現実は漫画よりも奇なり   作:プリントハヤシ

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現実に睨まれたカエル

「どうしたんだよ?朝から机に突っ伏して」

 

隣の席の山本がそういうように、僕は朝から気分が乗らない。というのも昨日は夜更かしをしてしまったからだ。もちろん、昨日借りてきた漫画がっこうぐらしを夜更かしで読んでいたためである。僕は読むスピードが遅いにもかかわらず、つい第3話まで読み込んでしまった。

 

あの本は不気味で仕方がない。ちなみに内容は本当に面白い。恐怖の種類が狂気的なものというか、それに極限状態に抗う登場人物たちを見て僕も1日を大切に生きよう。そう思うような作品だ。しかし、もっとも僕が不気味と思った理由は別にある。

 

まず一つ、あの漫画の舞台についてだ。彼女たち登場人物が通う高校は少しばかり特殊で、屋上には畑にソーラーパネルさらには貯水池、そう本当にまるで国みたいなんだ。そんな本当に漫画の中のような学校あまり無い。

 

しかし、僕が通うこの巡りヶ丘高校はそれらが全てある。あまりにも多い共通点に鳥肌が立ったほどだ。そして、さらに不気味な点がもう一つ。

 

登場人物についてだーー

 

「ねー、あの子が君に話があるって」

 

急にだがクラスメイトの女の子に肩を突かれ、僕は机から顔を上げた。その子の指を指す方向に目をやれば、例の昨日の彼女が片手に本を抱えてやってきていたのだ。

 

丁度いい。僕はそう思って席を立つ。

 

「誰?隣のクラスのやつ?」

 

頭の後ろで手を組みながらそう問いかける山本には

 

「そうだよ。ちょうど昨日知り合った子で」

 

と、だけ言っておいたが僕は彼女の名前すら知らない。そう、名前が聞きたい。彼女の名前はなんだ?この疑問が、さっき話途中だった漫画がっこうぐらしの不気味な点のもう一つに大きく関わる。

 

彼女は似すぎているのだ。作中で主人公にみーくんと呼ばれる登場人物に瓜二つなんだ。

 

正直、そんな小説じゃあるまいし現実世界で"そんなこと"があるなんてありえないことなんかわかっている。でも、僕は何故か好奇心と変な直感が入り混じるなんとも言えない感情に支配されていた。

 

"そんなこと"と言うのは、つまりあの漫画がっこうぐらしがこの世界の未来を描いたものなんじゃないかって僕はそう思ってしまったんだ。それこそ人々は僕にこう言うだろう。本の読みすぎだ、と。僕もそう思う。でも先程言ったように僕の直感がなんか、危険信号のようなものを発しているのだ。

 

偶然なら偶然なのが一番なんだ。だから僕は安心したいから、確かめたいだけなんだ。僕は漫画がっこうぐらしを読んで今僕が生きるこの日常がやっぱり、好きだから。それに、これからももっと彼女と本の話をしたいし……

 

「あ、昨日の!廊下から呼んでくれれば良かったのに」

 

僕がそう言うと、彼女は目を逸らし頰をかく

 

「ごめん、だって君の名前知らなくて」

 

「そういえばそうだった。僕たちまだ自己紹介もしてなかったのか」

 

「うん」

 

「昨日は君と話してるのが楽しくて……つい自己紹介を忘れちゃってたよ」

 

「ちょっ……なに恥ずかしいこと言ってんの」

 

僕的には別に思ったことを言っただけなのだが、急に彼女からは目を逸らされて、手を前にだして照れたような表情で昨日約束した本をこちらに差し出してきた。

 

「ありがとう」

 

僕は、本を受け取って微笑んだ。素直に嬉しかったのだ。改めて彼女と友達になれた、そんな気がして

 

「面白かったよ、その本。さっそく読んで感想はやく聞かせてね」

 

「わかった。楽しみにしてる」

 

「あっ、それとその本読んだらまた私に返して。私の名前で図書室で借りてるから」

 

「了解。じゃあ、読み終わったらそっちのクラスにいくよ。……あっ、そうなるとやっぱり自己紹介が必要だ。僕は江古達也改めてよろしく」

 

さあ、ここからが本番だ。ただの自己紹介だと言うのに胸の音が体に響く。

 

「ふふっ。だね。私は直樹美紀、よろしく」

 

直樹……美紀……

 

自分で疑っていたことなのに、僕はちょっと驚いてしまって彼女をじっと見つめてしまう。

 

