波動実験艦武蔵 ~遥か遠き起源の惑星〜   作:朱鳥洵

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お久しぶりです!
不定期故の更新頻度のバラツキはご容赦ください……。
さて、今日は「宇宙戦艦ヤマト2202第七章 新星編」の公開日ですね!
皆さんはもう見ましたか?
これが投稿された時は、僕は恐らく見ている最中です。投稿予約って便利ですよね(笑)
今回は未知の星へと到達する第5話となります。よろしくお願いします。


第5話 「緑の星」

 眼前に広がるは、緑の大地。

 恒星の光に照らされたその星は、記録にあるビーメラ4の外観とよく似ていた。

 星の名は、惑星ビースリー。

 地球と似た環境であると目される星であり、そのビースリーに武蔵は補給のため訪れた。

 ガミラスのデータベースに存在するこの星であるが、ガミラスはこの星の存在を知っているだけで探索した事はなく、データのほとんどが空欄であった。

「最終チェック、シーガル発艦準備完了」

『了解しました。では定刻通り、十分後にエアロックを解放します』

「了解」

 コクピットの中で有賀はシーガルのコンソールを操作しつつ通信を終えた。

 コスモシーガルはヤマトに搭載されたものと同じものを搭載している。

 第三格納庫の拡充に伴い搭載機数は増えているが、艦に探索装置を持つ武蔵がシーガルに頼る事は少ない。

「どうして今回はわたし達が偵察しに行くんですか?」

 後部座席で柑奈からインカムを受け取りながら、美佳はそんな問いをぶつける。

「えーっと確か、大気の層が思ったより厚くて外部からスキャンするとノイズが大きいから、だったと思うよ。……義弥さんもつけてください」

 彼女に答え、操縦席の義弥にもインカムを手渡す。

 このインカムは以前、艦内で柑奈がつけさせられたテスト機の実用機である。

 柑奈が取り付けるインカムには通常回線のほか秘匿回線として、第一艦橋の水月の通信が入る設定になっている。

「……?」

 インカムが入っていたケースの隙間から、白い角が飛び出しているのが見えた。

 取り出して開くと、見慣れた字で書かれた文章が顔を出す。

『ヨロシク頼んだよ、兄妹のキューピッドさん』

 その一文の下には、弓矢を番えた天使の姿が描いてあった。

「そろそろ出撃時間だ」

 コクピットで機内の気密を確認した有賀は管制室に親指を立てて準備完了を知らせる。

 ゆっくりと開いていくシャッターから、クレーンで吊り下げられたシーガルの機体が露出する。

「こちらシーガル、発艦許可を」

『艦橋よりシーガル。発艦許可』

「ラジャー。テイクオフ」

 固定が外され、慣性で下へと流れる機体を整えると、エンジンをふかしてシーガルは星へと飛び去った。

 

艦橋

「あの3人だけで大丈夫なんですかね」

 戦術長席に座る来島が口を開くと、水月は楽天的な笑顔を浮かべながら。

「だーいじょーぶ。柑奈と、家族を信じてればさ。それに、インカムでどこからでも通信は届く。何かあればすぐ助けられる」

「そのインカムなんだけど」

 レーダーから水月へと視線を移した丹生は、長い髪を耳にかけながら問いを放つ。

「ヘルメットに通信機能があるのに必要?」

「アレには性能的に限界があるので……この星みたいに外部から詳しく観測できない大気濃度だとノイズが多く入りすぎるんです。インカムはそれより安定して通信ができるので、例えばシーガルが喪失していても大丈夫です」

「シーガルが使えなかったら、俺たちが行く時に義弥がいる場所が分かるってことか」

 星を見つめる泰平の言葉に頷くと、水月はモニターと向き直った。

 

 

