すっかり2週に一回投稿になってきた気がしますね。
そんな中での第9話です。
ヤマトの続編も決まって嬉しいばかりですね!
今回割と短めだと思います。では、よろしくお願いします!
かの星を脱した武蔵は謎の赤い石にしたがって航路を変更し、サレザーから銀河方面へとおよそ3,000光年の距離にいた。
広大な宇宙を臨む観測ドームの中央にそびえる一際高い階層でコンソールを触る水月は、壁際で石板を見つめながら手元の端末をいじるカレンへと言葉を投げる。
「カレンさん、進捗はどんな感じですか?」
「全然ダメね。そっちは?」
「こっちもです。分かったのは、この石が人工物だっていう事くらいで」
「そう……」
うんと伸びをするカレンにつられて水月も背中を伸ばした。
彼女達がいる階層はその狭さから常設された椅子が無いため、彼女達は立ち仕事を余儀なくされている。
水月がコンソールの横にあるボタンを押すと、反対側のコンソール下部がせり上がってきた。
作業に使える常設の椅子がない代わり、ここには休憩に用いる展開式の長椅子がある。
カレンと2人腰掛けると、ほとんど同時にため息が漏れた。
「そういえばカレンさんって、なんで宇宙考古学者になろうと思ったんですか?」
「んー、父が考古学者だったから、かしら。父は地球の地層とかを調べる考古学者だった。だから、もっと大きな事をしたいって思って」
「そうなんですか……」
「途中で色んな人に会ったけど、ミスターレドラウズはちょっと変わった人だったわね」
「レドラウズ……あっ、シュトラバーゼで行方不明になった」
ハッとした顔で言うと、カレンは「あら、そうだったの?」と首を傾げた。
「私の情報ではミスターレドラウズは第11番惑星で死亡していると聞いているわ」
「……そっか、蘇生体としてヤマトに乗ってたから人としては11番惑星で……」
「因果応報かしら。彼結構、強引に調査に行ったりしていたし。同業者からは恨まれていたのよ、彼」
その事実に黙り込むと、不意に扉が開いた。
「教授」
「珍しいわね。どうしたの、須藤」
そこに立っていたのは、カレンの助手として共に乗艦していた須藤康之であった。
艦内ではカレンと別行動をとっていたが、度々こうして顔を合わせている。
「石板の担当部分について結果が出ましたので」
「オーケー、そっち行くわ」
そう言って立ち上がったカレンは、水月にヒラヒラと手を振りながら扉をくぐった。
同じく手を振りながらそれを見送った水月は、立ち上がってドームのガラスに映る自分の姿を見つめる。
「ふわぁ……」
「疲れてるんだね」
「えっ?」
声の方へと向き直ると、マグカップを持った柑奈が立っていた。
「柑奈……いつの間に」
「水月が黄昏てたから、話しかけにくくて」
「さっきから見てたってことじゃん……」
「疲れてるなら休んだ方がいいよ」
そう言って差し出されたマグカップを受け取り、口をつける。
「ん……ココア?」
「うん。疲れた時は甘いものかなぁって」
「柑奈が好きなだけじゃないの?」
「違うよ、失礼だなぁ……」
「あはは……ごめんごめん」
むすっとした顔をする彼女に笑顔で答えると、水月は微かな光を発する紅い石を見つめた。
「この石の事が分かるまで、しばらく休めそうにないかな」
「ダメだよ、ちゃんと寝ないと」
「うん……ありがと」
マグカップを口に当てて一息ついた水月は、じっと石を見つめる柑奈の横顔を見ながら口を開く。
「そういえば柑奈」
「んー?」
「戦術長とは進展あった?」
「くふっ、えっ……えっ⁉︎」
「まだなんだ」
「まだ何も言って……まあ、そうだけど……」
「早く言っちゃえば?」
「いや……それにはほら、タイミングとか色々あるじゃん……」
「そんなもんかなぁ……最近は柑奈も戦術長も忙しいんだし、言える時に言っちゃったほうがいいよ」
