お漢(かん)転生   作:ガイル01

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お待たせしました!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





第16話

 

「ん…」

 

(まぶしい…ここは…)

 

 塔城は目覚めたばかりで上手く頭が働かないのか周りを何度か見渡す。

 自分がいるのは大きな木の陰、時折吹く風が気持ちよく、目に映るのは穏やかに流れる川、と開けた空間。ただ所々に穴が開き、美しい自然の景観とは言えない。

 

(確か…ツゥ!)

 

 そこで、自分の様子を見る。身体のいたる所が痣や擦り傷だらけであった。特に腕はひどかったが腕の痣の部分には濡れたタオルが巻かれており、熱を持った傷に心地よい。

 

(そうだ、私は荒垣先輩と戦って…負けた)

 

 塔城は起き上がった身体をまた横に倒す。

 

(荒垣先輩は人間なのに負けた、私は実は弱いのかな…)

 

 人間や悪魔なんて戦いに関係ない、強い者は強い。

 荒垣の実力も認めているが、それでも負けてしまった悔しさからそんなことを考えてしまう。

 

(あの時だって私は何も出来ず…)

 

「強くならなきゃいけません、強くならなきゃ…」

 

 つい、頭で考えていたことが口からこぼれる。

 

「お、起きたか…」

「!?荒垣先輩!?」

 

(聞かれてしまいましたか!?)

 

「わりぃ、驚かせたか」

 

 塔城は急に脇から声を掛けられ、驚きながらも起き上がろうとする。

 

「い、いえ、私こそ驚いてしまいすみませッ」

「悪魔がいくら頑丈だっていったってあんだけ打たれりゃきついだろ。無理はすんな、逆に迷惑だ」

「すみません」

 

 若干気まずい空気が場に流れる。

 

「あの…」

「あっ?」

「荒垣先輩はなぜ今も強いんですか?」

「俺がそこそこ出来んのは昔…」

 

 それをさえぎるように塔城が言葉を紡ぐ。

 

「はい、強くなったのは昔何かがあったからと聞きました。でもさっきの動きは今でも鍛え上げている人の動きです。なぜ今も?」

 

 真剣な眼差しで塔城は荒垣を見つめる。

 

「はぁ…」

 

 荒垣は頭をかきながら塔城の隣に座る。

 

「始めはダチとの約束があったからだ。」

「友達ですか?」

「ああ。ほっときゃあいいのにわざわざ寄ってくる訳のわかんねぇヤツだ。」

 

(そうは言いつつ荒垣先輩楽しそう…まさか女の人)

 

 塔城の中で複雑な感情が生まれつつも、荒垣の話しを聞く。

 

「そんなヤツの頼みに必要だろうと考えて最初は鍛えた」

 

(まぁ、他にも色々あるが)

 

「最初は…ですか?」

「ああ、今は違う。強くなるのは俺の意思だ」

「荒垣先輩の…意思」

「ああ、俺自身が覚悟を決めた。他の誰でもない俺自身でだ」

 

 そう言って荒垣は立ち上がり、塔城はその背中を追う。

 塔城には荒垣のその背中は広く大きく見えた。

 

「俺から言えんのは一つだ。強くなろうとする意思を他のヤツに預けんな。そうしちまったら終いだ」

「…はい」

 

(荒垣先輩が強い理由が少しわかった気がします)

(でも、じゃあ私はなぜ戦う?強くなる?あの人のため…)

 

「おい…」

 

(でもそれは…)

 

「おいッ!」

「はい!?すみません、考え事をしていました」

 

 そう言って塔城は立ち上がる。

 

「ならいいがって大丈夫なのか?」

「少し痛みますが動けないほどではありませんし大丈夫です」

「なら昼飯食いにいっぺん戻んぞ」

 

 荒垣は歩き出そうとする。

 

「ちょっと待って下さい。せっかく川に来たので魚を獲っていきます」

「あぁ?そんなことしている時間は…おい」

 

 塔城は川まで近づきおもむろに近くに在った岩を掴む。

 

「ん…まさか!?」

 

 そして

 

「やめッ」

 

 川の中にあった大きな岩にぶつけた。

 

「あ~」

 

 大きな音とかなりの衝撃が当たりに響く、その衝撃はもちろん川に伝わり…

 

「獲れました」

 

 川に逆さまになってプカプカと浮かぶ魚を手に塔城は自慢げに言う。

 

「おま…はぁ。グレモリーの敷地だからまだ良いものを他のところではやんな」

「わかりました」

 

 期待していた言葉が返ってこず、少し不満そうに塔城は答える。

 

「浮かんでるやつ拾ってとっとと戻んぞ」

「はい」

 

 二人は十数匹の魚を捕まえ、一旦合宿所へと戻った。

 

 

………

……

 

 

「おう、戻ったぞ」

「戻りました」

「お二人ともお帰りなさ!?小猫ちゃんどうしたんですか、その格好!?」

 

 二人を出迎えた姫島はボロボロになった塔城の格好を見て驚く。

 

「アーシアちゃん!!こっちに来て下さい!」

 

 姫島が呼ぶとエプロンをつけたアルジェントがやってくる。

 

「は~い、朱乃さんどうしましたか?小猫ちゃんその傷は!?」

「訓練でつきました」

「小猫ちゃんの治療をお願いします!」

「は、はい。とりあえずこちらへ」

「はい」

 

