期待半分、終わるのかーという寂しさ半分……皆さんはどういう気持ちなのでしょうか。
そんな中第3話、今回はサブタイ通りバラン星での一幕です。
ヤマトファンにはすっかりおなじみのバラン星ですが、2199で追加されたワープネットワークの中枢という設定には驚きました。
それでは、第3話お楽しみいただければ幸いです。
第3話 「バラン星を飛び越えて」
――地球を発って2ヶ月。
1日一回のワープを順調にこなし、武蔵は往来のガミラス、地球艦隊とたびたびすれ違いながら、バラン星へと向かうワープゲートを目前としていた。
「あと一回のワープでワープゲートか」
「ああ。流石にここまでは地球とガミラス双方の艦隊が行き来してるから安全だな」
有賀の呟きに答えた泰平は、あと一時間と迫ったワープのため機材を調整していた。
機関長は直接フライホイールの調子を見るため席を外しており、艦長は一ノ瀬と共に突然の通信のため通信室へと向かっている。
「ここまで月一度しか戦闘訓練をしていませんが、いざ実戦となった時これで大丈夫なんですか?」
来島の声に「ああ」と答えた有賀は、彼女の方を振り返りながら続けた。
「訓練での成績は上々、何も心配ないさ」
彼の言葉が終わると同時に艦橋の扉が開き、「戦術長」と呼びかける声があった。
「宗方隊長、どうかしましたか」
立ち上がって答えると、宗方は頬をかきながら「大したことじゃない」と前置きして本題を切り出す。
「俺の乗機なんだがな? 一応今こいつにはゼロ、ファルコン、タイガーって乗ってるだろ」
「ああはい、三機種乗ってますが、それが?」
武蔵は今回の単艦での長期任務のため、元はアルタイルにいた航空隊から、アルタイル大破後武蔵に移乗した人員を正式に武蔵航空隊として19人乗せている。
それに伴い、元々配備されていた後部第一格納庫のコスモゼロ2機に加え、小隊リーダー機としてコスモタイガーII単座型が7機、コスモファルコンが12機搭載された。
現在航空隊長の宗方勝弘は隊長機であるゼロに搭乗しているのだが、直前に行われた演習ではコスモタイガーIIに搭乗していた。
「ゼロとタイガーに乗ってわかったんだが、ありゃあオレの性に合わん」
「……はい?」
「長年ファルコンに乗ってたからか知らんが、たとえ旧式になってもファルコンの方が扱いやすくてな。だからよ、戦術長。オレの機体、ファルコンに変えてくれないか?」
これは困った、と有賀は頭をかく。
「艦長に許可は?」
「ああ、ここに来る途中通信室の前で会ったから直談判したら、戦術長の許可が下りればそれでいいってよ」
「本当にそれでいいんですか……」
「地球を離れたこいつの法は艦長だからな」
あなたがそれを言いますか、と有賀は深いため息をついた。
「航空隊のメンバーで誰とかわるかはもう決まったんですか」
「それは問題ない」
「分かりました。それでは僕から言うことはありません。塗装や仕様は整備長に言っていただければ。僕と艦長の許可は得ていると」
「了解。ありがとよ」
敬礼をした隊長は駆け足でエレベーターへ戻り、艦橋を後にした。
「はぁ……後で識別変えなきゃな……」
そう呟いて席へと戻った有賀に、柑奈はエレベーターからモニターへと視線を戻しながら話しかけた。
「結構自由ですよね、うちの艦長」
「そうだな……まあ今回は艦載機の話だったから俺に……」
「なんなら、副長より義弥さんの方が色々任せられてませんか?」
「いやそれはない。多分副長は俺たちの知らないところで色々と――」
「前会議で副長と話した時、『有賀くんがしっかりしてるから副長としての任務が少なくて助かるよ』とか言ってたけど」
「ちょっと艦長のところ行ってくる」
横槍を入れた泰平の言葉に立ち上がったが、来島と柑奈が「いやいやちょっと待ってください」と引き止めたため、有賀はしぶしぶ席に戻った。
「納得いかない」
「それだけ信用されてるって事だよ。良かったじゃないか」
「艦長は次期責任者に戦術長を推してるみたいですよ」
それまで黙っていた気象長の棚橋小百合が会話に入ってきた。
「えっ? いやなんで俺なんか……」
「逆に有賀くん以外ありえないと思うよ」
前回の任務で最後の戦闘となったラーゴラスとの戦いを思い出しながら、丹生はにっこりと笑う。
「どうだか」
彼の声と同時に艦橋の扉が開き、一ノ瀬と艦長が戻った。
「みんな聞いてくれ。当初本艦はバラン星の脇を抜けてマゼラン方面へと向かうつもりだったが、急遽バラン星へと停泊する事になった」
「停泊ですか」
泰平の言葉に「そうだ」と返し、近藤艦長は続けた。
「本艦の任務の探索範囲に関わる話だ。バラン星で、深宇宙探索空母であるアカギと合流する」
「待ってください、アカギは確か銀河系での任務だったはずでは」
