現実は漫画よりも奇なり   作:プリントハヤシ

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感想をもらったりして、これを読んでこう感じてくれるんだと新鮮な気持ちでいっぱいですありがとうございます!ぜひ気軽に感想どしどし下さい!


めぐねえに相談

「直樹美紀……完全に一致しているな……」

 

それこそ徹夜である。"ゆき"と"めぐねぇ"に遭遇した僕はエナジードリンクを片手に漫画がっこうぐらしを読みあさっていた。震える手を抑えながら、1ページずつ丁寧に……

 

「それと丈槍由紀、佐倉めぐみ……」

 

全てを読み終え、僕は一息つくのだがまだ心臓は音を立てている。変な緊張状態が続きあくびの一つも出ない。だが、これだけは言わしてほしい

 

「間違いなく、傑作だ」

 

よくあるゾンビものはアクションシーンを楽しむ要素が強い気もするが、がっこうぐらしは少しコンセプトが違う。極限状態の人間のモラルというのに重点を置いている。かなり、面白い作品だ。キャンピングカーで学校を後にした彼女らはいったいどうなってしまうんだ……?

 

是非とも続きがみたい。

 

「まあ、そう思えるのはこの漫画がフィクションだったらの話だけど……」

 

もしも、これが後の真実を描いたものだとしたら……?考えるだけで恐ろしい。そんはずないのに、僕の中の僕が本能的にそういうのだ。

 

僕は、これからどうすればいい……?

 

頭を片手で抱え机に伏せながら、ずっとこの考えが頭の中を支配する。皆んなに逃げろと伝えればいいのか?

 

「無理だっ……!こんなの普通のやつからみたらイタズラとかにしか見えない……!」

 

そもそも確証が無いんだ。……そうだよ。イタズラだ!イタズラだったのか。なんで僕はもっとはやく気がつかなかったんだ?

 

ちょっと考えてみればこの漫画は美紀とゆきさんとめぐねぇ共通の知り合いが描いたものかも知れない。……きっとそうだ、そうに違いない。

 

「もう、寝よう……」

 

がっこうぐらしの横に置いてある美紀から借りた本を横目に見ながら僕は呟いた。なんか今日はもう疲れてしまった。

 

「一日だけ借りて、がっこうぐらしは公園に返すつもりだったけど結局二日間も借りちゃったな……」

 

顔を俯けたまま、僕は明日公園に漫画がっこうぐらしを返しにいこうと思い、いつも学校にもっていっているリュックにしまおうと漫画に手を伸ばす。

 

「……ん?」

 

しかし、僕の手は漫画を触ったような感触はなかった。違和感を感じ机の上でしばらく手を滑らせば、やっと本らしきものを掴むことに成功した。……だが

 

「これは……美紀から借りたやつか」

 

もっとも、がっこうぐらしはもっと大きい筈だ。僕はようやく頭を上げ、漫画があった方に目をやる。

 

「は……?」

 

すると、どうしたことか漫画がっこうぐらしが全く見当たらないのだ。

 

「おい!?なんでだ!?」

 

あまりにも突然の出来事に、僕は軽くパニックに陥っていた。今日はあまりにもいろんなことが起きすぎて頭がいまにもパンクしそうだ。

 

しかし、いくら探しても先程までそこにあった漫画は見当たらない。

 

「クソッ……!」

 

流石に勝手に借りて無くしたなんてそれはないだろ。というかなんだ?急に消えなかったか?確かに僕は机の上に置いたのに……

 

「……つかれてんのかな」

 

僕はそう呟いて、今度こそ寝ようとベッドの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

漫画突然消えるっていう、あれから数日がたたった。きっと、新学期早々新しい環境に来たせいでちょっと疲れていたんだろう。そう思って僕は最近ちょっと長めに睡眠をとっていた。そのこともあって美紀にも本をちょっと長めに借りるよと伝え、今日までねと言われたのだ。

 

「ごめん、待った?」

 

ホームルームから1時間後、誰もいない廊下。僕は隣のクラスの教室の入り口で、腕を組みながら壁に寄りかかる美紀に声をかけた。

 