 そう言ってアルジェントと塔城は奥へと消えていった。

 

 

「あれは荒垣君が?」

 

 姫島は荒垣に非難の視線を投げつける。

 

「ああ、あいつがそれを望んだからな」

 

 だが、荒垣はその視線に一切動じずに言ってのける。

 

「…ふぅ、両者の同意の上でしたら文句は言いませんが気をつけてくださいね。アーシアちゃんがいるからと無理はしてはいけませんよ」

「…ああ」

「その間が不安ですが、とりあえず午前中お疲れ様でした。今ご飯の準備をしていますのでちょっと待っててくださいね」

「わかった、外にいるから出来たら声かけてくれ」

「わかりました」

 

 そう言って一旦部屋に戻った後、荒垣は外に出る。

 火を起こし、外にある蛇口で下準備をして魚を焼き始める。

 

 しばらく経つと、魚が焼ける良い匂いがしてくる。

 火から少し離して焼くため時間はかかるが、表面が焼けコゲるのでなく、中までしっかり熱が通り、外側はパリッと仕上がる。

 時々、パチッといいながら川が弾け、魚の油が地面に落ちジュッと音を立てる。

 視覚、聴覚、嗅覚を刺激し、触角と味覚は口内で涎という形でまだかとまだかと抗議を始め、五感をフルに刺激してくる。

 

「荒垣さ~ん」

 

 魚を焼くのに集中していると建物の方からアルジェントが走ってくる。

 

(手に大皿を持ってるって事はこの魚を乗せるためのモンか、取りに行く手間が省けたな)

 

「あっ!?」

「なっ!?」

 

 こちらに向かって走っていたアルジェントが皿で足元が見えなくなっていたために躓く。

 

「チッ」

 

 荒垣は咄嗟に手を伸ばし、アルジェントの服の襟首を掴む。

 

「みゅッ!?」

 

 倒れるのは防いだが首が絞まり、アルジェントがおかしな声を出す。

 そして、首が絞まった衝撃で手から皿が零れ落ちる。

 

「ぬぉ!」

 

 荒垣はそれを地面すれすれでなんとか左手でキャッチする。

 

「ふぅ」

「ケホンケホン、荒垣さんありがとうございました」

 

 体勢を整えながらもむせ返りつつ涙目になりながらアルジェントは礼をいう。

 

「あ~咄嗟だったからあんなやり方になって悪かった」

「いえいえ、元は私が悪いので気にしないでください」

「そうか。ただ、お前は何もない時でさえコケるんだ。なんか持ってる時は気を付けろ」

 

 いつの日かの登校時を思い出しながら荒垣は言う。

 

「う~あれはたまたまです。荒垣さんは意地悪です」

「俺なんかに優しさを求める時点で間違ってんだ」

「いえ、荒垣さんは優しい人です!私をあの時助けてくれました!!」

「意地悪なのと優しいのどっちなんだよ」

「え~と、はぅ~」

 

 さっきとは異なり羞恥で顔を赤くし、困り果てるアルジェント。

 

「それで何の用だ。まぁ、大体予想がつくが」

「はい、朱乃さんが荒垣さんがお魚焼いてるみたいだから取りに行って欲しいってお願いされました」

「そうか」

「あと…」

「ん?」

 

 アルジェントは荒垣の腕に自分の手を乗せる。

 そうすると、淡い緑の光が荒垣の腕を包み込む。

 

「小猫ちゃんから午前中どんな特訓をしてるか聞いたところ、朱乃さんが多分荒垣さんも怪我をしてるから見てきてって」

 

(お見通しってことか…)

 

 確かに、塔城ほどボロボロという訳ではないが、『戦車』の攻撃を両腕で何度も防いだため痣が出来ていた。そして今、料理の際に捲くったジャージの袖からは青痣が見えていた。

 その青痣は緑の光に包まれて消えていく。

 光が消えた時、荒垣の傷は完治していた。

 

「俺が受けるのは初めてだがスゲェな」

「えへへ、そう言って貰えると嬉しいです」

「助かった」

「はい、どういたしまして!」

 

(午後からは恐らく木場とヤルことになるはずだ、なら予め言っとくか)

 

「アルジェント」

「はい」

「お前はなんでここにいる」

「合宿所ですか?」

「違う!はぁ…」

 

 首をかしげるアルジェントに荒垣は話を進める

 

「お前は悪魔になりたくてなったわけじゃねぇ。その力も得たくて得たわけじゃねぇんだろ。お前は周りに流されてここにいて、本当はその力も使いたくねぇんじゃねぇのか?」

 

 アルジェントは目を瞑り、何かを考え始める。

 1分程経ち、目を開けてアルジェントは言う。

 

「はい、私はこの力を得たくて得たわけではありませんし、色々な事もありました。悪魔になったのもイッセーさんや部長さんがなさってくれたことでした」

「ああ」

「でも、この力も悪魔になったことも後悔していません。私は今幸せです。全てが今の私を作っているものです、私のうちのどれか一つでも欠けていたら今の私はありません。この力も悪魔であることもこの先何があろうと否定することも後悔することもありません。」

「…」

「そして、私は今の幸せな時を与えてくれた皆さんを助けたい。恩…とかではなく、私が私の意思で皆さんの役に立ちたい。困ってたら助けてあげたい。」

 

