お漢(かん)転生   作:ガイル01

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1ヶ月もお待たせしてしまってすみません。
お待たせしました!


この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。






第19話

「さて、美味しい夕食もとったし、夜の鍛錬に入るわよ!」

 

 そう言ってグレモリーは立ち上がり、他の者達もそれに続く。

 

「荒垣君、今日はどうするのかしら?」

「あ~お前らと違って夜に身体能力が上がるわけでもねぇし、夜目がきくわけでもねぇからパスだ。あとやる事があるしな」

「やる事?なにか手伝えるようなことなら手伝うけど」

「たいした用事じゃねぇ。支取がいられる時間も限られてんだ。そっちはそっちで有効に使え」

「そう、わかったわ。なにかあったら連絡頂戴。じゃあ、行きましょう」

 

 グレモリーは一瞬悩んだがそのまま皆を連れて外へと出て行った。

 

「さてと、俺もやる事やるか」

 

 荒垣は残った食材で軽く夜食を作るとそれを持って外に出て、グレモリーたちとは離れた場所へと向う。

 寮から10分程歩いたところで立ち止まる。

 

「ここらへんでいいな、始めるか」

 

(まずは、スキルの切り替えだな)

 

 荒垣は目を閉じ、集中する。

 自分の中に在るカストールを感じ取る。カストールを感じ取れたら、さらに深く感じ取るために神経を集中させる。

 

(よし)

 

 荒垣は自分とカストールがシンクロしている事を確認する。

 

「ヘビーカウンタ解除」

 

 荒垣が言葉を発する。一見、荒垣に何も変化はない。

 だが、荒垣の中でなにかが確かに変わった、制限されていたなにかが開放された。

 それを確認すると荒垣は力を抜く。

 

「ふぅ、もっと速く出来るようにならねぇとな」

 

 荒垣が集中し、力を抜くまで約5秒、戦闘では致命的な時間である。

 

「戦闘でもそうだが、これが出来ねぇとあいつらとも戦えねぇからな」

 

 荒垣が行っていたのは「スキルの制限と解除」である。

 カストールは一定の確率で相手の物理攻撃を反射するカウンタ系の技を持っている。

 ただそれだけなら良かったのだが、このスキルは常時発動型のため、荒垣の意思に関係なく発動してしまう。カウンタの発動でペルソナの事がばれるのを危惧し、合宿の前日に徹夜で制御方法を練習することとなった。

 

「あの頃は、スキルの切り替えなんていう細かい制御なんか出来なかったが今んなって出来るようになるとはな…」

 

 一瞬、荒垣の表情が歪むがすぐいつもの表情に戻る。

 

「いつまでも下ぁ向いてらんねぇ。今できる事をするか。なら」

 

 荒垣はポケットから携帯を取り出し、電話をかける。

 少しの呼び出しの後に目的の人物が出る。

 

「お電話ありがとうございます!!『育て屋』のタケジィです」

「俺だ、荒垣だ」

「荒垣さんか、おひさしぶりです。この間は手作りの弁当の差し入れありがとうございま「マスタァァァアアアアアアアアア!!助けてくださああああいいぃぃ!!いやぁぁぁ!!棺桶がぁぁあ、引きずり込まれるぅぅぅ!!!あっ……」」

「おい、大丈夫なのか…」

 

 電話の奥から聞こえた悲痛な叫びに引きながら確認する。

 

「なに、問題ないさ。限界はキチンと見極めてるからさ」

「そ、そうか」

「ところで今日の用事はなんだい?」

「あぁ、一旦レイナーレをこっちに送ってくれ」

「了解了解、ちょうど今モトから吐き出されたところだから送るよ」

「お、おう」

(吐き出された?)