「分かってるけどさ……」
身体の前で手を合わせてもじもじする柑奈を横目に、水月はこの時間を噛みしめるように喉を潤していた。
下士官2人部屋
重苦しい扉が開いた。
廊下の光が入ってにわかに明るくなった部屋に入るや否や、ベッドに腰掛けた人物の深いため息が聞こえた。
「なに、なんかあったの?」
二段ベッドの上段から降りて彼女の隣に座った美佳は、疲れ切った顔の奈波を覗き込んだ。
「うん……最近、医務室に来る人の数増えてて……」
「えっ? 訓練で怪我したとか?」
「ううん、身体の怪我じゃなくて。心がね」
「……そっか……ずっと艦の中だもんね……」
「精神的に疲れたっていう人がいっぱい来て、最近はもっぱら相談聞いたりカウンセリングがほとんどだよ」
それを聞いた美佳は「よしっ」と立ち上がると、部屋を出て廊下を走り出した。
「……美佳ちゃん、どうしたんだろ……」
呆気にとられたまま彼女の背中を見る奈波であったが、直前までの疲労があり彼女を追いかける事はしなかった。
ベッドに横たわった彼女は、引き込まれるように眠りにつくのだった。
艦長室
「失礼しますっ!」
扉をあけて敬礼する彼女を見る人影が2人。
「……あれ、お兄?」
「美佳、どうしたんだ?」
「お兄こそ」
そう言った直後、兄の立場を思い出した美佳は「あっ、報告か」と手を叩く。
「それで……何か用かな」
「はい」
艦長の言葉に姿勢を正した彼女はゆっくりと話し始めた。
「先ほど、医務科の神橋奈波から聞いたのですが、最近精神を病み医務室を訪れるクルーが増えているとのことでした。そこで、娯楽の提供を具申したく」
「なるほど。考える事は同じみたいだな、戦術長?」
「――ほぇ?」
艦長の言葉に背筋を崩して兄を見上げると、彼は後頭部をかきながら口を開いた。
「ああ、実は俺も同じ事を艦長に言ってたところだ」
「そうだったんだ……」
「ただあまりいい案が出なくて困ってた所なんだ。何かないか、美佳」
「うーん……ヤマトだとラジオとかお祭りとかやってたらしいけど……」
兄の振りに頭を捻らせる。
娯楽を提供するべき、と言いに来たものの、その実内容は何も考えていなかった。
それは兄も同じであるらしく、彼もまた彼女と同じように悩んでいたのである。
彼女が考えを巡らせていると、音声と共に通信が入った。
『艦長』
聞こえたのは棚橋の声。
「どうした?」
『本艦進路上に地球と似た環境の星がある可能性があります。異星文明との接触の可能性もありますが……』
「わかった。航路に変更はない、調査を兼ねてその惑星へと向かう。異星文明と接触した場合は、あくまで友好的にだ」
『了解』
通信を切った近藤は立ち上がると、帽子をかぶり直した。
「クルーのためにも娯楽施設は急務かもしれん。船務科にかけあっておこう」
「「ありがとうございます」」
2人は敬礼をすると、頷く近藤を尻目に艦長室を後にした。
彼らの背中を見届けた近藤は、ニヤリと笑って扉に手をかけた。
観測ドーム/第3階層
かすかな――。
それは、本当に微かなものだった。
「今、何か……」
水月は、先に戻った親友から渡されたマグカップを置くと、解析コンソールへと向かう。
紅い石が指し示す光の軌道を宇宙儀に照らし合わせ、僅かに揺れ動く光の行く先を調べた。
「……これは……?」
コンマ数ミリの揺らぎは、遥か数千光年先で大きな揺らぎとなり、そしてある星の周期と完全に一致していた。
「航海長、気象長へ、こちら観測ドーム情報長です。共有しておきたい事があります――」
――第9話 「紅き石の導き」――
ありがとうございました。
悩んだ割にとんでもなく短かったですね……。
次回からは文章量考えながらやりたいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう。