お漢(かん)転生   作:ガイル01

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お待たせしました、今回ははやめにできました!
しかし、色々やりすぎた感が…
原作の裏場面となるつなぎの回なイメージです、今後も原作の裏という感じで色々書くと思います。

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



第9話

 俺は昼飯を食うために、支取の薦める店に向かう。

 

「ここです。」

「意外だな、うどんか。」

「意外ですか?」

「ああ、あまりそういうイメージがなかったからな。値段とか気にしてんなら遠慮はいらねえぞ。」

「いえ、純粋に私が好きなだけですから気にしないでください。」

「そうか。」

 

 そういって『小西屋』にはいる。

 

「「「いらっしゃいませ。」」」

 

 店員に案内され、テーブルに着く。

 

「私は…明太豆乳うどんをお願いします。」

「俺は、天もりだな。」

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」

 

 店員がそういって下がる。

 

「ここにはよくくんのか?」

「ええ、それなりに。時間もかかりませんし。」

「お前な…」

「ふふ、もう大丈夫ですよ。無理はしてませんから。」

「そうかよ。」

 

 そう言うと、周りを見渡す。

 へぇ、製麺所が見えんのか、ここ。

 

「気づきましたか、ここは店できちんと麺を打ってるので美味しいんですよ。それにリアスも結構来ているんですよ。」

「グレモリーもか。」

 

 爵位持ちの悪魔が通う店か、そう考えるととんでもねえな。

 

「リアスとはここの今学期に行われる球技大会で負けたほうが勝った方にここのトッピング全部つけたうどんを奢る約束をしているんです。」

「そ、そうか…」

 

 すごく楽しそうにしてっが、トッピング全種って相当な量だぞってか、味のバランスが…

 まぁ、本人たちが楽しんでんなら俺がなんか言う必要もねえか。

 

「おまたせしました!」

 

 目の前にうどんが置かれる、麺は冷水できゅっと締められ、白い表面が艶やかに輝き、揚げ物も衣がでかいような出来損ないではなく、衣は薄めで素材をしっかり引き立てるような揚げ方をしているように見え、とても美味そうだ。

 

「「いただきます。」」

 

 俺たちは食べ始める。

 

 想像通り、うめぇ。

 

 汁もうどんに負けずしっかりとしたもので、天ぷらにも合う。

 

 その中、どうしても気になるモンがある。

 

「支取、そりゃうめえのか?」

「はい、美味しいですよ。」

 

 支取の頼んだうどんは、豆乳のベースの冷製スープに明太子、とろろ、オクラが入ったうどんだった。

 

「一口食べますか?」

「良いのか?」

「荒垣君なら構いませんよ。」

「じゃあ、貰うぜ。」

 

 支取が前に出してきた器を受け取り、一口食べる。

 

 あ~なるほどな。

 

「いかがですか?」

「俺ァ好きな味だが、相当人を選ぶな。スープも具も全て独特だから一つでもダメなヤツは食えねえだろう。」

 

 豆乳も明太子もとろろもオクラも全て独特の食感と風味だからな。

 

「だが、それらをすげぇうまくまとめてあって美味ぇと思うぞ。」

「そうですか、ならよかったです。」

 

 俺は支取に器を返す。

 

「ほらよ。」

 

 天ぷらを一つ小皿に乗せて支取に渡す。

 

「え、よいのですか?」

「一口貰ったお返しだ。」

「つりあっていない気がするのですが…」

「気にすんな。」

 

 そう言って、自分のうどんを食べ始める。

 

「ありがとうございます。」

「おう。」

 

 

 

 

 

「それでは、私はこれで失礼します。」

「おう。」

 

 支取とうどんを食った後、場所を変え、茶を飲みながら情報交換をして別れる。

 

「あそこのうどんは美味かったな。こんどラーメンだけじゃなく、うどん関係も色々探してみっか。」

 

 そんなことを考えつつ、一旦家に帰り、コロちゃんを戻す。

 その頃には既に夕方になっていた。

 

「さて、じゃあ行くか。」

 

 俺はある場所へと向う。

 

『瀕死大変 仲間を助ける 地返しの玉と反魂香~』

 

 店の前に立つと聞きなれた歌が聞こえてくる。

 

『いつも 戦うみんなの味方 僕等の町の お薬屋 さ ん』

 

 いつも思うが薬局じゃねえだろ…

 まぁ、前が薬局で規模拡張でスーパーになったらしいが、この歌は昔っから変わんねえらしいな。

 

 それはいいとして、俺は店の中に入る。

 

 やっぱりか…

 

 店の中は空気が張り詰めている。

 店にいるのは大半が主婦、それも歴戦の猛者たちだ。

 俺は店の中を歩き回り、詰め放題会場と卵の販売の場所を確認する。

 

「チッ、大分離れてやがる。」

 

 卵の販売スペースと詰め放題会場は明らかに意図的にブースが離されており、客を分散させようとしてやがる。

 下手に両方なんてやろうモンなら両方トリ損ねる。

 

「どうすっか…」

 

 この配置…一人じゃ厳しい。

 

 ん?