 

 電話が切れると直ぐに荒垣の足元に魔法陣が現れる。一瞬それが輝くとそこにレイナーレが現れる。

 現れたレイナーレは鳥から女性の姿に変わるが横になったままピクリとも動かない。

 

「急に呼んで悪かったなってお前大丈夫か?」

 

 荒垣が声をかけるとブツブツと独り言を始める。

 

「うふふふ、真っ黒真っ暗ニュルニュルグチャグチャ…アハハハハハハハ…イヤァアアアアアア!!!」

「おい、落ち着け!」

「ヤツが追って来るぅぅぅ!!!」

 

(ちっ、あまりやりたかないが)

 

 荒垣は頭を振り上げる。

 

「いいから落ち着けっ!!」

 

 そしてレイナーレに向って振り下ろす。

 鈍い音があたりに響き、レイナーレは激痛に頭を抑えしゃがみ込む。

 

「あうっ…ここは?ますたー?」

「正気に戻ったか」

「マ、マスタァァァアアアアア!!!信じてました、助けてくれるって信じてましたぁああああ!!」

 

 叫びながらレイナーレは荒垣に抱きつく。

 

「お、おい!!」

 

 なんとか振りほどこうとするが必死にしがみついているためなかなか引き剥がせない。

 

「居るのは使い魔、来るのは悪魔。正体を隠す日々。毎日毎日胃が痛かったんですからッ!!」

「い・い・か・ら・離れろ!!」

 

 この後、レイナーレを引き剥がし、落ち着かせるまでに半刻かかることとなった。

 

 

………

……

 

 

「で、落ち着いたか」

「はい、すみませんでした(あそこから離れられた事が嬉しかったからとは言え、私はなんてことを~!!)」

「ったく、嫁入り前の女があんまり男に抱きついたりすんじゃねぇぞ」

「はい」

 

 荒垣は少々頬を赤くしながら言い、レイナーレは顔を真っ赤にして答える。

 

「まぁいい。飯はもう食ったのか」

「いえ、まだですが…」

「なら、食え」

 

 そう言って持ってきていた食事をレイナーレに渡す。

 

「良いんですか?」

「今日の晩飯の残りだ。気にすんな」

「では、頂きます」

 

 そう言って、レイナーレは一口食べる。

 

「美味しいです!!(それにまだ温かい。電子レンジとかの温かさではない。残りと言いつつわざわざ作ってくれたんだ…)」

「そうか」

 

 自分のために作ってくれた事に気付いたレイナーレの瞳から涙がこぼれる。

 

「はっ?急にどうした」

「いえ、温かくって(心がとても満たされます)」

「…そりゃ、一応温め直しはしたからな」

「そうですか…ありがとうございます」

「さっきも言ったが残りモンだ。温めるのも手間はかかってねぇから気にすんな。冷めるからとっとと食え」

「はい(この人がマスターでよかった)」

 

 その会話を最後にレイナーレは箸を進める速度をあげる。

 しかし、しっかり味わい、幸せそうに食べ続けた。

 

 

………

……

 

 

「マスター、それで今日はどのような御用ですか」

 

 レイナーレの食事が終わり、呼び出された理由を尋ねる。

 

「ああ、聞きたいことがあってな」

「聞きたいことですか、なんでしょう?」

「お前か、お前の仲間は聖水や聖書を準備できるか?」

「出来るとは思います。ですが、そのようなもの何に使うのですか?」

「実は…」

 

 荒垣はレイナーレに現状の説明をする。

 

「確かに悪魔には効果的でしょうが…というより、そもそもマスターまで巻き込むとはグレモリーは何を考えているんでしょう!」

 

 フェニックスと戦うという事を知ったレイナーレは荒垣を巻き込んだグレモリーに対して憤る。

 

「今回は俺から首を突っ込んだんだ。グレモリーは関係ねぇ」

「でもですね…」

 

 荒垣の言葉を聴いてもレイナーレは不満そうな雰囲気を隠さない。

 

「もう決まったんだ。今更どうにもなんねぇし、なにより俺の意思でここにいんだからどうこうする気もねぇよ」

「その言葉に嘘偽りはないですね」

「ああ」

 

 真っ直ぐこちらを見てくるレイナーレに、荒垣も正面から返す。

 

