GOD EATER 荒廃した大地の果てで   作:miker7

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第4話です。予定より遅くなってしまいました、すいませ~ん(泣き)


第4話 部隊長緊急会議

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、とうとう来ちゃったかこの日が」

 

 

憂鬱だと、シエロは紫煙を思い切り吐き出した。その隣にはいつもの仏頂面を更に険しくしたソーマが、壁に背中を預けて立っていた。手にはシエロから榊に渡され、更に詳しく改変された例の新種アラガミについて記載された資料を手に持っていた。

 

 

既に何度も読み返された跡があり、まだソーマの手元にわたって2日も立っていないのにやけに汚れや紙の傷みが見て取れる。

 

 

「これから会議を行うわけだが・・・もう何もかも忘れてビール飲んで寝たい」

 

「思考がリンドウに似てきてるぞ、お前。まぁ、気持ちはわからないではないがな」

 

「俺はいち早く俺の苦労を共有してくれる仲間がいてくれて嬉しいよ。野暮なこと聞くようでなんだけど、コアのほうはどうなってるんだ?何か進展でもあった?」

 

「あればとっくに伝えてる。わかったのは、これ以上ないくらい最悪だってことだけど」

 

 

ソーマはお手上げだと言わんばかりに両手を上げる。そして示し合わせたわけではないが、シエロとソーマは同タイミングでお互いをみやり揃って大きなため息をついた。シエロは短くなったタバコを灰皿に押し付け、わざとらしく時計を見る。

 

 

「そういえばそろそろだったな」

 

「例の神機遣いのことか?」

 

「そうそう。さっき連絡があってさ、といっても2時間くらい前なんだけどちょっと早めに着くって言ってたんだが」

 

「こっちには何も連絡は来てないぞ?何かトラブルでもあったんじゃないか?」

 

「・・・・・・ま、いっか。問題があれば改めて連絡が来るだろうし、アリサが言う通りの人物ならよほどのことでもない限り問題ないでしょ」

 

 

気楽に言ってズボンを叩くシエロ。片方の手をポケットにつっこみ、何も言わず歩き出す。そろそろ会議の時間であるため、憂鬱ながら先に行って待つことにする。そのあとをソーマも無言で続き歩くこと5分程。目の前に迫った会議室の扉をみやり、やはり2人揃って大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレイドル隊隊長沢田シエロとソーマ・シックザール入室します」

 

「失礼する」

 

 

入室の際の挨拶だけは丁寧にこなし、シエロとソーマは会議室内に入る。中を見回すと、既に部屋には大体のメンバーが揃っていた。

 

コウタやアリサを始め、第2部隊の大森タツミ、1年ほど前に昇格し隊長となった第3部隊のジーナ・ディキンソン、第4部隊の真壁ハルオミ、第5部隊のウィルキン・ソーン、第6部隊のウィリアム・キール、第7部隊の藤代レナ、そして「ブラッド」隊の春宮セイジが既に席についている。

 

 

「となるといないのは・・・・・・」

 

「支部長にあのバカだけだな」

 

「リンドウは重役出勤か?時間通りに来なかったら書類仕事をアリサに頼んで増やしてもらおう。支部長はしょうがないとして・・・」

 

 

資料だけでも確認しておくかと、人数分揃えてあるかシエロは1つ1つ確認していく。無事確認を終えて時計を見ると、開始時間2分前だ。これは放送でも入れて呼び出そうかなとシエロが思い立ったところで、会議室の扉が開き残り2名が入ってきた。

 

 

「いや~悪い悪い。ちょっと息子がくずってな」

 

「仕事現場に家庭の事情は持ち込まない。遅れてないからよかったとして、せめて連絡入れるか5分前行動でよろしく。仕事増やすぞ」

 

「うげっ・・・そりゃ勘弁」

 

 

