†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA   作:てゐと

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こんにちは、物語もいよいよ大詰めです


†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第七章

ゆきの暗殺まで、後…一日…

 

 

 

 

 

わかな「ん…。!」

まるで機械のように一瞬で起床するわかな。チャームポイントの赤ぶち眼鏡を探すが見当たらず右往左往している

 

わかな「メガネメガネ…」

アデア「動くな」

背中に突き付けられる刀の鞘。わかなは背筋をゆっくりと伸ばしながら両手を上げる。そしてそこで昨日何があったのかを思い出した

アデア「わかな、いや…完殺。どこの所属だ」

わかな「…。一つ、約束していただけるならお教えします」

アデア「答えろ、時間がない」

わかな「交渉決裂ですか…」

アデア「交渉なんかしない。君も知っての通り、鏡月の刃は一生傷だ」

わかな「その刀で…。私の首を切り裂きますか…?」

アデア「必要ならばそうする。例え君であっても」

わかな「…。アデアさん。私は「無駄口はいい。はやく答えろ」…。」

力を込めて突き付けられる鞘。わかなは悲しい顔を見せずに答える

 

 

 

わかな「所属…ジンティア。ブラッドクラス、完殺…」

 

アデア「ジンティア…」

 

わかな「アデアさん。私の知る情報をすべて提供してもいい。約束してほしいことがあります…」

アデア「敵対行動とみなした場合。君を殺す」

わかな「兎組が危険です。私は死ぬでしょうがほかの皆さんのことを何としても守ってほしいのです」

お互いに顔を見せぬまま進む会話。その言葉を聞いてアデアは鏡月をわかなの背中から引いた

アデア「ジンティアというのはどういう組織だ」

わかな「難しい質問ですね…。形無き殺意の塊…とでも言えば表しやすいです。クライアントに忠実な暗殺組織、ですが…。ルールを破れば味方もクライアントも切り捨てて関係のない命…、女子供年寄りだろうが巻き添えにする」

アデア「ブラッドクラスというのはなんだ」

わかな「ここでの組と同じようなものです、私を含め、多いと十数人、少ないと二人や単独で活動しています。依頼はほとんど単独で行いますので行動は別々です」

アデア「これで最後だ、わかなという名前は偽名なのか?」

わかな「偽名です。私に名前などありません。物心ついた時には銃を握っていました」

アデア「…」

 

ミニテーブルに赤ぶち眼鏡を置くとアデアは少しためらい口を開く。それとともにわかなはアデアのほうへ向き直す

アデア「残酷な運命だと呪うよ…、最後の仕事がこんな…」

わかな「さ…最後って…?兎組を離れるんですか!?」

アデア「…。僕が兎組に配属された理由は…。ゆきのが財産を受け継ぐまでの護衛目的だ。それが終われば僕は…。僕はみんなの前から消える」

わかな「なぜ!?なんで…!」

アデア「…。他言無用でお願いできる?」

突然訪れた別れ話に押しつぶされそうな気持ちになるわかな。だが意を決して頷いた

 

アデア「原因はこれだ」

そう言って出される鏡月。いつもながら念じれば具現するというのは不思議だった

アデア「私の…。僕の真名はアーティファクト、全絶の月刀(デッドマーカー)。前にも話したね。アデアットという名前は今の名前だ。そして単刀直入に言うと…。鏡月は呪われた刀にして僕の半身みたいなものでね…、僕はそう…、付喪神のような存在なんだ」

わかな「ポケモンじゃないんですか…?」

アデア「ポケモンだよ、今回は」

わかな「今回…?」

アデア「鏡月にはいくつか特殊な能力がある。刃は切ったものを再生不可能にし、相手を惑わし、狂わせ、簡単に命を弄んで殺してしまえる。そして…。鏡月は光を浴びるほどに力を増す。物理的な光、月の光…。心の光さえも糧にする。光が最大まで蓄えられたとき、僕という半身が転生する」