 

 そういやぁ、前にも似たようなことがあった気が…

 

「あらあら、もしかして荒垣君ですか?」

 

 振り向くとそこには黒髪の女がいた。

 

「あ~…」

 

 誰だ?

 

「いつも娘がお世話になっています。って、もう時間!」

 

 その人はあたりを見渡す、緊張感が大分増してやがる。

 そろそろスタートってことか。

 この感じだとこの人は相当慣れてやがるな。

 

「急で申し訳ないのですが、提案があるのですが。」

「なんですか?」

 

 笑顔のように見えるが一瞬目の奥が光ったな、ここでは外ので関係とかは役に立たねえ、自分と相手に利益があるか、そのバランス次第で敵にも味方にもなる。

 

「共同戦線をはりませんか?お気づきでしょう?」

「ブースの位置関係…。」

「はい、そうです。私が海老で、貴方が卵でいかがでしょうか?」

「…」

 

 俺は考え始める。

 

 見たとここの人も一人だ、両方はいけねえはず。

 ここはモノをとるのは何個でも良かったはずだ、レジで会計すっときはじめて一つ無料になる。

 なら、各自が片方に専念し、お互いのブツをレジ前で共有すんのが一番効率的だ。

 

「しかし、あんたの方が大変なんじゃ…」

 

 あの群れを掻き分けながら、二つ詰め放題をやんのは容易じゃねえ。

 並みのシャドウなんか吹き飛ばす勢いだからな。

 

 だが…

 

「問題ありませんわ、これでも長年主婦をやってる身ですから。」

 

 俺はその人を見る。

 

 疑うのは当たり前だろう。

 

 今日のメインは明らかに詰め放題の方だ。

 これでこの人が失敗したらと考えると…

 

「時間がありませんわ。」

 

 俺は…

 

「わかった。」

 

 この人を信用することにした

 

「ふふ、じゃあ卵はよろしくお願いします。レジの前で会いましょう。」

 

 そういってその人は詰め放題のブースへと向う。

 

「…俺も行くか。」

 

 

 俺も自分のブースへと向う。

 

 

 

 

5分後

 

 

 

 うわああああああああ!!!!!

 

「ちょっと、どきなさい!」

「足踏まないでよ!!」

「それは私のよ!」

「私のよ!」

 

 相変わらずやべえな。

 

 既にそこは地獄と化していた。

 女としての姿などかなぐり捨て、手を伸ばす。

 我先にと言う姿は、地獄に垂らされた救いの糸に群がる亡者のようだ。

 

「私が抑え…きゃぁあああああ。」

「リサぁああああああ、きゃああああああ…」

 

 また、誰か飲み込まれたか!

 

「クソッ、あと少し。」

 

 俺は手を伸ばす。

 取らせまいと何度も打ち落とされる、それでも伸ばすッ!

 

 カッ

 

 指の先がパックの縁に引っかかる、一気に引き寄せる。

 

「まず一つ!」

 

 

 寄る波、引く波を見極める。

 

 そこだっ!

 

 波に合わせて、一気に突っ込む。

 

 残りはわずかだ、これがラストだ!!

 

「オラァッ!!」

 

 手を伸ばす、肩をいれ、間接をフルに使う。

 下に人がいようが関係ねえ。

 

「よしっ!」

 

 つい掴んだ!!

