お漢(かん)転生   作:ガイル01

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読んでくださる方がいるというのはうれしいですね。

ネタばれ、独自解釈がありますのでお気をつけください。

ではどうぞ。


第1話

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ガバッ!!

 

「きゃっ」

 

 ッ、夢か。また懐かしいもんを見たな。あれから17年,今じゃあの時と同じ年齢か…

 

「あなた大丈夫?」

 

 ん、そういえば起きた時になんか聞こえたな。振り返るとそこには黒髪のショートヘア、キツメの目に眼鏡をかけ、知的で厳しそうな雰囲気の少女がいた。

 

「支取…蒼那…」

「はい、そうです。しかし、同級生とはいえ許可なく呼び捨てというのはいかがなものでしょうか。」

「すまん、支取会長。」

「結構です。それで、大丈夫ですか。」

「ああ、少し夢見が悪かっただけで問題ねぇ。しかし、なぜ会長さんが屋上なんかに?」

「はぁ、その話し方も…まぁいいでしょう。私は見廻りです。」

「昼休みだってのに大変だな。」

「それが生徒会の仕事ですし、私はこの仕事に誇りを持っていますから。」

「そうか。」

 

 そう言いながらポケットから時計を取り出し、時間を確かめる。

 

「ッッ!?」

 

「どうかしたか?」

「それは…いえ何でもありません。」

「ならいーが。げっ、もうこんな時間かよ。」

 

 時計の針は12時50分を刺しており、教室までの距離を考えると5分位しかここにはいられない。

 

「急いで食うしかないか。」

 

 俺は弁当を取り出し、飯を食う準備を始める。その時、

 

 ク~

 

 間の抜けた音が聞こえた。振り返ると顔を真っ赤にした支取が立っていた。

 

「飯…どうした。」

「食べていません。」

「まさかダイエットか?」

 

 おれが不機嫌そうにそう言った。

 

「そうではありません!!生徒会の仕事が忙しくて食べていないだけです。」

「はぁ?それもおかしいだろ。生徒会ってのはそんなに忙しいのか?」

「はい、構内清掃、花壇の整備、見廻り、部活の申請書等の書類の整理、企画の計画準備、他にもまだいくつか…」

「明らかに生徒会の仕事じゃねえのも入ってる気がするが、それを全部生徒会でやってんのか。そりゃ忙しいわな、他のヤツラは生徒会室とかで作業してんのか。」

「いえ、昼は私だけです。」

「はぁ!?無茶だろそんなの。昼飯とかどうしてんだ。」

「最近は10秒で食べられる栄養食品もあります。最悪、食べられないこともありますが、慣れていますので。」

 

 ブチッ

 

 その発言を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。

 

「このど阿呆が!!」

「なっ!?」

「あのなぁ、てめぇは一人で抱え込みすぎだ。あれもこれも自分だけで何とかしようとしやがって。それに成長期の女が飯を抜いているのに慣れているだぁ、ふざけんな!!」

「しかし、「しかしじゃねえ!!」きゃっ!」

 

 ああ、なんか気になると思ったら美鶴のやつに似てんのか、あいつも昔から一人でなんでも抱え込もうとしてやがった。仲間と出会ってからはだいぶ変わったがな。

 

「このままだとてめぇは絶対倒れる、絶対だ。その時、生徒会のヤツラはお前の仕事を回せんのかよ。」

「ッツ!?」

「てめぇは優秀なんだろう、あんだけの仕事を一人で出来てるんだからよ。でもなぁ、てめぇが倒れた時、てめぇが卒業した後、残されたもんはどうなるよ。急にいままでやったこともない仕事が大量に出てきて混乱し、学生に不満がたまる。次の生徒会長があんたみたいに優秀じゃなかったら体制は崩壊し、学生の不満は生徒会長に向かう。「前の生徒会長は…」という風に責め立てられる。てめぇはそれでもいいってのか?」

「それは…」

 

 支取はうつむいて黙り込む。

 

「てめぇが自分の仕事に誇りを持ち、この学園が好きだってのはわかった。でもな、本当に学園のことを思うってんなら一人でやるんじゃねえ。下を育てんのも上に立つものの資格であり、義務だ。いくら本人が優秀でも下を育てらんなきゃ先はねえ。」

 

 支取は不安げに瞳を揺らしながら、こちらを見つめ言った。

 

「でも、彼らにとって迷惑では…」

 

 あいつもだが、優秀だからこそ脆い。優秀で自分で出来てしまうから他者とどう接すればよいかわからない、頼れない。ならここが正念場だ、ここを乗り切れればこいつは強くなる。

 

「信じてやれ、仲間だろうがよ。」

 

 まだ、支取は不安げな顔をしている。

 

「あんたが起こしてくれなきゃ飯も食えず、授業にも遅刻だった。ここで出会ったのもなんかの縁だ、なんかあったら話ぐらいは聞いてやる。」

 

 はぁ、俺も甘くなったもんだ。

 

「まずは。」

 

 そういうと、弁当のふたを開ける。中には、卵焼き、野菜を豚肉で巻いて焼いたもの、たけのこの煮物、ポテトサラダ、プチトマト、ウィンナーといったものが綺麗に詰められていた。それを少しずつふたの裏に乗せて支取に箸とともに渡す。

 

「ほらよ、食え。」

「あなたのでは…」

「いいから食え、腹が減っちゃあ戦もできねぇ。箸なら予備があるから気にすんな。いただきます。」

「はあ、では、いただきます。まず、この卵焼きから。」

モグッ

 

