二週目のホリ・トオル 作:ボブ
俺は今、マンションの屋上に立っている。
自分でも何をされたのか分からない。
あの時、あの三人は何をしてきたのだろう。
そんな事、もうどうでもいい。
気付いたら俺はここに居た。
もう何もかもどうでもいい。
「どうしてこうなったんだ」
月明かりに照らされる屋上にその問いに答える声は無かった。
何も考えたくなかった。
俺は屋上から、何もない空中へと足を踏み出した。
────────────────────────────
「もう始まってる!」
俺は子供の声で目を覚ました。
目を開けると、そこは近所の公園。ヘリが飛び、子供達が遊んでいる。かなり日射しが強いが、空気は寒い。
横を向くと、隣には不思議そうな顔をした彼女が座っていた。
俺の最愛の人が。
「ちょっと聞いてるの?」
状況が飲み込めなかった。
「ごめん、変な夢見てた」
咄嗟にそう返すと、彼女は「何言いだしたの突然?さっきまで普通に話してたじゃない?」と訝しげな目をしている。
???
どういう事だ?
俺は変態郵便屋を警察に突き出して、その後油断して布団で漫画を読んでいたら三人の男に……そして屋上から飛び降りたはず。
どういう事だ?何で生きてんの?
夢だったのか?あれは酷く長い悪夢だったのか?
「それでさトオル、仕事の話だけど」
!!!??
彼女が口を開いた瞬間、直感する。
「電気技師の?」
「そう、それでね」
この会話は身に覚えがある!少し前、彼女と近所の公園でデートした時の会話だ!
断じてデジャ・ビュなどではない!
俺は思わず声を張り上げていた。
「なあ、今日何日だっけ!?」
「え、どうしたの突然……?今日は12月の──」
──間違いない、俺はタイムリープしたんだ!あのクソ忌ま忌ましい夜からずっと前へ!
「ああ突然騒いでごめん。電気技師の資格ね。うん、やってみる」
「あれ?資格の話までしたっけ?まあトオルがその気ならいいけど」
あ、まだ資格の話してなかったか。間違えて先回りしちゃった。という台詞は口にせず心にしまっておく。
何にせよ、俺は生きている。
そして、人生をやり直している。
しかし、体が忘れても記憶は忘れてはいない、忘れられる筈もない。
三人の男達に襲われ、縛られ……
思い出したくもないが、あんな目にあって。忘れたいくらいだが忘れられる筈がない。
────────
彼女と別れ、自宅に帰り、ベッドに横になる。
ベッドの感触であの夜を思い出しそうになったが必死に振り払う。
まだ俺は何もされていない。
………………。
…………………………。
涙が出てきた。
「何であんな目に……俺が……馬鹿野郎……俺が、俺が何したって言うんだ……」
精神的な疲れもあってか、俺はそのまま徐々に眠りに落ちていった。
『何もせずに居たらいつかまたあの悪夢が待っている』という思いと共に。
続く