 

 俺は一気にその場から離れる。

 あの場で気を抜こうモンなら一瞬で奪われるかんな。

 

「ふ~、なんとかなったか。」

 

 手元には二つの卵パック。

 一時期から値上げされているからありがてえ。

 

「あっちはどうなってるか。」

 

 もう片方のブースを覗く。

 

 

 

 戦場だった。

 

 

 

 俺の方が生ぬるいと感じるほどに。

 

 傷を負っていないヤツはいない。

 しかし、誰も退かない。

 ブースの外には倒れ伏せる敗者とボロボロになりながらも戦利品を勝ち取った勝者の二つに分かれ、この世の縮図のようであった。

 

「こりゃ、無理か。」

 

 あの中で二つは無理だろう、そんなことを考えながらレジに向う。

 レジの前であの人を見つける。

 向こうも気づき声をかけてくる。

 

「あらあら、お待たせしてしまいましたか。」

「なっ!!」

 

 俺は驚愕した。

 

 その人は会った時と全く変わらず、怪我も服の乱れも全くない。

 

 しかし、その手に持つかごには確かに戦利品が入っていた。

 

 しかもこりゃあ…

 

 美しいとまで感じさせる詰め方。

 

 ある意味極致であった。

 

 これ以上決して入らず、無駄も一切ない。

 

 実用的な美しさ。

 

 家事に携わるヤツなら見とれずにはいられないほどの完成度だった。

 

「すげぇ。」

 

 思わず声がこぼれる。

 

「ふふ、ありがとうございます。それではどうぞ。」

 

 その人はそう言って俺に渡してくる。

 

「あ、俺もですね。」

 

 俺も卵を取り出し、その人のかごに入れる。

 

 ッ!

 

 その人のかごには既に他の食材が入っていた。

 

 いつの間に…この人ほんとになにモンだ?

 

「あらいけない。もうこんな時間、荒垣君。今日は助かりましたわ、それじゃあ失礼させてもらいますね。」

「あ、俺も助かりました…」

 

 そう言いながらその人は笑顔で手を振り、レジをへと消えていった。

 

「俺も行くか。っとその前に他のモン買いに行くか。」

 

 呆けてた俺は気を取り直し、他のモンを買いにレジから離れる。

 

 娘ってたが誰だ…?

 

 そんなことを考えながら、買い物を済ませた。

 

 

 

 外を出て、帰る途中。もう大分日は暮れ、街灯には明かりが付き始める頃。

 

(荒垣君今良いかしら。)

 

 グレモリーから連絡が入った。

 

(なんだ。)

(堕天使が接触してきたわ。)

(なに?)

 

 昨日の今日でか?

 早急すぎる…

 

(イッセーが今日あのシスターと再会したらしく。一日町で遊んでたらしいわ。)

 

 馬鹿かあいつわ!

 いや、馬鹿だったな。

 

(それで、イッセーに怪我はなかったけどシスターが連れて行かれたわ。)

(ッツ!)

 

 そうか…結局つかまったか。

 

(その際に、儀式とか言ってたらしいわ。おそらくそれがヤツラの狙い。それで私たちは奴等を叩くことにしたわ。儀式がどんなものか分からないけど、ソーナが行ってた通り、わざわざ私の治める地にまで来てやる事だもの、危険な予感がするわ。)

(わかった。それで俺はどうする。)

(それはね…(私から説明します。))

(支取か。)

(ええ、荒垣君。先ほど振りです。)

 

 急に支取が割り込んできた。

 てか、複数の交信とかできんのかよ…

 

(ソーナ…)

(ごめんなさい、リアス。新しい情報だから。)

(なにかしら。)

 

 グレモリーの声に緊張感が戻る。

 

(どうやら敵は二手に分かれているそうです。外で敵を排除する堕天使組と中で儀式をする組とその護衛。儀式がどれほど時間のかかるものかわからないためこちらも二手に分かれて、迅速に行動すべきです。)

(ええ、そうね。此方は祐斗、小猫、イッセーを突撃組、外の敵の排除を私と朱乃が行うわ。荒垣君は突入組かしら。)

(いや、外に堕天使が居んなら、俺も外に行く。それにお前らは基本後衛だろう。前衛が一人も無しでどうする。)

(リアス、貴方と姫島さんの実力を疑うわけではありませんが、下級と中級レベルとは言え相手は堕天使です。はぐれ悪魔のように単純にはいかないのですよ。)

(…分かったわ。荒垣君はこちらの手伝いをお願いするわ。)

 

 …なんで悪魔も堕天使も格下を侮る真似をすんだ?

