こちらが完成文です。
以前の文章を読んでしまったが他には謝罪します。
申し訳ありませんでした。
完成版になります。未完成版を読んでしまった方はこちらが完成版ですので、もう一度読んでみてください。
「や~、なんとか間に合ったのかね。っていうか、戻ってきたらいきなりのこの状況には・・・」
なんだかなぁと、シエロは乾いた笑みを浮かべて頭をかく。とりあえずはと抱えていた少女をゆっくりと下に下ろし、持っていた応急セットで少女の傷の手当てを済ませてやる。
「うっ、ひっく、あ、ありがと・・・お兄ちゃん」
「まぁ無事でよかった。ほら、飴玉あげるから泣きやめって」
「む」
まだ半分ぐずりながら、少女は与えられた飴玉を素直に受け取り口の中に放り込んだ。やがて2,3分もすれば少女は泣くのを止めシエロにぴったりとはりつく。どうやらアラガミに襲われた恐怖と、助けられた安堵感からシエロになついてしまったようだ。
シエロはしょうがないなぁと、少女の頭をワシャワシャと撫で付け好きなようにさせることにした。そして改めてリンドウ達に声をかけることにする。
「何だか慌ただしくなっちゃったけど、とりあえず言っておこうか。ただいま」
「お、おお、何だか驚き半分嬉しさ半分で色々と整理つかないけど・・・まぁおかえりシエロ」
元気してた?と、コウタが言葉を続けようとしたところでアリサがコウタを押しのけシエロに迫ってきた。
「ただいま・・・じゃないですよ!!帰ってくるなら帰ってくるって連絡ください!!」
「お、おぅ・・・すいません」
あまりのアリサの迫力に数歩後ずさるシエロ。しがみついていた少女はアリサの迫力にビクッと震え、シエロの背中に隠れてしまいアリサはうっとショックを受ける。しかし直ぐにハッとなって、シエロに再び詰め寄った。
「ま、全くリーダーはいつもやることなすこと突然すぎますよ。ここしばらく連絡なさすぎてみんな心配してたんですから」
「あ、そうそう。なんか前までいたっていうドイツの支部にも問い合せたけど、他から要請があって行っちゃったってだけで行き先とかわからなかったし。アリサの機嫌は悪かったし」
「そ、そんなことありません!!いい加減なこと言うとぶっ飛ばしますよ、コウタ!!」
「うぇ!?いい加減も何もほんとの」
ことじゃんと、続けようとしたコウタの顔がアリサの照れ隠しの睨みによって黙殺される。代わりにハハハと乾いた笑みを冷や汗とともにシエロにプレゼントし、そそくさと「ブラッド」のメンバーの所に行ってシエロの紹介をはじめた。
そんな様子を見て、かわってないなぁとシエロはしみじみと実感しつつソーマとリンドウの方に向き直った。
「そっちも久しぶり、元気してた?何か最近、キュウビとかっていうアラガミのコアを手に入れて研究に熱が入ったって聞いてるけど」
「ああ、まぁ・・・な。キュウビのコアを手に入れたことで、中々興味深い実験もできるようにはなったが、それでも時間があるわけでもないからな」
「アラガミは待っちゃくれないからな。ま、ハカセは色々大変ってことだリーダー」
「だからハカセはやめろと・・・」
こっちはこっちで言い合いを始めるリンドウとソーマ。やれやれとシエロは肩をすくめると、今度はセイジ達の方に足を向けた。
紹介をコウタから改めて受けているとは言え、セイジ達はシエロが目の前に立つとやや硬くなってビシッと直立してしまう。そんな4人を見てシエロは手をぶらぶらとふり固くなるなと頭をかく。
「ま、話は聞いてるよ。確か「ブラッド」ってチームの4人だろ?リーダーは・・・」
「ボ、僕です。春宮セイジといいます。シエロさんのお噂はかねがね聞いております」
「いや、だから固くならなくていいよ。どうせ年もそんなに変わらないんだし。だから敬語NG」
「い、いえ、この喋り方は地なんですが・・・」
セイジが困ったふうに言うが、その時には既に他の3人に話しかけていた。
「で・・・君が確かシエル・フランソワーズだっけ?」
「い、いえ・・・フランソワーズではなく、アランソンです。シエル・アランソンといいます」
カチンとシエルが固まる。シエルはあ~と申し訳なさげに声を漏らし、なにか考えるように顎に手を置いて唸ること数秒。話題の転換を思いついたのか、再び口を開く。
「そ、そういえばシエルとシエロで1字違いだね」