「これは!!噛んだ瞬間感じたのは甘みではなく旨味、砂糖ではなく、カツヲ節を削ってとった出汁で味をつけた卵焼きですね。しかし、それだけではありません、他の海鮮の味が…牡蠣ですか?」

「ほう、よくわかったな。それはこの間取り寄せた牡蠣のオイル付けのオイルを使って焼いた。砂糖じゃなくて出汁の卵焼きなのはこのオイルにあわせるためだ。」

 

「なるほど、次はこのお肉を。これはアスパラガスやほうれん草、エノキダケといった野菜を薄い豚肉巻いてごま油で焼き、塩と胡椒で味をつけたものですね。ごま油の香りが食欲をそそり、野菜も三種類使い、それぞれ歯ごたえが異なり、飽きることなく食べられます。しかも、お弁当では冷めてごま油はくどくなりがちなのにそれを一切感じさせません。」

「ごま油は香り付けだ、油だけなら豚が持ってるもんで足りる。」

 

「このたけのこの煮物はもちろんしっかりアクを取り、エグミを一切感じさせない。しょうゆ、みりん、昆布出汁がしっかり利いている。そして、どこかさわやかな香りが…」

「昆布の落し蓋での煮ることで味が決まる。香りは香草だ。忘れがちだったり、飾りのイメージがあるが、あるかないかで大分違う。」

 

「食休めとしてプチトマトがあり、口の中をさわやかな酸味が広がり今までのものを流しリフレッシュさせてくれる。そして、ポテトサラダは芋を完全につぶしきるのではなく、少し残すことやきゅうりと玉ねぎをいれることで食感の変化を生み、やわらかさの中にコリッとした歯ざわりがアクセントとなりさらに食が進みます。」

「そしてこのウィンナー。王道のタコさんかと思いきやカニさん!!職人の一工夫が光ります。」

「そして、このおにぎり。

 

 

具は…

 

 

 

いらない。

 

 

 

 

全てが良質なものでないと作れない。

 

 

 

 

『塩むすび』

 

 

 

 

そして、混ざる『コゲ』

 

 

 

 

もう言葉は要りません。」

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

 袋から魔法瓶を取り出し、支取に渡す。

 

「飲め。」

「いただきます。」

 

 お茶を飲み一息つく。

 

「いつ振りでしょうか、こんなに落ち着いた気分になったのは。」

 

 支取が空を見上げながら呟いた。

 

「メリハリだ。」

「え?」

「上のもんがいつも気を張ってりゃ、下のもんも気を使う。上がテンパッてりゃ、下も落ちつかねえ。」

「つまりだ。」

「はい。」

「余裕を持て。その余裕ってのは…」

「いえ、ありがとうございます。これ以上は自分でやってみます。」

 

 支取の目には力と決意が戻り、しっかりとした眼差しでこちらを見て言った。

 

「そうか。」

「ただ…」

「あ?」

「今日はもう少しここで休んでから行こうと思います。」

 

 俺は時計を見る。とっくに予鈴はなっており、急がなければ授業に遅刻は間違いない時刻だ。

 

「遅刻すんぞ。」

「それもたまには良くないですか?」

 

 それを聞いた俺が驚いた顔をすると、支取はいたずらが成功した子どものような笑顔を見せた後、言った。

 

「荒垣君、ありがとう。」

 

 そのときの、支取の笑顔はとてもやさしいものだった。

 

「おう。俺は先に行くぞ。」

 

 そういって屋上の扉を出る。

 

「反則だろ、ありゃ。」

 

 俺は顔が火照るの押されきれずつぶやいた。

 

 

 

 

 その日、支取蒼那は初めて授業をサボった。

 

 

 

 




こんにちは、ガイル01です。
どうしてこうなった…二話目なのに原作主人公はおろか、リアスチームすら出てこないと言う罠。
なんてこったい…しかし後悔はしていない!
次回からはきっとイッセーを始め、皆出てくるはずです。お待ちください。

そして、一話目だというのに感想をくださった方どうもありがとうございます。あれとあれはガキさんを出す上で欠かせないものですから、しっかり考えていますので出番をお待ちください。
このように進行がすさまじく遅いものですがしっかり書いていこうと思います。どうしても書きたい話が頭に浮かび、それのネタばかりが沸いてくるのでまずはそこまで気合を入れて、そしてその後もがんばっていこうと思います。
ちなみに書きたいのは完全独自設定の「サイラオーグの初恋」です(笑)番外編なので本編にあまり関係ありませんが、そういう話に限ってネタがポンポン出てくるんですよね、なので原作10巻以降までお待ちください。

ご意見、ご指摘等ございましたらよろしくおねがいします。

[補足]
・ガキさんの口調
「てめぇ」は怒ってるとき、心の中では支取、呼ぶときは会長さんか会長です。
基本的には名前は認めたものにしか使いません。大抵苗字か代名詞になります。

・支取の性格と生徒会の現状
これは独自設定です。生徒会選挙がいつかはわからないですが、メンバーが眷属とは言え最初はこんなんだったのではという作者の妄想です。

・ガキさんの性格
原作よりお節介になっております。他者を幸せにという約束もありますが、もとから優しいので学校に来てればこんな感じだったはず…困っている人を放ってはおけず、不器用ながら助ける。時にはお説教(言葉)(物理)もします。なので少し原作より雰囲気がマイルドになりますので。

・不機嫌そうに言った
年頃の女の子が無理なダイエットはいけません!!
ガキさんマジおかんです。

・食事風景
どうしてry…
少しは雰囲気が伝わったでしょうか?

以上です。
また次回お会いしましょう。

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