俺の厳霊丸は最強なんだ(泣)   作:雷系の能力はロマン

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プロローグ

 薄暗い洞窟の中で、激しい剣戟が響いている。

 その音を鳴らす張本人は見惚れるような刃を持つ日本刀を振るう青年だ。

 青年の周りには、犬の顔と強靭な肉体を持つ怪物の群れが存在していた。その怪物達の顔は憤怒に染まり、その赤い瞳は殺意を含みながら青年を睨んでいる。

 そして対峙する青年は獰猛な笑みを一度浮かべながら、目の前の敵に斬りかかった。

 反応できない速度だったのか、そいつは抵抗すらできずに首と胴が綺麗に離れ――首が地面に落ちた時にやっとほかの怪物達も動き出した。

 しかし、先に動いた青年の方が圧倒的に早く襲い掛かる怪物は次々と殺されていく。

 青年はかなりの数の怪物を殺し続けているがその数は一向に減る様子はなかった。

 むしろ怪物の数は時が進むごとに増えている。

 

 今、青年を囲う群れの中には別の種類の怪物も混ぜっていた。

 緑色の肌を持つ者と、単眼の蛙だ。

 それは瞬く間に数を増やしていき少年の視界をうめる。

 青年は四方八方を囲まれ逃げ場はない、だがそれでも青年は笑い――――そして。

 

「なぁ、お前ら経験値(エクセリア)置いてけぇぇ! 穿てェ! 厳霊丸(ごんりょうまる)

 

 青年はそんなことを叫びながら、再度怪物達に突撃していき次の瞬間には洞窟を青白い光が満たしていた。

 

 ◇◇◇

 

 ダンジョンから帰った俺は、何故かギルドの中心で正座させられていた。

 そして首には『俺は馬鹿です』と書かれた木の板を掛けられていて、先程から色んな冒険者から可哀そうなものを見るような視線を向けられてもいる。この状況は一時間ほど続いており、俺をこうしたエルフ曰く保護者が来たら開放してくれるらしいのだが――その保護者は全く現れる様子はなかった。

 

 俺が何をしたというんだ。

 したことといえば、三日間ダンジョンに潜っていただけだぞ?

 他の冒険者もよくやってると聞くし、俺は何も悪くないはずだ。

 

 そんなことを考えながら、不満な視線をエルフに送ると。

 そのエルフは呆れ顔でこんなことを言ってきた。

 

「レイク君? そんな不満そうな顔しても、ベル君が来るまで開放しないからね?」

「馬鹿な! 俺が何をしたというんだ!?」

「……まさか、心当たりがない何て言わないよね?」

 

 ふっ。

 

「安心しなエイナ嬢――全くないぜ」

「ベル君が来ても開放しないわよ?」

 

 周りが凍るような絶対零度の視線を俺に向けながら、そのエルフは恐怖を感じる声でそんなことを言った。その声が耳に届いた途端に、俺の体は震えだす。

 次の言葉を間違えた途端に何か良くないことが起こるという確信が、俺の体を駆け巡る。

 間違えてはいけない。

 失敗してはいけない。

 ダンジョンでは、一切感じることのなかった死の恐怖を俺は今、感じていた。震えてしまい、うまく声を出すことが出来ない。俺を見つめる絶対零度の視線に恐怖しか感じることが出来ない。

 殺される。そう悟った瞬間に――ギルドのドアが勢いよく開かれて、凄まじい勢いで俺の前に現れた。俺は現れた何かが誰かを確認するために視線を移動させる。そして視界に入ったのは、白い髪に赤い瞳を持つウサギのような少女だった。

 

「ナイスベル! マジでありがとう、俺はもう少しで殺されるところだった!」

 

 その少女、ベルを見た途端に安堵してしまい、俺は感情に任せたまま感謝を伝える。そして、ベルはそんな俺を見ながら何故か震えており、それに加えて拳を構えていた。

 そして。

 

「馬鹿レイク!」

 

 理解できぬままそんな言葉を浴びせられ、気が付いた時には俺の体に拳がめり込んでいた。腰の入った一撃を防御もできずに食らわせられ、俺の体は後ろに思いっきり倒れてしまう。

 

「また約束破って一人でダンジョンに潜ったでしょ!」

 

 見下ろしながら、そんなことを言うベルに俺は今の打撃のせいで何も言葉を返せないでいた。なにか、言い訳をした方がいいというのは分かるのだが、今はそれどころではない。

 俺はエイナ嬢に助けを求めようと視線を向けたみたが。ベルの行動に驚いているようで、ポカンとしており助けてくれる様子はない。

 ダメもとで他の冒険者の方も見てみたが、露骨に視線を逸らしながら離れていく冒険者達の様子を見ると助けてくれる気はないらしい。

 そうしている間に少し回復した俺は、腹を抑えながら立ち上がり、なんでこんな事をしたのかをベルに聞くことにしたが。

 

「あのベルさん、許してください」

 

 ベルの放つ不穏な気配を感じてしまい、敬語で謝ってしまった。

 

「レイク? 謝るって事は、何をしたのか自覚あるんだよね?」

「…………」

 

 俺はどうして殴られたのかまだわかっていないので、自然に無言になってしまう。そんな無言の俺を見るベルの表情が、目に見えて失われていくという状況に俺は耐え切れなくなってしまい視線を逸らしてしまった。 

 

「そうだ、エイナさんありがとうございました。レイクを引き留めてくれてて、これで神様の説教も聞かすことが出来ます」

「……それは、よかったわねベル君」

 

 エイナ嬢は引きつった笑みを浮かべながらそんなことを言った。

 

「はい!」

 

 満面の笑みでそう返事するベル。俺はそんなベルが今、何よりも怖かった。そのままベルは俺の方に振り返り。強い力で肩を掴んできて。

 

「じゃあ、レイク帰るよ? 神様も待ってるからね?」

「……了解」

 

 これはもう駄目だなと俺は完全に諦めて、おとなしくベルと帰ることにした。

 最後にエイナ嬢の方を見てみたが、何とも言えない表情を浮かべており、その表情は俺に強く生きてと言っているようだった。

 

 ◇◇◇

 

 その後ホームに帰り、ヘスティア様とベルによる数十時間の説教を受けた俺は倒れるようにベッドに入る。そして、俺の意識はすぐに薄くなる。多分だが、目を閉じればすぐでも眠れるだろう。そのまま俺は、何故かカタカタ揺れる自分の刀を無視して目を閉じた。

 

 

 

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