「そ、そうですね」
「ハハ、ハ・・・」
「アハ・・・ハ」
「ぐあああああああ!!」
結局すべってしまい、シエロは激しく自己嫌悪に陥る。初対面でしかも名前を知っているふうに近づいたのに、思いっきり間違ってしまうという地雷を踏む。最悪だとシエロは深々とシエルに謝り、そんなシエロにシエルは謝らなくていいですと逆に慌てていた。
ようやく体裁を整え直したのは、それから更に3分後位のことだった。改めてと咳払いを1つして、シエロは残り2人に話しかける。
「そっちの2人がギルバート・マクレインと香月ナナだろ。今度は間違えないぞ」
「香月ナナで~す。シエロさんの話はコウタさん達から聞いてました!!お近づきの印に、帰ったらおでんパンごちそうしますね」
「ギルバートです。お話は聞いてます。俺のことはギルって呼んでくれて構わないです」
「よし、ギルにナナね。覚えたぞ」
おでんパンのくだりは無視することにしたシエロ。改めて4人の顔を見直してよろしくと挨拶をすると、通信機器の電源を入れ極東支部に連絡を入れる。数回のコールの後、ピッと音がして通信がつながった。
『はい、こちら極東支部オペレーターの竹田ヒバリです』
「あっ、ヒバリさん?久しぶり。俺です、シエロです」
『えっ?シ、シエロさん!?帰ってきてたんですか!!』
通信機器ごしにもわかる慌てっぷりだった。そういうところは治ってないんだなと、シエロは苦笑する。とはいえあまり懐かしんでいる場合でもないので、先を話すことにする。
「その話はあとで。とりあえず今リンドウ達と一緒にいて、民間人の女の子も助けたからそっちへ帰るよって連絡。ああ、ブラッドのみんなも一緒にいるからそのまま帰るけどその前に女の子ってどこへ連れて行けばいいのかな?結構ケガしてて応急手当はしたんんだけど」
『え?あ、はい、保護した民間人の女の子は医療部隊がキャンプ地点へ待機しているので、一先ずそこへ連れて行ってあげてください。後のことはそこの隊の責任者が処置してくれるとおもいます』
「了解。じゃ、とりあえず通信きるよ」
ピッと通信を切ると、シエロは懐に機器をしまい地面に突き刺した神機を手に持つ。それからいちよう周囲を見渡して異常の確認を終えると、撤収の準備を終える。
「え~と任務内容はこれで終わりなの?」
「おお、そうだったそうだった。周囲のアラガミはあらかた狩り終えただろうからな。行方不明だった少女は無事保護完了。任務達成だ。さっさと母親のところへ連れてかねーと」
「よし!じゃあさっさと帰ろうか。積もる話はアナグラに帰ってからするとして」
コウタの言葉を皮切りに、全員神機を手に持ち撤収の準備を終える。全員が準備を終えたのを確認し、では帰ろうかと駆け出そうとしてシエロは抱きついて離れない少女をどうしようかなと悩む。
「リーダーが抱えていけばいいと思います」
「心を読むな心を」
思わずツッコミを入れるシエロ。だが他のメンバーの顔を見る限り言いたいことは大体一緒のようで、しかも少女本人もシエロから離れそうになかった。どうやらアラガミに襲われた恐怖よりも、懐かれた度合いの方が高いらしい。
「了解だよ。まぁ、神機持ってるからちょっと手荒になるかもしれないけど・・・勘弁な」
「う」
コクリと言葉少なく頷く少女。そんな少女のしぐさに少しだけ笑うと、シエロは「行くぞ!」とだけ言ってその場を駆け出した。
「いや~それにしても大変だったね」
「ん?まあ、自分の娘が行方不明だったんだ、取り乱したりすんだろ」
コウタの言葉にシエロが当たり前だと返答する。あの後、無事少女を確保し民間人の保護地点に戻ってきたシエロ達一行。母親は誰よりも早く娘の姿を発見すると、ゴッドイーターもびっくりな速度で駆け寄り娘を抱きしめていた。母親にだきしめられた安堵感からか、少女も少しぐずりだしている。
アリサはそんな光景を見て良かったなと思う一方、最後まで懐かれなかったことに少なからずショックを覚えていた。シエロが理由を少女に訪ねてみると、なにやら雰囲気が怖いらしい。言い得て妙な言葉に、誰もアリサにフォローを入れることができなかった。
「なにより、1人でも多く救えたんだ。全員救えたかとかは俺にはわからないけど、最善は尽くしただろ」
