†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA 作:てゐと
組み合ったままガラスを破って二階から外に落ちたアベリアとラピス。二人はすぐに体勢を立て直して凄まじく勢いのある近接戦闘を繰り広げていた
アベリア「いい加減になさいな!利用されるだけの人生なんて何が生き甲斐なの!?」
ラピス「アデアと一緒になれるならそんなことどうでもいい…」
アベリア「分からず屋!なぜアデアを行かせたかわかる!?あなたはっ!アデアを引き付ける囮だったのよ!あなたを利用した奴はもうゆきのに迫ってる!」
ラピス「それがどうしたの…?」
アベリア「なにもわかってないわね!あなたとわかなは連中にとってもう必要ないのよ!顔が知られてる以上に兎組を敵に回すことはてゐ国歌劇団を敵に回すことと同じ!だからあなたたちごと皆殺しにして痕跡を消すつもりなのよ!」
アベリアの考えはあくまでも予想ではあったが的を得た考えであった。実際にここで兎組を全滅させて紅袖達がラピスを連れて帰った場合、探知系統の能力者に簡単に居場所が知られてしまう。死体がない場合など尚更疑いに拍車がかかる。その結果ラピスのことを知っている他の組のシュトラや裏世界に精通しているシャーヴァルに直ぐ見つけられてしまうことだろう。例え優秀であれどもそうなればラピスを生かしておく理由が無く、完全に使い捨ての駒として使うのが全うだ
ラピス「…私は…」
アベリア「それでも立ちはだかるなら…。私が自ら引導を渡して上げる…!」
組み合った状態から徐々に変わる姿、バサッと悪魔のような羽根を生やして鋭利なアーマー。アベリアがラピスを睨むと目元をサングラスのような透明な仮面が装着、組み合った手を突き放して羽根の羽ばたきでラピスを吹き飛ばす
ラピス「その姿は…」
アベリア「お初にお目にかかるわね、みんなに見せたことが無いから当たり前だけど…!」
襲い来るアベリア、所変わってアデア達は六人の暗殺者たちと激戦を繰り広げていた
デビローズ「捕まえましたよ!」
牙重「さっきは油断したがこの程度で捕まえたとは笑わせてくるな」
デビローズ「なら逃げられる前に倒します!」
抵抗する牙重をマグネキネシスで上に飛ばすデビローズ、自身もマグネキネシスで飛んで牙重をフェイバリットホールドに持っていく
デビローズ「デビローズバスターっ!!」
牙重の顎と首を肩で引っかけ、体を反らせて両足を両手で持ってそのまま地面へ落下!着地の衝撃で窓が割れ、近くで戦闘していた暗殺者たちは怯んだ
リスティス「オラオラっ!威勢はどこ行ったんだよ!」
怯んでいた道下に容赦なく大鎌を振り回して攻撃を繰り出すリスティス、しかし透明な何かがそれを阻んだ
道下「甘いよ死神…」
リスティス「甘いのはてめぇだよ」
腰のランタンが扇状の炎を吹き出して道下を焼き払う。一方デビローズバスターを決められた牙重は海老反りで拘束されていた体を足の力で解放すると容赦なくデビローズの顔面に裏拳を叩き入れた!
ただいな「はあっ!!」
翠「単調…。話にならない…」
軽くあしらわれるただいな、翠は両手に持ったショーテルでカウンターにも似た戦法を取っていた
ただいな「予測されてる…!?」
翠「そんな動きは何千と見てきた…!」
ショーテルによって刀を弾き飛ばされるただいな、振りかざされる刃に霊札を使った呪術障壁で対応し、続けて札を取り出す!