 水月の言葉通り、この星に入るとすぐにシーガルの通信機がノイズを吐き始めた。

 雑音しか聞こえない機体とは対照的に、耳につけたインカムからはクリアな音が聞こえている。

「こちらシーガルより艦橋。機体の通信機が使用不可となったため、今後報告は全てインカムから行う」

『分かりました。大気組成などはどうなっていますか?』

「地球との近似値98%、かなり高い数値だな」

『了解。気象長より、念のため船外服は持参し、変調があれば着用すること、との指示です』

「そうか……了解。通信終了」

 一ノ瀬の返答を待たずに話を終えた有賀は、機体を傾けてナビゲートの通り着陸地点へと向かう。

 雲を抜け、森林の頭上をしばらく飛ぶとひらけた土地が見えた。

 空中でホバリングしたシーガルはゆっくりとランディングギアをめり込ませた。

「どこを見ても草でしたね……」

「海がほとんど見えなかったけど、この植物ってどうやって養分を取ってるんだろう」

 サンプル採取用のリュックを背負った美佳と、調査機材を背負った柑奈がキョロキョロと辺りを見回している。

 義弥が武装を整えて機体を離れると、柑奈が落ちた葉を回収して機材に通しているところだった。

「何してるんですか?」

「遺伝子調査だよ。地球にいる植物と比較して1番近いものを割り出すの」

 興味ありげに覗き込む美佳に笑いかけ、柑奈は操作を続ける。

「熱帯雨林みたいな感じですよね……地面もなんかブヨブヨしてるし」

「うん……雲が厚いから、光合成をちゃんとしてるのかは気になるけど」

 小さく跳ねてみる美佳とは対照的に、静かに木肌を観察する柑奈。

 しばらく待つと、機材が結果を表示した。

「1番近い組成は……マングローブ?」

「水の上に生えるアレですか?」

「そうみたいだけど、系統は全く別物みたい。何これ、海藻類からの派生……?」

 画面を覗き見ても専門外である兄妹には一切理解できないが、どうやらこの植物は海藻類が派生してマングローブのような見た目をしているらしいということは、彼女の呟きから断片的に分かる。

「ひとまず歩いて色々調べてみよう。マングローブだとしたら、この平らな地面には疑問が出る」

 機材から武蔵へとデータを送った柑奈は、それを背中に背負い直すと義弥に続いた。

 背後に駐機したシーガルの周囲には、心なしか水が増えているような気がした――。

 

 それからおよそ1時間ほど歩きながら10分ごとに武蔵との定期通信を行い、惑星の状況を伝えていった。

 6回目の定期通信を終えた彼らは、あるモノを発見して足を止めた。

「……これって……」

 地面から水が滲み出る。

 ところどころ不安定な部分のあったこの星であれば不思議ではないのだが、問題なのはその形状と、それが交互に連続している事である。

「なんか、恐竜の足跡みたい……」

「歩行パターンも地球の二足歩行の大型生物と似てる」

 2人の言葉に、義弥はそれまで背中のアタッチメントにつけていた大型銃を構えた。

「お兄?」

「ここからは離れた方がいいかもしれない」

 彼が睨む方向から、微かに木の根が軋む音が聞こえる。

 耳をすますと、風の音と共に確かな――。

「走れ!」

 義弥の一言で走り出すと、木の幹を身体で砕いて大型の生物が咆哮した。

 その体躯は、数億年地球を闊歩していた恐竜と酷似しているものの、ところどころ魚と同じ組成を持ち尾と足にはヒレを持つ。首にはサメのようなエラがあり、その生物が複数の呼吸系統を持つ事を示していた。

