お漢(かん)転生   作:ガイル01

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お待たせしました!
遅くなって本当に申し訳ないです。

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





第17話

 

「ウオオオオオッ!」

 

 裂帛の気合と共に振り下ろされるのは鈍器、当たれば確実に身を砕くものをギリギリまで引き付けて避ける。

 顔の横を鈍器がすさまじい速さで通り過ぎる。常人ならその様子だけで身が縮こまり動けなくなるであろうが、相対する少年は違った。

 

「フッ、ハァッ!」

 

 武器を振り回し、出来た隙を狙って剣を作り出し、相手の胴を狙って突き出す。その手にはオーソドックスな片手剣。「一瞬遅れて」もう片方の手にも同様のものが創られる。

 

「あめぇ」

 

 少年の突き出した剣は身を捻ることで避けられる。さらに腕と胴の間に剣を挟まれる。

 

「チッ」

 

 相手より力の弱い少年はそれを抜くことが出来ない。

 少年の判断は早かった。咄嗟にその剣を手放しその場を離れる。

 数瞬の遅れに少年のいた場所に鈍器が振り下ろされる。すさまじい音と共に地面が穿たれる。

 

「剣よ!」

 

 彼は飛び退りながら剣に指令を出す。彼の言葉に反応するように剣が燃え出す。

 

(炎の剣の対処をしなければならないはず、なら)

 

 少年は着地と共に相手に向かって駆け出す。

 

「ふん」

 

 相手は脇に挟まる剣を掴む、手がこげる嫌な音が周りに響くが関係ない。

 そして向ってくる少年に投げつける。

 

「なっ!?」

 

 流石に予想外だったのか身体を思い切りひねり、避ける。

 しかし、その一瞬相手から注意を外してしまった。

 そして、気づいた時には既に彼の目の前には鈍器を振りかぶる相手がいた。

 

「オラッ」

 

 振り下ろされる鈍器に咄嗟に左手の剣で防御をしようとする。

 相手の鈍器、少年の剣がぶつかる。

 

「阿呆が」

 

 鍔迫り合いになることもなく、剣ごと押しつぶされる。

 

「ガハッ」

 

 少年が血を吐き、倒れる。

 

「そこまでです」

 

 試合終了の声がかかる。

 

 荒垣対木場の模擬戦が終了する。

 合宿開始から数日が経ち、今日も実践同様の模擬戦が行われていた。

 

「祐斗さん!」

 

 その直後、木場の下にアルジェントが駆けつけ、治療を開始する。

 緑色の光が木場を包み、ほんの数十秒で傷は癒えてなくなる。

 

「ありがとう、アーシアさん」

 

 アルジェントに礼を言い、木場は荒垣の下に向う。

 

「荒垣先輩ありがとうございました」

「おう」

「今回の模擬戦ですが」

 

 木場は荒垣に意見を求める。

 

「ああ、初日に言った剣の無個性化は出来てるんじゃねぇか。燃えるまで気付かなかったしな。それに武器を奪われた時の対処もだ」

「そうですか」

 

 荒垣の言葉に笑みを浮かべる木場。

 

「だが、まだ慣れてねぇのか若干動きがぎこちねぇのと最後の対処。あれは落第点だ」

「うっ」

「俺の胴を刺そうとした時、両手に獲物がありゃ、出来る事も変わったろう。あと、防御なんてしてんじゃねぇ、流すか避けろ。動揺するな、自分にとって予想外を生み出すな、常に最悪を考えろ。お前みてぇなのは当たれば落ちる、勘だけで動かず考え続けろ」

「はい!では、もう「次は私です」…小猫ちゃん」

 

 木場が返事と共にもう一戦申し込もうとすると、いつのまにか審判をしていた塔城が来ており、二人の会話に割り込む。

 

「そうだね、じゃあ小猫ちゃんが先にどうぞ。僕が審判をするよ」

「ありがとうございます、祐斗先輩」

「では」

 

 そう言って構える塔城。

 荒垣も同様に構えを取る。

 

「ちょっとまちなさい」

 

 いざ、というタイミングで再び横から声がかけられる。

 3人は声がした方を向く。(一人は明らかに不機嫌そうに)

 

 そこにはグレモリー。

 そして、もう一人。

 

「貴方はいつもこのような修行をしているのですか」

 

 先ほどのあまりにも危険で無謀なやり取りに呆れ半分、恐れ半分、感心は0の声でため息をつきながら言う。

 

