する上、もし深雪が殺されたら──というのは無意味な仮定である。達也の目の前で深雪が死ぬ光景を芺は微塵も想定できなかった。

 

「では、始めようか」

「師匠、少し待ってください」

「あの……お兄様?」

 

徐に近付いてくる実の兄に照れと疑問を隠せない深雪。次の瞬間、深雪の白く美しい肌は真っ赤に染まることになる。

無言で妹を抱き寄せた達也は、挙動不審になっている深雪の額に何も言わずに接吻(くちづけ)をした。横浜事変の折、達也の軍属が一部生徒に知れ渡った際に深雪が行った行為と同じもの。()()()()()()()()()儀式を達也が深雪に行うことにより、深雪が達也を封印するために割いている力を返す。それにより、深雪も本来の力を取り戻すのだ。あくまでも一時的なものであるが、この状況では十分だろう。

 

「思う存分やりなさい」

「──はい!」

 

何か言いたげな芺をよそにして達也は邪魔にならない位置に戻る。

 

「お待たせしました師匠。リーナも待たせたな」

「……」

「どうしたリーナ。調子が悪いなら少し休むか?」

「張本人が何言ってるのよ!結構です!」

 

目の前で行われた儀式(イチャラブ)に言葉を失っていたリーナ。芺も心中である程度そこだけは同意しながらも、よくもまあここまで()()に話せるものだと思っていた。さっきまで銃を向け合い、今から決闘をするというのにこの雰囲気が続いているのは芺としても若干のカルチャーショックを受けざるを得ない。それも残念ながら軍人向けの性格ではないリーナが深く関わっているからであり、芺もそこには薄々勘づいていた。本来戦略級魔法師程の実力の持ち主ならば先程の芺の『圧』にあてられるべきではない。低級の軍人なら実力の差に恐れを為しても無理はないが、リーナ──アンジー・シリウスに限ってそれはないはずだ。魔法力ならアンジー・シリウスの方が上であるのは明白なのだから。それでも芺の『圧』をまともに受けていたのを見ると、問題なのは実力の差などではなく()()の方なのは想像に難くなかった。

 

(……これから彼女との接し方は考えねばならない。達也君達に倣って『リーナ』と『アンジー』で対応を変えるか……)

 

一度ナイフを投げ付けた上に目の前で部下を殺して“次はお前だ”と啖呵を切った手前、普通に接するのは憚られる。芺はこれからも敵対しかねない目の前の後輩かつ従兄弟の友人の対応に頭を悩ませていた。

 

そんな事とは関係なしに時間は進む。既にリーナは腰を低くして臨戦態勢だ。決闘の火蓋は今まさに切って落とされようとしていた。

 

(……これまでの観察結果によるとミユキは体術を得意としない典型的な魔法師だと思われる。魔法の速度なら私の方が上。先に仕掛けて一撃で──)

 

と、笑みを浮かべていたリーナの目の前に容赦ない冷気の渦が迫る。咄嗟に回避行動を取ったリーナに間髪入れず同じ魔法がリーナを氷の彫像にすべく近付いてくる。それを障壁で凌いだリーナの耳に、ボソッと“この程度では通用しないか……”という深雪の呟きが聞こえた。

完全に挑発に乗ったリーナは弱まったブリザードを駆け抜け、服のボタンを引きちぎる。それを打ち出そうとした瞬間、次は引き込まれるような風がリーナを巻き込んだ。何とかそれを耐えながらリーナは時速にして三百キロにもなる速度でボタンを打ち出した。

 

しかしその時速三百キロのボタンは程なくして河川敷の地面に力なく着地する。

 

(リーナ、深雪にそんなものは通用しない。深雪はリーナの自己加速魔法をリアルタイムで捉える事が出来る。ここまでは作戦通り、本命は次の魔法だ)

 

達也の心の中の言葉と同調するように深雪は『減速領域(ディーセライレイション・ゾーン)』を発動する。この魔法は物体の運動を減速するありふれた術式だった。だが、深雪ほどの魔法師がこの魔法を使うとそね対象は気体分子にまで及ぶ。分子運動を減速された領域内は気圧が下がり、周りの空気を引き込む。同時にその空間は対抗力がないものを閉じ込める檻となるのだ。

 

(……ここまでとは。深雪さんの魔法力を侮っていた訳では無いが……処理速度以外では到底太刀打ち不可能か。だがリーナさんも……)

 

芺は深雪の本来の実力を初めて目にしていた。むしろ今まで彼女が見せていた魔法力でさえセーブされていた状態とはとんだ化け物である。しかしそれに食い下がるリーナ。彼女は気流の吸引力に逆らい踏み止まり、ボタンが撃ち落とされたことから深雪の魔法の効果を看破していた。

だがもちろん深雪も馬鹿ではない。効かないと分かるとすぐさま『減速領域』の外側の壁を解放し、閉じ込めていた空気を解き放つ。それはとてつもない爆風となりリーナに襲い掛かった。

 

(少しでも反撃しなくては押し切られてしまう……ミユキの注意を引きつけることくらいは出来るはず!)