くわばらくわばらと、リンドウはプレートが置かれた自分の席にさっさと座る。シエロとソーマが揃ってリンドウを睨むと、本人は素知らぬ顔をしてそっぽを向いている。ビキビキとシエロの額に青筋が何本か立つが、平常心平常心と心中で呟き怒りを鎮める。

 

 

それから色々と準備をしている榊を見やり、オーケーサインを貰うと咳払いを1つして用意したカンニングペーパーを手にマイクの電源を入れた。

 

 

「えーてすてす。よし、クリアに聞こえてるな。じゃあさっそく会議を始めさせてもらうぞ。今回の会議の主催者であるクレイドル隊隊長沢田シエロだ。先日会った者もいれば初対面の者もいるかもしれないがとりあえずよろしく。次に支部長の挨拶に移る」

 

「今紹介にあった皆ご存知の通り、現在極東支部の支部長を務める榊だ。同じく今日の会議の主催者だ。それじゃあ時間ももったいないし、本題に入らせてもらうよ。今から資料を配るから、それに目を通しながら話を聞いて欲しい」

 

 

榊はそう言ってマイクをシエロに返し、シエロが揃えて置いておいた資料を手に取りそれらを1つ1つ各部隊の隊長達に手渡していく。全員に資料が行き届いたのを確認すると、自分の席に戻り自身もまた資料を開く。

 

 

代わりにソーマがシエロのすぐ傍に立ち、事前に用意しておいたプロジェクターとパソコンの準備を整えシエロにサインを送る。サインを受け取ると、シエロは資料を手に再び話し始める。

 

 

「事態は資料に書いてあるとおり、今回の会議の議題は新種のアラガミについてだ。このアラガミを討伐したのは俺で、名前については悪いが勝手に付けさせてもらった。そして今回、このアラガミについては第0種接触禁忌と新しい危険度の評価をさせてもらった。

 

理由については資料に書いてある通りの理由だ。信じがたいかもしれないが、これは俺の目の間で起きた真実をまとめたものであり嘘偽りのない真実だ」

 

 

シエロがきっぱりと言い切ると、それまで静かだった会議室内が途端に重い雰囲気を醸しだし、そしてその資料の示す真実に騒がしくなった。

 

本来なら咎めるべきだが、シエロはあえて何もしなかった。それくらい資料に書かれている内容が内容だったからだ。

 

 

そして、想定していた通り質問を意味する挙手が即座に上がった。シエロはこれから聞かれる質問をほぼ確信しつつ、手を挙げたタツミを指名する。

 

 

「質問されることはまぁ、そっちもわかってるだろうけどさ。この資料に書いてある洗脳って・・・マジなわけ?このアラガミが俺達神機遣いを操ったって」

 

 

思っていたことと寸分違わぬ質問に、シエロは心の中で絶叫しつつ首だけで頷いて見せる。するとより一層、会議室内が騒がしくなった。

 

これも予想はしていた事態だが、やはりかなり大きな混乱を招いたようだ。とりあえずソーマが大声で静まるように言うと、一旦会議室内は静まり返った。

 

 

流石に集まったのが各部隊の隊長だったからか、事態の収束は早かった。静かになったのを確認すると、シエロは資料に書かれている文字に多少アドリブを入れつつ話し始める。

 

 

「タツミ第2部隊長の言うとおり、このアラガミは俺達神機遣いを操ってみせた。それは厳然たる事実だ、何せ俺の目の前で起こった現象だからな。しかも最悪なことに、本人は操られても自覚症状があるままってことだ」

 

 

「ってことは何?操られてるのはわかってるのに、体が動いちゃうってこと?」

 

「そういうことだコウタ隊長。おかげで、俺は同族殺しの汚名を被ることになってしまったわけだ。最悪なことにな」

 

「ど、同族殺しって・・・つまり、それって神機遣いを・・・」

 

 

それ以上の言葉はいらなかった。シエロはイライラを隠そうともせずに頭を乱暴にかくと、資料を机に叩きつけかねない勢いで手を付いた。そして他のメンバーはコウタの言葉を肯定したシエロと、そうしなければならなかった状況を想像し戦慄した。