ただいな「剣術が予想されるならこれは予想できますか!?」
爆裂する札、電撃を放つ札、ホーミングしてくる札と様々な札を使用して逆に翠を追い詰めるただいな、その近くではこのかと死崩が戦っていた。しかしこのかが氷柱を設置したり飛ばす暗器の数々を死崩は蹴りだけで粉砕してくる。相性はかなり悪いと言わざるをえない
このか「(なんちゅう足の強さや…。アカンな…)」
近寄らせないようにするのに精一杯、動きにくそうなメイド服にしては俊敏に動いてこのかを徐々に追い詰めていた
死崩「申し訳ありませんがもっと本気で来ないとわたくし達は倒せません。出し惜しみ、なさらないよう」
あるま「貴様ら!ここがどこで小生ら等が誰か知っているのだろうな!」
紅袖「もちろん。しかし残念です…、ハルサキ・ゆきの・テレジアの暗殺さえ済めば皆さんのことぐらい見逃してあげようと思っていたのですがね」
あるま「ふざけるな!はいそうですかと仲間を殺らせるものか!」
紅袖「腕はいいのですねぇ…。あなた、殺し屋ですね?くっふふふ…」
あるま「だとしたらなんだ?小生の生き方が貴様にどう影響する!?」
紅袖「いえ…。今から散らすには惜しい実力だと思いましてね…」
マチェットナイフとの鍔迫り合い、しかし両手持ちのあるまと比較して力の入れにくい逆手持ち、しかも片手で刀の押し切る力に余裕で耐えている
紅袖「あ、そうそう…。言い忘れてました、私…右利きなんですよね」
左手のマチェットナイフが刀と火花を散らす。あるまは一度距離を取ると手に持った速虫刀を納刀、もう一つの刀、岩斬剣を抜刀する
紅袖「いい刀ですねぇ…。手入れが良く行き届いてますし」
あるま「目利きは良いようならわかるな!?並みの金属など簡単に叩き切れるぞ!!」
勢い良く振り下ろされる岩斬剣、紅袖は不敵に笑うと左手で持ったマチェットナイフを持ち直して横に軽く振りかぶった
紅袖「どうぞ?」
ガキャバキィン!!耳をつんざくような金属の破壊音響く、それは…
あるま「な…なにっ…!?」
紅袖「くっふふふ…あーっはっはっ!!」
岩斬剣の刀身が砕け散った音だった
あるま「バカな…!芯に鋼玉を使っているんだぞ…!?」
紅袖「ごめんなさいね、ただの金属で」
普通ならば、あるまの一撃で紅袖のマチェットナイフは負けていただろう。しかし、あるまがその原因を理解するのにそう時間はかからなかった
あるま「腕力…!」
紅袖「そんなに力入れてませんよぉ?」
そう言いながら平手打ちで防御するあるまを壁に飛ばした。あるまは壁に打ち付けられた痛みより防御した腕が赤く腫れ上がり麻痺していた。そんなあるまを見ると紅袖は「ふぁ…」と欠伸をしながら静かに素早く他の戦闘に手を出して軽々と他の兎組メンバーを退けていった
紅袖「この程度でしたか、こんなことなら私達の誰かなら1日で済んでいましたね」
アデア「くっ…!」
紅袖「最後のチャンスをあげましょう。皆さんは今からハルサキ・ゆきの・テレジアが殺されるのを黙って見ていてください。そうすれば見逃してあげます」
アデア「答えは変わらない…!そんなことさせない!!」
風を切る音と飛んできたマチェットナイフ、それは壁にヒビと穴を作り突き刺さった
紅袖「おとなしく下手に出てあげたら付け上がる…。どいつもこいつも愚かしいですねぇ…」
流石にイラついたのかコツコツと歩いてくる紅袖、六人はそれでもなお迎え撃つべく構える
リスティス「はあっ!!」
一瞬チラッとアデア達を見ると単身大鎌で急襲するリスティス、しかし紅袖は至って平然に持ち手の部分を掴んでリスティスを大鎌ごと投げ飛ばした
紅袖「死神が相手なら道を開けるとでも?触るのがダメなら本人に触れなきゃいいだけでしょうに。さて…死にたい方からどうぞ?来ないなら私が選んじゃいますけれど」
デビローズ「皆さん、ここは私が」
アデア「ダメだ。ここは…ぼくがやる。だから…皆にお願いがある。少しだけ…目をつぶっていて」
ただいな「アデアさん何を…」
アデア「閉じてて!」
強く言い放つと鏡月を手にアデアが煌めく、強い光の中でその姿はすぐに変わった
紅袖「手品ですか?数といい賑やかですねぇ」
???「手品…?違うよ…」
その姿はいつもの姿からかけはなれた姿、長い髪に白い羽衣、足は地についておらずその目は深紅に染まっていた
紅袖「姿が変わって強くなるのですか?そんなものはアニメやゲームの中だけですよ」
投げられるマチェットナイフ。アデアがそれを睨み付けるとマチェットは倍速で戻り、そのまま紅袖の腕を切断した!