「そうだったのだが、銀河系での調査任務はラボラトリーアクエリアス一隻で十分との結論が出た事で、アカギは本艦同様に惑星アケーリアスの探査に回ることとなった。その範囲の調整のため、バラン星でアカギと落ち合わなくてはならん」
有賀への説明を終えると、艦長は泰平と目を合わせた。
「本艦は予定通りワープを行い、バラン星を目指す。全艦、ワープ準備!」
バラン星
黒と赤に彩られた惑星。
イスカンダルへと急ぐヤマトの波動砲によって中枢が破壊され、一時は異形の星と化したが、地球とガミラスの技術で再建、元の姿に近い姿を取り戻した。
どこからかガミラスが輸送したワープネットワークシステムのコアを用いて再建されたバランは、以前よりも広い範囲からのワープを受け入れられる星となったのである。
今や大気でできた惑星内に地球、ガミラスともに数十隻の艦艇を係留できる巨大ドックを持つ中間基地と化したバラン星は、通商路を行く艦艇にとってなくてはならないものとなった。
バラン星付近を防衛する地球の駆逐艦隊の背後にそびえる巨大構造物がワープゲート。
いくつもの図形が組み合わさったような形をしたその中心が円形ににわかに輝き始める。
それを確認した駆逐艦が進路を変え、艦首をバランへと向けるのとほぼ同時に円の中心から水柱を立てながら、それは姿を現した。
「ワープゲート通過完了。システムに異常ありません」
ヤマトに似た艦――武蔵は、にわかに速度を上げてワープゲートから距離をとる。
消えかけた光が再び灯った時、武蔵とはまた違う艦艇が水柱の中から出現した。
純白の船体の両舷に増設された長大な飛行甲板を持つそれは、艦橋後部に増設されたもう一つの飛行甲板によってその系譜を示す。
それがアンドロメダ級の一つであることは疑いようもなく、青く塗装された艦首と白い船体、そして黒い甲板が他のアンドロメダ級とは異なる様相を示していた。
「ワープゲートから新たな艦影を確認。識別確認……AAA-35、深宇宙探査空母アカギです」
武蔵と並ぶアカギ。
ヤマト級を超える全長を持つアンドロメダ級において、アカギは通常の空母型よりもさらに大きな船体を持つ。
「あの艦、大きいな……」
窓から見えるアカギは、データで見るよりもさらに大きく、また美しかった。
瞬間、バラン星からの入電と共に前方から2隻の駆逐艦が近づいてきた。
「武蔵、およびアカギへ通達。駆逐艦の誘導に従い入港、接舷されたし」
一ノ瀬の読み上げと共に眼前の駆逐艦も回頭、2隻はほとんど同時に光信号を発する。
『我に続け』
それを受けた泰平は駆逐艦の背後へと舵を向け調整し、一路バランへと向かった。
赤い雲を抜けると地球の様式にガミラスの様式が混ざったようなドックが間近に迫り、大きな隣り合わせの区画の誘導ビーコンが点灯している。
誘導をビーコンに任せた駆逐艦は踵を返して後方へとすれ違い、武蔵は着陸と同時に両舷をガントリーロックで固定された。
「武蔵、艦体固定完了しました」
泰平の言葉に頷いた艦長は、立ち上がると同時に目を配る。
「戦術長、技師長、ついてきてくれ」
「「はい」」
艦長と共にエレベーターに乗り込んだ2人は、そのまま艦を降りた。
バラン星/ドック通路
武蔵とアカギが見守る通路へ出ると、アカギから出てきた三名がこちらへ敬礼しているのが見えた。
アカギの艦長は冴島健介、43歳にして地球の探査任務の一翼を担うアカギの艦長へと抜擢されたエリートである。
現在使用されている主要な探査用宇宙艦は武蔵、アカギを除くと銀河及びラボラトリーアクエリアスとなり、地球はこれ以上の探査艦の建造は行わないという。
とりわけアカギはアンドロメダ級を基本設計としつつもそれとは大きく異なる艦容を持つ艦であり、そのアカギの乗組員には優秀な人材ばかりが選出されている。
「お会いできるのを楽しみにしていました。近藤艦長」
「こちらこそ、冴島艦長」
爽やかにはにかむ冴島に近藤が返すと、冴島の隣に立つ2人も一歩前へ出た。
「あなたが武蔵の有賀戦術長ですね!」
「えっ、そう、ですが」
有賀の姿を見るや前のめりになって話しかける彼に気圧される。
「あなたの指揮した戦闘の詳細は見させていただきました。それ以来、僕はあなたに憧れています!」
「はあ……はぁっ⁉︎」
「お会いできて光栄です!」
彼に流されるまま握手を交わす有賀だったが、その引きつった顔は直りそうもない。
「こら金浦戦術長、困ってるでしょう」
隣の彼女に肘でつつかれた金浦は「す、すみません」と頭を下げ、有賀へ敬礼を示す。
「アカギの戦術長、金浦拓馬です」
「武蔵の戦術長を勤めている有賀義弥です」
「良かったですね義弥さん」
横から入った突然の一言への返答に困っているうち、金浦の隣の女性が軽く頭を下げる。
「うちの金浦がご迷惑を……わたしはアカギの技師長、蔵中瑞穂です」
