久しぶりの更新なのにすいません。
これからの話の内容を考えていたら少々時間がかかってしまったので、息抜き的な感じです。
あと激しいキャラ崩壊がある上に、物語が進む上では読まないでも大丈夫なのでそういうのが苦手な方は読まなくても大丈夫です。
自分で言うのもなんですが、出来がひどいです。流石に2日徹夜してのハイテンションでの投稿はむりがあったかも・・・
「ふ~・・・いやぁ、何ていうか・・・落ち着くねぇ」
ラウンジのソファに寝転がり、口の端に煙草を咥えつつ言うシエロ。割と大怪我をして手術室に運び込まれたシエロだったが、あれから既に2週間以上が経過していてシエロの傷ももうほぼ完治しつつあった。
シエロからすれば既に任務に出ても良いと思える状態なのだが、他のメンバー、特にアリサを始めとする女性メンバーの強い反対もあり、シエロは療養という名の休暇を満喫しつつあった。
とは言っても他のメンバーは通常通り任務があるし、親睦を深めたいセイジ達「ブラッド」も丁度任務で出ていたしで今の所ラウンジにいるのはシエロと他数人ばかりだ。
人でないものをカウントに入れて良いというのなら、シエルが飼っている最早大きさだけならシエロ以上に大きいカルビ(カピパラ)も存在している。
尤も、先ほどシエロが餌をやろうとしたが、その結果手まで齧られかけるというショックな出来事が起きてシエロはもう餌を与えよう等とは思わないと誓っていた。
となれば話し相手もおらず、自然と好物のたい焼きと煙草の煙を燻らせるばかりと暇人アピールをするしかないシエロ。
「こんだけ暇なら、俺も任務について行きたかったし」
「ハハハ、何だ何だ?旧第1部隊隊長さんは随分と働き者なんだな」
「んあ?あんたは・・・・・・確か今巷で有名なナンパ師、真壁ハルオミ第4部隊長」
「名前を覚えてもらえるとは光栄の極みだな。どうだい?暇なら1杯」
ハルオミがお茶目にウインクを飛ばすが、男相手にやられてもキモいだけなのでシエロは白けた視線をハルオミに送る。送られたハルオミはハルオミで気にした感じもなく、シエロの肩をバシバシ叩いてラウンジの窓際の席へと連行しようとする。
反抗するのも面倒なシエロはとりあえずされるがままに席に行ったが、昼間から酒というのもなぁと思いつつメニューに目を通す。普段たい焼きばかりしか頼まないシエロとしては、どれもこれも新鮮に感じられるメニューだ。
「どうだい?何頼むか決まったか?」
「いんや、まぁ特にこれといって飲みたいものはないんだがね・・・リンドウあったらビール一択なんだろうな」
「おお、そういえばリンドウさんって配給ビールいっつもがめてたっけ。あれって昔からなの?」
「少なくとも俺が知る限りでは、サクヤさんの分とかよくもらってたぞ。ってか、何でリンドウには敬語っぽくて俺にはタメ語なんだよ」
「いやぁ~、だってギルからシエロさんは敬語が苦手だって言ってたからさ?」
アハハと悪びれもせず語るハルオミ。シエロもそこまで気にしていたわけではないので何も言わなかったが、何故か気になるシエロ。
そこで思い至ったのが同族嫌悪という言葉だったが、元々そんなことを深く気にするようなたちでもないのでシエロは流すことにした。
とりあえずジン・トニックを注文しつつ、残りのたい焼きを酒がくるまで食べることにする。
「ふ~ん、たい焼きかぁ。そういやそれ好物なんだっけ?」
「まあね。俺の主食はたい焼きと言っても過言ではない。時間があれば自分で焼くし」
「器用なもんだなぁ。俺は料理とかからっきしだし・・・あ、でもギルとか得意そうだよなぁ。何かあいつ何やらせても器用にこなしそうだし」
「そういや、ギルってあんたの後輩なんだっけ?」
「ん?ああ、そうだぜ。グラスゴー支部で一緒にやってた仲だったんだ」
本当は3人だったんだけどな、という言葉はハルオミの心中でだけ呟かれた。シエロはなにか複雑そうな顔をしているハルオミを見ると、それ以上それについて聞くのはヤメにする。あまりつっこんで聞きすぎても、いい印象はないだろうし話したくなったら話すだろうと判断した。