 

 

そしてシエロはアラガミに洗脳された同族、神機遣いを殺してしまったという事実を改めて再認識し舌打ちをかくそうともせず思い切り行う。

 

 

「その任務に就いていたのは俺と新人2人で、俺は新人の救援要請を受けて現場に急行した。そして、そこで2人の目の前にきた途端1発挨拶がわりに攻撃されたってわけだ。俺が行くまでは2人じゃなく、洗脳を受けてたのは1人だけだったらしいがな」

 

「リーダーが来た時には、既に2人とも洗脳を受けていて襲いかかってきた。そういうことですね」

 

「おいおいマジかよ。かなりヤバイじゃねぇか」

 

 

タツミの顔が真っ青に染まる。いやタツミだけではない。その場にいる全員が、少なくとも顔色を悪くさせている。中にはその事態を想像しすぎたのか、口元に手を当てて耐えている者もいる。

 

 

シエロは気の毒そうに周りを見たが、気遣っているだけでは進まないと判断し話を続けた。

 

 

「襲いかかってきた2人は意識を保ったままだった。つまり、普段となんら変わらない仲間がいきなり敵になっちまったって状況だ。並の精神じゃ戦えやしないし、どうにか抑えようとしても仲間を気遣ってばかりだとアラガミ本体に叩かれる。実際、俺以外に交戦した部隊が4部隊ほどあったわけだが全滅した」

 

「・・・マジ?ちょっと冗談だっていってくれない?」

 

「そんな・・・そんなことって」

 

 

セイジもコウタもこれ以上ないくらい顔を真っ青にして否定の言葉を求めるが、シエロは決して冗談だとは言わなかった。それから暫く、気味が悪くなるような静寂がその場を支配する。そんな中、その硬直を破ったのは真壁ハルオミだった。

 

 

「・・・ん?待てよ。じゃあ何か?シエロさん以外は、戦った全員洗脳を受けたってことか?」

 

「いいところに目をつけた。そう、そこが問題だ。実際には全員が全員洗脳を受けたってわけじゃない。部隊は確かに全滅した。だが、洗脳を受けた者については限定されてるのさ。皆ショックで資料に目を通してないみたいだが、ちょっと読んでみてくれ。そこに推論をまとめてある」

 

 

シエロがそう言って指定するページを皆に伝えると、皆は一様に指示されたページに目を通す。そして全員が読み終えたのを確認すると、シエロは水を一口口に含むとそこに書かれている事を読み上げる。

 

 

「洗脳を受けたと思われるのは、未だ実戦経験の薄い新人のみだ。まぁ新人の枠も色々あるわけだが、神機遣いになって実戦に出て約8ヶ月。それに満たないものが洗脳を受けたのではないかと俺は推測する。ちなみにこれは、榊支部長とソーマと俺、3人が1日かけて情報を洗い直して出した結論だ」

 

「まだ調査段階だから詳しいことは言えないがね。シエロくんの証言も含めて推測をたて、調査してみるとほぼ間違いないといえる」

 

「その根拠は何なんだ支部長?8ヶ月だっけ?」

 

「うん、そうだね。シエロ君の話を聞くと、全滅した部隊だが全滅する前に通信でシロエ君も話してたらしくてね。まぁ会話した人物については殆どベテランの人間だったといっていいが、1人だけそうじゃない神機遣いが洗脳を受けていなかったことに気付いたんだ」

 

「で、その人物こそがキーマンだったってわけだ。名前はミーシャ・レスティーナ。彼女は実戦経験が8ヶ月の新人だったんだが、彼女だけは洗脳を受けてなかった。まぁ通信機越しの会話だったし、洗脳がどこまで出来るかわからない以上決め付けるのは危険かもしれないが・・・」

 

 