 

四本のナイフを地面に捨てたリーナは残った一本を振り抜いて『分子ディバイダー』を放つ。しかし深雪はその直線上の物体を真っ二つに切断する恐ろしい魔法を干渉力でもって微動だにせず無効化した。

 

「何度やっても同じよリーナ」

「ダンシング・ブレイズ!」

 

その言葉に従って先程地面に捨てた四本のナイフが踊るように暗闇を突き進む。深雪の領域を掻い潜ってそれぞれ別方向から目標に襲い掛かる四本の刃。夜という環境からほとんど視認不可能の刃を防ぐのは至難の業だった。

 

だが、それは至難なだけである。闇に紛れていたナイフは深雪の付近で弾かれるようにして地面に突き刺さった。

 

「なっ……防いだ!?」

 

深雪の発動した魔法は『全方位無差別防御魔法』。難易度の高い魔法だが、達也の行った儀式により今の深雪であれば問題なく使用可能だった。

 

(いつもの私ならこんな緻密な術式のコントロールは出来なかった。自分一人では負けていた……でも、お兄様が見ていてくださるなら私は負けない!)

 

「負けられない!」

「上等じゃない。全力で叩き潰す!」

 

「ミユキ!」

「リーナ!」

 

「「勝負よ!」」

 

そう叫んだ両者。深雪が発動した魔法は極低温の冷気の塊で相手を包み込む『ニブルヘイム』。対してリーナの発動した魔法はプラズマの嵐で空気を燃やし尽くす『ムスペルヘイム』……二つの相反する魔法がぶつかり合った。

 

「どっちも譲らない……」

「互角か……!」

 

九重寺の門徒が思わず声に出す。しかしその分析は間違いだった。元より深雪は広い領域に大規模な事象改変を及ぼす魔法を得意とする。だがリーナはパラサイトや達也との戦いに続く三連戦。それに加え相手の土俵での勝負という不利具合。勝敗は魔法力ではなく冷静な判断力の持ち主の元に転ぶと思われた。

 

「くっ……」

 

リーナは青い顔をしながら腰の辺りからナイフを取り出す。先程『分子ディバイダー』を放った物と同一に見えた。

 

(まずい!この状況で他の魔法にキャパを割くのは自殺行為だ!)

 

「そこまでだ二人とも!」

 

達也はリーナの行動を見て素早くCADを抜いて『術式解散(グラム・ディスパージョン)』で二つの魔法を吹き飛ばした。しかし突然横槍を受けて制御を離れた二つの魔法の余波は避けられない。火傷と凍傷を同時に引き起こす風が達也を包み込もうとしていた。達也自身、それによる激痛は免れないと理解した上での行動だった。

 

「お兄様!なんて無茶をなさるんですか!」

「……その通りだ。やるなら一声かけてくれ」

 

しかし達也は無傷。周りにいた八雲や門下生にも怪我はなかった。達也の周りには深雪の作り出した魔法障壁。芺が最初に作りだした障壁を叩き壊して上書きされたが、それはそれ。ちなみに門下生は芺の作り出した障壁に守られていた。

 

「助かった……」

「危なかった……」

 

「……いやはや、達也君。勝敗の条件はどちらかが降参するか、戦闘不能になるかと決めていたじゃないか。それを横からぶち壊してどうするんだい?」

「ですがああしなければ“殺しは無し”の条件に反してしまう状況だったので……」

 

沈黙が流れる。ここからは皆が納得する落とし所を探らねばならなかった。

 

「……ワタシの負けでいいわ」

「リーナ」

 

……のだが、皆の期待を裏切る形でリーナが潔く白旗を上げた。

 

「ミユキ、あのままだったらワタシはミユキの魔法に飲み込まれていたかもしれない。だからワタシの負けよ、ミユキ」

「リーナ……」

 

横槍を入れられたにもかかわらず、命を救われたためかリーナは素直に自分の敗北を認めた。

 

「タツヤ、約束よ。訊かれたことにはなんでも答えるわ──ただし答えはイエス(YES)(or)ノー(NO)よ」

「貴方が勝負に水を差して条件を変えちゃったんだから、ワタシの方からもこの程度の条件変更は言わせてもらうわよ、タツヤ♪」

 

そう有無を言わさぬ満面の美少女スマイルで語るリーナ。芺はこういう機転が利くなら別の職務に就くべきではないか?と呆れ気味だった。当の達也も「……そうきたか」と白日の元に晒されたリーナの恐ろしい一面に次は彼が白旗を上げていた。

 

───

 

翌日、日曜日にもかかわらずエリカと幹比古は達也に学校へ呼び出されていた。生徒会室に呼び出された二人は当然理由を訊ねるが、その答えを達也から聞く前に更にもう二人の来客がそこに現れた。