紅袖「おや…?」
陽炎「紅袖さん」
紅袖「平気ですよ、ところで今…何をしました?」
???「君が受け取り損ねただけだよ。次は私の番だ」
紅袖「(投げたマチェットが鏡に写したようにこちらに来た…。反射系統の何かですかね)」
腕を切り飛ばされて大量出血しながらも冷静に状況を判断する紅袖、しかしそんな余裕を持った思考は一瞬で消し飛んだ
???「これだけは使いたくなかった…。けれど…、それをさせたのは君達だよ」
わなわなと揺れる長髪、手に持つ鏡月は光り、ほんの一瞬だけ光を失ったように暗い色になった
紅袖「…!っ翠さん!!」
真昼の空はたった一秒で深夜ような暗闇へ、それとともに紅袖達の全身に深い切り傷、そしてスプリンクラーのように吹き出す血の雨
翠「テレポート…!」
暗殺者六人は消えた、おびただしい血の水溜まりを残して
???「…。はぁ…」
鏡月を放り投げて元の姿に戻るアデア。後ろでは目を閉じていろと言われたメンバーがずっと目を閉じていた
アデア「もう開けていいよ、ありが…とう…」
血溜まりに前のめりで気絶するアデア、それを目を開けたこのか達が青ざめた顔で駆け寄る
あるま「アデア!起きろ!!」
デビローズ「私の部屋へ!ただいなさん!手伝ってください!「はいっ!」」
このか「アデアっ!アデアっ!」
リスティス「おいおい…!息してないぞ…」
アベリア「それが全力?悪いけれど終わらせるわね」
周囲が暗闇に支配されて尚動揺を見せないアベリア、一方のラピスは突然の昼夜逆転に驚きと焦りからアベリアによって一方的に攻撃され続けていた
アベリア「静かなる死を手向けに…」
正確無比にして淡々と振るわれる暴力、ヒールによって体に穴を空けられながらラピスが蹴り飛ばされるとアベリアは羽をゆらりと震わせる。紫色とは違う黄色の鱗粉を撒き散らしてラピスを全身麻痺に陥れる
アベリア「抹殺実行(デストロイオーダー)…、キラーエクスキューション…」
ラピス「あ…アデア……」
浮き上がる寸前、アベリアが止まる。ラピスはギリギリ頭だけは動かせたようでアベリアから攻撃が来ないことを不思議に思って顔を上げた
アベリア「死にたい?生きたい?あなたってどっちなの?」
ラピス「…死に場所を求めているのは事実…だけれども…」
アベリア「あなたに見せてあげる。あなたのことを使ったやつらが何をしようとしたか」
胸ぐらを掴むとアベリアは飛翔。そしてサロンの窓へラピスを投げ飛ばした!!破壊音とともにラピスが見たものは…血塗れのアデア、そして自身の足元には夥しい血…
ラピス「アデア…!」
アベリア「今のあなたに、アデアの名を叫んで彼に駆け寄る資格があるのかしら?」
動かない体、近くて遠く届かない。そしてその一言はその時が進むにつれて錘のようにラピスの自我に圧し掛かる
ラピス「私は…私はぁっ…!!」
アベリア「見なさい。あなたを利用した奴らが残した爪痕を」
いつも皆で談笑していたサロンはもはや見る影もなく、壁には血や削れた痕跡。アデアを必死に呼びかける五人も傷だらけだった
アベリア「ここにあなたの居場所はもう存在しない。後悔しながら…。かつての仲間として、死を」
ラピスが見上げたアベリアの顔は、笑っていない悪魔そのもの。殺意の具現がそこにあった
「…めて…、ア…リア…」
サロンに木霊する小さな声、それは意識を失い尚右腕を差し出しアベリアを制止するアデアの声だった
アデア「許して…あげて…」
アベリア「…。次は無いわよ」
瞬時に戻る姿、ラピスはアデアへと手を伸ばす…
ラピス「アデア…!」
届くはずもなく、意識とともに落ちる腕。アデアは担架で運ばれて行った
紅袖「想像以上…でしたね…。これは…」
全身の切り傷から吹き出る血、押さえてもそれは止まることなく流れ続ける
紅袖「さすがにこの傷は助かりませんかね…。くっふふ…」
自分が死ぬかもしれない瀬戸際に笑う紅袖、後ろの五人も疲弊していた
陽炎「任務失敗ですか?」