「口で教えられるほど器用じゃねぇんだよ、それよりなんでここにいる…支取」

 

 少し驚いたような荒垣の顔に笑みを浮かべる。

 

「ふふ、詳しくは中でお話しします」

「そう言う事だから一旦修行は中止。リビングに集合よ」

 

 

………

……

 

 

「今回の私は使いです」

「使い…ですか?」

 

 あの後、リビングに全員集まった。

 それを確認すると支取が話を始める。

 

「はい、今回魔王レヴィアタン様の使いとして参上しました。そして、貴女方のレーティングゲームにレヴィアタン様がいらっしゃることが正式に決定しましたことをご報告させていただきます。」

 

 そして、支取は鞄から書類を取り出し、グレモリーに渡す。

 

「全領域の悪魔に公開されるものではないにしても魔王様がいらっしゃることになりましたので、正式のものと同じ様にこちらの書類にサインをして頂きます」

「ええ、わかったわ」

 

 グレモリーは支取から書類を受け取り、一通り目を通すとサインをする。そうすると、書類が一瞬淡く光る。

 

「結構です。これでゲームの契約が正式になされました」

 

 そう言いながらグレモリーから書類を受け取り、鞄にしまう。

 

「ソーナ、貴女が私のところに来たということはライザーの所にも行ったのかしら」

「ええ、先日行きました。そしてこれを預かりました」

 

 そう言って鞄からあるものを取り出す。

 

「こりゃ…DVDか?」

「ええ、そうです。」

「ビデオレターの類だったら消滅させるわ」

 

 グレモリーは手に魔力を集中させる。

 

「落ち着きなさい、違うわ。まぁ、気持ちの良いものではないのは確かだけど…」

「はぁ、それでなんなのかしら」

「ライザーの今までのゲームを撮影したものです」

「なんですって?」

 

 支取の言葉に全員がそれを見る。

 

(おい、それは)

 

 荒垣は周りを見渡す。

 支取の言葉にグレモリーは殺気立ち、これの意味を理解しているものはDVDを睨みつける。

 

「えっと…すいません。なんでライザーの野郎はこれを送ってきたんですか」

 

 これの意味を理解していない兵藤が質問し、隣でアルジェントも頷く。

 

「あのね、イッセー。レーティングゲームのみに在らず、戦いにおいて情報と言うものはとても貴重なのは分かるわね」

「はい…」

「それにもかかわらずライザーは自分たちの情報を私に渡してきた。これが意味するのは」

 

 グレモリーは自分を押さえ込むかのように一呼吸置く。

 

「絶対負けることのないと言う自信と私たちへの嘲りよ」

「なっ!?」

「ライザーはお前たちが何をしようが俺は負けないし、お前たちが俺に勝てるはずがないって言っているのよ」

 

 グレモリーは怒りに震えながら机を叩く。

 

「絶対に後悔させてやるわ」

 

 底冷えすうような声音で言う。

 

「さて、よろしいですか」

「…ええ、ごめんなさい。なにかしら」

「先ほども言いましたように私は魔王様の使いでここに来ました。先日ですが、彼の下を訪れた時、彼は歓待してくれました。翌日学校もありましたので早めに失礼させていただきましたが、パーティとまではいかないもののちょっとした会を開いてくれましたね。翌日になにもなければもう少し長くいても良かったかもしれません。ただ、それ相応にこちらもお礼をしなければなりませんでしたが…」

 

 眼鏡を人差し指で上げながら支取は言う。

 

(…あ~、そういうことか…今日は土曜日か。)

 

「なるほど。ならこちらもわざわざいらしてくださったんですもの歓待させていただきます。もし遅くなるようでしたら部屋は沢山ありますから泊まって行ってもらえるかしら」

 

 にっこりと一見他のものを魅了するような笑顔で、ある程度知っているものから見れば悪そうな笑顔でグレモリーが答える。

 

「そうですね、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 同様に支取も笑顔で答える。

 

「そう、朱乃」

「はい、では一度お部屋にご案内しますわ」

「ええ、ありがとう」

 

 そう言って、姫島と支取はその場を離れる。

 

「ふぅ、ソーナには本当に感謝の言葉しかでないわね。」

「そうですね」

 

 椅子に深く腰掛けなおしながらグレモリーは呟き、木場が苦笑いしながら答える。

 

「ええと、部長さん。会長さんが泊まることになっただけではないのですか?」

 

 アルジェントは不思議そうに首をかしげる。

 

