俺の厳霊丸は最強なんだ(泣)   作:雷系の能力はロマン

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うちのヘスティア様は無駄に優しい

 ダンジョンの外に出た俺達はメインストリートを抜けて、裏路地にやってきていた。その路地には人の気配が全く感じられず、野生の鳥の声だけが響いている。そんな裏路地の中をしばらく進んだ俺達は、ボロボロの教会に辿り着いた。立ち止まってから俺がその教会を見上げてみると、視線の先には俺達の事を微笑みながら見下ろす女神像があり、そしてそんな女神像が浮かべるその微笑みは、帰ってきた俺達の事を祝福しているようだった。

 俺はただいまと心の中で唱えてから、教会の玄関口をくぐって中に入る。

 屋内を見渡すと割れたタイルや雑草があり、続けて上を見上げれば大部分が崩れ落ちた天井が目に入った。俺はそんな半壊状態の屋内を見ていると、金を稼いでここを整備しなければという考えが浮かんでくる。

 そんな事を考えながら廃墟同然の教会の中をベルと一緒に慣れた足取りで突っ切って、祭壇の先に存在する小部屋にへと歩を進める。

 やってきた薄暗い小部屋には、ベルが持っている英雄譚が数冊程収まっている本棚が連なっていて、一番奥の棚の裏側には男心をくすぐる様な地下へと続く階段が存在していた。

 疲れない程の長さの階段を下りきってから俺は、少しの光を漏らすドアを開け放ち。

 

「ヘスティア様ー帰ったぞ」

「神様、ただいまです! 帰ってきました!」

 

 声を張り上げ、この部屋で寝ているであろう女神に向かってベルと一緒に帰ってきたことを伝えた。俺達が呼びかけた女神は、部屋に入ればすぐに目に入るであろう紫色のソファーに本を読みながら寝転がっていた。

 その女神は俺達の存在に気付いたのかガバッと立ち上がって音をたてながら俺達の前にやってくる。

 

「やぁやぁ二人共お帰りー! 今日も無事帰ってきてくれて僕は嬉しいよ! でもいつもより早かったね、何かあったのかい?」

 

 そんな事を聞きながらパタパタと俺達の体を触るヘスティア様、多分だが俺達に怪我をしたのか確認しているのだろう。

 

「ちょっと死にかけたが、特に問題はないぞヘスティア様」

「おいおいレイク君、ベル君もそうだが僕は君達に死なれたらショックを受けてしまうよ。柄にもなく悲しんでしまうかもしれないじゃないか」

「心配するなヘスティア様、俺はともかくベルは死なせなるつもりはないからな」

「レイク? それは僕が許さないよ、君は死なせないからね」

「……了解」

「ふふふ、やっぱり君達は仲がいいね! あ、そうだ。今日は君達の生還祝いとして、ジャガ丸君パーティーでもしようじゃないか!」

 

 ヘスティア様はそんな事を急にいいだして、紙袋いっぱいに入ったジャガ丸君を俺達に見せてきた。そのジャガ丸君を見た俺は、ダンジョンでの疲れも追加されてたのか腹が鳴ってしまい。ジャガ丸君に釘付けになっていた。

 しかし、まだ喜ぶわけにはいかない。あれを確認しない限り、俺はテンションを上げてはいけないのだ。

 

「ヘスティア様は……あれは、あるか?」

「ふっふっふ、抜かりなしだよレイク君」

 

 ドヤ顔をしながらそういうヘスティア様の手には小豆クリームが詰まっているタッパーがあった。俺はテンションを上げながらヘスティア様からジャガ丸君を受け取り、小豆クリームを塗っていく。

 そして、しばらく三人でジャガ丸君を食べていると――――突然、厳霊丸が話しかけてきた。

 

(レイク、誰かこの教会に近づいてきてるよ。私は寝るけど、結構強いから気を付けてねー)

 

 俺はそれを聞いて、すぐにどんな相手が近づいているのかを厳霊丸に聞こうとしたの……厳霊丸はすでに寝てしまっていて、話しかけても返事は帰ってくることは無かった。

 自由すぎるだろ、と文句を言いたいがあいつは寝ているのでそれは心の中に残しておく。

 俺は二人にもこの事を伝えようとしたのだが、楽しそうに談笑している二人の邪魔をするのは悪い気がしたので、一人で確かめに行くことにした。

 