「トカゲなのか魚なのかハッキリしてよ!」

 走りながらそんな事を嘆く美佳の後ろで、義弥は振り返りながら銃で牽制する。

「これでハッキリした、この星には生態系がある!」

「柑奈さん、今はそんなこと言ってる場合じゃ――」

「義弥さん、そいつは草食と肉食どっちだと思いますか⁉︎」

「は? あぁ、肉食だろうな。地球にいたティラノサウルスあたりに良く似てるよ」

「なら、草食生物のテリトリーがあるはずです!」

「でもどこにあるのかは分からないじゃないで――きゃぁっ⁉︎」

「美佳⁉︎」

 不安定な地面に足を取られて転ぶ美佳をかばうために足を止めると、木々をなぎ倒してもう一頭の大型生物が現れた。

「義弥さん、これ……」

「くっ、挟まれたか! もう一頭はどっちか分かるか?」

「こっちも肉食……しかも私たちを追ってたのと同じみたいです」

「一杯食わされたか……狩りの仕方も地球の生物と同じなんてな」

 両脇に目を配るが、機材とサンプルを持った2人が走るには地面が悪い。

 逃がすためには、この獣道一本を走らせるしかない。

「――ごめんなさいっ!」

 座り込み、身体を小刻みに震わせながら美佳が声を出す。

「私のせいで……こんな……」

「いや、あのまま走ってたら前から来たもう一頭に潰されてたとこだ。おかげで助かったな」

「でも――」

「柑奈。美佳を頼む。2人とも目を閉じろ!」

 背中から手のひら大の玉を持った義弥は、上へと放り投げた。

 それは炸裂するや否や眩い閃光を放ち、大型生物の視界を奪う。

 突然のことに混乱する二頭の足元を、柑奈は美佳の手を引いて走り抜ける。

 義弥は2人が走った方向にいる生物に肉薄すると、顎の下からエネルギー銃を構えて放ち、頭上からその脳漿をぶちまけた。

 生物が倒れ込んだ地面から大量の水しぶきが立つ。

 ――ここまで地面が弱いなら、シーガルは今頃……。

 刹那、もう一頭が突如咆哮と共に復帰し突進を始めた。

「ふぅ……よし、来い」

 呼吸を整えた有賀は、銃を構え直して足を踏み出す。

 

 

「私のせいです……」

「……」

 力なく座りこむ美佳に、かける言葉は持ち合わせていない。

 義弥の閃光弾のおかげで逃げだせた2人は、倒れた木の幹が折り重なり洞窟のようになった穴の中に身を潜めていた。

「美佳ちゃんは悪くないよ。義弥さんの言う通り、あのままだったら私達もう」

「だけど……お兄と柑奈さんを危険な目に合わせたのは私です」

 視線を落とす彼女の肩に手を置こうとするが、やはり言葉は出てこなかった。

『――柑奈⁉︎』

「水月?」

 インカムから聞こえた声に驚きつつ答えると、彼女は安堵の声をもらす。

『よかった、やっと繋がった……』

「なんで水月からの秘匿回線なの?」

『だって位置情報を見たら戦術長から2人だけ離れてるし、美佳ちゃんも戦術長も繋がらないんだから柑奈に繋げるしかないでしょ!』

「……怒ってる?」

『そ、そんな事はないけど……それより、そっちはどうなってるのさ』

「要約して報告するね。この星の原生生物の襲撃を受けて、義弥さんは囮に、私達2人は逃げて隠れてるところ」

『はぁ⁉︎ 原生生物って……』

「恐竜と魚を足して割ったみたいなやつ。体高は15メートルくらい。一体倒したのは確認したけど、もう一体は分からない。もしかしたらもっといっぱいいるかも……」

 その報告に艦橋がざわついているのが聞こえる。

 無理もない。そこまで巨大な生物が存在しているなど誰が予想できるものか。

「すみません、私のせいです。だから……」

 美佳は言いながら腰の銃を引き抜き、安全装置を外した。

「美佳ちゃん……?」

「私が行かないと……自分の責任は、自分で取ります」

「待って!」

 立ち上がって走り出そうとする彼女の腕を掴むと、その手を引いて身体を引き戻そうとする。

「離してください!」

「今のままじゃ行かせられないよ!」

 抵抗する彼女の手を引くと、柑奈はそのまま美佳の肩を掴んだ。

「落ち着いて美佳ちゃん。気持ちはわかるけど、今は無理せずに何ができるかを考えなきゃ」

「柑奈さん……」

 見つめ返す美佳に笑顔を向けると、彼女の身体を抱きしめる。

「えっ――」

「美佳ちゃんは私にとっても、かわいい妹みたいなものなんだから……信じて、お兄さんを。私達の艦の戦術長を」

「――。……はい」

 

 

惑星上空

 眼下に森林を見ながら、武蔵は惑星内部へと侵入した。

 制動をかけると同時に艦底のハッチを開けると、コスモファルコンとコスモタイガーllをそれぞれ放ち武蔵は経過を見守る。

「慣れた機体はいい……待ってろよ、戦術長」

 ファルコンを駆る宗方は、僚機に離脱指示を出して機体限界まで加速をかけた。

「今は航空隊に任せるしかない」

 艦橋の窓からは、重く垂れ込めた雲と一面を覆う緑の葉が見える。

 艦長席の近藤がどんな表情をしているのかは、帽子で隠れて見ることはできない。

 だが、窓の外を見つめる水月達とその気持ちが違うことはないだろう。

 

 