「確かにな。あんまり欲張りすぎて俺たちが死んだら意味がない。無理はしても無茶はしなきゃいい」
「何かこうして久しぶりに見ると、変化を思わされるなぁ。ハカセなんて、俺と会った時なんて無茶しかしないような感じだったし」
「ぐっ、だからハカセは止めろ」
羞恥心から頬を僅かに赤く染め、顔をフードで隠そうとするソーマだったが生憎とフードがない服だと気付き、くっとそっぽを向いた。
以前にはみられなかったソーマの反応に、シエロはくくっと声を漏らして笑った。それから、また他の3人ともくだらない会話を交わしつつエントランスに向かって歩いていく。
そんな光景を見て、セイジ達はポカンと口を開けて驚いていた。コウタ達からシエロの話は聞いていたが、想像していた人物とだいぶ違うからだ。幾つもの案件を解決し、極東支部でも多大な信頼を勝ち取り一時は皆の心の支柱にまでなった人物だ。もっと厳しそうな人物だと想像していたが、実態は年齢相応な青年にしか見えない。
「何か・・・意外、ですね」
「ん?何が?」
「いえ、その・・・シエロさんの功績とかはよく聞いてたんですが、性格とかそういうのはあまり聞かなかったんで。その・・・」
言いづらそうに視線を彷徨わせるセイジ。そんなセイジを見て言いたいことは大体わかったのか、シエロは気さくな笑みを浮かべてポンポンとセイジの肩を叩く。
「ま、別に遠慮することはないさ。お互い年もあんまり変わんないことだし、今はもう同じクレイドルのメンバーじゃん」
「そうだな、期待の新星だしな実際。俺なんか力の使い方を教えてもらたっりしてるし」
「そ、そんな!!自分なんてまだまだですよ」
「照れるな照れるな」
朗らかに笑って背中を叩くリンドウ。シエロはハハハと笑いながら他の3人にも言葉をかける。
「って、ギルってそういえば経験長いんだっけ?何年やってるの?あっ、敬語は無しでいいよ。俺そういうの苦手だから」
「は、はぁ・・・わかりま・・・わかった。これでいいか?」
「話が早くて助かるよ」
嬉しそうに笑うシエロだが、それとは真逆にプレッシャーを感じていたりするギル。これで意外と繊細なところもあり、先輩には頭が上がらないという面も持っている。
「俺はいちようもう少しで6年になる。最初は第1世代で、それから第3世代型になったんだが・・・どうも銃は苦手だ」
「あ~・・・確かにギルはあんま銃得意じゃないよね。って、私も苦手だけど」
「あなたはもう少し努力すべきだと思います」
ジト目でナナを見るシエル。見られた側のナナは怒られちったと、舌を出してお茶目に笑う。なんだかんだで、「ブラッド」のメンバーもリンドウ達とあまり変わっていない。だが隊の仲が良いのはいいことだとシエロは素直に褒め、それから先程までとは一変して重い雰囲気を纏い出す。
「しかし、正直これから起こるかも知れない事を考えればブラッドのメンバーの実力は嬉しいくらいかな」
「??いきなりどうしたんだ?まさか面倒事か?」
「何かものすごく嫌な予感がするんだけど・・・」
意味ありげなシエロの言葉に、コウタがうげっと嫌そうな顔をする。ソーマやアリサは顔をしかめ、リンドウは稀に見る真剣な表情をしていた。
「まぁ詳しくはあとで話すことになるんだけどね。とりあえずはま、こいつをネコ博士に渡してからかな」
「ん?そう言えば、そのアタッシュケースは何だ?何かすっごい厳重に封されてるようだが」
「というか、ネコ博士って誰ですか?」
「このアタッシュケースの中身はコアだよ。アラガミのコア。まぁ、これが問題になってるわけだが・・・あ、あとネコ博士ってのは榊支部長のことね。腹黒メガネとも言う」
「は、腹黒・・・」
言われて思い当たる節でもあったのか、シエルは乾いた笑を浮かべた。何か既に被害にでもあったのかなと思ったシエロだが、敢えてそこは深く聞かないことにする。何があったかは知らないが、シエル以外のメンバーもサッと顔を逸らしたところを見ると何かあったらしい。ご愁傷様と心の内で祈っておき、シエロは話を続けることにする。
「俺が極東支部に戻ってきたのもコレが原因なわけですよ。ってことで先に言っておくけど、近いうちに全部隊長ミーティングを行うことになると思うから、そのこと胸の内にしまっといて。そして、ハカセはすっげぇ忙しくなること覚悟しといて」
「・・・もう俺はつっこまんぞ」
