「いい?姉さん。怪しい人とか同級生が居ても近づいちゃダメだからね!」
「……シンク、私がいくつだと思ってる……」
「僕と双子で姉さんだけど不安なの!なんで第一高校行っちゃうのさあ……」
3月、石川県のとあるところで顔がそっくりな男女が向き合って何やら言い争いをしていた。しかし、実際は男子の方が女子に詰め寄って一方的に話していた状況だった。
男子の方は赤い上着の制服を、女子は青緑の上着の制服を着ていた。女子が男子の頭をポンポンと撫でると男子はその手に擦り寄るが、少ししてハッとして頬をふくらました。
「……姉さん」
「私も第三高校行ってみたかったけど二人でそれぞれ論文を沢山読もうってことになっただろ?ちゃんと長期休暇のときはそっちに戻るのに?」
「……でも」
女子___
「じゃあ週一に読んだ論文の話でもする?」
「! する!」
「それで我慢出来る?」
「……頑張る」
「お待たせしました。美登里さん」
「いいのよ〜。姉弟仲がいいのはいい事よ」
「そうですかね……」
「さあ、あまり遅くなる前に行きましょう?」
外でずっと手を振っている真紅郎を見えなくなる所まで見つめ、全く見えなくなると同時に背もたれにぐったりと体重をのせた。
「……彼ってあんなに心配性なのか?もはや過保護の域を超えてる気が……。あの男が嘘教えた?」
____そう、吉祥寺
◇◇◇◇
「……誰」
「冷たいなあ。そんなに邪険にしなくてもいいだろ?」
「いや知らないところに突然連れてこられたらビックリするでしょ誰でも」
少女の冷たい視線を受けて少女の前にいる青年は肩をすくめる。少女は目の前にいる青年から視線を逸らして辺りを見回す。
そこは空の上にいるようで自分が立っているのが雲のような場所であることに気づく。
元々少女は自分が死んでしまっていたことを自覚しており、なぜ自分が目を開けてここに立っているのかが理解出来ずにその理由を知っているであろう青年に教えてもらおうと思っていた。
「で、なんで私がここにいるの」
「そんなに焦るなって。1からちゃんと説明してあげるから」
「……」
少女は納得のいってなさそうな表情を浮かべるが、とりあえず聞く気にはなったようで青年が用意した椅子に静かに座った。青年はにっこりと笑みを浮かべて少女と視線を合わせた。
「単刀直入に聞く。私は死んだのよね」
「うん、死んだ。でも君このままだと輪廻くぐれないんだよね」
「くぐれない?特に罪を犯したとは思ってないのだけど」
少女は自分が死んだことに関して驚かなかったが、輪廻をくぐることが出来ないことに関してはピンとくるものがなかった。少女が首をかしげて理由を促す仕草をするのを見て青年がにこにこと笑いながら口を開いた。
「親よりも先に死んでしまっただろ?それが君の罪」
「はあ?」
少女は親よりも先に死んでしまっていたことで輪廻がくぐれないことに素っ頓狂な声を出した。それはそうだ。死んでしまったのは不可抗力であり回避できなかったことであるのにそれを理由とされてしまったのだから少女にとっては理不尽の何物でもないだろう。
「納得いかないのは分かるんだけどね。この規則は僕も変えられないんだよねえ
だから君にはギフトが送られる」
「ギフト?」
眉をひそめる少女の反応に青年は笑っていつの間にかあった分厚い資料を手に取って少女へと渡す。少女は手渡された資料を手にしながらも聞き覚えのない言葉を反芻する。
「その中から転生先を決めて」
「は?転生?」
「そ、その決めた世界に合わせたギフトが送られて君は転生することになってる。
あ、これは決定事項ね」
「……」
「わあ冷たい目」
少女は青年が出す情報に信憑性がないからか今度は絶対零度の視線を向けた。青年はけらけらと笑いながらも目は少女に向けられていて資料をトントンと指でたたいた。
「どんな決め方でも良いから早く決めちゃって?そうじゃないと君も僕も動けないから」
「……分かった」
青年にそう言われた少女は資料をひっくり返すとペラペラとパラパラ漫画のコマを進めるようにめくり始めた。何をやるのかな〜と青年は見ていると不意に少女が紙と紙の間に指を入れて一枚の紙を出した。
「これ」
「ふーん、ここか。いいよいいよ〜。じゃあギフトはどうしようか」
「勝手に決めていいんじゃない?」
「あれ、いいの?」
「興味ないかな」
少女は本当に興味が無いようで青年から目をそらすとぼうっとどこも見ていない目で椅子の背もたれに体重をかけて座った。
青年はしばらく少女を見つめるとどこかから出てきた紙にさらさらと何かを書き始めた。
「はいこれ」
「……?何これ」
「君へのギフト。てい」
書き終えたのか青年は少女の額に紙をぺちりと当てた。少女が内容を確認しようとすると突然身体を引っ張られる感覚におそわれる。
「っは!?」
「頑張ってねー」
「っふざけるなよっ……」
「次は早く死なないようにね」
◇◇◇◇
「……はあ、しかしまさか自分が第一高校に行くことになるとは。いや論文は面白かったから第一高校の方も興味はあったけど」
「……ん〜しかしこの“魔法科高校の劣等生”の話全然知らないんだけど……あの男確認する暇もくれないし」
彼女も“魔法科高校の劣等生”を読んではいたが、どちらかというとその中に出てくる理論などを読むことが多くストーリーにはさっぱり興味がなかった。そのお陰か主人公の顔は覚えていても名前などはほとんど覚えていないという状況になっている。
「……まあ何とかなるか」
これから自分がどんなことに巻き込まれるのか、彼女はまだそんなことを知らずに東京へと向かっていく。
一応ギフトの話は次回にします。
※主人公の話し方を変えました。話は全く変わってません