 荒垣をまっすぐ見つめアルジェントははっきりと言う。

 

「…と言ってもまだまだダメダメですが」

 

 真面目な顔から一転照れくさそうに言う。

 

(こいつは…グレモリーのヤツラの中で誰よりも…)

 

「グレモリーも言ってたが、回復の力を持つお前はチームの柱だ」

「でも私はまだ未熟で…」

「お前がどう思おうが回復の力を持っている時点で戦闘の要になる、お前が倒れればチームのヤツラも倒れる。だが、お前がいれば前衛は前に出れる。」

 

(コイツは信頼に足る)

 

「お前は常に生き延びることを考え、常に落ち着いて力を出すことが出来るようになれ」

「はい」

「お前が俺を治すなら、俺がお前も……………守ってやる」

「はい!!」

 

 最後の言葉にアルジェントは嬉しそうに返事をする。

 荒垣はアルジェントに背を向け、魚の様子を見る。

 

「魚が焼けた。持って行くぞ」

「は、はい」

 

 荒垣はまとめて魚をアルジェントの持つ皿に乗せ、家へと歩き出す。

 いつもより足早に…アルジェントはそれをうれしそうについていった。

 

 

………

……

 

 

「うめぇ~!」

 

 頬をパンパンにしながら兵藤が叫ぶ。

 

 あの後、兵藤と木場、その様子を見に行っていたグレモリーが帰ってきて昼食となった。

 

「いや~まじうめぇっす!朱乃さんが作った料理を食えるなんて、生きてて良かった!!」

 

(泣いてまでして喜ぶことか…?)

 

 荒垣は兵藤の様子に呆れつつ食事を進める。

 

「イッセーさん、私もお手伝いしたんですよ。食べてみていただけますか」

 

 そう言って自分の作ったものを差し出す。

 

「美味い、アーシア美味いぞ!」

「良かったです!もし良かったらもっとどうぞ」

「ああ、貰うよ!」

 

 兵藤が食べる様子を不安そうに眺めていたアルジェントだが兵藤の言葉に笑顔で答える。

 

「どれもうめ~この焼き魚も皮はパリッパリで中がジューシーで美味いっす。焼いたのは朱乃さんですか?流石ですね!」

「うふふ、魚を焼いたのは私ではありませんわ」

 

 姫島は嬉しそうに、そしていたずらを考え付いた子どものような笑顔を浮かべながら答える。

 

「え、じゃあアーシア!?」

「私でもありませんよ」

 

 アルジェントも同様の笑顔で答える。

 

「もしかして小猫ちゃん?」

「もしかしてと言う言葉が気になりますが私でもありません」

 

 兵藤に料理が出来ない扱いをされ、少し不機嫌そう塔城が答える。

 

「え…じゃあ…」

 

 兵藤は荒垣のほうを見る。

 

「俺が作っちゃワリィか」

「いえいえいえいえいえ、予想外だっただけで!?」

 

 荒垣が睨むと兵藤は両手を自分の前で振り、焦りながら答える。

 

「魚焼く位なら誰でも出来んだろ」

「あら、そんなことないわ、焼き物も案外難しいのよ。焼き加減とかも絶妙だしとても美味しいわ。それに荒垣君は料理が上手でしょ?」

 

 誤魔化そうとする荒垣にグレモリーがすかさず指摘を入れる

 

「そうなんですか!?」

「初耳です」

 

 荒垣が料理を出来る事を知らない兵藤とアルジェントが驚く。

 

「…なんでグレモリーが知ってる」

「あら、不思議なことではないでしょ。朱乃やクラスメイトから聞いたわ。小学校の頃、料理で女の子を助けたって」

「すげぇ!」

「そうなんですか、すごいです」

 

 後輩二人が尊敬の眼差しで荒垣を見つめる。

 

「んな昔のこと美化されてるだけだろ。たいしたことしてねぇ」

「あら、忘れたって言わないのね」

「…」

「荒垣先輩!先輩の作る飯を食べてみたいです!」

「私もです!」

「「お願いします!!」」

 

 二人は大きく頭を下げる。

 

 荒垣が目を背けると他の者達が見えるが、木場と姫島が笑顔を浮かべ止める気はなさそうに見える。

 塔城は一見無表情のように見えるが、明らかにソワソワし言外に「食べたい」といっているように見える。

 グレモリーはとても楽しそうに荒垣を見つめる。

 

(グレモリー、覚えてやがれ)

 

「気が向いたらな」

「「ありがとうございます!!」」

「気が向いたらっていってんだろ…」

 

 最後の言葉は彼らには届かず、何が出来るのか楽しみだと二人が話す様子を見て、荒垣は諦めた。

 その代わり、グレモリーにからかわれたことに対する仕返しを心に決めた荒垣であった。

 

 

 

 食後、お茶を飲みながら午後の修行のミーティングに入る。

 

「さて、午後だけど組み合わせを変えていくわ。午後はまずアーシアとイッセーと荒垣君は朱乃と共に魔力の修行を。祐斗と小猫は二人で模擬戦。その後、荒垣君と祐斗。小猫とイッセー。アーシアは私と基礎訓練ね。夕食までに出来るのはこれぐらいかしら」

「ええ、いいと思います」

 

 姫島がグレモリーの言葉に答え、他の皆も頷く。

 

「では、午後も頑張りましょう!」

 

