紅玉の瞳は何を思い見つめる   作:星月 悠

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細々と……


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「……まあ、妥当?」

 

彼女が着いた先はセキュリティ完備のマンションだった。調べても住所は間違えていないようで、とりあえずそのマンションに入る。予め聞いていた番号を頼りに歩いていくと<602>を見つけたのでそこに入る。

 

「……うわあ、」

 

こんなに広くなくても良かったんですよ剛毅さん……。と真紅(まこ)は心の中で呟く。彼女が想像したのはワンルーム位かと思っていたのだが、ここは2LDKでCADの調整する為の機械もちゃんと入る位の広さだ。

 

「……はあ、なんか至れり尽くせりだな。逆に申し訳ない」

 

私たち姉弟は一条家に恩がある。シンクの方は将輝を“将”として、自分は“参謀”として認められていつもフォローしている。逆に私は前に進む将輝の邪魔になるものを片付ける役割をしている。本人達にはすごく怒られるけど……

 

「さて、とりあえず荷解きしよう」

 

真紅(まこ)はそう言って荷解きを始めるが、その合間に論文をつい読んでしまったのはご愛嬌というものだろう。

 

「……よし、それじゃあ視るか(・・・)

 

真紅(まこ)はボソッと呟くと部屋の真ん中に立ち、目を閉じる。

すると彼女の視界にはこの部屋にきたときの彼女の時間が逆戻りするように動く映像がうつる。

彼女の前に荷物を持ってきた人々は一条家が派遣した人だとすぐに分かった。だがその数時間前に見知らぬ男が部屋に入り、数箇所の見えにくい場所に何かが付けられている映像がでた。

 

「……はあ、めんどくさい」

 

彼女はため息をついて見た場所に静かに向かうと、黒い小さな機械が取り付けられていたのを見つけた。1つずつ外していってまとめて水を入れたボウルに沈めていく。魔法がかかっている様子はないから多分気にしなくてもいいだろうな

 

「……」

 

真紅(まこ)は不意に外を視るようにするが、ふと感じた気配はすぐに消えてしまった。多分この機器を付けた当人だろうが、既に興味を失って視線を逸らした。

 

 

翌日、謎の男が死亡するのが発見されるが、彼女の耳に入ることはなかった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「……道を覚えるついでに早めに出たが……早すぎたか」

 

桜舞う道を通って見えた第一高校の校舎を見上げてから辺りを見回す。そこには数人の上級生らしい生徒が移動してるだけで新入生は見当たらない。

真紅(まこ)はハァ、とため息をつきつつ、座れる場所がないか探す。しばらく歩いて見つけたのは男子生徒が既に座ってるベンチしか見つけることが出来なかった。

……離れればいいだろ。元々彼端に座ってるし。

 

「……すまない、隣いいだろうか」

「ああ、どうぞ」

 

許可は要らないだろうが一応。彼もそんなに気にしていなさそうだがな。だが私の顔を見て少し驚いた表情をしていたが、シンクの顔を知っているのだろうか?一応眼鏡をかけてはいるんだが……。まあいいかと考えるのをやめて一番端に座って携帯端末に入れていた論文を読み始める。

しばらく読んでいると、上級生の生徒がこちらに、というより隣の男子生徒に視線を向けて何やら言っていた。

 

 

___あの子、ウィードじゃない?

 

___こんなに早くから……補欠なのに、張り切っちゃって。

 

___所詮、スペアなのにな。

 

___あの隣の子もなんで一緒にいるのかしら。

 

 

……正直言ってくっだらない。ブルームだウィードだ差別化されてるけど確かこの原因は制服の発注でミスが起こった上、教員も間に合わなくて最終的にこの状態になったのではなかったか?

無知は幸せだな、ということで真紅(まこ)は耳から入ってくる情報をシャットダウンしようとすると隣から視線を感じた。見られてる、と上級生ほど感じはしなかったが、意識の片隅に引っかかったような感覚だ。ちらっと視線を向けると相手もこちらを見ていたが、特に何か思ったわけでもなく、「大変だな」と真紅(まこ)は呟いて視線を論文に戻した。

 

しばらくしてふと真紅(まこ)が端末を閉じて立ち上がった。隣にいた男子もその気配に気づいたのか視線を感じたが、彼女が反応することはなくそのままどこかへと歩いていった。

 

 

◇◇◇◇

 

「……うわ」

 

真紅(まこ)は講堂の座席の様子を見て思わずといったように声を出した。彼女の視界には一科生と二科生が真ん中の通路できっぱりと別れていたからだ。座席は自由だったはずなんだが……?と思いながら前の通路に近い側の座席に座る。あまり注目を集めたくないしな。

遅めに来たからかそんなに待つことなく入学式が始まった。論文や実験結果の発表以外の長ったらしい話はあまり好きではないから彼女はぼんやりと聞き流す。少しすると新入生代表挨拶が始まるようで一人の女子生徒が登壇した。