森林地帯

 エネルギーはもう残っていない。

 実弾も残りは少なく、腰の銃だけが残された唯一の武器だ。

 一体、どのくらいの数を屠ったのだろう。

 彼の周りの屍を数えることはせず、彼は一際大きなヒレを持つ個体と相対していた。

「ボスはお前か?」

 その問いへの答えなのか、ヤツはただ高らかに咆哮した。

 ――ああ、そうか。

 彼は今初めて理解した。

 自然に住まう者たちのしきたり、絶対のルール。

 即ち――

「そりゃそうだ、強いヤツが唯一の王だろうよ」

 既に足場は巨体によって踏み固められ、今は浅瀬に立っているようである。

 柔らかな地面に踏ん張って戦うよりは、よほどいい環境だろう。

 獲物を狩る捕食者の瞳が彼を捉えると、王はただちっぽけな人間へとその足を踏み出した。

 残り少ない実弾銃を脚へと放つが、王は血を撒き散らしながらその足を止めようとはしない。

「ちっ、しぶといな……」

 弾の尽きた銃を投げ捨てると、腰から抜いた銃の安全装置を外しつつ、左手にナイフを構え、そして――。

「当たれ!」

 ナイフ投げの要領で敵へと投げつけた。

 それは敵の左目に突き刺さり、敵はよろめいて倒れ込んだ。

「……運が悪かったな」

 倒れた王へと近づいた有賀は、呼吸のたびに膨らみ縮む部位に狙いを定めた。

「じゃあ、安らかに」

 こめかみを貫いた銃弾は、敵の脳をも破壊して永遠の眠りをもたらした。

 銃を下ろし安堵の息をもらす有賀。

 しかし――

 

「お兄、伏せて!」

 

 響き渡る銃声。

 視界に入ったのは、血を吹き出して倒れこむ中型の爬虫類。

「大丈夫⁉︎」

「その声……」

 駆け寄る美佳の姿を見て立ち上がる。

「よかった……」

 肩で息をする彼女の頭を撫で、久々に優しい笑顔を見せた。

「美佳、なんで戻ってきたんだ?」

「そりゃ……お兄が心配だからに決まってんじゃん!」

「俺はお前の方が……」

「うっさい! 妹に助けられるのがイヤなら無理すんなバカ!」

 目尻に涙を浮かべて言い放った彼女は袖でそれを拭くと、義弥の胸に優しく拳を当てた。

「次は本気、だから……」

「……ああ。わかった」

 柔らかい髪を撫でる。

 こういう事をしたのはいつぶりだろうか。最初に武蔵に乗った時だったかもしれない。帰ってきた時だったかも。

「やっと……私と口きいてくれたね」

「えっ?」

「乗る日の朝から、ずっと話してくれてなかったじゃん」

「そう、だったか」

「ちょっと寂しかった」

「……ごめん」

 そういえば、無意識に避けていたのかもしれない。

 守ることに自信が持てなくなるから?

 他のクルーに気を使わせたくないから?