「わかりました、頼まれたものは全力を持って最高級のものを用意させていただきます」

「すまねぇな」

「ふぅ、謝る位なら事前に一言言ってください。私は貴方の使い魔なのですから。心配だってします」

 

レイナーレは呆れたような溜め息をつくが、その表情には荒垣への心配が見て取れる。

 

(そうか、コイツはグレモリー側でも支取側でもねぇ。唯一の俺側のヤツか…)

 

「いくらマスターが堕天使を倒せるような不思議な力があっても今回は不死鳥が相手です。人間なんて一瞬で消し炭なんですからね」

 

(ん?今コイツなんて言った?)

 

「おい」

「はい、なんですか」

「不思議な力ってのは誰に聞いた」

「え…ドーナシークたちとあの後の処理をしていた時に聞いたのですが」

 

(チッ、あいつらか。口止めすんの忘れてたッ!)

 

「マ、マスター?どうかしましたか」

 

 荒垣の苦々しげな表情にレイナーレが反応する。

 

「その事、誰かに言ったか?」

「いえ、私は誰にも…」

「なら、俺が許可するまで誰にも言うな。アイツラにも連絡を取って、口止めしてくれ」

「は、はぁ。構いませんがその力は秘密なのですか?」

「まだ他のヤツには言う気になれねぇ」

「…そうですか(マスターは高校生なのに魔王の血族であり、純血悪魔である二柱の悪魔と契約するほどの人物。今回の事のように様々な事に巻き込まれることもあるかもしれない。それなら力の事も簡単にばらす訳にはいかないわね。ん?マスターが巻き込まれるって事は私も巻き込まれるのでは…うう、胃が痛くなってきた)」

 

 レイナーレはこれから予想される胃痛な日々につい片手で腹を押さえる。

 

「まぁ、俺からは以上だ」

「かしこまりました、頼まれたものはいつまでにご準備すればよろしいですか」

「そうだな、焼き鳥野郎との戦いが4日後だ。前日には欲しいところだな」

「かしこまりました、それまでにご準備させていただきます」

「頼んだ」

 

 その時、荒垣の携帯が鳴る。

 

「もしもし」

「荒垣さんかい、タケジィだ。用事は終わったかい?」

「ああ、今終わった」

「じゃあ、こちらに呼び戻すぜ」

「え?」

 

 隣りにいて会話が聞こえていたレイナーレが一瞬呆ける。

 その瞬間レイナーレの足元に魔法陣が展開される。

 咄嗟に鳥へ変化し、逃げようとするレイナーレだが間に合わず転移させられる。

 

「お、帰ってきたな。じゃあ、モト頼んだぜ」

「いやぁああああああ!!」

 

 電話の奥でズシンズシンという音とレイナーレの叫び声が聞こえる。

 

「あ~タケジィ。アイツに頼み事をしたんだが」

「おお、そうか!じゃあ、後で聞いてその時間は取るようにするよ」

「ああ」

「あと、彼女は仕上げに入ったからあと一週間もかからず修了すると思うぜ」

「そうか」

 

(アイツがあと一週間もつかどうか…)

 

「じゃあまたな!」

 

 タケジィはそう言うと電話を切る。

 

「………戻るか」

 

 荒垣は寮へと戻っていった。

 

 

………

……

 

 

「他のヤツラはまだ戻ってないか」

 

 寮に戻って来たが、他のメンバーの靴が玄関になく、まだ戻ってきていないことを確認する。

 

「さて、どうするか」

 

 ふとリビングの机の上を見ると支取が持ってきたDVDが置いてあるのを発見する。

 

「確認しておくか」

 

 荒垣はそれを手にし、会議室に移動し再生する。

 

「これは…」

 

 その表情は厳しい。

 画面に映されるのは何度撃たれようと瞬時に回復し、敵を追い詰める不死鳥。

 死をも臆さず突き進むその眷属。

 その狂気ともいえる姿をさらなる狂気が襲う。

 