「・・・にしても、今日は本当人いないなぁ」
「時間が時間だしね。俺も声をかける女性がいなくて寂しいぜ」
「そろそろみんな帰ってくる頃だと思うんだけどなぁ」
「ってスルーかよ。泣いちゃうぞ?」
「ふざけたことをいうからだ」
シエロは額に青筋を立てながら、うるさいハルオミの口にたい焼きで蓋をする。ここ最近任務も出れずアナグラに篭もりっぱなしだからか、ストレス発散もできずシエロも苛々が溜まっている。
心配してもらえるのはありがたいが、心配され過ぎもシエロは性格的に落ち着かないのだ。本人的には既に体調はいつもと変わらないし、基本ゴッドイーターの体は常人と比べて丈夫で回復力も半端ではないのだ。
シエロは届いた酒のグラスを傾けながら、色々と落ち着かない気持ちを頭の中で反芻させる。
「ま、そう深く考えたってしょうがないだろ??休める時に休むのだって、俺たちの仕事だぜ?」
「・・・そう言われるとそうなんだけどね。・・・ま、いっか。考え込むのはあんまり柄じゃないし」
「そうそう。今はともかく、この時間を大切にしようじゃないか」
ハルオミがいちいちキザったらしい言葉で言って、シエロにグラスを向ける。その意図を察すると、シエロは小さくため息をついて同じくグラスを向ける。
「「乾杯」」
まだ昼間なのに酒を煽る2人の休息の時間は、緩やかに流れていった。しかし、この時のシエロは後悔することになる。この緩やかな休息の時間を、もっと楽しんでおくべきだったと。
「う~ん・・・久々の休暇だ。こんな日はどうしようかね、配給ビールでも久々に飲み漁るとしようかな」
「お前は休日いつもそれだよな?まさかレンにも飲ませてたりしてんの?」
「馬鹿言うなよ?流石にそんなことはしないって」
シエロがハルオミと親睦を深め合って2日後、シエロとリンドウはラウンジで日常を語り合っていいた。今日は旧第1部隊の皆は全て休日となっていて、皆思うように日々を過ごしている。
最近ならレンの世話に休日を費やすリンドウだったが、今日はサクヤがレンを連れて近場の奥様方と用があるらしいとのことだからリンドウはラウンジで寛いでいるのである。
コウタやソーマ、アリサも後でラウンジへ来るとのことだったが未だその姿は見えない。そんなわけで、2人は今ラウンジで世間話に興じているのである。
「しかし・・・あれだな。怪我は無事完治してよかったな」
「日頃の行いがいいからかね?怪我がすぐ完治したのは」
「アリサ何か大変だったんだぞ?シエロがここに運び込まれても、完治させなかったら許さないって殺すかのような剣幕で」
「アリサは少し大げさな気もするが・・・・・・ってやべ、アリサに脅迫まがいなお願いされてたんだっだ」
どうしようと、暗い影を落としてシエロが頭を抱える。リンドウがそんなシエロを見て空笑いを浮かべたその時、コウタとソーマがセイジ達を連れてラウンジに入ってきた。
今日はブラッドのメンバーも珍しく非番なのだ。それを見たシエロは、少しだけ表情を明るくさせ反対にセイジ達はビクッと表情を固くさせた。
「やぁやぁブラッドの諸君、久しぶり」
「し、シエロさん。怪我は完治したようですね」
「まあね。ところでどうしたんだい?何か固くなっちゃって」
「いやいや、それシエロがいうことじゃなでしょ?」
思いっきり嬉しそうな顔しちゃってと、コウタが苦笑する。大方アリサが無茶なことを言い出した時に巻き込む算段だろうと、コウタも察したのだ。シエロは素知らぬ顔をして口笛などを吹いて、誤魔化しているがバレバレである。
「そんなにアリサさん無茶なこと言い出すんですか?」
「何か全然そんなイメージないよね?どう思うギル」
「俺に聞くなよ。そういうことはシエロさんとかに聞けばいいだろ」