「ううん、平気」

 

相変わらずスカしてんな。そう思わせるような素っ気なさの感じる返事に僕はちょっと安心した。何故だかわからないけど、彼女をみるとやっぱり今日も平和だなって思うんだ。本の話になるとわかりやすいほどテンション上がるくせに、普段はクールでボーイッシュな女の子。それが直樹美紀だ。

 

……漫画で見た分彼女の内面も普通の人より、理解している。伊達に読書好きじゃないというわけだ。心情理解ならそこそこできる。

 

でも、妙だな……美紀とまた本について語れるというのに今日はなんか変な気持ちだ。

 

「はい、遅れてごめん、貸してくれてありがとう」

 

そう言って本を手渡す

 

「……!どうだった!?」

 

美紀はこの本に勢いよく手を伸ばし、彼女からしたら身長の高い僕の顔を除こむと同時に興奮気味で感想を聞いてくる。

 

「近い近い……」

 

「ご、ごめん……!」

 

僕が手でそう訴えると、目をすぐに逸らし頰をかきながら僕から少し距離を取る。少し間が空いたが僕は少し微笑んで

 

「面白かったよ」

 

そう言った。

 

「……本当に?」

 

「え?」

 

嘘だとでも思われたのだろうか、僕はちょっと驚いて"え?"と素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「なんで?」

 

「……なんか、今日私と一回も目を合わせないから」

 

腰に手を当てながら、ジトりとこちらを睨む美紀の言葉を聞いて僕はハッとした。先程から感じていた変な気持ちの正体に気がついたのだ。

 

「いや……目を合わすの恥ずかしくて」

 

「江古君そんなキャラじゃないでしょ」

 

僕は咄嗟に嘘をつくが、美紀はそれを一刀両断した。

 

僕は美紀を直視出来ない。

 

僕は彼女の内面を少しばかり知りすぎたのだ。漫画の中で酷い目にあって泣いていたのを僕は見てきたから。

 

ある人はでも、本の中の話だろ?と言うかも知れないが漫画の世界であっても、本の世界の中でも彼女は生きていたのだ。……精一杯非日常に抗って生きていた。

 

「なんか悩みでもあるなら、私が聞くよ」

 

いつのまにか、いつものクールな美紀が戻ってくる。今のようにその時折見せる彼女の優しさに僕は少しすがってもいいのだろうか?彼女にならちょっと僕の不思議な体験を話してもいいかな、そう思えたのだ。

 

「実は……」

 

もしかしたら信じてもらえないかもしれない。そうだ、そしたら冗談ってことにでもすればいい。そうしよう。

 

僕が口を開き始めたその時だった。

 

「あらあら、こんなところでどうしたの?」

 

「うわぁ!?」

 

紫色の髪の毛、大きな瞳、そしてフワフワとした独特の雰囲気。僕はその人物をみてなんと少しばかり大きな声を出して驚いてしまった。

 

「ちょっと……うるさい。あ、先生こんにちは」

 

美紀はそんな俺に構わず、先生に挨拶を交わしている。

 

「はうっ!ゴメンね驚かせたつもりはないんだけど……今日は私が戸締りの係りで……」

 

手をわたわたと動かし僕に謝る先生。なるほど、だから一年生の階にめぐねぇがいるのか。なんて冷静な判断はこの時の僕にはできなかった。この人は特別なんだ……この人を見ると……

 

「ゾ……ゾンビ……」

 

僕は微かに震える声で一人つぶやいた。もっともその声は二人に聞こえていない。だが、僕の目の前にいる美紀は心配そうにこちらを見つめる。

 

「え、江古君……?」

 

「ちょっと君顔色悪いけどどうかしたの?」

 

先生の方なんかは僕の肩を持って顔をこちらに向かせる。本当に生徒思いのいい先生だ。もっと余裕があれば僕はそう思えた。でも、先生を見ると僕はあのおぞましい"彼ら"の映像が脳裏に浮かび上がり離れない。

 

「ぐっ……あっ……」

 

この人は今普通の人間だ。漫画のあれはフィクションだ。現実とは関係ない。関係ない。関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない

