多少、胸糞描写を書きます。
この二次創作は、ペニーウォートならこれぐらいはありそうだよネ!っていう偏見と決めつけで書かれております。
紹介
本作の主人公の名前は「イロリ・ペニーウォート」です。
管理番号はPW-01408
年齢は20歳
名前を呼ばれるシーンなんかも多く存在する中で「お前」や「あなた」なんか、味気ないを通り越して、しょうもないですからね。
由来は、希望という燃料をもらってより良い未来という熱と明かりを返す。そんなことを願いながら考えました。
お前やあなた呼びを期待していた人には大変、申し訳なく思います。
おい…起きろって
やさしい声が聞こえる。
人生…いや、AGE生史上1、2を争う最低な夢を見ていたようだ。
夢の中はあんなに冷たかったのに、ここはとても暖かい。今にも眠ってしまいそうだ。
このままゆっくりと睡魔に身を任せて、意識を落として………
「おい!起きろ!」
肩を揺さぶられ心地良いまどろみから出るはめになった。
ぼんやりと周りを見回すと、見慣れた鉄格子と私の肩に両手を置いて呆れた顔の彼が見えた。
私が彼の顔を見たことで目が覚めたと分かったのか、彼は肩から両手を離して片手で自分の頬を掻いた。
「おはよう。どうした、悪い夢でも見たのか?」
心配そうな彼の顔だ。こちらに手を差し出して起き上がるのを手伝ってくれるらしい。
でも、返事を返すのも起き上がるのもめんどくさくて、ただ、彼の顔をぼんやりと眺めていた。
数秒見つめあったのだろうか。
「はぁ...ぼーっとしてないでシャキッとしろよ」
また、呆れた顔の彼が見える。表情が忙しそうで、ちょっと面白い。
...そろそろ返事しないと怒られてしまいそうだ。
寝ころんだままではいけないと思い、赤と黒の腕輪が嵌められた両腕を振りかぶり、勢いをつけて起き上がった。
「おはよう、ユウゴ。今日はひどい夢を見てね。目が覚めるまで、ちょっと、時間がかかっちゃったよ」
「そうか、ならもっと早くお前を起こしてやればよかったな」
ニヤッといじわるな顔をしながら彼、ユウゴ・ペニーウォートは冗談交じりな声で言った。
よかった、今日は怒られずに済みそうだ。
急にいじわるな顔が真面目な顔に変化した。次の話をするようだ。
「次の仕事のこと、聞いてきた......相当、『濃い』場所だ。俺も、お前も、そろそろオシマイが近いってわけだ」
諦めたような口調でこの非情な現実を再確認するようにユウゴは次の仕事を語る。
「あの灰域濃度で仕事ができる日数は1年もあればいい方だ、もし、途中でケガをすればさらに短くなる計算だ。その間、今までと同じようにアラガミの討伐やら、物資の回収やらをしなくちゃいけねえ.........」
「『濃い』灰域の中で戦い続けるればやがて身体は朽ち果てる。仕事ができなくなった俺たちをミナトの連中が甲斐甲斐しく世話してくれるとは到底思わない。いずれ生命線の偏食因子をの投与を打ち切られてアラガミ化...あるいは、アラガミの撒き餌か囮にでもされて、さようならか...」
「ろくでもない未来で、絵に描いたような俺たちAGEの末路だ。だが...」
「だが?」
うなだれるように地面を向いていた彼が、鉄格子の嵌められた窓の外を向いて呟いた。
私は、私の心を奮い立たせるいつもの言葉がユウゴの口から紡がれるのを期待する。
「だが、そうだ、俺たちは死なねえ。絶対だ」
これまでの諦めたような声とは一変し、決意に満ちた声が聞こえる。
この言葉だ。
「俺たちはたくさんの思いを背負ってる。守ってやれなかったこいつらの想いを。俺は...俺は、こいつらに誓ったんだ。どんなことがあっても、絶対に、諦めねえって」
外に向いていたユウゴの顔が自分の腕に嵌めた、いくつものドッグタグを順番に見て、最後に私を見つめる。
私に言い聞かせるように............自分に、言い聞かせるように
言葉が紡がれる。
「だから、絶対に死ぬなよ......こんなクソったれな現実を壊して、一緒にたどり着くんだ俺とお前で...明日へ」
「...えぇ、もちろんよ。相棒を置いて逝ってやるものですか。俺たちは死ない。絶対に...でしょ?」
私は笑っているだろう。頼りになる相棒にこんな告白をされたのだから。