「なっ!?」

 

 画面が爆音と共に一瞬赤に染まる。

 爆発が残した煙が晴れたところには先ほどまで戦っていた全てのものが倒れていた。

 そう、全て…敵も味方もなく。

 

「テイク」

 

 その声と共に画面が地面から上空を映し出す。

 そこには王である不死鳥とその女王が悠然と構えていた。

 

 その直後、アナウンスと共に試合が終了された。

 

 荒垣は直ぐに他のものを再生する。

 一つ見終わると、また次のを再生する。

 

 彼は自分が前のめりになり、握った拳が赤を通り越し、青になっていることにも気付かず、ただただ画面を眺め続ける。

 

「荒垣君?ここにいたの?」

 

 不意に背後から声がかけられる。

 

「グレモリーかっ!?」

「どうかしたかしら?」

 

 振り返るといつの間にか帰ってきていたグレモリーが立っていた。

 問題はその服装である。

 荒垣はDVDに集中し、気付いていなかったが既にかなり遅い時間である。

 グレモリーもジャージではなく、寝巻きであった。

 ただの寝巻きならば問題ないが、キャミソールに似た形で相当薄い生地を使っている。

 そのため、下着が透けてしまっている。

 肩にストールをかけてはいるが、本人に身体を隠す意図がないため、その魅惑的なボディラインを惜しみなくさらしてしまっている。

 

「お前ッ!?なんて格好で男の前に出てきてやがる!!」

「え?もうこの後は寝るだけなのだから問題ないじゃない」

 

 不思議そうに首をかしげるグレモリー。

 

「それに私は眠る時は全て脱ぐからこちらの方が脱ぐのも楽なのよ」

「なっ!??」

 

 荒垣はグレモリーの台詞に絶句する。

 グレモリーはその様子にいたずらを思いついたかのようにニヤリと笑う。

 

「荒垣君は今日ソーナが持ってきたDVDを見ていたのね」

 

 そう言いながら、テレビに近づく振りをしつつ、荒垣との距離をつめる。

 

「そうだが、その前にその格好をなんとかしろ!!」

「あら、これはれっきとした寝巻きなのだから問題ないでしょ?」

 

 グレモリーはそう言って寝巻きの端を持って広げる。

 広げることで裾の位置が高くなり、ふとももがはっきりと露わになる。

 

「ッ!嫁入り前の女がんな事してんじゃねぇ!!」

「あらぁ、こんな事ってなにかしら」

 

 グレモリーはニヤニヤしながら顔を真っ赤にして背けている荒垣に詰め寄る。

 後一歩でグレモリーの胸と荒垣の胸が当たると言う瞬間、

 

「そこまでです、リアス」

 

 首の辺りから発せられた鈍い音と共にグレモリーの首が後ろに向って跳ね上がる。そしてそのまま尻餅をつく。

 

「きゃあ!!なにっ!?って、なにするのソーナ痛いじゃない!!」

 

 尻餅をついたグレモリーの後ろには腕を組みつつ、呆れた様子で彼女を見下ろす支取の姿があった。

 

「自業自得です。荒垣君の怒鳴り声が聞こえたかと思えば…」

 

 頭に手をあて首を振る呆れる支取。

 

「ちょっとした冗談よ、なにも髪の毛を引っ張らなくてもいいじゃない」

 

 グレモリーは頭を押さえながら頬を膨らませ、呟く。

 

「何か言いましたか?」

「い~え、なんでもないわ」

「…はぁ。それで、こんな時間に何をしていたのですか」

 

 いじけているグレモリーを放っておき、支取は荒垣に話しかける。

 

「ああ、お前が持ってきたDVDを見てた」

 

 荒垣がそう言うと二人のさっきまでの雰囲気から一変し、真面目な表情になる。

 

「感想を聞いてもいいかしら」

 

 グレモリーが荒垣に尋ねる。

 

「…異常だな」

「異常?」

「ああ、フェニックスの再生力もそうだが、戦い方がだ」

 