 

「あっ!いた!めぐねぇ!」

 

僕の思考を遮るかのように、突如響いた高い声。この声を聞いたのはおそらく2度目だ。そう、丈槍由紀である。

 

「こ、こら丈槍さん!ダメでしょ追試中に教室でてきちゃ!」

 

「えへへ……あれ?そこに居る君は……この前の」

 

おそらく、教室で補講をやっていたであろう彼女は僕に指をさしてそう言った。

 

「あ、あぁ……どうも」

 

僕も我に返り、会釈を返す。

 

「丈槍さん!話を聞いてますか!?」

 

「えぇ〜?だってめぐねえ遅いんだもん!もう解き終わっちゃったよ!」

 

丈槍由紀は先生が大好きだ。こうやって二人を見ていても仲が良いのがわかる。窓からは夕日が先生に戯れる丈槍由紀を照らし、いつもの日常のキラリと光る一瞬を切り取ったようなそんな光景に見えた。

 

後にこの二人がこれから離れ離れになるなんてそんなことあっちゃダメだ。

 

その様子を見てそう思い、僕はやっぱり証明したくなったのだ。僕が生きるこの現実は平和だと。僕の奇妙な直感を真っ向から否定たい。……逃げちゃダメだ。

 

「先生」

 

僕はやっと先生を直視しながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「あっ!具合は大丈夫なの!?」

 

心配そうにこちらを見つめる先生に僕は頷く。そして続けて

 

「大丈夫です。心配かけてすいません。それよりちょっと、先生に相談したいことがあるんですが良いですか?」

 

と、軽く頭を下げる。

 

「う、うん!良いわよ!」

 

先生は得意のふわっとスマイルで僕の申し出を承諾してくれた。

 

「わ……私には相談してくれないの?」

 

髪を触りながら不機嫌にいきなり、そう呟いた美紀は僕の肩をポンと叩く。僕は、すぐ様こう返した。

 

「勉強の相談なんだ。心配してくれてありがとう美紀」

 

「それならいいよ」

 

「今日はごめん、ちょっと疲れてたみたいだ。また今度いっぱい語り合おう」

 

そう言って僕は先生の方を振り返えろうとしたら、美紀はまだ僕の肩から手を離さない。

 

「美紀?」

 

「勉強だったら、私だって少しなら教えてあげられるから……」

 

僕は少し恥ずかしそうにそう言う彼女を見て、この子の泣く姿なんて見たくないな。そう思ったのだ。こんなに、優しい子なのにあんな漫画みたいな目に合うなんて……

 

「ありがとう」

 

僕はまた美紀の目を見てそう言えたのが嬉しかった。

 

 

 

 

「ごめんね。待たせちゃった?」

 

誰もいない教室で、僕は座っていると佐倉先生は現れた。丈槍由紀の補講が終わったのだ。定時はとっくに過ぎているというのに先生も面倒見がいい。補講の後にたった一人の生徒の為に相談を受けてくれるというのだ。人がいいにもほどがある。

 

でも、僕は今から先生にちょっと酷いことをしてしまうかもしれない。だけど、これは僕にしかできない事なんだ。今やらなきゃ後悔する。

 

それこそ"がっこうぐらし "から学んだことだ。真実から目を背けてはいけないんだ。

 

「それで……えっと」

 

「江古です」

 

「江古君ね!覚えた!ごめんね、新入生はまだ全員覚えれてなくって……」

 

「気にしないで下さい」

 

「それで?勉強の相談よね?高校の勉強って中学と比べて大変よね!先生もその気持ちよくわかるな〜。何処かわからないところでもあった?」

 

もちろん勉強の相談なんてのは嘘だ。ニコニコとペンを手に持って僕の目の前に腰を下ろす先生に僕は耳元で囁いた。

 

「先生は"緊急避難マニュアル"というのをご存知ですね……?」

 

今僕が見ている平和は、虚像か?実像か?

 




彼はやっと、真実へと踏み込み出しました。"知る"ことは本当に勇気のいる事だと思います。それが自分一人ならなおさら。
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