紅袖「悔しいですが私達でさえギリギリ到着できたところでしたし他の方々に来てもらうには時間がオーバーしてしまいます。まぁハルサキの方々は皆殺しにしましたし過失金も頂戴しました、今回はそれで利益でしょう」
道下「いつか…殺す…」
紅袖「もちろん、依頼が来るなら次こそ必ず始末しましょう。裏切り者も含めて、ね…」
残った片腕で投げるマチェット。それは近くの木に刺さった
紅袖「同士じゃないですか、かくれんぼなんかやめて出てきてくださいよ。完殺さん」
わかな「…」
牙重「完殺…」
わかな「皆さん。お久し振りです」
紅袖「今回は私達も失敗してしまいました。どうでしょう?今戻ってくるのなら今回の失敗を不問にし、上部にこの事を揉み消してもらいますが」
わかな「まるで裏切った前提でお話しなさるのですね」
紅袖「違うのですか?でなければこそこそしないと経験上思ったまでですが」
わかな「…。紅袖さん。私はもう…。完殺ではありません。私の名前はわかな、これからいつまでも」
死崩「裏切り者がよくもまぁ…。殺しますか…?」
紅袖「いや…。気まぐれです。わかなさん」
わかな「はい」
紅袖「今日は見逃してあげましょう。生憎とこの状態で援軍など来られても困りますからね。しかし…次はありませんからね、その時は…。皆殺しにしますから覚悟していてください」
そう言ってテレポートで消える六人。わかなは一息つくと腰を抜かした
わかな「やっぱり…私には殺せない…。あの怪物は…」
凄まじい威圧感から解放された彼女の手にはハンドガンが握られていた。刺し違えてでも紅袖を殺す絶好の機会を伺っていたのだがあれだけのハンデがありながら戦慄するほど紅袖の放つ殺気は大きなものだったのだ
わかな「もっと強くならなければ…。誰かを護れるくらいに…、アデアさんと同じくらいに…」
デビローズ「呼吸器繋いでください!アンペルトさん電気を!」
アンペルト「アデアが助かるんなら全部持ってってくれや!」
デビローズ「意識を失ってるだけで死んではいません!絶対に死なせません!!死なせるものですか!!」
決死の覚悟でデビローズが動く、心電図は力なく一定の感覚を保っていた
このか「原因は何やの…!?」
デビローズ「不明ですよ…!こんなの初めてです…」
わかな「光を吸収しすぎた…ではないでしょうか…」
そこにわかなが扉を開いて入ってきた、一同はその言葉の意味がまるで理解できなかった
わかな「アデアさんの鏡月…。それは光を糧に強大な力を発揮することができます。時間はそのままでこの暗闇、おそらく…」
あるま「この周辺の太陽光を全て吸収したと…?こんな暗闇になるほどにか!?」
外は徐々に明るくなってはいたが未だに暗い。時間は昼だ、暗雲も立ち込めず晴れていた空の面影は何処にもない
わかな「(アデアさんから聞いたとおりなら…。これほどの光を吸収してしまったなら間もなくアデアさんは消滅、全ての記憶から消えてなくなってしまう…。それだけは…、それだけは阻止しなければ…!)」
ただいな「もしそれが本当ならば…。どうするのですか?」
わかな「…。これにかけます」
手に持つのは赤い薬液の入った注射器、わかなの手は汗と震えが見てわかるほどに緊張していた
デビローズ「なんですかそれは…」
わかな「…」
一刻の猶予もないが言葉を躊躇うわかな、反応からして"なんの薬なのか"それを知っているのは明らかだ。他のメンバーもそれには気付き、あるまとデビローズはその正体に現実であってほしくないと願っているようだった。だが…わかなは意を決して口を開いた
わかな「DRK-0002EXD…ダークネスポケモンを人工的に作り出せる悪魔の薬です…」
その言葉にデビローズは目付きを変えてわかなの胸ぐらを掴んで壁に背を叩きつけた!誰よりも早く反射的に体が動いたのだ
デビローズ「ふざけんじゃねぇよ!そんなもん使わせるか!!てめぇいつからここに居やがる!?アタシらと出会った時!あの事件でダークネスポケモンがどんなもんか!知ってんだろうが!!」