(コイツは多くの悪意に触れてきたはずなのになんでこんなにまっすぐなんだか…)

 

「え、さっきのやりとりになんか意味があったんですか!?」

 

(コイツはもうすこし頭を使え)

 

「ふふ、イッセー君さっきの話はね、『魔王の使い』としてここに来るということで、『歓待すること』の礼として、僕たちの修行に付き合ってくれること、しかも夜遅くなるという理由で今日と明日の二日間付き合ってくれることを会長は言ってくださっていたんだよ」

「そうなのか!?」

 

 塔城も木場の言葉に頷く、驚愕しながら兵藤は荒垣の方を見る。

 

「…支取はアイツのこと嫌ってんのにもっと長くいるとかいわねぇだろ。それに今日は土曜日で明日は休みだ。そこらへんのことからもわかんだろう」

「マジっすか…」

 

 感心した様子の兵藤とアルジェント。

 

「おい、グレモリー。この貸しはでけぇぞ」

「ええ、この恩はいつか返さないと」

「さてと」

 

 グレモリーが恩の返し方を考え始めた様子を見て荒垣は立ち上がる。

 

「ん?どうしたの、荒垣君?」

「『歓待』したって事実は必要だろうが。飯まで時間と場所貰うぞ」

 

 そう言ってキッチンへと歩いていく。

 

「ありがとう。楽しみにしてるわ」

「おおお!!噂の荒垣先輩の料理が食べられるんですね!」

「うるせぇ」

 

 立ち上がって叫び始める兵藤を荒垣は睨む。

 

「あ、じゃあ私お手伝いします!」

 

そう言ってアルジェントは手を挙げる。

 

「いらねぇ」

「はぅっ!」

 

 荒垣に一刀両断され、アルジェントは沈み込む。

 

「飯までまだ時間はある。お前らは修行でもしてろ、アイツが来たからといって戦いまでの時間が延びるわけじぇねぇんだぞ」

「お言葉に甘えさせていただくわ。冷蔵庫に在るものは自由に使ってくれて構わないわ。それに使い魔を置いていくから何か必要なものがあったら行って頂戴」

 

 グレモリーが手を出すと小さな魔法陣から蝙蝠が現れ、天井に留まる。

 

「わかった」

「さて、それじゃ皆行くわよ。美味しい食事は確約されたわ。がんばりましょう!!」

「「「「おおおおおお!!!」」」」

 

 グレモリーの声に兵藤を筆頭に皆声を上げる。

 

「いいからさっさと行け」

 

 そう言ってメンバーを追い出す。

 

「うし、はじめっか」

 

 手を洗い、冷蔵庫へと食材の確認を開始した。

 

 

 




 ガイル01です。皆さん今回も読んでくださり、ありがとうございます。
 まず…遅れてすみませんでした!!!
 年度末にインフルとかマジダメですね。強制的に休まされ、その間に仕事ががががが…
 皆さん、インフルにはお気をつけください。休み明けの仕事量に絶望しました。
 そんなこんなしていたら3週間もたっていました…しかも短め…進んでないし…いや、本当にすみません。合宿はあと2話くらいで終わらせられるかなと考えてます。
 まさかの支取登場です、衝動的ではないですよ。ここを逃したら出せない!と思い、出したとかではないですよ…半分くらいそうです、すみません。
 そして、これにより次回以降も木場のフルボッコ(受身形)タイムが続きます、木場ェ。強くなれるので頑張って欲しいです。

 あと皆さん。D×Dの新刊でましたね~ロスヴァイゼ回でしたが個人的に好きなんで早く出したいとは思ってますがまだまだ先は長いです(泣)
 そしてイッセーは爆発すればいい!!詳しくは読めば分かります。

 ではまた次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・木場
 初日にボッコボコにされた経験から既に成長の兆しが見えます。どこかの人間を手裏剣にする達人も「人間、負の思い出は忘れない」的な事を言ってましたからおそらく文字通り、経験が身体に刻み込まれているのでしょう。
 まぁ、次回もなんですが…あれ?イッセーより修行厳しくない?

・ライザー
 慢心せずして何が王か!!
 着実に死亡フラグが立っています。問題は妹をどうするか…プロット通りに行くとえらいことに…

・支取
 本作品で明らかに人気№1の支取さん。今回もイケメン?でした。はやく他のキャラもヒロイン力を魅せつけなければ…でも明らかに次回も登場のフラグが建っているという。

・荒垣
 ガキさんが合宿で飯を作らないはずがない!!(キリッ


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