セイジ達はセイジ達で、アリサの危うさについて話し合っている。アリサ本人が聞いたら、恐ろしいことになりそうである。こんな話ができるのも、当の本人であるアリサがいないからこそだ。
「いずれにしても、アリサのお願いが恐ろしいことでないことを祈るのみだ」
「以前は恐ろしい目にあったからな~。またあの時のようなことが起こったら、俺は今度こそ命がなくなると思う」
「あの時ですか?」
シエルが一体何の事だと首をかしげると、事情を知っている旧第1部隊のメンバーは揃って顔を青くする。そして語るのも恐ろしいと言わんばかりに、全員が肩を落として沈黙する。
「ど、どうしたんですか?」
「そんなにヤバイことなの?アリサさんが企んだ恐ろしいことって・・・」
「いや、恐ろしいのはアリサが企んだことじゃなくてアリサがすると恐ろしいことになるんだよ」
「あれだけは避けなきゃならねぇ」
普段は寡黙で特に文句などはあまり言わないソーマまでもが、顔色を青くしてげんなりとしている。普段ならシエロ辺りが茶化しに掛かるところだが、事情が事情なだけにシエロもからかいはしなかった。
「アリサのお願いが例の事じゃないことを祈るだけだな」
「そうだな。もし考えている事態になってしまったら、揃って全員病室送りは避けられねぇ」
「い、一体なんなんですか?その・・・アリサさんの最悪なお願いって・・・」
シエルがゴクリと唾を飲んで言うと、合図をしたわけでもないのにシエロ達は揃って顔を見合わせた。そしてそのまま沈黙の時間が訪れる。体感的には長い時間そうしていたように思えたが、実際に経過した時間は5分程である。
そうして漸く心の準備を終えたシエロ達は覚悟を決めたように、ソファに座り直し代表としてシエロが口を開いた。
「試食だよ・・・アリサの作った料理のな」
「・・・りょ、料理の試食・・・ですか!?」
サッと、セイジ達の顔が真っ青に染まり絶望感が身を包んだ。アリサの料理の試食と聞いて初めて、その注文の恐ろしさにセイジ達は気づく。何も知らない者が聞けばそんなものがと馬鹿にするかもしれないが、アリサの料理の腕前を知っている者が聞けばそれが何を意味するかを直感する。
一言で言えば、絶望だと。
「それだけは何としても避けたいが、一体アリサが何をするか見当がつかないところが怖いな」
「お願いされた・・・というか、食べて欲しいって言われたのはシエロのはずなのに、何故か俺達まで巻き込まれるという現象」
「巻き込まれれば死しかねぇ」
「以前なんか、料理を食べた途端全員意識が飛んで、気がついたら3日経ってたなんてことがあったっけな」
リンドウがフッと影を落として言うと、他の全員が当時のことを思い出したのか顔を真っ青にして項垂れる。もはや思い出すのも忌々しい思い出なのだ。
「とはいえ、今日中にそれが襲ってくるとは限らないわけだが・・・なんでだろうね、嫌な予感がビシビシするわ」
「お前がそんなことを言うってことは、今日中に起きるな」
「フラグ・・・建てちゃったしね」
「今のうちに逃げるか?」
それぞれが失礼なことを言い立てるシエロ達。アリサ本人が来たらとんでもないことになるんだろうなと、セイジがそんなことを思っていたその時だった。
「あ、ラウンジに集まってたんですね皆さん」
「・・・え?」
噂をすればと言うやつだった。今まさに話題の中心であるアリサがラウンジの扉を開けてやってきた。その姿を見たシエロ達は勿論、セイジ達まで固まってしまう。自然とその場の空気が固まるのと、全員の額を冷や汗が伝うのはしょうがないだろう。
「??どうしたんですか皆さん。何か空気が重いですけど」
「い、いや・・・何でんないさ、なんでも。気のせいだ」
「そうですか?」
「そうそう、全然気のせいだって。アリサ最近忙しかったからさ、疲れてるんじゃない?」
コウタが冷や汗をダラダラとかきながら、自然を装って言うとアリサもなんだかんだで納得したようで、1人のんきに頷いている。シエロはそんなアリサを見て、嫌な予感が止まらなかった。正確には、アリサの右手にぶら下げられている異様にでかいランチボックスを見てだ。