 

………

……

 

 

「さて、じゃあまずは魔力の扱い方からいきますね。体内に流れる魔力を血の流れに合わせる様に集めます。意識を集中し、魔力の波動を感じるのですよ」

「ふぉおおおおおお」

 

 姫島の説明に兵藤が挑戦するが一向に成功しない。

 

「じゃあ、アーシアちゃん。見本をお願いできるかしら。午前中にやった感じでやれば丈夫だから」

「は、はい」

 

 アルジェントは緊張した様子ながらも魔力を上手く操り、テニスボール位の大きさの魔力の塊を手のひらに作り出す。

 

「はい、アーシアちゃんお見事です。やっぱりアーシアちゃんには魔力を操る才能があるのかもしれませんね」

「ありがとうございます」

 

 姫島に褒められ、頬を染めるアルジェント。

 

「では、アーシアちゃんはイッセー君の様子を見ててもらえますか。私は荒垣君をみますから」

「はい、わかりました!イッセーさんよろしくお願いします」

「ああ、アーシアよろしく」

 

 そうして二人で魔力の基礎訓練を始める。

 

「では荒垣君ですが…」

「ああ」

「難しいですか?」

「…」

 

 荒垣も兵藤と同じように集中をしてみたが魔力が具現化することはなかった。

 

「う~ん、なぜでしょう…」

「さぁな」

 

(俺のペルソナは元々ほぼ物理技しか覚えなかったからな。他のヤツラみてぇに火や雷なんざ使えなかった、ペルソナがもう一人の自分なら俺もアルジェントがやったようなのは出来ねぇだろうな)

 

「ん?では荒垣君。貴方はどうやって堕天使と戦っていたんですか?」

「普通に殴り飛ばしただけだが」

 

(前回はな)

 

「ん~もしかして…荒垣君武器を構えてくれますか?」

「わかった」

 

 荒垣が木刀を構える。

 その様子を姫島がジッと眺める。

 

「実際に戦闘を意識して構えてみてください」

「ああ」

 

 荒垣は一呼吸置いて、臨戦態勢になる。

 雰囲気の変化に兵藤とアルジェントも修行を止め、荒垣を眺める。

 

「…はい、ありがとうございます」

「おう」

 

 フッと張り詰めた空気が和らぐ。

 

「今、荒垣君が戦闘態勢に入ったとたん、魔力が活性化し身体と武器の強化が確認できました。やはり、以前部室で話したように無意識では魔力が使えているようですね。もしかしたら、荒垣君は強化の特化型なのかもしれませんね」

「そうか…」

 

(やっぱりか、もう一人の俺である俺のペルソナは魔法がつかえねぇんだから俺も使えねぇわな)

 

「でも…」

「ん?」

「あの時計がなくても、魔力は使えるみたいですね」

「ッ!」

 

(そういや、ペルソナの事を隠すためにあの時計の魔力を使って強化してることになってやがったはずだ。マズッた)

 

「おそらく、自身の魔力と時計の魔力の両方を合わせての強化。それが荒垣君の強さの一つなのかもしれませんね」

「あ、ああ…そうだな」

 

(あぶねぇ、バレなかったか。あの時計とはパスがつながっているらしいが、得体のしれねぇ力なんざ使う気はねぇ。今までもペルソナによる強化だけだ。だがバレねぇようにもあの時計は常に持ち歩くようにしねぇとな。…まだ、コイツラに伝える気にはなれねぇ)

 

「では、荒垣君は自身と武器への魔力強化を鍛えましょう」

「ああ」

 

(強化に関しては今まで確かに無意識だったからな。意識するだけでも大分変わるだろう)

 

「朱乃さん、すみませ~ん」

「はい、イッセー君どうしましたか?」

 

 俺と姫島の話しが一段楽したところで兵藤が姫島に話しかける。

 

「実は相談が…」

 

 兵藤が姫島に近寄り、何かを言う。

 姫島が一瞬あっけに取られた顔をすると、笑いながら外に出て行く。

 

「兵藤、なにした」

「ちょっと考えたことが実現可能か相談したんですが…」

 

 荒垣と兵頭が話していると姫島が大量のたまねぎやにんじん、ジャガイモを持ってきた。

 

「野菜なんか持ってきてどうすんだ」

「ではイッセー君。これを全部魔力でお願いしますね」

「と、いうことは!?」

「ええ、恐らく実現可能だと思います」

「おっしゃああああ!!やってやるぜえええええ!!!」

 

 そう言って兵藤は姫島から野菜を受け取り、手に持ちながら野菜を睨みつけ始める。

 

「おい、姫島。あいつはなにやってんだ」

 

 野菜を睨みつけながら時折グフフと笑う兵藤にドン引きしながら荒垣が尋ねる。

 

「うふふ、秘密ですわ。ただ、とてもイッセー君らしいことですわ」

「おいおい、嫌な予感しかしねぇぞ」

「うふふふ」

「はぁ」

「じゃあ、アーシアちゃんもこっちへ。一緒に午前の続きをしましょう」

「はい!」

 

 そうして、不気味な兵藤を除き、三人で魔力の訓練を行った。

 

 

 

 ある程度するとグレモリーが荒垣たちの元を尋ね、交代の時間だと告げる。

 家から出ると木場と塔城が待っていた。

 

