波動実験艦武蔵 ~遥か遠き起源の惑星〜   作:朱鳥洵

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お久しぶりです。
すっかり2週間に一度投稿に落ち着いてしまいました……なんとかしたいですね。
ここまで間があくと前回までのお話を覚えていないかもしれませんので、今回からは挨拶と共に前回までのあらすじを書いていきたいと思います!

前回までのあらすじ
 原初の方舟――アケーリアス文明が残した、あまねく宇宙に命を育むもの。
 ガトランティスの侵略から2年。人知れず任務を果たし、地球へと帰還した武蔵は、原初の方舟たる惑星「アケーリアス」の探索任務のためはるばる大マゼラン雲へと航海を続けていた。
 ハブステーションから離れた位置にあったワープゲートを抜ける途中、ゲートの崩壊に巻き込まれワープを敢行した武蔵が修理のため立ち寄った火山の星”ミラストル”。そこに残された神殿には道しるべのような光を放つ紅い宝石が隠されていた。
 アケーリアス文明の遺産の解析を兼ねて紅い石に従って旅を続ける武蔵は、ある星へと到達しようとしているのだった――。


第10話 「招かれた地」

 氷を纏い星系内へと現出した艦に接近してくるものがあった。

「本艦右舷2時の方角に感あり。距離3万、数1。左舷10時の方向からも同様に接近してくる艦影」

 丹生の声と共に、肉眼でもその艦容は確認できた。

「昔の護衛艦みたいな形してるな」

 惑星が一つの国家に括られたこの時代、宇宙艦艇が主流である現在において洋上艦は既に過去のものであった。

 かつて自国防衛のため地球で運用されていた護衛艦という艦種は、駆動する事のないモニュメントとして数隻現存するだけであり、彼らには歴史を学ぶ中で出てくる兵器の一つでしかない。

 有賀の批評はその通りであり、接近してくる艦はまさにそれと分かるレーダーを持たず、目に見える武装は艦首の単装砲一門、ムラサメ型を思わせる大型の艦橋を持つ洋上艦然とした姿をしていた。