同じく視線をランチボックスに送るソーアとリンドウに気付き、シエロはアイコンタクトを送る。すると、それに気付いた2人が目線をシエロに投げかける。
「(おい、あれの中身はヤバイぞ。アリサの持っているのは、明らかにランチボックスだ。・・・ということは)」
「(あれの中身は間違いなく・・・アリサの作った料理!!)」
「(嫌な予感が当たってしまったか・・・となれば、この先の展開も自然と読めてくる)」
もはや合図どころか、目線で会話を飛ばし合う3人。軽く人間業を超えているが、それもこれもアリサの料理からくる恐怖によるものだろう。ツッコミどころ満載だが、つっこむ者は誰もいなかった。
「ところで、リーダーにしてたお願いなんですけど・・・やっぱりいつも通り、作った料理を試食してもらおうと思いまして」
「(ぐっ・・・やっぱりそうきたか!!)」
シエロが奥歯を噛み砕かんばかりに噛み締めた。必死に浮かべる笑顔が不気味に歪み、それを見た者がヒッと声を上げた。子供がみれば間違いなく泣き出すレベルの不気味な表情だ。
しかし、アリサの料理の恐ろしさを知っているその場にいる全員は何も言わなかった。
「あっ、皆さんの分まで用意してあるので是非食べてください」
いらねーよと、全員の心の声が揃った。もはや狙ってるんじゃないかというレベルの嫌がらせに感じた。そもそもおにぎりという簡単な料理さえできないのに、一体何を作ったんだと不安に陥る一同。
以前任務に持ってきたサンドイッチは、筆舌にし難いどころか致死レベルの凶悪さを醸し出していた。なにせ、口に運ぶどころか匂いを嗅いだだけでも気絶しかねん威力だったのだ。とてもではないが、まともな料理ができたとは思えない。
とはいえ口に出してそれらの評価をするのも憚られる為、結局食べるしかないわけだが毎回とんでもない被害をだすわけだ。
「今回は何を作ったわけ?」
「はい、今回はリーダーも大好物のたい焼きにチャレンジしてみました」
「・・・マジかよ」
「今回は自信作なんで、評価が良ければ今度いっぱい作って外部居住区に持っていこうと思ってるんです」
アリサの笑顔と共に、落雷がその場の全員の頭に直撃した。
「(外部居住区にって・・・)」
「(被害拡大じゃねぇか!!)」
「(か、母さんとノゾミのピンチ)」
シエロ達それぞれが戦慄する。特にコウタの脳内では、アリサのたい焼きを食べて恐ろしい事態が起きる母親と妹の姿がヴィジョンとして浮かぶ。
コウタはぶんぶんと首を横に振ると、ガタガタと肩を抱いて震えだす。
「それじゃあ、とりあえずこれなんですけど・・・食べてみてください」
笑顔でアリサがランチボックスを差し出すと、シエロの顔が思い切り引き攣る。すぐさま逃げだそうとするが、その両脇をソーマとリンドウがガッシリと固定してホールドする。
「(逃げようったってそうはいかねぇぞシエロ!!まずはテメェが逝け!!)」
「(ソーマてめぇ!!隊長を見捨てて逃げる気かコノヤロー!!)」
「(おいおいリーダー、自分の身を挺してでも部下を守るのがリーダーってもんだろ?食う前から逃げるってのはいただけないぜ?)」
「(お前ら)」
額に青筋を立てつつ、瞼をヒクヒクと震わせてリンドウとソーマを睨むシエロ。2人は物凄くいい笑顔を浮かべ、ニコニコと気持ち悪い笑みをソーマまで浮かべている。思わず殴りたくなるシエロだが、何の解決にもならないことを考えると無駄な労力でしかない。
シエロは何もかもを諦めた表情になると、無言でアリサからランチボックスを受け取り恐る恐る蓋を開ける。以前は蓋を開けたとたん暗黒色のオーラが吹き上げることが普通。そうでなくとも、中身を目にしたら背けたくなるような見た目だったりするのが常だった。
だからこそ、シエロが蓋を開けて見た光景は異常だった。クワっといつもならダルそうな両目をこれ以上ないくらい開ききり、目の前にあるものを信じられない気持ちで見つめていた。