シエロはイライラした動作でタバコを取り出し火をつけると、落ち着かせるようにしてゆっくりと煙を吸い込みそして吐き出した。それで多少のイライラは解消されたのか、トントンと指を叩くのをやめて続きを話す。

 

 

「多分現状では洗脳できたとしても行動までで、言語とかそういうのは無理だと思われる。あくあでこのアラガミが進化していない現状での話だがな」

 

「そういうことだね。とは言っても、危険なことには変わりはない。ベテランには洗脳は効かないとわかったことはいいが、いつその壁を越えるかわからない以上油断などもっての他だ」

 

「幸いなことにアラガミ自体は大したことがない。ただ厄介な点として神機遣いの洗脳と、これまでのアラガミとは常軌を逸した頭脳の高さって所が挙げられるのかな?そこの所はどう思うかな、シエロ君」

 

「神機遣いを洗脳して自由自在に動かしてることを考えれば、このアラガミは恐ろしい程の精度で人間の精神構造を理解できてるとしか思えない。感情を残したまま操ってるくらいだからな」

 

 

流石にこたえると、シエロは大きなため息をつく。シャカと戦った時は仕方がなかったとは言え、本来は味方である同志を斬ったのだ。

 

ショックがないなんてことはない。特にシエロは仲間を第一に考えて行動する為、実際のところ事件後4日程うつになって過ごしていた。

 

 

それを考えると、今の落ち着き用を考えればほとほと自分の精神構造の図太さにシエロは呆れるばかりだった。

 

 

「とはいえ、いつまでも落ち込んでいるばかりにはいかないし、新人が危険だからといって任務にベテランの人間ばっかりがつく訳にはいかない。

 

幸いというべきか、未だ極東支部の担当範囲内にはシャカの存在は確認されていない。技術班と研究班には全力を持ってこのアラガミに対する対策、及び生態解明に望んでもらいたい」

 

「質問があれば挙手してくれて構わないよ。現状で解る範囲であれば、答えることも可能だからね」

 

「それじゃあ・・・1ついいですか?」

 

 

恐る恐るといった感じでセイジが挙手する。シエロがセイジの方に目を向けると、聞いた内容が予想していた内容を超えていたからか今にも吐きそうな顔をしていた。

 

 

無理もないと思う一方で、これもなれてもらうしかないなとシエロは気にしないことにした。

 

 

「言ってみろ」

 

「では1つ。現状で何でこのアラガミの洗脳がベテランの神機遣いには通用せず、新人といった方々には通用しているのかわかっているんですか?」

 

「いい質問だね。それについてはほぼ解明されたといってもいい」

 

 

榊は何故か嬉しそうに笑い、ソーマに変わってパソコンの操作をしだす。しばらくした後、巨大スクリーンにオラクル細胞についてだの神機遣いとの関係だのという項目が書かれた表示される。それを確認すると、榊は資料を手に持って質問に対する解答を話しだした。

 

 

「君達神機遣いは、一番最初に偏食因子を補給するための腕輪を一番最初に装着したね。その時、今まで体内に存在していなかった異物が入り込み、ショック反応を起こしたことによって激痛が走るわけだが、この洗脳現象についてはそれが密接していると考えてもらうとありがたい」

 

「・・・え~と?」

 

「君達神機遣いは最初から誰でも神機の性能を100%引き出せるわけじゃない。それなりの月日を費やして、だんだんと神機の性能を引き出していけるようになる、つまり時間と神機遣いとしての能力の向上は比例関係にあるといってもいい」

 

 

榊は淡々と事実を語る。その場にいる全員は、真剣な表情で榊の話を聞いていた。中にはコウタのように改めて理解し直したというような人物もいたが、榊はただただ笑みを浮かべているだけだった。

 

 

逆にそれが怖いんだがとシエロは思わないでもなかったが、話の腰を折るのもなんだなとおもったのかツッコミは入れなかったが。

 

 