ソーマはややげんなりした表情で言う。どうやら反応すれば反応するほどからかわれる事に気付いたらしい。少しつまんないなとシエロは思いつつ、真面目な表情を崩さす続ける。
「何度か言うようだけど詳しくは今ここでは話せないのさ。今言うと混乱するかもしれないからな~。ただ・・・」
「ただ?」
「間違いなく今回の件は、今まで関わってきた案件以上に最悪な事件になるだろうってことは言っておく」
覚悟しといてとシエロが言うと、その場にいる全員が唾をゴクリと飲んで固まる。先程までの明るい感じはまるでないシエロの表情は、恐ろしい凄みと言葉通り最悪なことが起こっているのだということを物語っていた。
一行はそれ以降会話はせず、まっすぐにエントランスめがけて歩いて行った。一行が歩いて行った後ろに続く道は真っ暗に沈んでいて、
まるで何かの巨大な生物が口を開き一行を飲み込もうとしているかのようだった。
「いざ帰ったぞ、極東支部!!」
エントランスに入り、受付のロビーにたどり着くなりシエロは両手を挙げて言った。久しぶりに見る支部内は様々な変わりようをみせ、特にターミナルの横に作られているラウンジを初めて見るシエロはうひょーと関心を覚える。
そんな目立つ行動をしたせいか、数年前からこの支部にいたものはシエロの存在に気づき次々と集まってきた。
「おお、久しぶりだな第1部隊隊長!!なんだなんだ、帰ってくるなら一言言っておいてくれよ!!」
「いや、もう俺第1部隊隊長じゃないから。そっちは相変わらずだな、タツミセンパイ」
「うぐっ、やめてくれよ。お前にセンパイなんてつけられると、背中がぞっとするぜ」
さむさむと、両腕で両肩を抱く防衛班第2部隊隊長の大森タツミ。いちいちオーバーアクションなんだよと、シエロは呆れ半分懐かしさ半分で微妙な笑みを浮かべる。この性格はどうにかなんないのかと思っていると、隣から諦めろと声をかけられた。
「あいつの性格は治らん」
「おっ、ブレンダン。元気なようで何よりだ」
「そっちもな。何かより貫禄が出た感じじゃないか?そんな忙しかったのか?」
「まぁ・・・ね」
フッと影を落として笑うシエロ。深くは聞かないほうがいいのかなと、同じ第2部隊のブレンダン・バーデルは空気を読んでそれ以上何も言わなかった。しかし、久方ぶりの戦友との再会に嬉しそうな笑みを見せる。
「お、お久しぶりです。救助の件はありがとうございました」
「お、伝説の第1部隊隊長のお帰りじゃんか!!また美味しい儲け話が来るかもな」
フランクに話しかけてくる第3部隊所属の小川シュンに、おどおどした喋り方で話しかけてくる現在は第4部隊所属の台場カノン。銃を持つと性格が変わるのは健在なのかなと、シエロはそんなことを思いつつ久しぶりと話しかける。
「っていうか、伝説は止めろ伝説は。何か殉職したみたいだろうが。それと、まだ儲け話って言ってんのかよ小川は」
「別にいいだろ?こっちだって命張ってんだから、儲けがある方が嬉しいじゃんか」
「ハハハ・・・で、アホアホコンビの片割れはどこ行ったんだよ」
「あ、あの・・・カレルさんはいま任務でいませんけど、3日もしたら戻るんじゃないかと」
「アホアホコンビで通じるってことは・・・変わってないのか?」
シエロに言われて気まずそうにカノンは視線を逸らす。それでだいたい察したのか、シエロは乾いた笑みを浮かべバカは変わらずかと両手をわざとらしくあげる。アホアホコンビと呼ばれたシュンは1人で騒いでいたが、シエロは無視する方向で決めていた。
他にはだれかまともな奴はいないのかねと、若干肩を落とすシエロにポンポンと後ろから肩を叩く者が1人。振り返ると、そこにいたのは神機整備班に所属する整備士である楠リッカの姿があった。
「久しぶり、元気にしてた?」
「ん?まぁ、元気じゃなかったら五体満足じゃないんじゃない?」
「そういうこと言ってんじゃないよ。病気とかしてなかったかってこと。それと、ちゃんと神機の手入れとかしてるの?整備怠ってると、大変なことになるんだからしなきゃだめだよ」
「それはわかってるさ。大丈夫、これでも神機に関しては人一倍詳しいし気を使ってるつもりさ。まぁでも、久々に整備お願いしていいかな」