そんなシエロの姿を見て一同不信に思い、同じくランチボックスの中身を見て同じく固まった。
「ふ・・・普通だとっ!?」
「??どうしたんですか?皆さんいきなり」
「えっ・・・いや、だって・・・え?」
「おちつけコウタ。まずは深呼吸だ。それから手のひらに人って字を・・・」
リンドウがコウタを諭しているが、リンドウもとても落ち着いた様子ではなくコウタではなくソーマの肩を叩いていた。ソーマはそんなリンドウの事など気にもせず、目の前にあるものを信じられない気持ちで見つめていた。
未だアリサと関わって1年も経っていないセイジ達でさえ、アリサの作ったたい焼きを見て固まっている。無理もない。今までアリサの作った料理はとんでもない様相をしていたものや、ありえないオーラを放つものばかりだったのだ。
それが今目の前にあるたい焼きは、何1つおかしいところが見当たらなかったのだ。変な形をしていなければ、妙なオーラを放ってもいないし刺激臭もない。何から何まで全く普通のたい焼きなのだ。これはアリサが作ったものあとするならば、異常事態もいいところなのだ。
「まさかの意外な結果にびっくりだ・・・今回は死なずに済むのだろうか?」
「む・・・何失礼なこと言ってるんですかリーダー。私だって上達したんですから、さっさと食べて感想をお願いします」
「う、うむ」
ランチボックスの中に収められていいるたい焼きを1つ掴み、方向を変えてみたり裏返したりするシエロだが以上は見当たらない。匂いを嗅いでみても特に不審な点はなかった。シエロはゴクリと息を呑み、それから辺りを見渡した。
リンドウやコウタを見れば、アイコンタクトでシエロに異常の確認をしていた。シエロは同様が浮かぶ目で異常なしと合図を送ると、覚悟を決めてたい焼きを口元に持っていく。リンドウ達はそんなシエロの様子をアラガミと戦闘するかのような緊張感で見つめ、まばたきすらせず見続ける。
「じゃあ・・・いただきます」
「はい、感想よろしくお願いしますリーダー」
にっこりとアリサが笑うと同時に、シエロはたい焼きを頭からかぶりついた。顔を青ざめつつそれを見つめる一同。シエロは無言でたい焼きを食べ続け、尻尾まで食べ尽くして一息。未だ何か不審な様子は見られない。
「・・・シエロ?大丈夫か?」
リンドウがおそるおそる尋ねる。するとシエロは何も言わず頷き、ニッコリと笑ってリンドウの方に向き直る。その瞬間、リンドウの背中に悪寒が走った。何かがおかしいと思うやいなや、リンドウの勘を肯定するようにシエロの口からとんでもない言葉が吐かれた。
「はい?何が大丈夫なのでしょうか?リンドウ副隊長」
ピシャーンと、特大急の雷が落ちた。
「・・・・・・・・・え?」
「何・・・だと・・・」
「し、シエロさん・・・ですよね?」
「リーダー?何の冗談言ってるんですか?」
リンドウ達どころか、料理を作った張本人のアリサまで首をかしげていた。それほど、今のシエロはいつものシエロではなかった。何せ、キラキラと絵になるような笑みを浮かべて言葉遣いまでもが丁寧になっている。ましてリンドウのことを副隊長などと、そんな呼んだ事のない肩書きで呼んでいる。
「なんてこった・・・これは今までの料理以上にとんでもないことになるんじゃねぇか?」
「・・・性格っていうか・・・人間変わってるぞあれ。なんだよあのシエロ、見た目カッコイイのに普段のシエロ知ってる俺達からするとかな
り気持ち悪いんだが」
「そ、そうでしょうか?私からすればこっちの方が・・・」
「うんうん、何か顔に似合ってるっていうか」
意外、女性には好評のようだ。何か納得いかない評価に、コウタは悔しげに奥歯を噛み締める。しかし改めて今のシエロを見て顔を青ざめさせつつ、シエロがテーブルに置いたランチボックスに目をやった。
「あ、アレを食べたらシエロの性格が変わったんだよね?」