「ど、どうしたの……?」

 

それには彼女も眉をしかめ首を傾げている様子だ。

 

「美紀……か……」

 

「い、いきなり下の名前っ……!」

 

僕の口からは思わずそう溢れて、彼女はその言葉に顔を赤くする。どうやら勘違いされてしまったようだけど、僕は別に彼女の名前を呼ぼうとしたわけではない。ただ、美紀なら"みーくん"と呼んでも違和感はあまりないな。そう思ったのが声に出ててしまったのだ。

 

「ご、ごめん」

 

まあ、それでも僕もそんな女の子慣れしてるかなんて言われたらそんなことないし、もっとも、僕は上と下の名前どちらで呼ぼうが呼ばれようがあまり気にしないのだが、彼女の赤い顔を見ると僕もたしかに下の名前で呼ぶなんて柄にもないことをして少し恥ずかしくなってしまい、謝った。

 

「いや、別に良いんだけどさ……ちょっとびっくりしちゃって、謝ることなんかじゃないよ」

 

「そう?……じゃあなんかよく呼ばれているあだ名とかってあるの?」

 

僕は頭を書きながら笑顔でそう言ったが、その返答に僕は耳を傾ける。それも、かなり集中してだ。

 

「うーん……特に無いかな……普通に苗字か名前かも」

 

「そっか」

 

別に"みーくん"と呼ばれてる訳では無いらしいな……たしかに、"みーくん"ってのは彼女の柄では無い感じもするかもしれないが……

 

「ちなみに、僕は皆んなからはエゴちゃんって呼ばれてる」

 

「……私は遠慮しとく」

 

「ははっ、別になんて呼んでくれてもいいよ。じゃあ、本ありがとう。またね」

 

引き気味にそう言う彼女に僕はそう言って席へと戻った。

 

 

 

 

……やっぱり僕の考えすぎか?いや、作中のみーくんは2年生。仮にあの漫画が本当に未来のことを描いたものだとしてもあのパンデミックが起こるまであと1年ある。

 

「たった一年か……」

 

いや、だから違う。現実世界でそんなことあるわけがないんだ。僕はそれを証明したいんだ。そんなことないことを確かめたい。

 

「それに、今日は楽しみがあるからな」

 

彼女、美紀にもらった本を片手に放課後僕は帰ろうと階段を降りながらあくびをした。……でもそういえば今日、あんま寝ていないんだっけな。

 

「あ、いた!めぐねぇ!」

 

フワッ。

 

僕は、またあの不気味な既視感に襲われることとなる。目を見開き、今階段ですれ違った女の子の方へと振り返る。

 

「あっ……」

 

あの特徴的な羽の生えたリュック、変な帽子、小さなフォルム。あんな奇抜な子他にいるもんか。僕は階段を上がり、その子を追いかけた。

 

「あなたはっ……!ゆきさんですかっ!?」

 

「えっ!?そうだけど、だ……誰?め、めぐねぇ!」

 

驚いた表情でその子は僕からたじろいた。

 

「あなたは……新入生?」

 

「めぐねぇってたしか……」

 

その生徒を庇うように前に出てきたのは、紫の髪の先生……

 

「っ……」

 

この人も僕は知っている。佐倉先生こと"めぐねぇ"だ。二人とも漫画がっこうぐらしに登場していた登場人物である。

 

「そ、そんなことが…….」

 

だんだんと息が荒くなる。突如現れた奇妙な現実に睨みつけられた僕はなんとその場から一歩も動けない。そのくらいの衝撃があった。もはや、偶然なんて考えは僕のなかから消えたのだ。

 

「ちょっと……!あなた大丈夫!?」

 

そんな僕の様子を見てか、佐倉先生は僕の肩を掴んでそう問いかけた。

 

「あっ……すいません……!ちょっと、僕やらなきゃいけないことを思い出して……!」

 

僕は、先生の手を振り払い走り出した。

 

「え!?まって……いっちゃった。あの子丈槍さんの知り合い?」

 

「え?ううん……なんであの人私の名前なんか知ってるんだろう……?」

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

早く帰って、がっこうぐらしを読まないと。

 

ーー現実は小説よりも奇なり。

 

「くそっ!!その通りじゃないかっ……!」

 

僕の疑いはさらに深くなり、ものすごいスピードで風を切る僕は息がどんどん上がっていく。その日は初めて家まで全力疾走をすることになったのだ。

 

 

 




もしかしたら、展開が遅いかもしれませんが……温かく見守ってくださるとありがたいです
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