 ――いや、違うな。

 様々な危険が伴うこの旅に、彼女がいる事を認めたくなかったから。

「ごめんな、美佳」

「ううん……大丈夫」

 笑いかけてくるその顔に安堵する。

 ――と。

「そういえば美佳、柑奈はどうした?」

「柑奈さんなら私と一緒に……」

 振り返る美佳だったが、そこに来ているはずの柑奈の姿はなかった。

「……あれっ?」

「おい、お前な……」

「し、仕方ないじゃん……お兄助けるんだーって頭いっぱいだったんだから……」

「一緒にいるヤツのことは考えて動けよ」

「いや、それお兄が言えたことじゃないでしょう⁉︎」

「俺はちゃんと考えた上で動いてるから。お前と一緒にすんな」

「あーあー聞こえなーい!」

「あのなぁ――」

 瞬間、彼らがいるところに突風が吹いた。

 振り返ると、エンジン音と共に降下してくる一機の戦闘機がいた。

 それは地面ギリギリでホバリングすると、キャノピーを開けて後部座席にいた1人を下ろした。

「仲直りしたと思ったらすぐケンカするんだから……」

 再び上空へ飛び去るコスモファルコンを見送り、彼女は呆れたような、安心したような表情を浮かべていた。

「柑奈さん、なんでファルコンから?」

「美佳ちゃんに追いつけなくて困ってたら、航空隊長が来てくれてね。荷物とか全部任せちゃった。そ、れ、よ、り、も」

 笑顔を浮かべて歩み寄ると、柑奈は2人の肩を叩いた。

「任務中にケンカするってどういう事かなぁ?」

「「はいっ、すみませんでした!」」

「……兄妹って本当に声合うんだね……」

 驚きの声を上げる柑奈の背後には、02とナンバリングされたシーガルが降下してきていた。

「お迎えみたいだね」

「お迎え? 着陸地点に戻れば俺たちが乗ってきたシーガルが――」

「まあまあ、ひとまず乗って乗って」

 柑奈に背中を押されながら、ホバリングしたままのシーガルに乗り込む。

 三人が乗ったのを確認したパイロットはシーガルの扉をロックして高度を上げ始める。

「着陸地点の様子を知りたいでしょ?」

 彼女の言葉に2人が頷くと、柑奈は窓の外を指差した。

「あそこが、私達が降りた場所」

「あそこって、池みたいになってますけど……?」

「よく見て。シーガルの尾翼がまだ見えるはずだから」

「……あっ、ホントだ」

 それはゆっくり、ただ確かに沈んでいた。

 シーガルの尾翼はまだかろうじて浮いていたが、アレが沈むのも時間の問題であろう。

 更に観察すると水面にはシーガルの残骸が浮かび、周囲には無数の足跡が残されていた。

「シーガルは、俺たちを襲った生物に襲われたのか」

「私達はあの生物の生息地域に降りてしまった。あれは、自分たちを守ろうとして私達を襲ってきたと思う」

 恐らく無意識に返した柑奈は、次いで義弥たちに端末の画面を見せた。

「しばらく歩いて手に入れたデータだけど、この星には大地がないという事が分かったの」

「でも柑奈さん、私たち確かに草の上を歩いてましたよ?」

「そう。私達は草の上を歩いていただけで、大地を歩いてはいなかった」

 首をかしげる美佳。

 そんな彼女に、柑奈はこの星の構造を一から話し始めた。

「この星の大地は海の中にあって、海上には出ていない。海底で生まれ死んだ海藻たちが折り重なっていくことで、不安定ながら大地としての役割を果たしている。生き物の死骸には栄養分がたくさんあって、それをより効率よく手に入れるために、海藻はより太い根を伸ばし始めた」

「それがマングローブに似ていた理由か」

「その通りです、義弥さん。その海藻の地面とマングローブの根には、藻から派生した植物が生え始めた。これが、私達が歩いていた大地」

「なんか妙にぶよぶよしてたり、硬さが違ったり、機体や死骸が沈んでいってたのもそのせいなんですか?」

「そういうこと。星の表面で海の面積が大きいこの星は、魚たちの楽園だった。あの恐竜たちは魚の形質を持っていたから、多分狩りは海の中が主。けれど、そこから逃れるために少ないけれど草食生物がいる形跡もあったから」

「地上でも狩りができるように、恐竜みたいな体つきに……」

 そんなことを話すうちに、シーガルは武蔵の第三格納庫へと帰還した。

 きっとこの星は、この後も生命が生まれては途絶え、進化を続けていくのだろう。

 そんな、遥かな未来に想いを馳せる。

「何してるの?」

 立ち止まっていた義弥に美佳が駆け寄る。

「ああいや、なんでもない。それより……」

「ん?」

 小首を傾げる彼女の髪を撫でると、彼はいつぶりかの言葉を投げかける。

「……ありがとう。ごめんな」

 その言葉に目を見開いた美佳は、すぐに笑顔を見せて義弥の身体を抱きしめた。

「本当だよ……お兄のばか……」

 その声色から、彼女の表情は計り知れた。

 きっと目尻に涙を浮かべながら、不器用に笑ってみせようとしているのだろう。

 笑顔がうまくいかないから、彼女はこうして顔を見せまいとしているのだ。

 その様子を陰から見守っていた柑奈は、安堵の笑みを浮かべて静かに立ち去った。

 緑の星を後にする武蔵は、本来の進路に戻るため舵を切る。

 推定座標への旅路を急ぐ武蔵は自然豊かなこの惑星に別れを告げて、宇宙の中へと消えていった――。

 

 ――第5話 「緑の星」――




読んでいただきありがとうございます。
なんかいつもより長いなぁと思ったでしょうか。そうです、いつもよりだいぶ長いんです。
乗ってきてしまって、ついつい長くなってしまいました。
そのぶん義弥と美佳の兄妹の絆が深まった回になったのではないかと思います。「柑奈必要だった?」とか、言わないであげてくださいね。
次回はいつも通りの長さになるかなと思います。
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