「味はどうやら大丈夫のようだが・・・食べたらああなるのか」
「性格反転するってのか?信じたくねぇがアレを見るとな」
「でもちょっと羨ましいかも・・・女の子にモテるって・・・」
コウタがそんなことを言うと、ソーマは呆れた目でコウタを見つめる。それからランチボックスからたい焼きを1つ掴むと、コウタの口にそれを思い切りねじ込んだ。
「うぐぉっ!?な、何ふんふぁふぉふぉー・・・ふぁ・・・・・・」
「おいおい、いくらなんでもやりすぎじゃねぇかソーマ?」
「馬鹿なことを言っていたからな。どちらにせよ、これを食べて本当に性格が変わるのかどうか・・・1つじゃわからんし、羨ましがってる奴に試すのが1番だろ?」
「俺はしらねぇぞ」
リンドウが頭をかきながら、たい焼きを飲み込んで固まったコウタを見る。未だコウタに動きはない。そんなコウタに、シエロが心配そうな顔をして近寄り肩を叩きつつ訪ねた。
「大丈夫ですか?コウタ第1部隊隊長。顔色が死んでます」
「・・・気持ち悪い上に何か凄いこと口走ってないか?」
「俺たちが正常なのがいけないのか?ソーマ、お前もアレ食ってこいよ」
「ふざけるな」
言葉を一蹴するソーマ。リンドウの尻を思い切り蹴飛ばすと、リンドウは思い切り体勢を崩してケンケンをしながらランチボックスに近寄り、そのまま体当たりをかました。
「おわっ!?」
それと同時に運悪くたい焼きが1つ飛び出し、リンドウの口に飛び込んだ。瞬間、顔色を真っ青にするリンドウ。咄嗟に吐き出そうとするもそのまま倒れてしまい、その表紙にたい焼きを丸のみしてしまう。
「うぐぅっ!?の、のど・・・つまる・・・」
たい焼きを飲み込んでしまった事実より、喉に詰まった事実に顔色を真っ青にするリンドウ。慌ててアリサがグラスに水を注いで持ってくると、ひったくるようにしてリンドウは水を飲み込む。助かったと思うと同時、リンドウはとてつもない悪寒を感じるが既に遅かった。
頭の中でスイッチが切り替わるような音が響いたと同時、リンドウの意識が飛ぶ。
しかし、リンドウがそのまま気絶することはなかった。何を思ったのかそのままピンと立ち上がり、とんでもないことを口走ることになる。
「し・・・仕事しねぇと」
「・・・はい?」
「溜まりに溜まった仕事を片付けねぇといけねぇぞ。こんな風に休んでる場合じゃねぇ!!アリサ、クレイドルの立案関係の書類と始末書が溜まってたよな!!急いで片付けてくる!!」
「え・・・ちょ、リンドウさん!?」
アリサが止める間もなく、リンドウはその場を駆け出した。アリサとシエロ以外の全員は、普段のリンドウなら絶対口にすることのない言葉を聞いて驚いて固まっている。
ソーマは無言でたい焼きの入ったランチボックスを見て、次いで未だ固まったコウタに目を向ける。
その変化はその時を狙ったかのように起きた。
「な・・・にをボサッとしてやがんだシエロォ!!テメェ怪我治ったんだったら働けやァ!!」
「こ、コウタさんまで・・・」
「っていうか、完全に人間が変わってんじゃねぇか。このままだと被害が広がる一方だぞ」
ソーマは自分がリンドウにもたらした結果を忘れて、今起きている自体に冷や汗を滝のように流す。見ている方はとんでもないで済むが、この状態が治って正気に戻った時に与えられる被害は筆舌にしがたいものがある。
「とにかくあのたい焼きはしょぶ・・・ん・・・」
「何か面白そうだから私も食べてみよっと。ほらほら、セイジもギルもシエルも試してみなって。何か面白そうだし」
「えぇ!?面白がってる場合じゃないですって!!」
「俺は絶対にごめんだぞ」
「新しい自分を・・・積極的な自分・・・」
既に状況はカオスになっていた。ナナがランチボックスのたい焼きを手に、他のメンバーに面白そうだからと渡している。ギルバートだけは性格からか断固拒否している模様だが、押しに弱いセイジと新しい自分を探そうとたい焼きに手を伸ばしているシエルは時間の問題だ。