ユウゴがいるから、彼がいつもの言葉をくれるから、私はこの絶望しかない生活でも生きようと、死なないでいようと、そう、心の底から思えるのだから。
「フッ...あぁ、そうだな」
穏やかながら決意に満ちたユウゴの顔がいつもの真面目な顔に戻る。
ユウゴがチラッと私の後ろを見た。それにつられて私も振り返った。
どうやら、看守が戻ってきたようだ。
これだけ長話をある程度の声量でしているのに罵倒の言葉が飛んでこないのが不思議に思っていたが、トイレか、食事か、はたまたサボりでいなかったようだ。
戻ってきた看守が怒鳴り声をあげた。
「お前らには任務が発給されたはずだ!さっさとモニターを確認しろ!」
「へいへい、おい、イロリ行くぞ」
サボリがばれて上司にでも叱られたのだろうか。湧きあがっている苛立ちを私たちへとぶつけてくる。
彼に促されて立ち上がり、モニターまで小走りで向かった。
後ろで看守が早くしろ。のろま共が。などとうるさい。看守の言うとおりに十分と急いでやっているのに分からないのだろうか。
「イロリ、次の任務は新しい濃度レベルの順応テストなんだとさ。どうやらアラガミはぶっ殺さなくてもいいらしい。久しぶりに楽な任務だな」
「本当ね。最近は小型種の大量討伐やら、ミナトに接近してきた中型種を指定の場所まで誘導しろだの、大変な任務しか発給されなかったからね」
看守がまだうるさいが、ユウゴとこれまでの任務の話をしながら、今回の任務を受諾した。
『新たな行動区域への濃度順応が求められます。順応プログラム216番から234番を実行してください』
D1【濃度適応】
>>高濃度海域内での作戦行為への移行に伴い所定の適応プログラム実行義務を果たす。
〔対象者〕
PW-01408
PW-01407
任務を受諾しますか?
[はい] [いいえ]
任務を受諾しますか?
▼[はい] [いいえ]
『受諾を確認』
『なお、行動中の不慮の事故についてはあらゆる事象が自己責任となります』
『特に貸与されている神機を傷つけることのないよう注意を払ってください』
女の機械音声が聞こえた。
何度もこの音声を聞いたが、AGEより神機のほうが高価なものだと言っているような、この音声は気に入らない。
さあ、仕事に行こうか。あの怒り散らしてる看守にこの牢獄から外に出してもらわなければいけない。
「ユウゴ、今日もよろしくね」
「おう、今日も頼むぜ」
笑い合いながら、ガツンと互いの腕輪をぶつけた。
私たちが任務を受けている間では看守の怒りは沈静化されなかったらしい。
牢獄から出るために扉の前に立つとピーっと甲高い音の後にカションと鍵が取れる音の後、すぐに看守の怒鳴り声が響いた。
「さっさと出ろ!遺書なんて残すんじゃないぞ!お前らの代わりなど二束三文で集めることのできる安い物品なんだからな!」
そんな罵倒の後、まだ怒りが収まらないのか、私が牢獄から出る時、背中を蹴られて地面に倒されてしまった。
両腕が忌々しい腕輪で拘束されているせいでまともに受け身が取れなかった。
AGEの耐久力は普通の人間よりも数段高いおかげで地面に倒される程度では傷一つつかないが、身体が汚れてしまった。昨日、リルがゴミ拾いで偶然見つけた石鹸を使って私を拭いてくれたからいい匂いがして気分がよかったのに最悪だ。
それで少し溜飲が下がったのだろう。ふん、と息を立てて私の髪を掴んで起き上がらせて、粘着質な目線を私に向けながら耳元で喋りだした。
「早く歩け、命令違反をするのであれば、お前のような汚らしいAGEの身体でも使ってやろうか?...む、む?」
スンスンと首筋を生暖かい風が通り抜ける。
しまった。石鹸の匂いをに気づかれた。つい、石鹸の誘惑に勝てなかった私のミスだ。
「お前、ミナトの倉庫から石鹸を盗ったのか?そんなに懲罰房へ行きたかったのか?んん?」
「ちがう!...昨日、同室のAGEが回収したもので、ミナトの監査官に回収報告は済ませてあるはずだ。確認すれば分かる」
粘着質な声が気持ち悪くて、つい、強めの口調で言ってしまった。
「んっん~。...言い方がなっていない、人間様にモノを頼むときはどうするか分かるか?AGE君?」
「...っ昨日のPW-02357の回収報告を...確認、してください。お願い...します」