 荒垣はテレビに視線を移す。

 止める間も無く話していたため、画面は再生されたままである。

 画面の中ではまた仲間ごと敵をなぎ払う、不死鳥とその女王の姿があった。

 

「『犠牲(サクリファイス)』ですか」

 

 部屋の入り口から荒垣の隣まで来て画面を眺めていた支取が呟く。

 

犠牲(サクリファイス)だと?」

「はい、レーティングゲームの戦術の一つです。味方を犠牲にし、相手を倒す。手段はいくつかありますがライザーの得意とする戦術です。見てください」

 

 そう言って支取は画面を指差す。

 画面には先ほど敵と共になぎ払われたはずのライザーの眷属が無傷で立っていた。

 

「無傷だと…」

「違います。治したんです」

「…回復薬か」

 

 荒垣は画面に映る人物の足元にフラスコのようなものが転がっているのを見つけ、そう判断する。

 

「そうです。あれは『フェニックスの涙』、あらゆる傷を一瞬で治す薬です。フェニックス一族でしか作れない秘薬です」

「チッ」

 

(ただでさえ、フェニックスなんてふざけた野郎が相手なのにそんな薬までもってやがんのか)

 

「試合に持ち込める数が2つと限りがありますが、あの薬があるからこそライザーは何の躊躇もなく犠牲(サクリファイス)の戦術を取ります。その場に薬がなくても、リタイア後に直ぐ薬を飲ませれば良いからと味方が薬を持っていなくともライザーは犠牲(サクリファイス)を行ってきます」

 

(戦闘中、戦闘直後に広範囲攻撃や不意打ち。確かに有効な手だ、間違っちゃいねぇ。だが、)

 

「気にくわねぇ」

「「え?」」

「あの戦い方は確かに有効だろう。だが、必ずしもあれである必要はねぇだろ」

 

(戦闘において、常に仲間を助け回復できるわけじゃねぇ。そのため、戦闘中倒れた仲間の回復を後回しにせざるをえない場合だってある。他にも仲間を盾に進む必要がある時だってある。そう言った面では犠牲ってのは仕方がねぇ。だがよ、あれにはそこまでリスクを負ってまでああしなきゃいけねぇ必要がねぇだろ)

 

「荒垣君の気付いた通りです。ライザーの眷属はフルメンバーで、正直理解が出来ませんが彼に忠誠を誓い、日々鍛錬を行っているのか力はあります。きちんと策を練れば彼女らだけで勝てた試合もあったはずです。しかし」

 

 支取は再びテレビの画面を見る。

 空にいるライザーのもとに向おうとする者とそれを押さえるライザーの眷属、そして味方が巻き込まれるかもしれないのにそれを全く気にせず自慢げに自らの炎を振りかざすライザーの姿があった。

 

「自らの力と女王の力を自慢したいって訳ね」

 

 画面を見ているグレモリーから怒りのあまり赤い魔力が滲み出す。

 

「リアス、落ち着きなさい。このため、ライザーはゲームの勝ち星の割に評価は高くありません」

「知恵も技術もない。ライザー個人の力ではなく、血統と一族の秘薬に頼った戦い方ということね」

「ええ、そうです。でも」

「ああ」

 

(それでも十分つえぇ。ヤツラの炎や爆撃は簡単に俺を吹き飛ばすだろう。ここまで地力がちげぇとはな)

 

 グレモリーもヤツの強さは理解しているため、表情は厳しい。

 

「しかし、これは弱点でもあります」

 

 支取の発言に荒垣とグレモリーは画面から目を離し、支取の方を向く。

 その瞬間、二人は固まる。

 そこには、全く無表情の支取がいた。

 

「彼は魔王様がいらっしゃる事から自分の力を誇示するため、この常勝の術を間違いなく使ってくるでしょう。それに貴方たちを未熟と侮ってもいます。そこを突きましょう」

 

 無表情のまま支取は告げる。

 支取はチラリと画面を見て下を向く。

 