そうなれば無事なのはソーマとギルバートと作り主のアリサのみだ。そうなれば暴走した残りのメンバーを止められる自信はソーマにはなかった。
「・・・これはさっさと逃げたほうが身のためか」
「何が逃げるんですか?ダメですよ、何事からも逃げては」
「ってシエロいつの間に!!」
いつの間にか後ろから声をかけられて、ソーマは即座に振り向いて数歩後ずさる。見れば目の前にはニコニコといい笑顔をしているシエロが立っていた。気味が悪いので更に退こうとすれば、ドンとソーマが誰かに激突する。
「わ、悪い」
「どこ見て歩いてんだよ!!ってか、1人だけ何すましてやがんだコラァ!!」
「くっ、コウタ!?」
現状で最悪な人物にぶつかってしまったと、ソーマは心中で絶叫をあげる。性格が変わっただけでなく、ソーマの肩を掴むその握力まで増している気がしてならない。ミシミシと掴まれた肩が軋み、嫌な汗がソーマの背中を伝う。
「何かこいつだけテンション低いけど・・・まさかたいやき食ってないわけ?マジありえなくね?どう思うシエロ?」
「アリサ、僕が療養中はクレイドルの任務含めご苦労様です。よろしければ来週にでも埋め合わせをしたいのですが」
「本当ですか!?リーダー!!」
「って聞けよ!!」
「ぐぼぉはっ!?」
いちゃついているシエロとアリサを見て、コウタが何故かソーマを殴りつける。一瞬意識が飛びかけ、ソーマは床に膝をついた。元に戻ったら殺すと恨みを吐くソーマの首元をコウタが掴み、その口元にたい焼きを突きつけた。ソーマの顔が真っ青に染まる。
「おいコウタ」
「呼び捨てにしてんじゃねぇよ!!」
「むぐぉっ!?」
口答えは許さんとばかりにコウタがたい焼きをソーマの口に突っ込んだ。吐き出すことも許されず、無理やりたい焼きを食べさせられてしまうソーマ。その末路は決定してしまった。そしてその変化はあっという間に訪れる。
急にもじもじしだしたソーマに、コウタは今や外部居住区のチンピラ並に悪い目つきをさらに凶悪にして睨みつける。するとソーマは頬を赤く染め、ビクッと体を震わせてボソボソと呟いた。
「そ・・・そんなに睨むなよ。び、ビビっちまうじゃねぇか」
「ああん?何言ってやがんだよソーマ。お前そんなキャラだったかぁ?」
「(キャラが違うのはコウタさんもだよ・・・)」
残りの無事な1人のギルは正直ドン引きだった。既に20歳を超えた男のそんな姿を見て喜ぶのは、ホモかそれを好む女子だけである。性格が変わってもああはなるまいと、ギルは被っていた帽子をさらに目深く被る。隠れた目の当たりから、透明な液体が一筋伝う。そしてそれ以上何も言うことなく、その場をサッサと去っていく。
後に残ったのは、元の人格など欠片も残さずカオスに騒ぎ立てる極東支部、通称アナグラの主力メンバーの哀れな姿。初めからその場にいた他の神機遣いやその他の人間も既に辺りにはいない。
たい焼きを食べていないのは後はその作り主だけであるが、普段のシエロなら言わないような褒め言葉を言われすっかり上機嫌になり、もう他のことなどおうでもいいと言わんばかりの始末。ナナとシエル、セイジもたい焼きの餌食になり性格が正反対になりセイジなどコウタと乱闘を繰り広げる始末。
もはやその場の光景を正常に受け入れられる者はおらず、後は暴徒化した手の付けられない神機遣いだけであった。最後までその状況を静観して楽しんでいた者がいたのかと言えば、それは監視カメラでその場の様子を見ていた榊だけだった。
後日、それらの映像をネタに旧第1部隊の面々とブラッドのメンバーがあれやこれやとこき使われることとなるのだが、それはまた別の話であり、正常に戻って一部始終を覚えていたシエロ達がそれぞれ部屋に塞ぎ込んだのは言うまでもないことだった。
全員キャラ崩壊の回。
久しぶりの投稿なのにやってしまった感が半端ないです、すいません。
次回はブラッドメンバーがメインになると思います。