前回から投稿早いなーとか思っているのですが、どうでしょうか。
予想外にサクサクかけてしまいました……。
では、あらすじからどうぞ。
あらすじ
西暦2205年。武蔵はアケーリアスの残したと言われる種まく方舟、惑星アケーリアス探索のために旅立った。
航海の中で年をまたぎ、2206年初頭。
旅の初め、アカギのクルー達によって危険視されていた宙域へと、武蔵は差しかかろうとしていた――。
年始の騒がしさも鳴りを潜め、武蔵は予定の航路を進んでいた。
レクリエーションルームのホログラムは桜へと変わり、非番のクルー達の憩いの場となっている。
艦内時間で2時間後に迫ったワープのために集まった航海科のクルーもまた、慣れきったワープのためリラックスした雰囲気であった。
「次のワープ先って……」
「サルガッソーの近くですね。アカギのクルーが言っていた危険地帯です」
「……棚橋さん……何涼しい顔で言ってるんですか、危険地帯ですよ」
「案ずることはありませんよ、航海長。報告ではサルガッソーに入らなければ危害は加えられませんから」
――それ、言っちゃダメなやつ……。
内心そんな事を思いながら、泰平はコーヒーに口をつける。
「そういえば、サルガッソーを探査しようとしたガミラス艦がいたって聞いたけど……」
「あーそんな事聞いたかも……結局行方不明になったんだって」
柑奈に答えた水月は、モニターの光に満ちる観測ドームで赤い石の示す座標を調査していた。
「ワープの座標が変わったのって中性子星があるからだっけ」
「そうだよ。そこでどこに行くか分からなくなるよりはマシでしょ?」
「でもね……サルガッソーの範囲が5光秒くらいあるっていうのが……」
「まあ確かに、地球から金星くらいだし範囲は広いけど、近くを通るだけだし大丈夫だよ」
「でも柑奈、あそこ、ガミラス艦が消息を絶ってる宙域だよね」
「反射衛星砲搭載艦がそこを調査する為に大艦隊を引き連れて旅立ったのが半年前。ちょうど武蔵より少し早いくらいのタイミングで調査が始まってる。何かあっても、私たちは1人じゃないよ」
優しく微笑む彼女から目をそらし、水月はパネルを操作する。
「……杞憂だといいけど」
直後、艦内にワープの時間を知らせる放送が入った。
消灯を始めるドームを後にする柑奈の背中を尻目に、機器のシャットダウンをする。
『――間も無くワープの時刻となります。総員ワープに備えてください。繰り返します――』
真空に開いた穴から現れた武蔵の傍らには、無数に漂う小惑星と艦船の残骸。
漆黒の宇宙と白んだそこは、不気味なまでに静寂であった。
「次のワープまで6時間……」
「通常航行でここを抜ける事はできないな。せいぜい何も無い事を祈るしか」
ちらりと後ろを見ると、ワープのアナウンスからずっとレーダーに張り付いていた美佳がじっと画面を見つめていた。
「美佳、そんなにしなくても大丈夫だ」
「えっあ、うん……大丈夫?」
「ああ。気を張りすぎると疲れるぞ」
そっかーと肩の力を抜く。
「そんなにしなくても、異常があれば知らせてくれるから大丈夫だよ美佳ちゃん」
「はい、分かりました柑奈さん」
笑顔で答えた美佳の姿を見て前に向き直った有賀。
ふとした違和感に目を凝らすと、白い霧の中に何か光るものがあった。
「艦長、今何か――」
直後に鳴り響いたのは……。
「……救難信号……ガミラスの標準コードです」
「艦種は?」
「分かりません。ですが所属は……この宙域を調査する為に派遣された部隊です」
反射衛星砲搭載艦。
ガトランティス戦役時に計画、建造されたガミラス仕様のアンドロメダ級、ランダルミーデを含む3隻には、ノイバルグレイとは異なり反射衛星砲が搭載されていた。