七草真由美に十文字克人。双方とも十師族として『吸血鬼(パラサイト)』の捕獲に携わっている者達だ。

 

「吉田に千葉?お前達も司波に呼ばれたのか?」

「あっ……はい」

 

同じ人物に呼び出された四名だが、共通して同席するメンバーも内容も知らされていないようだった。幹比古がおずおずと返答したところでまたまた生徒会室の扉が開く。

 

「すまん、遅くなった」

「いえ、皆揃ったところです」

「柳生……お前も司波に呼ばれたのか」

「ええ、まあ……そんな所です」

 

一番遅くにやってきたのは芺。どうやら朝稽古の後に急いできたらしい。

 

「では始めましょうか……」

 

……と、円滑に会議が始まる訳もなく、エリカと真由美から何故呼ばれたのか説明を求められる。達也が『パラサイト』の事についてのお知らせと説明すると、十文字はドカッと椅子に座り傾聴する姿勢に入った。それに釣られて事情を知らないエリカや真由美、幹比古もゆっくりと席に座る。

そして達也の口から“昨晩『吸血鬼(パラサイト)』と対峙して信号弾を打ち込んだ”という両捜索隊からすれば聞き捨てならない台詞が飛び出る。

 

そして達也はその信号をキャッチするための情報が記述されたカードを両捜索隊に手渡し、パラサイトの正体がUSNAから脱走した魔法師である事を明かした。

そして達也自身どの勢力が捕まえようが構わない──といったスタンスだけを表明し、司波兄妹はわざわざ呼び出したことに対して詫びを残して退出した。

もちろん残された両捜索隊の代表は……

 

「折角こうして両チームが顔を合わせたのだから、我々は少し話をして帰るとしよう」

 

残されたエリカと幹比古がとんでもなく嫌そうな顔をしていたが、芺も残る姿勢を見せた事で少しは和らいだようだった。

話し合いは十文字と芺の主導で進み、エリカや幹比古としては不幸中の幸いと言った形で解散まで漕ぎ着けた。各々が退出の準備をする中、幹比古だけはその手が緩慢になっていた。

 

「……どうした?そんなに見つめて」

「ええ!?い、いえ!なんでもない……です」

「あらぁ、ミキ。あんたそっちの気もあったの?」

「僕の名前は幹比古だ!それにそんな事は無い!ついぼーっとして……」

 

芺の方を凝視していた幹比古はそれを本人に指摘されて、無駄に大きなリアクションをとる。そのお陰でいらぬ誤解を招いた幹比古は心底ここに美月がいなくてよかったと安心していた。

 

「まあ、芺君も達也君や沢木君に負けず劣らずのハンサムだし……ね?吉田君」

「七草先輩まで!だから違いますって!」

 

弄ぶ対象を見つけたのか小悪魔的な表情で幹比古の腕をポンポンと叩く真由美。そんなこんなで皆が撤収していく中、幹比古は帰り際も普段通り振る舞いながら考え事をしていた。

 

「ねえミキ。さっきからどうしたの」

「ああ……いや」

「なんかあるんなら言いなさいよ。さっきから気持ち悪……様子がおかしいわよ」

 

エリカの尖りにとがった棘のある言葉に若干のダメージを被りながらも、幹比古は務めて自然に問いかける。

 

 

 

 

 

 

「……分かった。エリカに聞きたいんだけど……前と比べて、何か芺さんに変化があったとは思わないかい?」

「……何よ藪から棒に。ちょっと雰囲気変わったかな〜ってくらいだけど。髪伸びたからかな?」

 

確かにエリカの言う通り芺は以前と比べて髪は伸びており、襟足の辺りでまとめている程になってはいたが、幹比古が言いたかったこととは性質が違う。しかしそれを上手く言語化することは出来なかった。もっと根本的な何か。芺という人物に漠然と何か大きな変化があったような気がするのだ。しかし、それを口にしても余計に怪しまれかねないし、口に出すまでもない勘違いだと自分を言い聞かせた。

 

「エリカが分からないならやっぱり僕の勘違いなんだろう。ごめんね、急に」

「?……よく分からないけど、なんかあるんなら教えなさいよ。……芺さんに関わる事なら尚更ね。つい最近あんなことがあったんだから」

 

エリカの言うあんなこととは、いわゆる『柳生家次期当主失踪事件』の事である。事態の大きさの割に、本人の自力の帰還というあっけない幕引きをしたあの事件。何か名状しがたい違和感を拭えないまま、それを飲み込んだ幹比古は黙ってそのまま帰路に着くのだった。




いかがでしたでしょうか。今回は生存報告の面が大きく、あまり話としては面白くない可能性が多々ありますが、今回はこの辺で。
私の小説はかなり掻い摘んでいる場面も多いので、万が一補足が欲しいという旨の意見などあれば、適宜書いていこうかと思います。

では、伊調でした。


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