わかな「ちょっと…待ってください…?理解が追い付けませんよ…」

アデア「だろうね、もっとかみ砕いて言うならば、ゆきのが財産を相続した時。その希望の光によってほぼ確実に鏡月は光を最大まで蓄え、それを開放するんだ。その時に世界は一瞬で消え去り、またその瞬間に消えた世界と同じ世界が生まれる。ただ一つ違うのはその時に僕は消滅し、すべての記憶から消え去り、新しい鏡月の半身が誕生する。まるで最初からいたみたいにね」

わかな「そんなおとぎ話みたいなこと…」

アデア「信じられないよね?でもね、朝になって太陽が出てきて、沈み、月が出る。太陽はいつでもその眩しさを変わらず放てる。でも月は違う。光の加減によって毎日違う顔を見せる。僕という満ち欠けた月が次の満ち欠けになるのと同じことだよ」

わかな「嘘ですよね…?だって…アデアさんがどうしてそんなことわかるんですか!?確証がないんですよ!消滅したのにそれを知っているなんて…!」

アデア「ほぼって言ったよね?確かに僕は消滅する。だけど記憶だけは引き継がれる。まるでゲームを最初から遊ぶようにね、だから…僕が消えて次の僕が生まれたとき、君たちの記憶にはアデアなんて最初からいなかったとなる。でも違う。僕の記憶は次の私が覚えている」

わかな「アデアさん…」

アデア「もう行かなきゃ、ゆきのを護ってあげないと…」

ぎゅっと握られる袖、そしてか細く震える声でわかなは言った

わかな「行かないで…。ください…」

アデア「止めないでほしい。お願い」

わかな「嫌です…。アデアさんがいなくなるなんて…。知って止めなかったら皆さんに怒られてしまいます…。それに…」

涙を堪えきれず、アデアの背中に額を合わせて泣きながらわかなは…。

 

 

わかな「アデアさん…。あなたのことが好きです…。愛しています…。だから…行かないでください…」

アデア「わかな…」

わかな「私が…。護ります…、あなたのぶんまで…!だから…消えないで…。殺すことしか取り柄の無かった私に、光をくれた…!家族を、その暖かさを教えてくれた…、こんな…裏切ったのにあなたはまた…。わかなと呼んでくれました…!あなたから貰ったものが…私の冷酷な心を溶かしてしてくれたんです…」

アデア「気持ちは嬉しいよ、でも…」

わかな「でも…なんですか…?」

アデア「君も死なせるわけにはいかない」

わかな「!!」

アデア「アベリアの麻痺毒が残ってる状態で無理もさせられない。ゆきののためにも、君のためにも、僕がいく」

わかな「アデア…さん…」

アデア「待っててね」

 

 

 

 

 

 

 

アデア「…妙な気配を感じる。おかしい、バリケードはやぶられていないのに…」

今、この兎組支部は緊急バリケードによって隔離されている。だが破損された形跡もないのに今まで感じたこともない気配を感じていた

アデア「鏡月…力を貸して…月光の瞳!!(ドビュッシーアイズ)」

紅い光がアデアを中心にドームを作り出す。アデアの意識の中が遠くの景色を映し出す

 

 

アデア「この邪悪な気配…いったい…。!!くっ!!」

感知している所へいきなり空を裂く一撃!それをアデアは避けた

アデア「…!どうして君が…!?」

???「…」

ガキィン!!ガキィン!!と鉛のぶつかり合う音、相手はフードを被ってはいるがアデアにはその動きと武器で誰だか即座にわかってしまった

アデア「なぜだ…!なんで!!君と再会した時…、本当にうれしかった!!お互いに生きているかわからない世界で!!また出会えたのに!!」

火花を散らしながら問い詰めるアデア、しかし答えは返ってこない

アデア「しらばっくれるなよ!!その猟奇的な動きに強靭な腕力…!なにより…。マチェットナイフなんて君しか使わないだろ!!」

認めたくない。だが信じざる負えない現実を受け入れるようにアデアは鏡月を逆手持ちし、フードとその先にある仮面を切り裂いた。ふわふわと落ちるフード、そして軽い音で落ちる仮面。長く太腿まで伸びた黒紫の髪があらわになった