その基礎設計は本国へと持ち帰られ、これまでの性能をはるかに凌駕する性能を持つ旗艦として数隻が建造されている。
主装備が反射衛星砲なのは波動砲を悪しきものとするイスカンダルへの配慮であり、ガミラスのイスカンダル信仰の表れでもある。
「そんな部隊が救難信号を出してるって事は……」
「やられた……って事だろうな」
泰平に答えた有賀は視線を落とす。
救難信号をどう受け取るべきなのか、まだ決めあぐねていたのである。
生存者がいる可能性は、たとえ低くともあるだろう。だが、地球よりも長距離航行に慣れたガミラス艦隊が敵もいない場所で救難信号など出すはずがない。
それは即ち、この広い空間に敵が潜んでいる可能性が高い事を示していた。
――アカギのクルーの警告通り、通達を入れて待機するべきか……。
本来ならそれが最も良い判断だ。しかし、生存者がいると仮定した場合それは異なる。
たとえ無謀でも、第11番惑星でのヤマトのようにいるとも知れない生存者のために身をなげうつべきなのか。
武蔵の攻撃オプションを頭に浮かべて首を振る。
戦艦たるヤマトに比して、探査船である武蔵の攻撃オプションは少ない。
単艦で突入するには、圧倒的に火力が足りない。
「数と位置さえ分かれば、まだ作戦が立てられるのに……」
「数と……位置……」
「でもお兄、レーダーだと何も映ってないし……」
「……そっか」
何かを思いついた様子の柑奈は立ち上がると、艦長に向き直る。
「意見具申。本艦の惑星探査装置を利用すれば、この宙域に潜んでいる可能性のある敵の位置や小惑星、残骸の座標も特定可能であるものと思います」
「惑星探査装置って……艦首のアレか?」
「そうです、義弥さん。その観測結果をコスモレーダーとリンクさせれば、常に艦首からの広範囲を索敵できる事になります」
「背後の敵はどうするんだ? 突入すれば、少なからず背中を向ける敵も出るだろ」
「いえ、問題ありません」
振り向いた泰平の問いかけに答えたのは、柑奈ではなく来島であった。
「最初の座標が分かれば、ある程度ですが軌道の予測はつきます。その上で前が鮮明に分かっているなら、離脱も……」
「……よし」
立ち上がり頷いた近藤は大きく息を吸い込み、号令を口にする。
「索敵用意! 総員、第一種戦闘配備、艦首回頭!」
「総員、第一種戦闘配備! 繰り返す、総員、第一種戦闘配備!」
「艦首回頭、ヨーソロー!」
「技術科員へ通達、艦首観測装置とコスモレーダーのデータリンク用意。探知領域を作戦予定圏内に設定し、熱源探知を含む全チャンネルを起動して別命あるまで待機」
「戦術科へ、艦載機を含めた各兵装はいつでも使えるようにしておけ。以上」
にわかに慌ただしくなる艦橋から見える外では、制動をかける艦首スラスターの炎が見える。
ガコン、と大きな音が響くと同時にエンジンのフライホイールの音が止み、代わりに重たく何かが回りはじめた。
上がる回転数に従って、互いに逆回転するフライホイールの狭間から徐々に光が漏れ出す。
「美佳ちゃん、観測結果は全部レーダーに出るけど、もし無理なら――」
「いえ、やります。私の仕事ですから」
「落ち着いてやればできる。自分を信じろ、美佳」
「うん、わかった、お兄」
2人の会話に微笑んだ柑奈はモニターに向き直り、キーボードを操作した。
レーダーは自艦の座標が中心より下に移動、表示範囲が広大になった特設の超望遠モードへと変わり、通常レーダーの観測範囲が半円で小さく表されていた。
「すごい、こんな広範囲……」
「観測開始」
艦長の号令とほぼ同時に、波動砲封印栓の隙間から緑の光が漏れ始める。
直後、それは放射状に広がり宇宙を照らすいくつかの線となってゆっくりと回転した。