「じゃあ、お昼に言ったように祐斗と荒垣君、イッセーと小猫のペアで修行を行いましょう」

 

 グレモリーがそういうと木場が荒垣の下へと近寄る。

 

「荒垣先輩。よろしくお願いします」

「おう」

「先輩と手合わせできるのを楽しみにしていました」

「…そうか」

 

(やっぱり「手合わせ」に「楽しみ」か…)

 

「そういえば何人かは荒垣君が戦っているのをしっかり見たことがないわよね。なら、最初は祐斗と荒垣君の模擬戦を皆で見学しましょう、では二人ともお願い」

 

 グレモリーがそういうと木場が木刀を構える。

 

「はぁ」

 

 ため息をつきつつ、荒垣も木刀を構える。

 

「では、はじめ!!」

 

 グレモリーの宣言と共に木場が動く。

 正面から駆けてきたかと思うと、急に姿が消える。

 荒垣の背後から木刀を振り下ろす。

 荒垣はそれを片手で受け止め、木場を弾き飛ばす。

 

「参りましたね、これを簡単に受け止めますか」

「…」

 

(あの頃、不意打ちなんかくらったら即効で戦闘不能になったからな。下手すりゃ死んでた。あんな分かりやすい不意打ちを喰らうか。それより…)

 

「なら、行きます!」

 

 木場は次々と荒垣を攻め立てる。

 荒垣はそれを防ぐ。時に木刀で、時に避け、そして時に当たり…致命傷に成り得るものを取捨選択し、耐え続ける。

 

「これ以上は…」

 

 この様子を見て、一方的にやられていると判断したグレモリーは試合を中断しようとする。

 

「部長、待ってください。」

 

 木場が攻撃を止める。

 

「祐斗?」

 

グレモリーが不思議そうに名を呼ぶが木場は荒垣を見据える。

 

「荒垣先輩。なぜ仕掛けてこないんですか」

「満足したか…」

 

 構えを解き、荒垣は言う。

 

「え?」

「満足したかって言ってんだ」

「なにを」

「この模擬戦に何の意味がある。お前は手加減し、武器も実践とはかけ離れたモン。俺のは鈍器だからそこまで問題ねぇがお前は違うだろうが。嘗めてんのか?」

「ッ!」

「それに今俺たちは何のためにここにいる。俺は今のお前に負ける気はしねぇ。あんまり調子コイてんじゃねぇぞ」

 

(コイツは…10日後には自分の仲間が主の人生がどうにかなっちまうかもしれねぇのに、なんだ。手合わせだぁ、手加減だぁ。お遊びのつもりか?ふざけるなよ)

 

「グレモリー」

「な、なにかしら」

 

 荒垣の怒気に、一瞬怯みながらグレモリーが答える。

 

「武器を出せ」

「え?」

「俺の武器だ」

「何を言ってるの?そんな危険なこと「部長、僕からもお願いします」祐斗!?」

「あそこまで言われては僕も全力を出さないわけには行きません」

「はぁ、危険すぎることはしないこと!」

「…ああ」

「感謝します」

 

 グレモリー簡易魔法陣からバス停を取り出し、荒垣に渡す。

 木場は剣を創り出す。

 

「それが、お前の…」

「ええ、僕の神器(セイクリッド・ギア)の『魔剣創造(ソード・バース)』です」

「そうか、なら全力でかかってこい」

「言われなくても」

 

 木場は先ほどを越えるスピードで荒垣に打ち込む。

 それをバス停で防ぎ、反撃するが既にその場には木場はおらず、背後から斬撃が襲い掛かる。

 身をよじり、何とかそれをかわすがジャージが斬られ、その奥の肌から薄く血がにじむ。

 

「ハァッ」

 

 木場が距離をとったかと思うと、赤い剣を創り出し、その剣から炎を産み出す。

 

「フッ」

 

 荒垣は自分に迫り来る炎にバス停を振るうことで掻き消す。

 しかし、炎のせいで木場の姿を見失う。

 

(どこだ?)

 

「ハアアアッ!」

 

(上か!)

 

 荒垣は咄嗟にバス停を上に上げ、木場の体重を乗せた振り下ろしを受け止める。

 

「不意打ちに…掛け声なんて入れてんじゃねぇ!」

 

 木場を武器ごと吹き飛ばす。

 

「クッ」

 

(力ではやはり荒垣先輩の方が上。なら!)

 

 木場は距離をとりつつ、魔剣の特殊効果の炎や風、氷などで距離をとりつつ攻撃し、隙を見つけては近接を仕掛けるヒット&アウェーの戦法を取る。

 荒垣は炎を武器で掻き消し、風を地面に武器を叩きつけた衝撃で吹き飛ばし、氷を砕き、斬撃を致命的なもののみを確実に防ぎ、耐える。

 

 荒垣に傷は増えるが決め手にはならず、戦いは決め手に欠けて長期戦へと様相を変えていく。

 

 常に動き、様々な魔剣を創り出すことで木場は疲労が溜まり、少しずつ焦りが見え始める。

 荒垣はひたすら耐え、木場を観察し続ける。

 剣筋、魔剣、動き、癖、ありとあらゆる動きを一つたりとも見逃さぬよう。ジッと観察する。

 

 そして、ついに決着の時が訪れる。

 

「ハァアア!!」

 

 木場が右手に緑色のレイピア、左手に赤い西洋の片手剣を作り出し、風と炎を同時に創り出す。

 炎の竜巻が荒垣を襲う。

 

「オッラァアアア!」

 

 荒垣も意識して魔力を活性化させ、腕に送り思い切り地面に叩きつける。

 その衝撃と炎の竜巻がぶつかり、離れて見ているグレモリーたちまで衝撃が届く。

 

「あっちぃ!!」

「イッセー君、こっちへ」

 

 姫島が水で壁を作り、皆がその後ろに隠れる。

 

先ほどの衝撃の影響で土煙が舞う。

 両者が互いに姿を見失う。

 

(このタイミングで必ず来る!)