アデア「君は…誰よりも僕のことを知っていたのに…!どうして…ラピス…!」

ラピス「アデア…」

悲しい目を向けながら、ラピスはつぶやいた

ラピス「私は…保険…。完殺が失敗した時のために育てられた…アサシンキラー…。私はもうラピスなんかじゃない…。今の私の名は…、滅砕刃(めっさいじん)」

その一言を皮切りに襲い掛かるラピス。アデアは両手のマチェットナイフをいなしながら床に刃を埋め込ませる。それとともに手首をつかんでラピスを窓から放り出す!だがラピスは窓枠をゆがませるほどの力でつかんで腕の力だけで自分の体を建物の中に戻した。それを見てアデアは払い切ろうとするが見事に低空で体を翻すとラピスはマチェットナイフを取り戻した

ラピス「無駄…、アデアの動きは予想可能…」

アデア「くっ!!」

動揺せざるを得ない一言に焦るアデア、これがまだ昼だというのだから質が悪い。日にちを跨ぐまで半日もある。それまで自分のことを自分以上に知る相手と戦うのは得策とは言えない

アデア「ラピス!目を覚まして!君は利用されているだけなんだ!!」

ラピス「知ってる…。そんなことは何回も見てきた…、みんな利用されている…。だから…!」

 

ラピス「あなたを殺して私も死ねば誰も傷付かない…」

その一言に別の戦慄を感じるアデア、ラピスは…囮…!?

ラピス「私と一つになりましょ…?アデア…」

???「その前に私と遊びましょうか?」

ラピス「!」

首を固められるラピス。音を立ててマチェットナイフが落ち、ラピスはもがく

アデア「アベリア!」

アベリア「行って!!」

その言葉に迷うことなく走るアデア、姿が見えなくなったあたりでラピスが拘束から抜け出す

ラピス「邪魔…しないで…!!」

アベリア「アデアのためを思うなら、これは邪魔ではないわ。アデアはね、今を一生懸命生きてるの。それを邪魔するのならば…例え仲間であっても私たちが許さない」

どの流派にも該当しない暗殺拳の構えをとるアベリア、ラピスは袖からマチェットナイフを取り出すとアベリアに襲い掛かった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「この部屋であってるんですね?翠(スイ)さん」

 

翠と呼ばれた人物は頷く、合計六人の仮面を着けた人物たち。驚くべきことにフードなどをかぶっておらず、それぞれが個別の格好をしている

 

 

???「滅砕刃さんが邪魔ものとやりあってる間に終わらせますよ。こちらの時間もありませんし」

 

するどいナイフを振り下ろしてドアのロックを壊すとそのまま蹴り開ける。他のメンバーは手慣れたように周囲を警戒していた

 

???「では、始めましょう「みぃつけた」、!」

床に突き刺さる大鎌、六人がそれを避けると続いて意思をもつ蛇のように炎が襲いかってきた!だが極めて冷静に六人とも狭い廊下から少し広めのサロンまで下がった

 

???「…。これはこれは、所属したというのは本当のようなのですね、死神リスティス」

リスティス「知っててくれて光栄だね、イカれた殺し屋ご一行様よ」

炎の中から大鎌を持って現れるリスティス。その目は殺意で満ちていた

リスティス「こちとら商売上がったりなんだよね、あんたらみたいな無差別な殺し屋が好き勝手暴れまわるとクライアントだって減るし」

???「心外ですわぁ、私たちはただルールに従っているだけなのに」

リスティス「そのルールって奴でクライアントとか殺害対象を皆殺しにされちゃぁ困るっつってんだよ。私ら世間のはぐれもの達の間でもルールって奴はある。それを守ってもらおうじゃないかってだけよ」

???「お断りいたします。」

リスティス「話し合うだけ無駄ってか、六人まとめて来いよ」

ドスの効いた声で挑発するリスティス、それを聞いてか正面を除いた五人が徐々に距離を変えてくる

 

リスティス「(無法モンなだけじゃなさそうだねぇ…。強がってみたけれど意地張りすぎたかな…?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月前…