「あんなものがゲームなどとは認めません。戦術も戦略も、知恵も技術も、仲間との連携、信頼、何もなく力にのみ頼る。私は絶対認めません、私の『夢』を愚弄しています」

 

 周りには聞こえないくらいの声でぼそぼそと呟く。

 直後、支取は顔を上げ、頬を上げ、笑う。

 本来魅力的で美しい微笑みなはずのそれは見るものに恐怖を感じさせた。

 

「さぁ、二人とも協力してください。策を練りますよ」

「わ、わかったわ」

「お、おう」

 

 支取から発せられる威圧感にどもる二人。

 

(おい、これはどうなってやがる。お前の闘いじゃねぇのか!?なんでいつの間にか支取が仕切ってんだ。てか、なんでアイツは切れてんだよ!!)

(そんなの分からないわよ!!ただ、ソーナは昔からレーティングゲームに拘りがあったし、最近眷属とも親しくなったからあの戦い方が気に入らないんじゃないの!?)

 

 混乱しながら念話でやりとりをする二人。

 

「なにをしているんですか?」

 

((ばれた・ばれやがった!?))

 

「いや、なんでもねぇ」

 

 咄嗟に荒垣が返事をする。

 

「そうですか、なら早く話し合いを開始しますよ。私は今日までしかいられないのですから」

「お、おう」

 

(ナイスよ、荒垣君)

(とりあえず、今の支取に逆らうのはやべぇ)

(ええ、今はソーナの指示に従いましょう)

 

 グレモリーと荒垣は視線を合わせ、頷く。

 

 このやり取りの時、二人は支取から目を離してしまっていた。

 二人が目を離さなければ、もう少し冷静であったならば気付けていたはずだった。

 しかし、もう遅い。

 

「あれ、ソーナは?」

 

 ほんの数秒目を離しただけなのにそこに支取の姿はなかった。

 しかし、すぐに扉の外から支取が現れる。

 

「ソーナどこに行ってた…」

 

 再び、二人は固まることとなる。

 今度は頬を引きつらせながら…

 

「では」

 

 ドンッという重たい音を響かせながら支取はそれを置く。

 それとは『本』

 ただし、一冊ではない。

 大量に積み重ねられた本は荒垣の身長を越す高さとなっていた。

 

「はじめましょう」

 

 

………

……

 

 

 その日、荒垣とグレモリーの絆が深まった。

 

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきありがとうございます。
 そして、本当にごめんなさい。前回から一ヶ月も空いてしまいました。それでも失踪はしませんのでご安心ください。仕事の関係で不定期になりがちですが今後ともお付き合いいただければ幸いです。
 そして、書いていたらなぜかレイナーレとのエピソードが…あれ?本来ならさらっと終わる筈だったのに…すみません、次回こそ本当に合宿終了です。
 レイナーレと荒垣が異常に仲が良く見えますが、作中にありますように「手作り」弁当を持って一回見舞いに行っているからです。皆さんの要望があれば、その時のことを番外編で書こうかと思いますがいかがでしょう?
 では、また次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・ライザー
 今回で小物臭が…それでも十分強いんですが。
 それにしても原作でもなんでライザーの眷属があそこまでライザーに惚れているのかがなぞ。

・レイナーレ
 物語が進まなかった原因。ちょっと出すつもりがしっかり書いてしまった。でもやっぱり可哀想な子。涙目なレイナーレを書いていると楽しいので今後も可哀想な事がほぼ確定している不憫な子。
 そういえば、モトの中身ってどうなっているんでしょうね?

・支取
 ライザーの戦い方にご立腹です。巻き込まれたグレモリーと荒垣に敬礼!!
 ちなみに、翌日家族以外の男性に初めて寝巻きを見られたことに気付き、顔を真っ赤にして悶絶する羽目となりました。

・グレモリー
 荒垣とはからかい、からかわれるというなんやかんやで親しい友人関係…なはずだが!?

 質問やご意見、感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。

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