 

 荒垣は確信していた。

 その瞬間、下から伸び上がるように木場が剣を荒垣の胸へと突き出す。

 

「ナッ!」

「ようやく捕まえたぜ」

 

 レイピアは荒垣の胸には刺さらず、胸の前にあった左腕に刺さる。

 

「クッ」

 

 引いても抜けないそれを手放し、木場は咄嗟に飛び退ろうとする。

 

「逃がすかよ」

 

 だが、一瞬の遅れが命取りとなり、荒垣は木場の足を踏み抜く。

 

「ガッ!」

 

 骨の折れる音が周囲に響き、地面を蹴れなかったため木場が体勢を崩す。

 

「吹き飛べ!!」

「グァアアアッ!!」

 

 最後に右手に持ったバス停を振りぬき、腹部からメキッという嫌な音を立てて吹き飛ばす。

 地面に落ちても勢いが止まらず、2転3転してようやく止まる。

 

 全員が誰も動けない。

 

 ただその中、荒垣のみが叫ぶ。

 

「アルジェント!」

 

 その声にアルジェントが正気を取り戻し、木場の下に駆け寄る。

 

「うぁ」

 

 木場の様子は足の骨が折れ、曲がるはずのない方向に曲がり、最後に打たれた腹部は陥没していた。

 急いで治そうとするが仲間の大怪我、死への恐怖などで心が乱れて上手くいかない。

 

「う…ゲホッ」

 

 そんな中、木場は血反吐を吐く。

 

「どうして」

 

 それが焦りを産み、ますます上手く力が使えなくなる。

 

「アルジェント」

「あ」

 

 いつこちらに来たのか荒垣が隣に立つ。

 

「これが戦いだ」

「え」

「レーティングゲームだが、死ぬ場合もあると聞いた。ならそれはただのゲームじゃねぇ。特に今度のヤツは遠慮なんかしねぇだろう。なら俺や他のヤツがこうなる可能性だってある」

 

 荒垣は木場を眺める。

 肺がやられているのか呼吸のたびに苦しそうにうめき、血を吐く。

 

「アルジェント、言ったはずだ。常に冷静であれ、と。でないと木場が死ぬぞ」

「ッツ!!」

「お前は何のためにここにいる!さっき俺に言ったのは嘘か」

「違います、私は皆を助けたい。いや、助けます!」

 

 アルジェントは目を閉じ、深く一呼吸する。

 そして、自分の手に魔力を集める。

 

(お願いします!)

 

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)!」

 

 アルジェントの手から緑色の光が現れる。

 荒垣の傷を癒した時より、強く、明るく輝く光は木場を包み込む。

 

(神器は使用者の思いを力に変える、か…)

 

 光はすさまじい勢いで木場の傷を癒す。

 折れた足は元の形に、陥没した腹部も元通りになる。

 吹き飛ばされた時についた傷も癒え、戦いの前と同じ状態になる。

 

「終わり…ました」

 

 そう言うとアルジェントは倒れる。

 その様子を見て他のヤツラも駆け寄る。

 

「アーシア!」

 

 真っ先に兵藤が駆けつける。

 

「気を失っただけだ」

 

 そう言って荒垣は兵藤にアルジェントを渡す。

 

「荒垣君!!貴方!!」

 

 姫島が詰め寄よろうとすると

 

「わりぃ、俺も…後は頼んだ」

「え!?」

 

 姫島の胸へと倒れこむ。

 荒垣をよく見ると、身体中に切り傷があり、そして左腕からは多くの血が流れ出ている。

 

「ッ!!小猫ちゃん!」

「はい!!」

 

 塔城と姫島は傷口を縛り、直ぐに荒垣を抱え、部屋へと向う。

 兵藤はアルジェントを、グレモリーは木場を抱え、後に続く。

 

 

………

……

 

 

「こ…こは?」

 

 荒垣が目を覚ますと知らない天井が視界に写る。

 

「目が覚めましたか、ここは荒垣君の部屋です」

 

 荒垣は隣りからの声に横を振り向くが再び元に戻す。

 

「あら、なんでこちらを見てくれないのかしら?荒垣君」

 

(やべぇ、この威圧感。美鶴の処刑と同等だ…やったことに後悔はねぇが割りにあわねぇだろ)

 

「あ・ら・が・き・クン?」

「お、おう」

 

 覚悟を決めて、振り向く。

 

 視界に写ったのは『黒』

 一瞬何が起こったのか把握できない、しかし感じる温もりから抱きつかれているのだと気付く。

 

「お、おいッ!なにしてやがる、離れろ!」

「心配しました」

「ハァッ!?」

「荒垣君が倒れた時、沢山の血が出て…死んでしまうかと思いました」

 