 階段を上がり、教会を出た俺はこの場所に向かってくる人影を見つける。

 そいつは、薄暗い路地裏でもすぐ見つけられるような綺麗な金髪と瞳を持っていて、ダンジョンで助けてくれた少女にそっくり――――というか、助けてくれた少女本人だった。

 

 少女は、上がってきた俺に気付いたようで、少し歩を速めて俺のほうへ近づいてくる。

 少女がこちらに向かってくる間に俺は、なんで少女が向かってくるのか、どうしてこの場所にこれたんだよ等といったいろんな疑問が湧いて来たのだが、考えている内にどんどん混乱してしまい俺は自然と考えるのをやめてしまった。

 そんな俺の状態を知らない少女は、混乱してる俺の所までやってきて挨拶をしてくる。

 

「こんばんは?」

「……こんばんは」

 

 気が抜ける挨拶をされた俺は普通に返事を返したのだが、いまだ頭は混乱していてこれ以上何も喋れそうになかった。どうやって会話を繋ぐか、そんな事を考えるが一向に思いつかない。

 数秒が経たったが、この場所には沈黙が満ちていた。

 流石にこの空気に耐え切れなくなった俺は、どうしてここに少女が来たのか聞くことにする。

 

「えっと、何か用か? ダンジョンの事で何かあったのか?」

「うん、エリクサーを使ったけどあれだけの傷を受けてたから心配で――あ、あと聞きたいことがあったから」

「傷についてはもう大丈夫だ。それと、聞きたいことか?」

 

 聞きたいこととはなんだ? この少女みたいな強者が、駆け出しの俺に聞くことなんて、ある気がしないのだが……。

 

「君はどうやってミノタウロスをあそこまで傷つけたの?」

「どうやってって、どういうことだ?」

「ミノタウロスの体は硬いから、君の持っていた武器じゃ掠りはするけど貫けないはず……なのに、君はミノタウロス体にいくつも穴を開けていたから、それが気になって」

 

 そう聞かれたが俺はどう答えていいかわからなかった。

 武器の力を借りたといえば絶対に頭の可笑しい奴扱いされているし、何より厳霊丸の事を素直に伝えるということは出来ない。

 

「気合?」

 

 だから俺はそう答えたんだが、真面目に考えてみると何言ってんだ俺とすぐに自分の言ったことを後悔したんだが、何故か少女は納得したような顔をして。

 

「……気合、やっぱり気合なんだ。ロキが気合があればすごい力を発揮できるっていってたけど、本当だったんだね」

 

 そのロキがどんな奴かは分からないが、そのロキのおかげで俺は変人扱いをされずに済んだようだ。俺は質問に答えれたことにほっとしたが、一番突っ込まないといけないことを忘れていた。

 

「……というか、お前どうしてここに来れたんだ? ここはメインストリートから離れてるし、かなり入り組んだ道をしてるはずだぞ?」

「勘? あとジャガ丸君の気配を感じた方向に進んでたら自然と来れた」

「……ちょっと、待ってくれ。ジャガ丸君?」

「うん、ジャガ丸君」

 

 待ってくれ、意味が分からない――ジャガ丸君の気配ってなんなんだよ。揚げ物がどんな気配を持ってるっていうんだよ、そもそもどうしてこの少女はそれを感じ取れるんだよ。

 考えれば考えるほど意味が分からない、頭が痛くなってきた。

 

「…………一応聞くが、今教会の中でジャガ丸君パーティーしているんだが来るか?」

 

 そう聞いた途端に少女の目は輝き始め、それだけではなく俺はブンブンと振られる尻尾と走り回る子供を幻視してしまう。なんでこんなものが見えるのかは分からないが、少女が喜んでいるという事だけはなんとなく分かったので、俺はこのまま少女を教会の地下まで案内するとにした。

 

「あ、そうだ。何味がある?」

「ジャガ丸君のか? えっと、塩とソースと醤油と……小豆クリームだ」

 

 最初の三つを聞いた時の少女の反応はここに来た時と変わらなかったが、小豆クリームと聞いた瞬間にまたさっきの光景を幻視した俺は、この少女が同士だという事を理解した。

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