「及第点だ、確認してやろう。寛大なこの私に感謝するがいい」
ギシリと歯噛みする。クズめ、と言ってやりたいが、ここで言ってしまうと命令違反とされて、本当に使われてしまう。冗談めかした言い方で看守程度の地位であっても、その程度は容易に実現可能なのだ。
ペニーウォート内で随一の腕前を持つ私が万が一にも自殺されるとミナトの不利益だからと言った理由で"そういったこと"は特例で免除されているが、私自身が明確な命令違反を行った場合はその限りではない。
「ちっ、良かったなAGE。PW-02357はしっかりと報告していたようだ」
私の髪から手を離して肩に手を置いて強く押した。
「さあ、歩け。AGEごときがゴッドイーター様の手を煩わせるんじゃない」
出撃ハッチまで、前からユウゴ、私、看守の並びで歩いた。歩き始めると看守は肩からゆっくりと肩甲骨、背中と撫でまわしつつ、手を滑らせてきた。ちらりと看守を盗み見ると私の戦闘服でちらちらと素肌が見えている腰回りを気にしているようだ。一度認識してしまうと実際に触られているわけでもないのに、私の腰回りにじっとりとネバついた感覚がまとわりついた。
ユウゴも私の状態を察してくれたらしく、看守の怒りを買わない範囲で早く歩いてくれた。流石、私の相棒だ。いいアシストをしてくれる。
看守の手がもう少しでお尻に到達しそうになった時、出撃ハッチに到着した。看守はハッチに着くなり、舌打ちをして踵を返した。牢獄のほうに戻るようだ。
看守の姿が見えなくなると私はホッと胸をなでおろした。何度も行き来した道を歩くだけなのに思ったよりも体力を消費してしまった。
「大丈夫か?」
「えぇ、なんとか...最近はあんなことなかったから油断していたわ」
もう少し大丈夫そうな声を出すつもりだったのに、疲れ切った声しか出なかった。
「今日は俺が運転するから目的地に着くまでの間、お前は休んどけ」
「...そうさせてもらうわ。ありがとう」
「気にするな。次、俺が疲れてるときはお前に運転してもらうことにするからさ」
目の前の対灰域用装甲車に乗り込む。この装甲車は私たちが何度も使っているおかげで初めより多少、使いやすくなっている。後ろの座席に置いてある布を一枚持ってきて椅子にかぶせたら簡易ベッドの完成だ。
「準備できたみたいだな。開けるぞ」
「おねがいね」
ビーっと、けたたましい音でアラートが鳴った。
『任務、D1、【濃度順応】』
『対象者、PW-01408、PW-01407』
『確認しました』
『対アラガミ及び対灰域用防壁、ロック解除します』
『貸与されている神機を傷つけることのないよう注意を払ってください』
『第一ハッチ開放します』
「よしイロリ、発進するぞ。一応、最初だけはしっかりと椅子に座っとけ」
「分かったわ。だいじょうぶ」
装甲車がギュッと急加速して身体に圧力がかかる。
急加速と急停止がアラガミから逃げるために必要だとは言え、もう少し乗り手のことを配慮したものはないのだろうか。
ろくに身体の踏ん張りが効かなくなるようでは神機の銃形態も無意味になってしまうじゃないか。
少しして車体が安定したころ、ミナトに通信しようとしていたユウゴにこれから休むことを伝えて瞼を閉じた。
ふう、やりきったぜ...
「身体を使ってやろうか」
その瞬間、男の体は弾け飛んだ。
ぐらい書いてやりたくなるわ。
こんなのを普通に想像できるんだが...
ペニーウォートのAGEってホント過酷だと思う
【補足】
「ミナト」 海にあるわけではなく、地下に存在している。秘密基地みたいな場所
「PW-02357」 リル・ペニーウォート 八歳 かわいい女の子
そうそう、うちの主人公たるイロリちゃんはユウゴさんに今現在は惚れていません。
自分たちが生きる希望をくれて、頼りになる相棒って認識です。
作者の力量不足で勘違いされる方がいるかもしれないんで一応、書いておきます。
そもそも、こんな極限状態でそんなことしてたら死んでまうて()
失った仲間の情報が記された物ををとドッグタグと表記させてもらいましたが、別の名称(首輪とか?)だったと思います。一応、物品的には間違いではないと思いますが、ご存知の方がいらっしゃるなら教えてください。