俺の厳霊丸は最強なんだ(泣) 作:雷系の能力はロマン
目が覚めると俺は、風の吹かない朽ち果てた荒野のような場所に一人で立っていた。
周りを見渡すと地面には錆びた刀が何本も落ちており、所々に人の頭蓋が放置されている。空には青白い光を放つ朧月が浮かんでいてこの何もない荒野を照らしている。
そして俺は、少しの間月を眺め数分経ったところで、俺をこの世界に呼んだ張本人に会いに行くために歩き出した。
そいつの元に向かっている途中にも、周りを見てみるがやはりあるのは朽ちた刀に人の骸。その骸は全て俺が目指す場所をむきながら倒れており、俺は勝手にだがあいつに会おうとして朽ち果てたんだろうと考える。
そして、それからさらに数分経ったところで、この荒野に冷たい風が吹き始めた。
その風が吹いたことで目にゴミが入り少しだけ前から視線を外してしまい、そして視線を戻すと薄紫色の花を散らし続ける満開の桜が存在していた。
その桜は天に届くと錯覚するほどに大きくて綺麗だが、異様な存在感を放っている。その桜を見ていると、今すぐにでも命を捧げたくなるという衝動に駆られるが、俺はその思いを直ぐに振り払い桜に向かって話しかける。
「おい厳霊丸、どうして俺を呼んだんだ?」
その声が虚空に消えたかと思うと急にこの場所に青白い雷が落ちてきて俺は咄嗟に目を瞑る。そして、光が収まって数秒経ったところで目を開けてみると目の前には、白い生地に水色の蝶の縫われている着物を着た薄紅色の髪を持つ少女が目の前に立っていた。
少女は俺の顔をまじまじと見つめた後に、少し怒った様子で。
「レイク、なんで最近ここに来てくれないの?」
「ずっとダンジョンに潜ってたから対話する時間がなくてな」
「それでも時間を作るのが、私の主という者だよ?」
「普通に考えろ。ダンジョンでそんな隙さらしたら死ぬだろ?」
こいつは、俺に死ねといってるのか? それだったら今すぐ契約を解除したい。
「私はレイクが死んでもいいんだけどね? そしたらずっと一緒だし」
「俺は死にたくないんだ、そういうこと言うの止めてくれ、洒落にならない」
「えー、いいじゃん。体が死んでも魂はここに残り続けるんだよ」
「この何もない空間に?」
「桜があるから退屈しないよ、だから死の?」
「嫌だ」
なんでこいつは俺を殺したがるんだ。冗談という事は分かるが、こいつの能力は本当に馬鹿出来ないものだから笑えない。
「というか俺はお前のせいで、モンスターを殺し続けないと死ぬんだぜ? そんなに急かさなくっても、近いうちに死ぬって」
「あ、それもそっか。ねぇ、レイクはどのくらいで死ぬと思う?」
「分からないが、五日以内には死なないな。三日潜ったおかげで数百匹のモンスターは殺せたし」
「五日も生きるの? でもいっか、外の話が聞けないのもつまらないからね」
「というか厳霊丸、そろそろ帰らせてくれ。今日は俺が食事当番だから、早く起きないとヘスティア様が暴走する」
「別にいいじゃん、あのロリのご飯なんて。そんなことより私と遊ぼうよ」
ロリはお前だと言いたいが、そんな事を言えばめんどくさいことになることは分かっているので、俺はその言葉を口に出すことはしない。しかし、これだと遊ばないと帰してくれそうにないな――一回ぐらいならいいだろ。それなら多分疲れない。それに、断ったら拗ねるし……。
「一回だけだぞ、そしたら帰してくれ」
「やった! じゃあ、刀を構えてよレイク」
待て、俺の記憶には刀を使う遊びなんて存在しないぞ?
「じゃあ、早く
もう、どうにでもなれ。
刀を構えながら笑う厳霊丸を見ながら、俺はそんな風に自棄になり近くに刺さっている朽ちた刀を抜いた。その刀は俺につかまれた途端に姿が変わり、新品のような刀に変化する。そのまま、俺はその刀を一度構えて。
「穿て、厳霊丸」
「最初から使うの? なら私も、穿て厳霊丸」
俺達の持つ刀がレイピアに変化し、雷を帯び始めた。それはバチバチと音を鳴らしながら俺達の殺気に答えるように鋭く形を変えていき、レイピア全体を包みこむ。
「……一戦だけだからな」
「難しいなー」
「なら全力で叩き潰す、行くぞ」
「バッチコーイ!」
そんな気の抜けるような声が耳に届くと同時に、俺は相手に向かって駆け出していた。
◇◇◇
今度こそオラリオで目を覚ました俺は、異常なほど疲れていた。
最初の一戦は俺が勝って終わったのだが、その後ずっと厳霊丸が仕掛けてきて体感で五時間ほど戦い続けさせられたからだ。少しでも気を抜けば、体が黒焦げになるという最悪の夢。
多分、またあいつに会いに行ったら体験させられるんだろうなと考え、それ最後に俺は意識を切り替えた。
「よし、飯作るぞ」
そう意気込んで見たものの、保存してある食材はなぜかキャベツしかなかった。ヘスティア様とベルは俺にこれで何を作れというのだ……まあいい、まだ日が昇ったばかりだが八百屋は開いているだろう。
二人が起きる前に、買い出しを終える――俺はそんな目標を決め。持てる敏捷を全て使い本気で八百屋に走った。
「八百屋の親父ー野菜くれ!」
八百屋にたどり着きそんなことを叫ぶ俺に、目の前の厳つい青年がめんどくさそうな顔をしながら話しかけてきた。
「俺はまだそんな年じゃねーぞ、レイク」
「いいじゃないか、親父って言われて減るものはないだろ」
「他の奴はいいがお前に言われるのはムカつくんだよ。それより何が欲しいんだ? 早く言えよ、俺は眠い」
「じゃあ今日のおすすめを適当に見繕ってくれ」
「了解――1500ヴァリスな」
目の前の青年は袋いっぱいに野菜を詰めた後にそういってくる。俺が見た限り、この野菜の量だと今言われた以上の値段はしそうなんだが、いつはどういうつもりなんだよ?
「安くないか?」
「サービスだ。お前はいつも多めに買ってくれるからな」
「ありがとなジル、また今度買いにに来る」
「ああ、また来いよ。あとベルによろしく」
「了解」
袋いっぱいに入った野菜を持ちながら俺は落とさないように帰路につく。
行きとは違いゆっくり進んでいるのだが、二人が起きるまでには間に合うと思うから急ぐ必要もない。
◇◇◇
俺は今、ベルと一緒にダンジョンの四階層まで来ていた。
いつもベルと挑戦するのは三階層なのだが、ベルが「今日は調子がいいから五階層まで行こうよ」と言い、それに付き添っている形なのだが……俺はなぜか今、五階層には行ってはいけないという感覚を覚えていた。
いつもなら、そんな事を感じても迷わず進むんだが――今回のは危険だと本能が警告しているのだ。そうやって考えに耽っていると、いつのまにか五階層へ降りる階段まで辿り着いていたらしい。
ベルを止めようとしたのだが、俺が声をかける前にベルはすでに階段を下りてしまったようだ。
「レイクー早く行こうよ、やっぱり今日調子いいよ! このままだと六階層まで行けそうだね」
下から呑気なベルの声が聞こえてくる。
その声を聞くと五階層には何もないように思えるのだが、俺の予感はこういう時によく当たるのでベルの方へ急いで向かった。