フッと笑って、シエロは携えた神機をリッカに渡す。受け取ったリッカはホントかなぁといいつつ、手早く細かに神機のチェックを行い出す。そして2分もしないうちに見終えたのか、ふむと頷いて神機を点検を終える。
「手入れはキチンとしてるみたいだね。まぁでも、細かい点検がてらこっちで預かるから3日は使えないと思って」
「了解。しっかり頼むぜ」
サムズアップして任せるシエロ。これで手元に残ったのは榊へ渡すアタッシュケースのみとなる。とりあえず榊はいるのかなと、受付で事務処理を行っているヒバリに確認を取ることにした。
「改めてお久しぶり。さっきはありがとうね」
「あっ、シエロさん。それはこっちのセリフですよ、任務ご苦労様です」
「うむ。で、いまネコはか・・・ゲフンゲフン。支部長は今支部長室にいる?渡したいものがあるんだけど」
「支部長ですか?ちょっと待ってください」
言うなり、ヒバリは手馴れた動作でキーボードを叩く。10秒としないうちに確認を追え、支部長の在室を確認すると在室のようですとシエロに告げる。それを聞くとシエロはよしと、下に下ろしたアタッシュケースを持ち上げ支部長室に向かう。そのあとをアリサが追おうとしたが、すぐに戻るからと言って1人で赴く。
5分としないうちに支部長室の前にたどり着いたシエロは、コンコンとドアをノックしてから入室する。中には忙しなく指を動かしてキーボードを叩く榊の姿があり、シエロの姿を見るなり立ち上がってシエロの元にやってきた。
「やぁ、随分久しぶりだね。リンドウ君に続いてシエロ君まで戻ってきてくれて嬉しいよ」
「仕事が辛くなるのは俺たちなんだけど・・・って、そうじゃないそうじゃない。再会の挨拶はこれくらいにして、さっさと本題にはいらせてもらいますよ」
小さくため息をついて、シエロは持っていたアタッシュケースを机の上におく。それを見た榊は、あまりにも厳重に封されたアタッシュケースを見て目を丸くした。
「随分と物々しいね。そんなに危険なものでも入ってるのかな?」
「いや、入ってるのはアラガミのコアなんだけどね。だが、これを解明しないことには大惨事が起きかねないというわけなんですよ」
「大惨事?また随分と嫌な予感がするねぇ。君は一度お祓いでもしてもらったほうがいいかもしれないよ?」
「ゴッドイーターに言う言葉じゃないでしょ?ソレ」
そうかもしれないねぇと朗らかに笑いつつ、榊は目だけは笑っていなかった。中身がアラガミのコアと聞いて、一体どんなものなのやらと首をかしげる。
「いちよう、資料もケースの中に入ってるけど中身を見ても暫く周りには広めないでくれよ?近々部隊長ミーティングを行いたいと思ってるから、せめてその時までは」
「わかっているさ。じゃあ、拝見させてもらうよ」
「了解」
シエロはポンと、榊の手のひらにアタッシュケースの鍵を載せる。全部で3つほどの鍵で、それぞれを鍵穴にさして封をとくと中身を取り出す榊。アタッシュケースの中身はアラガミのコアが3つばかりと、薄い紙の資料が納められていた。
榊はコアを一瞥すると、拝見するよと一言言い資料の方を手に取る。そして資料を読み進める榊に、シエロは説明を付け加える。
「全部読んでもらえばわかると思うけど、相当ヤバイ奴でね。おまけに発見して討伐したのがつい最近の事で、まだろくに情報も得られてない状況だが・・・」
「・・・・・・確かに、これが本当だとしたら相当マズイ状況だね」
「資料に書かれていることは全て事実さ。俺もこの目で確かめたし、この手で殺ったんだから。正直、もう絶対やりたくないさ。アラガミを討伐するならともかく」
そこで一旦言葉を切り、シエロは胸のポケットからタバコを取り出し1本を咥える。それから手早く火を点け、大きく最初の一口を吸うと鬱憤を吐き出すかのように大きく息を吐き出し、
「同族殺しなんて・・・な」
思い出すのも胸糞悪くなる事実と言葉を吐いた。榊も元から細い目をこれ以上なく細めて表情を強ばらせ、既に1度読み終えた資料のある一部分に視線を落とした。
『新型アラガミ 第0種接触禁忌 シャカ
能力:神機遣いへの特殊攻撃による洗脳』
極東支部に再び最悪な事件が降りかかろうとしていた。
第2話終了です!
お気に入りしてくれた方々はありがとうございました。
そして第2話の不手際はすいません次からはないように気をつけますのでよろしくお願いします。