(倒れて、力が抜けたせいで出血が増えたか…)

 

「…そうか」

「「そうか」じゃなくて、心配したんですからね!」

「お、おう。ワリィ」

 

 姫島のすさまじい剣幕に咄嗟に謝る荒垣。

 

「本当に分かっているんです?」

 

 姫島はジト目で睨みつける。

 

「あ、ああ」

「はぁ、ならいいです。祐斗君も「自分が不甲斐ないためこんなことになったので荒垣先輩を責めないでほしい」って言ってましたから」

「あいつは目が覚めたのか?」

「ええ少し前に」

「傷は」

「アーシアちゃんのおかげで問題ありません」

「そうか」

 

 木場の様子を聞き、一息つく。

 

「あと、荒垣君もアーシアちゃんにお礼を言っておいてくださいね。」

 

 荒垣が自分の身体を見ると自分の身体も全く傷がないことに気付く。

 

「あの後、三人の中で一番最初に目を覚まして、疲れているのにもかかわらず治療をしてくれたんですから」

「わかった、礼を言っておく」

「じゃあ、念のためにもう少し休んでいてください」

「ああ」

 

 姫島が出て行き、外を見ると既に日は赤く染まっていた。

 

「少し寝るか」

 

 そう言って再びベッドへと倒れこんだ。

 

 

………

……

 

 

「う…」

 

 荒垣が目を覚ますと既に日は完全に落ちていた。

 

「のどが渇いたな」

 

 そう言って、リビングに向うとそこには木場がいた。

 

「怪我はどうだ?」

「ええ、アーシアさんのおかげで問題ないです」

「荒垣先輩は?」

「ああ、俺も問題ねぇ」

 

 …

 

 二人の間に沈黙が流れる。

 

「他のヤツラはどうした」

「アーシアさん以外は夜の訓練に向いました」

「こんな時間にか?」

 

 時計は既に夜10時を指していた。

 

「ええ、悪魔は夜の方が相性がいいですから」

「アルジェントはどうしている」

「アーシアさんは…」

 

 木場が言い切る前に扉が開く。

 

「あ、荒垣さん大丈夫ですか!?」

 

 アルジェントが駆け寄り、身体に触れる。

 

「問題ねぇ、助かった」

「いえ、治ったなら良かったです。でもあまり無理はしないでくださいね」

「…考えとく」

「もう、そうやって誤魔化すんですから。あ、そういえば荒垣さんのご飯も残ってますが食べますか?」

 

 アルジェントの話を聞くと、思い出したかのように腹がなる。

 

「ふふ、じゃあ温め直してきますね。座って待っていてください」

 

 そう言ってアルジェントはキッチンへと向う。

 そして木場とまた二人っきりとなる。

 

「荒垣先輩」

「あ?」

「今日はご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」

「…」

「「今俺たちは何のためにここにいる」、あの時は頭に血が上っていましたが終わってから考えてみるとその通りです。今回のゲームの結果次第で部長の人生が決まってしまう。それなのに僕は…」

 

 今までの自分に後悔しているのか拳を握り締め、俯く木場。

 

「…気付いたんならいいんじゃねぇか」

「え?」

「俺はただお前をぶっ飛ばしただけだが、その中でお前が気付いたことがあるなら、下向いてる暇があったらやれることをとっととやれ。まだ時間はある」

「そう…そうですね、落ち込んでる暇があったら自分を鍛え上げ少しでも部長の勝率を上げるべきですね。荒垣先輩お願いがあります」

「なんだ」

「合宿中、今日と同じ様に戦ってください」

 

 木場は荒垣の方を向いて頭を下げる。

 

「俺は指導なんか出来ねぇ。俺が出来んのは戦うことだけだぞ」

「それで充分です。いや、実戦経験。時間がない今はそれが必要なんです」

「今日みてぇに大怪我するかもしれねぇぞ」

「覚悟の上です」

 

 頭を決して上げようとしない木場に荒垣はため息をつく。

 

「はぁ、わかった。この合宿にわざわざついてきたんだ、出来る事はやってやる」

「ありがとうございます!!」

 

 荒垣の言葉を受け、初めて顔を上げる木場。

 その笑顔は向けられるのが女性だったらと悔やまれるほどに良い笑顔であった。

 

「お待たせしました~」

 

 木場との会話が一段落着くとアルジェントがカレーを持ってくる。

 

「はい、どうぞ」

「おう」

 

 アルジェントからそれを受け取り、食事を始める荒垣。

 

「そうだ、アルジェント」

「はい?」

「今日は無理をさせて悪かった」

 

 そう言って荒垣は頭を下げる。

 

「いえいえ、先ほども謝って頂きましたけど私は気にしていません!」

 

 アルジェントはその様子に焦りながら両手を振り、答える。

 

「なんかあったら言え。大抵のことは聞いてやる」

「それって…」

「貸しを作ったまんまなのは性にあわねぇんだ」

「でも」

「いいから」

「う~強引ですぅ」

「ハハ、荒垣先輩のためにも何か考えておいてあげればいいんじゃないかな」

「祐斗さんまで~。う~わかりました。考えておきます」

 

 予想外のところからの攻撃に折れるアルジェント。

 

「おう」

 

「あ、荒垣さん。私からもお話しが」

「なんだ」

「今日はありがとうございました」

「はぁ?」

 

(コイツに礼を言われるようなことをしたか?)