「このことから、君達の体内に摂取された偏食因子とオラクル細胞、それらはゆっくりと時間をかけて定着していきやがて完全に体に馴染んでいくということだ。更にここで補足させてもらうと、セイジ君たちブラッドの血の力についてはその過程で更に緻密な変化が訪れて、体内の偏食因子とオラクル細胞が進化した結果の能力といえる。

 

だが、完全に定着するまでの期間というのは非常に不安定なものだ」

 

「特に精神状態が不安定な内は、それと相まって変異を起こすことが多い。だからこそ、突然今までよりパニックを起こすようになったり、性格が変わったように臆病になったりする者もいる。これは体内の偏食因子がショックを起こしたことによって、精神にまで異常を及ぼしてしまった結果だ」

 

「何か博士が2人に増えたみたいだ」

 

 

うへぇとコウタが嫌そうな顔をする。ソーマは一瞬コウタをギロリと睨むが、文句は後で言えばいいかと1人納得するとそれ以上はなにも言わなかった。コウタはコウタでそんなソーマの不穏な空気を感じたのか、会議が終わったら速攻で逃げようなどと考えていた。

 

 

そんな2人をスルーして、シエロと榊は話を続けることにした。構っていたら日が暮れてしまいかねない。

 

 

「そしてこの偏食因子とオラクル細胞、それらが完全に定着する期間というのがおよそ8ヶ月。先ほどあった話に付け加えると、8ヶ月の実戦経験があれば大丈夫だというのはこのことからも裏付けできる。

 

洗脳という現象は、この体内の偏食因子とオラクル細胞に何らかの外的要因を加えることで異常を起こさせ、結果洗脳されるという現象をおこさせているんじゃないかと思われる」

 

「この外的要因に関しては、シエロ君の戦闘データと本人の報告でだいたい掴めている。恐らくアラガミの咆哮によって引き起こされてるんじゃないかと思うね。これはコウモリやイルカといった超音波の現象に深く似ているんだよ。実物はもうとっくに絶滅していて見ることはできないが、資料としては残っているんでね」

 

 

比較的容易に比較できたよと、榊は再びパソコンを操作しページを移動した。次に表示されたのは研究の比較表だった。

 

 

「見ての通りだが、アラガミの咆哮のシグナルパターンとイルカやコウモリの超音波によるデータの比較だ。効果は全く別のものであるが、その現象に関しては酷似していることが発見できた」

 

「博士のおかげでここまでわかったんで、とりあえずはこれでほぼ確定と言えるだろう。もっと詳しくコアを調べてみれば、新人でもこの咆哮を浴びても無事でいられる装置を作成できるかもしれない。できなくても最悪対策は立てられる」

 

「どうかな?質問についての解答は以上だが、まだ何かあるかい?」

 

「い、いえ大丈夫です。でもすごいですね。この短期間でこんなにもわかるなんて」

 

 

セイジを含むその場の全員が感心していると、榊は照れくさそうに頭をかいた。そんな仕草を初めて見るシエロは、ギョッと目を丸くして驚いていた。この男も照れるのか、と。

 

 

しかしいつまでも驚いている場合でもないので、シエロは大きな咳払いをすると注目を自分に集めた。全員が視線をシエロに向け、その表情が真剣なものに変わったのを確認してから再び口を開く。

 

 

「とは言っても、これらの情報は現状ではということに過ぎない。他のアラガミ同様、いつ堕天種やそれ以上の進化を見せたアラガミが現れるとも限らない。ここに集まった隊長達はそのことをしっかりと頭に叩き込み、コイツが現れた時に対処してもらいたい。

 

そして現状では確認できていないが、もしもコイツが発見された場合には討伐隊として各部隊の異動命令が発令されるやもしれん。そのことを想定して、これからはより一層注意を怠らずに任務に臨んでほしい」

 

「それから、いちようこの件に反しては無闇やたらに広めないことを約束して欲しい。パニックが起きることが予測されるからね」

 

『了解』

 

 