デビローズが言っているのは彼女たち、所謂新メンバー二期組が配属前に救援に来た"シャーヴァルが脱獄したお話し"である。その時にダークネスポケモンの性質を知ることになった彼女達はその危険性を誰よりも知っている。この先に待ち受ける運命も
デビローズ「そんなもんでアデアをダークネスポケモンにしてみろ…!この場でぶっ殺して「だったら…」」
つかみ返される手、わかなの目は涙に溢れ、口元は悔しさに歪んでいた
わかな「だったらどうするんですか…!他に救う方法があるならこんなもの持ってきませんよ…。それにこのままアデアさんが居なくなったら…!皆さんの記憶から居なくなったら!!それを知ってる私は!どうすればいいんですか!?光をくれたアデアさんを救うにはどうすれば…!!」
あるま「二人とも落ち着け。わかな嬢、それをアデアに使ってダークネスポケモンの不死能力で救うのか?」
わかな「それともう一つ、中和剤として」
リスティス「吸収しすぎた光をそれでかい?」
わかな「絵の具のように一度混ざった黒を消せないかもしれません。しかしこれほど強い光ならば…ダークネスポケモンになること無く光を中和できるかもしれません」
デビローズ「くっ…!」
現状残った方法がこれかとデビローズは悔しさを露にする。他のメンバーも複雑な心境だ
わかな「責任は私が取ります。だから…!やらせてください…。アデアさんを救いたいんです…!」
黙認される意思。わかなは手を嫌な汗を吹き出し、微弱な震えを片手で押さえながら恐る恐るアデアの腕へその針を近づけていく
わかな「(お願い…!これが渡されたことが奇跡だと…。私にできる罪滅ぼしなのだと言うことを証明させてください…!!)」
アデア「ぐっ…!ぎっがぁぁぁっ!!!」
わかな「ひっ…!」
薬液を注射されて苦しみ出すアデアに怯えるわかな、だが怯むわけにはいかない。半分ほど注射すると針を抜く。アデアは苦しみながらも目を覚まさない
わかな「アデアさん…!負けないでください…!」
その瞬間に目を開けるアデア、その目はダークネスポケモンが力を発揮した時の黒い目だった…。だが…
リスティス「!。黒が…抜けてきてる…!」
黒くなった瞳が本来の色に戻っていた。完全に色が戻るとアデアは目を覚ました!
わかな「アデアさん…!」
アデア「み…みんな…。ここは…」
デビローズ「私の部屋です。あの暗殺者たちを退けた後に気絶したんです」
アデア「そう…だった」
自分がしたことを思い出したアデアは片目と頭を押さえて戦慄していた。それほど危険なことをしたのだろう
アデア「痛つっ…」
あるま「!アデア、傷が治って無いのか…?」
アデア「どういうこと…?」
その会話から状況を把握した一同。アデアだけが何を言ってるのかわからない顔をしている
わかな「(もしかして…アデアさんは付喪神のような存在…、つまり本質的には生物じゃないからダークネスポケモンにならなかった…?)」
一瞬の考察、それは的を得た答えだった
アデア「ゆきのは…」
アンペルト「無事じゃ、ライラやライフ、わしと交代にアベリアが守ってくれちょる」
アデア「そっか…」
アベリア「…ということよ、でも大事を取って今日は安静にしてたほうがいいわ」
一方のゆきのも目が覚めて事情を聞いていた、彼女もホッとする
ゆきの「私ね、夢の中でだけど久しぶりにお父様とお母様に会えたの、二人とも私を送り出してくれた時と同じ笑顔で抱き締めてくれた…」
光指す空を窓から見上げてゆきのは笑いながら言う。しかし…。もう彼女の両親は…いない…
ゆきの「長く会って無いけれど…。元気にしてるのかな…」
それをゆきのは知らない。そしてアデア達の部屋でも事情説明とわかなによるハルサキ家皆殺しについて説明があった
わかな「あの人たちはそんな人達なんです…。命を簡単に奪って、蹂躙して、幸せを踏みにじる…!」
あるま「ゆきの殺しを依頼し、ルールに反目したのがゆきのの血族、故に親族皆殺しか…」
リスティス「私も殺し屋だけれどさ、裏世界にもルールはある。奴らのルールは裏世界というただでさえ生きにくい世界をさらに生きにくくしている。必要数の殺しじゃないってのはそれだけで意味嫌われるのさ。だからシリアルキラーのルヴィロームにあれだけの懸賞金が付いたってわけ」