 そんなことしてたら死ぬぞ。

 

(あと、ソーナは堕天使たちが逃げないように結界をお願い。)

(ここは貴方の領地ですからね、わかりました。ただし、危険を感じたら直ぐに介入します。)

(大丈夫よ、直ぐに消滅させてやるわ。私の領地で好き勝手やったことを後悔させてあげる。)

 

 おい、それは…

 

(おい、グレモ(じゃあ、作戦開始と行きましょう!荒垣君はそうね、今使い魔を送るわ。その子についてきて頂戴、召喚してもいいんだけど魔力で相手にばれたくないから。じゃあ、後で会いましょう。))

 

 ブツッ

 

 電話が切れたような音と共にグレモリーの声が聞こえなくなる。

 

(荒垣君フォローをお願いします。あの子頭は良いのに時々突っ走る癖があるので…)

 

 どこか呆れた口調で支取が言う。

 

(おい、支取。お前は今回のことどう思う。)

(お昼に言ったように色々面倒ではあると思います。)

(言い方を変える。堕天使を殺すことに関してはどうだ?)

(今回は彼女らの独断らしいですから、悪魔と堕天使間の関係にそれほど影響はないでしょう。ただ、個人的感情による復讐を考えるものがいると厄介ですね。)

(そうか…)

 

 そういった考えか…

 

(荒垣君?)

(いや、なんでもねえ。グレモリーに関しては出来る限りはする。後は俺の好きにさせてもらうぜ。)

(分かりました。あと)

(あん?)

(気をつけてください、いくら力を持っていても貴方は人間なのですから。)

(おう。)

 

 そう言うと支取の声も聞こえなくなる。

 

 人間と悪魔か…ここまで違ぇとはな。

 

「キキッ!」

 

 その音に上を見るとコウモリが一匹俺の周りを飛んでいる。

 

「グレモリーの使い魔か。」

 

 そう呟くと、道の先へと飛んでいく。

 

「ついてけってたな。」

 

 俺は使い魔の後を追った。

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきありがとうございます。
 ガキさん視点と言うことで原作で言うとイッセーとアーシアのデート?中の出来事ですね。レイナーレとイッセー、アーシアが再会し、アーシアが攫われている時、ガキさんはタイムセールで魑魅魍魎たちと戦っていました。
 あと、原作と大きく異なるのは支取の存在です。
 彼女が調査に参加したおかげで堕天使が独断で動いていることが早めに分かりました。
 そのため原作ではリアスとイッセーが喧嘩し、イッセーたちが教会に乗り込み、実は裏でリアスが堕天使が独断であることを知り、堕天使と戦うと言うことでしたが、本作では堕天使が独断であることの裏が早めに取れたので儀式の中止と堕天使の排除を目的でグレモリー眷属全員で動きます。ただ、グレモリーはアーシアを助けるとは一言も言っていません。
 支取は今回結界と言う裏方に回っていただきましたが、そのうち戦闘にもだしていきたいと考えています…また原作改変になりそうです。

 最後にUAなるものが1万を突破し、お気に入りも150を突破しました。
 多くの方々に見ていただいているのだと感激し、皆様にこれからも楽しんでいただける作品になるよう楽しみながらがんばります!
 これからもよろしくお願いします。

 ご意見、ご質問、感想等ございましたら、遠慮なくどんどんどうぞ。

 ではまた次回お会いしましょう。
 
[補足]
・スーパーのテーマソング
 ペルソナ初代や2の薬局サトミタダシで流れる洗脳ソング。一度聞くと頭から離れない。youtubeなどにもあるので是非一度聞いてみてください。

・なぜの女性
 正体不明ですが、娘とガキさんが関係があるらしい。主婦レベルはガキさんも驚くほどの高さ。

・殺すことへの覚悟
グレモリー
 戦争にならないことが分かり後顧の憂いがなくなり、自分の領地で好き勝手やっていることに怒りを覚え、罰として殺す。その後のことはあまり考えていない。

支取
 殺した後の被害や状況への影響など第3者的視点の理解はあるが、殺すことで背負うものがあるというイメージはない。

 昔から仇敵がいる、戦いが日常の悪魔とそうでない人間の差が現れています。
 悪魔は堕天子や天使との戦いが当たり前と教育を受け、倒すべき敵と教え込まれているため、殺した後の影響などには意識をするが、改めて、戦いや殺すことへの覚悟、殺した後の覚悟という考えが薄い彼女らにガキさんは不安と苛立ちを覚えています。
 グレモリーへはさらに色々考えています。
 本作では、もしかしたら原作より、グレモリーが愚かっぽく見えているかもしれませんがすみません。イッセーも最初は相当頼りなく見えるかもしれません。
 原作キャラは皆大好きです、最初っから完璧なのもつまらないと考える作者のせいです、すみません。
 本作ではキャラクターたちはしっかり成長していく予定なので長い目で見ていただければと思います。



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