 

「荒垣さんの言葉があったから今日木場さんを癒すことが出来ました」

「おい、その元凶は俺だぞ」

「でも、今日のお昼や木場さんの事で私の考えを見つめ直し、やるべきことが見えた気がします。だからありがとうございます」

「だがな」

「荒垣さんがなんと言おうと私はそう感じましたから」

 

 笑顔で答えるアルジェント。

 

「昼のお返しってか…」

「ふふ、はい!」

「はぁ、わかった。案外強情だな、お前も」

「荒垣先輩も人のこといえないかと」

「フンッ」

 

 木場の突っ込みに荒垣はそっぽを向く。

 

「それでお前たちはこの後どうするんだ」

「部長から僕とアルジェントさん、荒垣先輩は今日の所は念のため休んでおくよう指示が出ています」

「そうか」

「ただ、荒垣先輩」

「ん?」

「僕と戦って気付いたことで良いんで教えてもらえますか。最後とか完全に読んでいましたよね?」

 

(あれか…)

 

「言ってもいいが、俺にはどうすればいいなんか言えねぇから丸投げになるだけだぞ」

「それでも是非」

 

 木場はつい身を乗り出す。

 

「落ち着け。お前には色々欠点があんだよ」

「欠点ですか?」

「攻撃が軽い、攻撃が的確すぎる」

「力が足りないのは自覚しています。ただ攻撃が的確過ぎるって言うのは?」

「威力がない分、急所を狙いすぎなんだよ。特に体力がなくなってきた終盤。あんなんじゃ守ってくれって言ってるようなモンだ」

「…」

「あと、速さに頼りすぎだ。速さがあるから基本に忠実でも攻撃が当たるが通用しないヤツだっている。緩急、虚実を入り交えろ」

「はい」

「最後、魔剣関係だ。これが一番ひどかった」

「え!?」

 

 まさか自分の能力にダメ出しをされるとは思っておらず、驚きの声を上げる。

 

「気付いてねぇのか、お前の魔剣だがどうしてどれもバラバラなんだ?」

「え?」

「形、色だ」

「それは…」

「お前は観賞用の剣を作っているわけじゃねぇだろ。戦うための武器を作ってるんだろうが、なのに赤い剣作って炎をだし、青い剣を作って氷を出す。んなもん、テレフォンパンチと同じだ、この後何をしますって言ってるようなモンだ」

「うッ…」

「あと形。剣だって形に合った攻撃の仕方がある。最後に利き手にレイピアとか突き以外攻撃方法がありえねぇだろうが」

「グッ…」

「結論だ、お前は能力を趣味に使いすぎだ」

 

(前にランスを弄繰り回してたとこ見ると武器をいじんのがコイツの趣味なんだろう)

 

「うう…」

 

 胸に手を当て崩れ落ちる木場。

 

「あとは…やりながら自分で気付け」

「はい…」

 

 剣技、能力、全てにダメ出しと予想以上の指摘に木場は流石に落ち込む。

 

(はぁ)

 

「力はある、後は使い方を考えろ」

 

 最後の最後に認められ、気を取り直す。

 

「とりあえず、今日は終いだ」

 

 そう言って、食器を持って立ち上がる。

 

「はい、ありがとうございました」

「おやすみなさい」

「おう」

 

 荒垣は食器を片付け、自分お部屋に戻る。

 

「今日はもう寝るか」

 

(隙を見てペルソナの訓練とも考えていたが、今日は無理そうだな。外に出ようとしたらアイツ等に気付かれる)

 

 そして、部屋の電気を消す。

 合宿初日の幕が閉じた。

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきどうもありがとうございます。
 あれ?まさかの最長記録更新です。どうしてry
 なんとか合宿初日が終わりましたが、この後はスピードを速めていく予定です。合宿全日やってたらえらい事になりますし…
 ただ、いくつかイベントは考えており、あと各キャラと絡ませようとも考えています。
 小猫、アーシア、木場はやったので姫島、兵藤、グレモリーと絡ませようかなと考えています。
 そして今回は前回あとがきで書きましたように木場がボロボロにされました。グチャグロの木場をアーシアは治させられました。それだけ見るとひどいですね(笑)
 焼きと…ライザーが強化されてるんで木場にも強化フラグを立てなきゃと考えたこんな事に…原作でぜんぜん活躍できなかったアーシアに日の目をと考えたらこんな事に…でもこれで大活躍間違いなし!!なはず?きっと…多分…おそらく…
 さて、次回も合宿回です。まさかの展開が…

 また次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・小猫や姫島
あれ?フラグ建ってたっけ?と言う方。分かりにくいが何本か建ってます。支取が予想外の大人気でヒロイン街道爆進中ですが、今後彼女らの猛追が始まる!…予定です。

・アーシア
 グレモリー眷属で現時点で一番心が強いのは彼女かと…だからこそガキさんの信用を得るのも早かったですね。眷属内での信用度は一番です。(好感度ではない)
 なぜかついつい弄って遊んでしまうんですよね、今回もガキさんに色々弄られてましたね。

・木場
 まだまだ常識の範囲内の強さですね。でも能力的にチートですよね、全属性対応可能とか…
 原作3巻でガキさんと色々絡む予定です、活躍をお待ちください。

 質問やご意見、感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。


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