アデア「…。この事はゆきのには内緒でお願い。来るべき時に、話そう」
約束しあう決断。そしてその日は驚くほど静かに過ぎ去って行った
数日後…
ベノ「なるほどな、ジンティアたぁめんどくせぇ所に目ぇ付けられてたんだな」
報告と二人の裏切りを弁護するためにアデアとわかな、ラピスにリスティスはベノとシャーヴァルの所へ来ていた。流石に裏世界に精通している二人はジンティアの名を聞いて顔に出すほど嫌悪感を出していた
シャーヴァル「ジンティア、実を言えば噂しか聞いたことのなかった組織だ。なにせ目撃者が全くいない。それでいてその存在は一部に知られている」
ベノ「例えばよ、一般的にニュースに報道していいラインがあるとする。殺人事件で~とかあるだろ?ところが連中のやってることはマジの皆殺しだ、一般人に易々と報道するラインを軽く超えてやがる。だから警察も公にゃできねぇ」
アデア「ベノさんたちが知ってる範囲でもっと教えていただけませんか?どんなことでも…!」
ベノ「条件付きならいいぜ、条件はゆきのの親の仇討なんてバカはやめろ」
アデア「…」
ベノ「黙るな、そういうところがお前の悪い癖だ、お前はやると言ったら絶対にやる。歯止めが効かねぇし七つの大罪を忘れたわけじゃねぇだろうよ」
蘇る記憶…。ゆきのとジラーチの繭を護るために兎組総出でたった一人の悪魔に全滅した。次々と倒れ、散りゆく仲間たち、全員が本気だったにも関わらずあっという間に自分だけが残ってしまったあの時をアデアは忘れてなどいなかった
ベノ「今回だって相手の中にすばやく適切な判断ができるリーダーが居たから逃げた。お前ひとりで追い返したと思うならそれはお門違いもいいところだ。次は通用しねぇし奇襲さえも簡単に対処した相手の本拠地なんざお前が行っても殺されるのが関の山だ」
悔しいがその通りであるだけに否定できない。アデアは一つため息を軽く吐いて落ち着くと「わかりました」と真剣な眼差しでベノのことを見た
ベノ「その目なら信用できるな。まずはそうだな…」
シャーヴァル「ジンティアという組織は俺たちが現役で裏世界を謳歌していた時はおとなしい組織だった。普通の暗殺を受け持つ組織なだけで今のような苛烈さは無かった」
ベノ「今回の報告で聞くまではその印象がそのまま定着していたんだがまぁ他には護衛も兼ねていたらしい。密輸の手助けをしたり取引の時に圧をかけるためだったりな」
シャーヴァル「そんな下請けをしていたほど小さな組織がまさか、な…?」
リスティス「私らから裏世界でお仕事奪って文無しにしてるなんてね、信じられなかったよ」
わかな「すいませんでした…」
リスティス「大丈夫だよ、あんた等こっち(てゐ劇)選んだんだろう?なら落とし前は元上司につけさせるさ」
ベノ「裏切りの件だがよ、ただじゃ見逃せねぇ、もうちょっと知ってることがありゃ教えてほしいんだがな」
わかな「僭越ながら…」
テーブルに置かれるUSBメモリ。それをベノは手に取った
わかな「私とラピスさんが知る限りのことを詰め込みました。ですがラピスさんと相談した結果これだけは口頭でお教えしなければと思いましたので述べます」
わかな「先日兎組に襲来した六名についてです。彼女たちはブラッドクラスというてゐ劇でいう天組に値するチームです。ブラッドクラスは別名ジンティアの猟犬と呼ばれています。暗殺に特化したクラスで特にリーダー的存在である紅袖…さんは特に危険です。遊び半分、冗談四割で味方さえ躊躇なく殺します」
アデア「それについて追記ですが…あるまの岩斬剣がただのマチェットナイフの一振りで折られました」
シャーヴァル「あの刀を折るか…となると腕力が凄まじいのか?」
ラピス「正解…。私にマチェットナイフの使い方を教えてはくれたけど…」
わかな「紅袖さんの本来の武器は素手なんです。マチェットナイフは手加減で持ってるだけと聞いたことがあります」