「熱源多数、現時点で総数30……まだ増えていきます」
光が二回転すると、それは目を閉じるように小さく薄くなっていく。
「索敵終了。結果は?」
「観測領域に熱源、総数72」
そんなに、と動揺する艦橋クルーに対し、「でも」と柑奈が注意を促す。
「観測された72の熱源全てが敵艦という訳ではありません。詳しくは第二艦橋とドームに回していますが、機関が生きている残骸、核ができはじめている天体、衝突した天体が放った熱、そして助けを求めているガミラス艦の熱源も含まれていますから」
「本来は索敵装置じゃないものを使ったから、全部無差別に出たんだな」
静けさを取り戻した宇宙を見つめて有賀が呟くと、柑奈は小さく頷いた。
「調査結果を待って今後の動向を定める。一ノ瀬、念のためアカギに通達しておいてくれ。全員作戦室へ」
中央作戦室
画面に映し出された配置図には、青、赤、緑の図形が浮かんでいた。
青は漂う小惑星や熱を持たない浮遊物、緑はガミラス艦の波長と合致したもの、そして赤は。
「未知の波長の熱源……これが敵艦か」
「観測された70の熱源のうち、約50が未知の熱源でした。死んだ艦もいくつかあるでしょうけど……」
「だが、俺たちはこの熱源全てを敵艦のものと仮定して作戦を立てる必要がある」
有賀と柑奈の言葉の後、縮小された図と武蔵の現在地が示された。
「本艦が取れる選択肢は大きく二つ。救難信号を無視してこの場を離れるか、危険を承知でガミラス艦の調査、救出を行うか」
言葉と共に歩みだした来島の声と共に武蔵を示す光点から矢印が伸びる。
「アカギに通達したところ、武蔵は早急にその場を離脱せよとの事でした」
一ノ瀬が報告すると、美佳は静かに目を伏せた。
「なんか……つめたいですね……」
「つめたい?」
「そうです、砲雷長。なんか、人として……つめたいなって……ただの感情論ですけど」
はっと我に返った美佳は、手を振りながら早口で「ああいや、えっと」と続ける。
「えっと……安全を考えたらそりゃ行かない方がいいんですけど……ですけど、なんというか……一瞬、そんな事を思っちゃった自分がいて……」
美佳の肩を叩く柑奈を横目に見た有賀は、緑の光点を見つめていた。
「この艦は、いつ消息を絶ったんだ」
「分かりません。けれど、エンジンが止まっているとして、救難信号を出せるだけの予備電力が確保できるのは……」
「もって、3ヶ月」
一ノ瀬に続いた声に振り向くと、入口には水月が立っていた。
「生命維持装置が生きているなら、これはもっと短くなる。最短なら1週間、救難信号だけならユキカゼのように長く残る可能性もあります」
「間がありすぎる……生存者がいるのか分からないぞ……」
「懸命な戦術長ならそう言うと思って、ひとまずの作戦は立ててあります」
不敵な笑みを浮かべた水月は、手にしたタブレットからモニターへとそれを映し出した。
船外
カタパルトにセットされたその機体のコクピットは黒く潰され、内部のセンサーが不気味に光る。
「こんなもの、本当に使えるのか?」
「使えるんだろ。この場所で使えるかは知らないけど」
そんな会話とともに内火艇格納庫から出てきた2人のクルーの手で、巨大なブースターユニットが運ばれていく。
機体前方から尾翼に引っかかる直前まで下げられたブースターは、上部のジョイントにしっかりと接続された。
翼の下のウェポンベイにも同様のブースターがつけられ、その上に追加タンクがつけられると、担当クルーは機体から離れた。
「機体セットアップ完了。発艦信号を放ち、以降オートパイロットによって自律飛行します」
淡々とした柑奈の言葉に近藤が頷く。
モニターに『Take Off』の文字が表示されると同時に本体のエンジンが点火、通常より遅い速度でカタパルトから飛び立った。