「地球、ガミラスのデータベースに同様の艦はありませんが、ガミラスには惑星に関するデータがあります」

 柑奈の言葉の直後、一ノ瀬の元に彼らからのメッセージが届いた。

「言語解析、第2艦橋に回します」

「不明艦、距離1万まで接近」

「第1種戦闘配備用意。撃ちはしない」

 にわかに慌ただしくなる艦橋であったが、言語解析の結果はすぐに柑奈の元へと来た事で、皆彼女に注目した。

「解析結果。ガミラスの植民星だった惑星ジルバと一致しました。電文、『客人の来訪を歓迎する。我が星へ来るのならば、我らに続け』」

 その報告に皆が肩の力を抜く。

「どうやら敵ではなさそうだ。本艦は現状を維持しつつ、ジルバの艦の案内に従う。返信、『お出迎え感謝する。本艦は貴艦らに全面的に従う』」

 近藤の指示で一ノ瀬が返信を打電すると、武蔵へと接近していた艦のうち1隻は反転、もう1隻は武蔵後方へと回った。

 2艦の誘導に従い航行を続けると、地球によく似た青い星が見え始めた。

 パンゲアのように一つにまとまった大陸と、その周りに浮かぶ大小の島々、青い海が広がるこの星には、地球にあったような防衛装置は見えない。

 護衛艦の1隻が武蔵後方から外れると、間もなく揺れと共に大気圏へと突入する。

「なんか、地球に帰ってきたみたいだ」

「ああ、そうだな」

 有賀と泰平がそんな会話をしているうちに、武蔵は安定翼とマストに白い尾を引きながら雲を抜けた。

 よく晴れた空、地球と同じような大気成分、そしてキラキラと輝きを放つ水面。

 陸地に建つ建物の様式と、都市を囲うように作られた巨大な壁、洋上を進む艦影だけが地球と異なっている。

「都市に……壁?」

 天高くそびえ立つ塔を中心に形作られた都市だが、城壁のような壁だけがこの平和に異様なほど堅牢さと冷酷さを感じさせた。

 誘導してきた艦からのビーコンに従い、陸地から沖合3キロの地点に着水した武蔵は、艦の制動とともに錨を降ろす。

 艦体にぶつかる波とその飛沫が見えると、有賀は席から艦内に通達を出した。

「戦術長より達する。現時刻をもって戦闘配備を解除。繰り返す――」

 レーダー音が艦に接近する小型の反応を探知し、近藤、有賀、谷村、そして柑奈が立ち上がる。

 左舷のハッチを開き海面へタラップを降ろした所にクルーザーが接舷した。

 ガミラス式をコピーして作られた翻訳装置を首につけた4人がタラップを降りていくと、クルーザーから降りた青年が紳士的に頭を下げた。

「ようこそいらっしゃいました、我が星ジルバへ」

「あなたは?」

「わたしは客人へのご挨拶を仕りました。ここでのお話もなんですから、街へと参りましょうか」

 クルーザーを指し示す青年。

 顔を見合わせる4人だったが、艦長の笑顔でクルーザーへと乗り込んだ。

 

 

武蔵/艦橋

「接舷したクルーザー、艦長達を乗せて艦を離れる」

「さて、もし何かあったら指揮は誰がとるんだ?」

 両手を頭の後ろで組み、背もたれに身体を預けた泰平が横目で問いかけた。

「現時点で高官である航海長か船務長じゃないですか?」

 来島が前を見ながら返すと、背後から「いや」と異を唱える声が出てきた。

「やっぱり戦闘指揮をとる理沙ちゃんだと思うよ」

「えっ、私ですか?」

「船務長と同意見だ。ま、今すぐ襲撃されるって事は多分ないだろうけどな」

 軽く笑う彼は、にわかに武蔵の周りの艦の数が増加していることには気づかなかった。

 

 

ジルバ/都市部

 青年に連れられて街中を歩く4人は、それぞれに不審な陰を認識しつつ平和な時を刻む街を進む。

「そろそろあなたの名を聞いてもよろしいので」

「名にこだわられるのですね」

 ここに至るまで幾度も繰り返された近藤からの問いに、彼はようやく答えた。

「意思の疎通には必要な事だと思います」

「こちらにも事情という物があるのです。皆さんもお気付きのはずですが」

 すると彼は突然大通りから伸びる小道に入り、両脇に目をやると歩く速度を上げる。

 それを追う彼らの背後では小道の左右に開いていた八百屋と果物屋が道を塞ぎ、その裏手に小さく建てられたプレハブのような小屋で彼は手招きしていた。

「まさかマークされているとは……」

 扉を閉めて呟く彼の横顔には先程までの冷静さは感じられない。

「やはりあの人影はあなたを追っていたのですね」

「ええ……恐らくは」

 イスのない小屋に正座をした彼は、有賀達を見る事なく頭を下げる。

「皆さんを巻き込むつもりは無かったのです。申し訳ありません」

「いきなり何の話だ?」

 有賀の言葉に顔を上げた彼は、淡々と事の顛末を語り始めた。

「わたしはこの国で外交官として勤めている者です。あなた方は、上空から、そして今街を歩いてどう思われましたか?」

「どう……って……変わった街だけど、平和だなとしか」

「ええ、たしかにこの星は平和ですが……この星の民のすべてがこの平和を享受できていない」

 有賀たちを真っ直ぐに見つめた彼は、力強い眼差しを湛えて、その決意を口にした。

 

「わたしは……かりそめの平和に叛旗を翻すものです」

 

 

 ――第10話「招かれた地」――




ありがとうございました。
前回と今回を合わせて1話でよかったのでは……? とか、そんな事は思っちゃいけません。
次回は5千文字くらい行きたいなーと思いつつ。
それではまた次回、お会いしましょう!
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