……へえ、美少女だな。魔法師って容姿が整っているほど魔法力が高いというが彼女は抜きんでている。というかもはや人間の範疇超えてないか……?クトゥルフでいうAPP18レベル。

周りの新入生たちも彼女に見惚れているからか、彼女の挨拶にかなりギリギリな言葉を入っていることも気にしている様子がない。美少女はお得だな。

 

 

 

「……はあ、やっと終わった」

 

長い入学式が終わってすぐにホームルームがあるのは知っていたが、真紅(まこ)は教室に行かずに図書室に寄るつもりでいた。というかうるさい場所があまり好きではない。若干憂鬱になりながらもIDカードを発行すると『A組』とあった。

 

「A組ねえ……」

 

彼女は特にクラス分けに何かこだわりがあった訳ではなかったので、確認だけして図書室に向かおうとする。すると遠くから魔法が発動したのを知覚した。見ると新入生代表と朝隣にいた男子生徒を中心としているらしい。関わると面倒くさそうだと思い、真紅(まこ)はこちらに気づかれる前に図書室に向かった。

 

「……へえ、この量は凄いな」

 

収集されている論文を流し読みしながらも真紅(まこ)はその種類の豊富さに驚く。図書室の仕分けを見取り図で確認しながらも興味のある分野が何処にあるのかを探す。

 

「……うん、大体頭に入ったかな」

 

自分の記憶に入ったことを確認して論文を探しに行く。彼女は今までの論文を片っ端から読んできていたが、興味があるのは『知覚魔法』及び『加重系魔法の技術的三大難問』についてだ。どちらも自分とその片割れが興味を持っている事柄だからというのが1番大きい。

時間的に確認だけしか出来なかったが、真紅(まこ)は翌日から論文探しが捗ると若干嬉しく思いながら家に帰った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

翌日、真紅(まこ)は登校途中既に嫌な予感がしていた。だが今日は受講登録をしなければならない。さっさと終わらせて図書室に引き籠りたいと思いながらクラスに行くと既に人だかりが。少し視るとあの新入生代表である美少女が真ん中にいた。なんだ、彼女にただ群がっているだけか。

真紅(まこ)は席を確認するとどうやら美少女の斜め前の席らしい。私はあの人だかりの中に入っていかないといけないのか……とため息をついて一番外側にいる生徒に声をかける。

 

「すまないが、そこを退いてくれないか」

「なんだ突然!僕たちは司波さんと話をしているんだ!」

 

クラスメイトの言葉に真紅(まこ)は内心舌打ちをする。今の自分がどういうことをしているのか分かっていないのかこいつらは。あまり表情が動かないからか彼女が怒っていることに彼らは気づかない。

 

「ほう?その司波さんに聞き取れないほど話しかけることはクラスメイトの受講登録を邪魔して彼女を困らせていること以上に大事なことなのか?そんなことが大事だとは知らなかったよ。無知ですまなかったね」

 

真紅(まこ)の皮肉のこもった言葉に気づいたのか周りに集まるクラスメイトは憎々しげに彼女を見ながらも自分の席に戻って行った。

再度ため息をつきながらも真紅(まこ)は自分の席に座り履修登録の画面を開いてキーボードで登録を始める。

ちなみに真紅郎も真紅(まこ)につられたのかキーボードだけで済ますことがほとんどだ。

登録を進めていると斜め後ろから視線を感じた。位置的に新入生代表であることは予想出来たが関わりを持つと面倒くさそうだと思った真紅(まこ)はスルーすることにした。

 

 

教師の話も終わりこの空間から出ていこうと思ったときに「あの」と声をかけられた。無視しても良かったがそれもそれで面倒くさそうだと思った真紅(まこ)は声のした方に視線を向ける。

案の定視線の先にはあの美少女がにっこりと笑みを浮かべて立っていた。後ろには舎弟のようについてきているクラスメイトが数人立っているのを見て内心呆れる。

 

「……何か?」

「吉祥寺さんはこの後どちらに?」

「……工房に行く予定でしたが」

 

何故私の行先を聞くんだ。真紅(まこ)が眉をひそめるが、美少女の笑顔は鉄壁で後ろのクラスメイトの視線がやかましく感じる。

言わない理由も無かった為に答えると、美少女が少し嬉しそうに手を叩いた。嫌な予感がする。

 

「私もそちらに見学に行く予定なのですが、一緒に行ってもいいですか?」

「煩いのは好きではないのでお断りします。では」

 

美少女の言葉を聞いて即断わった真紅(まこ)は教室を足早に出ていった。普通に歩いているように見えるが、その速さは廊下にいた同級生がギョッとする程だ。

A組の面々の視界から外れたのを確認してからやっと真紅(まこ)は速度を落とした。

 

「くっそ……嫌な予感がまだする」

 

真紅(まこ)は誰もいないことを視てからこめかみに手を当て大きなため息をつく。

 

この時その予感が放課後まで続くとは彼女も予想していなかった。




進んでいるような進んでいないような感じでごめんなさい……
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