「武蔵の技師長をやっています、佐伯柑奈です。いいんですよ蔵中さん、義弥さんは恥ずかしがってるだけで迷惑だとは思ってませんから」
「「おい」」
ぴったりと重なった金浦と有賀の声にクスッと笑う女性2人。
「では、こちらへ」
そんな部下の様子を見た冴島の一言で、6人は中に用意された会議室へと入っていった。
「サルガッソー、ですか?」
有賀が聞き返すと、冴島は頷いて図に示されたある宙域を指した。
「武蔵とアカギがそれぞれの宙域を探索した際、双方の探索範囲に入るのがこのサルガッソーです。ガミラスからの情報によれば、地球時間でここ数ヶ月この宙域で艦隊がいくつも消息を絶っています」
「そこに次元断層がある可能性は?」
「我々も佐伯さんと同じくそれを疑いましたが、消息を断つ直前に艦隊が送った画像はその可能性を消すものでした」
蔵中がパネルを操作すると、画面に画像が表示される。
そこには通常空間に漂う数多の艦の残骸と、行方不明になっていたとみられるガミラス艦……大破したデストリア級が映っていた。
デストリア級の目は微かに戦闘状態を表す橙に点灯しており、破口はビーム砲の着弾を示している。
「この直後、戦闘音と共に艦隊は消えたと言います」
「戦闘音?」
「応戦しろ、という音声が最後みたいです」
――ということは、ガミラスは一方的に攻撃され、撃破されたということ。
考え込む有賀を横目に、近藤は身を乗り出した。
「ガミラスのサルガッソーに対する対応はなんでしょう」
「本土から、反射衛星砲搭載型アンドロメダ級改造艦を旗艦とする総勢17隻の艦隊をサルガッソーへと派遣するとのことでした」
「サルガッソーごと消し去るという解釈でよろしいので」
「それでいいと思います、近藤艦長」
「ですが、あれだけ広い宙域を消しとばすなら拡散波動砲の方がいいのではないですか?」
有賀の疑問は至極当然であった。
拡散波動砲の威力はガミラスも知るところであり、またガトランティス戦時は時間断層でのライセンス生産によって複数の波動砲搭載艦を完成させていた。
反射衛星砲は威力こそ高いが、狙撃に適した兵器であるため大量破壊は望めない。
その問いに対し、金浦は「いえ」と反論する。
「イスカンダルの手前、ガミラスは波動砲を表立って運用できないんです。イスカンダルは波動砲には絶対反対の姿勢ですし、イスカンダルを信仰するガミラス人も少なくない。波動砲一つであそことの平穏が脅かされるのは避けたいのでしょう」
「つまりは、反射衛星砲搭載艦が今ガミラスにできる最大限の破壊措置、ということか」
金浦が頷くと、画面がもとの宙域を示していた。
「近藤艦長。武蔵とアカギは、極力この宙域を避けて行動すべきです。もしここから救難信号が出されていた場合は――」
「……生存者がいる可能性は無視できません。その際の行動は、貴艦との協議で決定しましょう」
「――わかりました」
身を乗り出していた冴島は席につき、「それでよろしいのですね」と確認した。
彼としては、武蔵単艦、ないしは武蔵とアカギの共同作戦において艦が損傷、喪失するような事態は避けたいのだろう。
しかし近藤は、隣に座る有賀の思いを代弁するように。
「何事も、人命には代えられませんから」
武蔵/第一艦橋
3時間に及ぶ話し合いの末それぞれの担当宙域が確定し、艦長、戦術長、技師長が艦橋へと戻ってくる。
「遅かったな、戦術長」
「ああ、悪い」
短く交わしながら席につく。
それを見届けた近藤は、まっすぐ前を見据えた。
「機関始動、発進用意」
「機関、始動します」
艦内にエンジン音が響き渡る。
「ガントリーロック解除。艦隊固定なし」
両舷の固定具が外れた艦体を整え、航海長はゆっくりと艦を後退させつつ上昇機動をかける。
武蔵の隣ではアカギも同様の機動をかけていた。
「武蔵、発進します」
エンジンの炎がかすかにバランの大気を巻き上げると、艦は瞬く間に惑星の外へ出た。
『貴艦の健闘と、航海の無事を祈る』
隣につくアカギと同様の光信号を送り合い、武蔵は更に加速をかけた。
「フェーズ進行。ワープゲートに突入します」
武蔵が水しぶきをあげながら、虚空の彼方へ消えていく。
ここからが、新たな旅の始まり。
――原初の星は、勇士を待ちわびている――。
――――第3話 「バラン星を飛び越えて」――――
読んでいただきありがとうございます。
今回新登場したアカギはTwitterのフォロワーさんからの提供です。ありがたいですね。
アカギってどんな形してるのか気になった方は是非Twitterでご確認ください!
それでは、次回第4話でお会いしましょう。
Special thanks
AAA-35 深宇宙探査空母アカギ
作:sameZima (@alexnopapadayo)さん