シャーヴァル「お前みたいだな」
ベノ「うっせ」
わかな「他には…炎と氷を操る陽炎、テレポーテーションを巧みに操る翠、見えない触腕で自分を守り、相手のペースを崩す道下、脚力が凄まじく蹴りの一撃でボーリングのような風穴を開けてしまえる死崩、全身を軽量強化武装で身を包み近接戦で相手をしとめる牙重。以上がブラッドクラスです」
ベノ「いっこんぞめみたいな奴がいるんだな。デルタ種か?」
わかな「私も驚いたのですが生まれつきのいっこんぞめさんと違って陽炎は改造と遺伝子操作らしいです」
ベノ「改造か…。ダークネスポケモンじゃねぇのか?」
ラピス「違う…。これは最近できたものと紅袖が喋っていた…。おそらくわかなが失敗した場合の最終手段と実験を兼ねていたと思う…」
シャーヴァル「…いまだ信じられないな。あの時かぎりだとは思っていたがもう一度生きて現物と対面することになるとは」
その手にはあの薬…DRK-0002EXDが握られていた…
ベノ「しばらくは兎組は毒組と行動を共にしろ、ほとぼりが冷めるまでな」
アデア「ありがとうございます」
わかな「さすがに毒組と一緒ならジンティアも手を出せないはずです。それに先日のダメージもあります」
ベノ「そのことなんだが鏡月で切られたんだろ?」
わかな「不可解なのです…あの傷じゃ助かるはずがないのに…」
ベノ「なんにせよ、これ以上は手出しさせねぇよ、てゐ劇に喧嘩売るだけならともかくこんな俺たちの過去を蒸し返すようなら許すわけにゃ行かねぇ」
シャーヴァル「ベノ、この一件は俺たち新生鍼組に任せてはもらえないだろうか。導かれたように奴らによって裏世界で居場所を失ったやつらが居るこの組が適任だとは思う」
ベノ「戦力的にもてめぇらしか行けねぇよ。こちとら偶然かどうか知らんがドンパチかまして怪我してる真っ最中だ、地組もほぼ同じタイミングで厄介ごとに巻き込まれて半分以上が大怪我だ、兎組もこの通りだしよ、鍼組にしか任せらんねぇ」
シャーヴァル「ありがたい。では早速作戦やプランを考察するとしよう。来るか?リスティス」
リスティス「ばーか、私も立派な怪我人だ、それに…こっちに来た時の保険にリタと待機させてもらうよ」
シャーヴァル「そうか。任せたぞ」
部屋を出たシャーヴァル。そこには裏世界から流れてきたメンバーが聞き耳を立てていたようで各々シャーヴァルへ歩み寄る
ルヴィローム「よぉシャーヴァル。遠足のしおりできたら教えてくれよ、バスケットに銃とナイフと鉛玉詰め込んで讃美歌でも歌いながらハイキングと行こうぜ」
ソフィア「同感ね、ついでに殺していい人数とか制限あるかしら?」
リヴィリーナ【(ホワイトボード)無いなら私が拡声器で叫んでもいいんだけど?】
リヴェータ「私も生計を崩された礼はしたいんだけど?」
シャーヴァル「急くな、おそらく敵の本拠地だ、なにが起こるかわからない以上むやみに突っ込むわけにも行かない。まずは情報を集める。ルヴィローム、一緒に来い。ソフィアはリヴィリーナとリヴェータと共に情報屋へ、俺達も独自のルートで集めてくる」
ソフィア「了解、合流時間はどうする?」
シャーヴァル「深夜0時までに戻ればいい。それまでステイル達に留守を任せている。早ければ明日にでも本拠地を叩く。もう…こんな物は作らせない。世界に不要なものだ」
ぎゅっと握られる注射器の中では赤い液体が…嘲笑うように揺らめいていた…
→NEXT STORY…
お疲れ様でした。次がこのSpecialのホントの最後の物語です。このepisodeでザラームの封印を解き、冥王フランチェスカを間接的に復活させ、ゆきのの親族を皆殺しにし、ゆきの自身も殺害しようとした全ての元凶、ジンティアの本拠地にシャーヴァル達、新生鍼組が乗り込みます。
元々シャーヴァルはこの†MULTIPLE AIGIS†という物語の最初の敵でした、ですが人気になったことで仲間になり、主人公の一人にまで成り上がりました。そんな実力も折り紙付きの彼とその仲間達が激闘を繰り広げるepisodeⅣ、お楽しみに