 

 

 

 

 

 

ソフィア「本当にこの内分けでいいのかしら?頭数からして兎組にはルヴィロームが適任じゃなくて?」

リスティス「私と群れて死んでもしらないよ?黙ってるだけのリヴィリーナと違って乱戦になる可能性がないほうが動きやすい。ましてやシリアルキラーとトリガーハッピーを混ぜて生まれたサイコパスなんか邪魔だ、あんたらに押し付けるよ。だから私は兎組に行く」

リヴェータ「あたしも死神がいないほうがやりやすいかもね」

リヴィリーナ「(ホワイトボード)リヴェータと同じく」

ルヴィローム「キッシシ…。まぁわたしもシャーヴァルの野郎から同じ組に居ろって釘を刺されてる以上、仕方ねぇとは思うがなぁ」

ソフィア「全員文句無しってことでいいのよね?鞍替えは簡単に効かないけど」

リタ「ここまで言い合ったのだ、構わんだろ」

リスティス「まぁ安心しなよ、仮にこっちで出くわしても私を殺せる奴なんざいない、逆に殺してやるよ、何人でもね…!」

 

 

 

 

リスティス「(泣き言なんざ死神らしくないね…!)悪いけど天国へは行けないよ、私は地獄への道案内しかできない死神なんだ。首かっ切られたい奴から来な!」

???「ではお言葉に甘えて…、牙重(げじゅう)さん、死崩(しだれ)さん。やっちゃってください」

その号令とともに襲い来る二人、リスティスはランタンからの炎で片方を迎撃すると格闘戦でもう片方を蹴り飛ばす

牙重「…。紅袖さん。特殊装甲服が解けてやがるんですが」

紅袖「あら…。やはり死神のうわさは本当でしたのね、となれば…道下(どうか)さん、陽炎(かげろう)さん。バトンタッチお願いします。他の方は任務続行で」

リスティス「(くそっ!やっぱりそうなるよな…!)」

陽炎「足元がお留守ですよ」

急に凍りだす足元、リスティスは毒と炎で氷を解かすと即座にその場から回避!その場所へ身の丈ほどの火の玉が落とされた

陽炎「真上はお留守ではなかったようですね」

道下「フロストマーズが避けられたね…」

陽炎「甘くはないということで、流石死神」

リスティス「褒めてるのか貶してるのかわかんないよ。もっと的確に言ってよ」

陽炎「失礼、この程度で殺せると思ったのです。他意はありませんよ」

リスティス「死ね」

 

紅袖「口が悪いのですね、まぁ六人相手にしようとしたその心意気は認めますが…。生憎と暇でもないので」

???「ならリスティスさんだけでは無ければどうでしょう?」

いきなり動きを止められた紅袖たち、無理に動こうとするが体が動かない

???「マグネキネシス!アンチアサシン!!」

吹き飛ばされてサロンへ転がる四人の暗殺者たち、リスティスは驚きながらも相手二人を後退させた

リスティス「へぇ、兎組も命令違反ってやるもんなんだね」

デビローズ「えぇ、今回が初めてではありません」

ただいな「例え敵わなくとも仲間のために戦う。それが兎組です」

あるま「こんな時に振るわねば何のために修行をしているのかわからぬ」

このか「ゆきのはウチらが絶対に守りきったる…!一歩も行かせへんで!」

並び立つ四人、そしてリスティスは六人の暗殺者達を気迫で後退させる。だが余裕があるというのが見て取れた

紅袖「おや?ずいぶんお早い到着ですね」

振り返りながら振り下ろされた刀へ対応する紅袖、目にも止まらぬ早さで相手を…。アデアを退ける

 

アデア「みんなっ!力を貸して!!」

 

五人はその声に答えるように暗殺者達へ戦いを挑んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 最終章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかな「行かなきゃ…!私も…!完殺じゃなく…わかなとして…!」

 

 

 




お疲れ様でした、次回が終わればΞ最後の物語、シャーヴァルたち新生鍼組の物語が始まります

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