武蔵の左舷を抜けて小惑星帯へと消えた機体は、随時送られてくる座標や機体のレーダーに反応した小惑星を避けながら突き進む軌道はとても無人機のものだとは思えない。
波動実験艦銀河の搭載機ブラックバードを基にしたこの機体だが、無人機の自動操艦AIの研究はこの2年間更に進められ、アステロイドベルトより更に濃密な、艦が通れないほどの密度でも航行できるようになった。
「目標地点まで、あと5分」
「あんなデカいもの背負ってよく飛べるな」
機体データを見返した有賀がつぶやく。
人が乗っている場合、それが使い慣れた機体であるほどその形が変わると扱いが難しくなっていく。
AIの場合、自機の追加装備を含めた全長や武装を予め入力する事で最適な操縦を可能とする。
「あと2分、映像出ます」
艦橋のモニターに映し出されたのは、回転しながら避けていく大破したデストリア級。
実際に避けているのは機体の方であるが、映像ではそう見えた。
その奥には艦尾が粉砕されたクリピテラや的確にコクピットを撃ち抜かれたツヴァルケなどが浮いている。
最奥のかすかな光を元に進む機体が小惑星を避ける。
弱々しく光る衝突防止灯、使用するために展開されていたと思われる反射衛星砲は大破しているが、それは生きていた。
各部に空いた被弾痕を舐めるように飛びながらスキャンをかける。
リアルタイムで表示されていく結果を祈るように見つめるクルー達の想いは、機体が腹部の破口からスキャンを掛けた時に帰結する。
「艦中央部に生体反応、数5!」
「よし、即座にその場を離れ本艦に帰投させよ」
船体を離れ再加速をかけた機体が帰投コースに乗った刹那、カメラが光に包まれた。
「攻撃……!」
光からカメラが回復した直後に映像は途切れ、モニターには操縦AIが危険を察知して離脱の用意を始めたことが表示されて信号が途絶える。
武蔵との通信を続けていると、それを辿り居場所を知られる可能性もある。これはそれを防ぐための対抗策、プログラムされた防衛装置の一環である。
宇宙でただ一機となった機体はその場で機体を反転、全てのブースターを一斉に噴射して急加速をかけた。
有人ではなし得ないその加速度に敵の放つ攻撃は置いていかれ、その場の残骸や小惑星を砕く。
ゼロはそのまま小惑星の密度が濃い場所へと入り込んだ。
機体のスラスターを細かく噴射して姿勢を整え、ブースターの噴射と逆噴射で加速と減速を繰り返す。
艦載機とは思えない速度で小惑星帯から飛び出したゼロは、武蔵への帰投コースに戻るべく機首を向けてブースターとメインノズルを解き放った。
光の線となったそれを追うものはなく、やがて慣性航行となった機体は間もなく武蔵に係留された。
ブースターが取り外された機体は格納庫へと滑り込む。
「生存者がいると分かった今、迷うことはない。本艦は、ガミラス艦に接舷し生存者の救出を行う。全艦戦闘用意、航空隊発艦!」
「航空隊全機発艦、作戦中は本艦の直掩にあたれ!」
艦長の号令に続く有賀に従って、艦底から次々と機体が飛び出していく。
久しぶりの実戦に昂ぶっている様子だが、その操縦は極めて冷静であった。
「無人機はレーダー装備に換装急いで。コスモレーダーとのデータリンク用意」
柑奈の命令で、第1格納庫は慌ただしさを増す。
なによりも、尊い命を救うために。
この宙域で散っていった異国の同胞のために、武蔵は突き進む。
それが、助けを待つ5人にとってどれだけの望みとなっているのか、彼らはまだ知らない。
――第14話 「サルガッソーの遭遇者」――
ありがとうございました!
次回、波乱の予感……ですね。
果たして武蔵はどうなってしまうのでしょうか?
それでは、第15話でお会いしましょう!