生まれたらミリムの親友になれた件   作:骨人

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勇者襲来

私は勇者が来るのを待つ事にしました。

 

「ここか、魔王!」

 

すると煌びやかな鎧、そしてレイピアを携えた少女が来ました。どうやら彼女が勇者のようです。

 

「ええ、確かに私が魔王です。貴女は?」

 

「私はディルフィナル王国から来た勇者ルナ!お前が王国の人々を洗脳し、我らに反乱させると聞き討伐に来た!」

 

「いえ、彼らに洗脳なんてしてませんよ?」

 

「あの木から放たれる邪気を使ったのでしょう!?」

 

「あの木はそもそも私が生やした物ではありませんし、そもそもあの木はトレントです。邪気なんて放ちませんよ?仮にそれが出来たとして私に何のメリットがあるのでしょう?」

 

「そ、それは…人間達を滅ぼそうと……」

 

「いえ、私はこの森とあの王国に危害を与えない限りは他の国に対して何かするつもりはありません」

 

「う、うぅ…」

 

何故か泣き出しました

 

「あの、私が何か悪い事しましたか?」

 

「う、うるさい!私に倒されろぉぉ!」

 

するとレイピアに光が集まり始めました。

 

「あの、申し訳ないのですが」

 

「なんです!?今から貴方をぶっ殺しますからね!」

 

「私と戦うならこの森の中ではやめてもらえませんか?森に危害を加えたくありませんし、この近くには王国の畑があります、私達の戦闘の余波で作物が荒らされては彼らも困るでしょう」

 

「……それもそうですね」

 

レイピアから急速に光が無くなって行きました。

 

「では、少し行った先に荒地がありますので、そこで戦うというのはどうでしょう?」

 

「…分かりました、貴方を討つのは決定事項ですが、無闇に民に危害を加えたくありませんし」

 

 

 

そして荒地へと移動しました。

 

 

「喰らえ魔王!」

 

着いて早々に先制攻撃されました。

 

「おっと」

 

私は紙一重で躱しました。

 

「不意打ちのはず…」

 

「ええ、びっくりしました」

 

「くぅぅ…なんですか貴方!」

 

どうやら攻撃を躱されたのが悔しいようです。

 

「魔王です」

 

「ええ確かにそうですね!私が言ってるのは何故不意打ちを回避出来たのかです!」

 

「何となくですよ」

 

「もういいです。ぶっ殺します。全力で!」

 

するとレイピアに先程の倍以上の光が集まりました。

 

「あの、それを放つと私の後ろまで被害が及ぶのですが?」

 

「うるさいですね!貴方が全部受け止めればいいでしょう!?」

 

「明らかに受け止められないと思いますが…」

 

「なら根性で受け止めてください!というか私も想像以上に力が集まって困惑してますからね!?」

 

「なら途中で止めればいいのでは?」

 

「これを止めたら私が衝撃で木っ端微塵になりますよ!」

 

「分かりました、なら早く放って下さい」

 

「ええ、分かってますし。そもそも貴方を殺す為ですからね!いけ!【光神斬】!」

 

レイピアの先端から私を覆い尽くしても足りない程の光が放たれました。

 

「これを受け止めなければならないんですよね…」

 

私は何とか抑えようと全身で受け止めますが、やはり一部は私を通り抜けて行きますし、そもそも光で全身が焼けて痛いです。

 

「ぐ、ぁぁぁ!」

 

それでも何とか受け止めました。…後ろの被害には目を瞑りますが

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

勇者のルナさんが倒れてました。

 

「こ、【光神斬】は自分の持つ力を使って放つ必殺技……撃てば威力は絶大ですが、代わりに動けなくなります」

 

「それじゃあ私を倒した後どうするつもりだったんですか…その姿じゃ恐らく立ち上がれないでしょう?」

 

「うぅ……起こして下さい」

 

私はルナさんをおんぶして森へと帰ります。

 

「貴女はしばらく休みなさい」

 

「うぅ……回復したらまた戦いますからね!今度こそ貴方を殺しますからね!」

 

「ええ、楽しみにしておきます」

 

「きぃぃぃ!絶対貴方を殺してみせます!」

 

その後、ルナさんは回復した後に国へと帰りました。彼女を休ませた場所には紙が落ちており

 

 

今回は負けましたが次は仲間達を集めて挑んでやりますからね!覚悟しておくといいですよ!

 

と書かれていました。

 

そして一週間後、仲間を引き連れて私を殺しに来たルナさんは

 

「さぁ!仲間は集まりました!今度こそ、貴方の最後です!」

 

と意気込み

 

「なんで倒れないんですかぁぁ!」

 

息切れした仲間達と共に帰りました。

私ですか?そこそこ怪我を負いましたよ。一晩寝たら治りましたが

 

そこから一週間に一回のペースでルナさんと仲間達は私を殺しに来ました。その度に私も怪我を負い、ルナさん達も強くなっていきました。

 

そしてそんな事を繰り返したある日。

 

「……魔王さん」

 

「ええ、なんでしょうか?ルナさん」

 

「私、最近思ったんですよ。貴方は魔王と呼ばれていますけど実際会ってみればただの優しい人。……王国で聞かされた話とはまるっきり違います、あの時だって私が倒れた時に殺せたはずなのに…」

 

「私は人を余り殺したくはありません。……被害を受けたなら別ですが」

 

「そうですか……あーあ、仲間との連携を生かして戦っているのにどうして勝てないんでしょう…」

 

「それでも貴女達は着実に強くなっていますよ。私も何度かヒヤリとした場面がありますし」

 

「…本当ですか?」

 

「ええ」

 

「…ふふ、やりました。この調子でいけば貴方を殺せるかもしれません」

 

「ええ、ですが私を殺した後はどうするんですか?」

 

「魔王さんを殺した後ですか?そうですねぇ…考えた事がありませんでした」

 

「その腕を生かして冒険者、というのになるのはどうでしょう?」

 

「……うーん。私、勇者になる前は普通の村娘だったんですよ。その時の夢が料理屋をやりたいって思ってましたし…」

 

「料理屋ですか……」

 

「はい、仲間たちももう危ない事はしたくないって言ってますし、みんなで料理屋をやろうって私提案したんですよ」

 

「それで返答は?」

 

「みんな喜んで承諾してくれました」

 

「そうですか…なら頑張って私を殺さなければなりませんね」

 

「……でもこうして話してると貴方を殺していいのか…と迷ってしまうんです。私、やっぱり王国の国王様に言って討伐を取り下げて貰おうと思うんです」

 

「何故です?そんな事をすれば貴女や仲間達にも被害が及びますよ?いえ、それだけではありません。貴女や仲間の家族にも被害が出ますよ?」

 

「……うぅ、やっぱり貴方を殺すしかないんですね。いい人なのに…」

 

「情を持ってはいけませんよ?もしかしたら私が貴女を誑かしているのかも知れませんし」

 

「…ふふ、そうかもしれません。ですけど貴方はそんな事をする人とは思えませんよ」

 

「そうですか」

 

「ええ、それではまた明日、貴方に挑みますからね!」

 

そう言って仲間達を引き連れて帰っていくルナさん。

 

 

 

しかしこの日以降、彼女と仲間達が私の元へ訪れる事はありませんでした。

 


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