その場にいる全員が敬礼をして了承する。こういうのだけは様になるよなと、シエロはコウタを見て失礼なことを考えていた。隊長としての貫禄が出てきたのはいいことだと投げやりに考えながら、そろそろ会議を終えようかなとその時だった。

 

 

「お~、全員雁首そろえて集合してるわね。結構結構」

 

「はい?」

 

 

いきなりのふざけた発言に、シエロは間の抜けた声を上げてしまう。一体誰がと首をかしげると、先程まで閉まっていた会議室の扉が開かれそこに新たな人影が2つ現れていた。

 

 

「ん?なにか固まってるわね?どうしたのかしら」

 

「それはあなたがノックもせずに入室し、馬鹿な発言をしたからじゃないかしら」

 

「なっ、ヒドイ」

 

 

しょぼんと落ち込む入ってきた内の1人の女性。その隣には落ち着いたというより冷酷な感じの女性が本を持って立っていた。もしかして新しく来た2人なのかと、シエロがそう考えた時アリサがあっと声を上げる。

 

 

「スノーさんにフレイさん!」

 

「え?私たちを知ってるの・・・って、ああ帽子の子じゃん」

 

「アリサ・・・よ。来てそうそうバカ面を露見しないでほしいのだけど姉さん」

 

「うっ・・・妹の態度がつれない」

 

「どうやら着いたようだな」

 

 

ソーマがシエロの隣にやってきて呟く。シエロはポカンと口を開けて立ち竦み、やがて頭を押さえてため息をついた。また変なのがきたなぁと、そんなことを心中で呟く。ただでさえ厄介な話を終えたあとなのに、また変な2人の紹介をしなければならないのかと思うと頭が痛かった。しかしいつまでも放っておくわけにはいかない。やれやれと諦めると、再びシエロはみんなの注目を集めた。

 

 

「あ~、とりあえず注目。一部の人間には伝わってたと思うけど、本日付けでフェンリル極東支部に配属されることになった2人の神機遣いを紹介する。見てのとおりそこの2人のわけだけど・・・紹介ヨロシク」

 

「うぇ?おっとっと」

 

 

シエロがマイクを放り投げると、2人の内の騒がしい方の1人がマイクを掴んだ。危ないなぁなどと言いながら危うげなく掴んだ1人は、わざとらしくマイクテストなどを行いしゃべりだす。

 

 

「いま紹介にあった通り、今日からこの極東支部に配属されることになったフレイ・テスタメントです。ここは最前線の支部ということなので、皆さんの足を引っ張らないように頑張りま~す」

 

「今の騒がしい姉の妹のスノー・テスタメントよ。あなた達に期待することは特にないけど、足は引っ張らないでちょうだい」

 

「・・・えっと、ツッコミ所満載な自己紹介ありがとう。みんなもそれぞれ自己紹介を済ませておいてくれ。面倒事はごめんだから手短にな」

 

 

正反対な2人に固まる一同を差し置いて、シエロは問題が起こらないうちにさっさと締めることにする。正直姉の方はともかく、妹のスノーの方は問題起こしそうだなとシエロは心のメモ帳にチェックを入れる。

 

 

とはいえあまりこの2人に関わっている暇はないので、シエロはさっさと荷物をまとめて支部長室に戻ろうかなと退散しようとするが、その目の前に無表情でシエロを睨むように見据えるスノーが立ちはだかった。

 

 

「え~と・・・何か用か?」

 

「あなたが噂のクレイドルの隊長のシエロね?」

 

「!!へぇ・・・案外ちっこいね」

 

「おいコラ、いきなり喧嘩売ってんのか」

 

 

ぶちっと軽く沸点を飛び越え、シエロはコンプレックスを刺激され憤る。確かにシエロは男性にしては低身長で、決して背が高いとは言い難かったが初対面の相手にいきなり言われる筋合いはなかった。

 

 

ソーマが止めるのにも関わらず、仮にも女性なのにも構わずフレイの胸ぐらを掴み上げた。一方で、掴まれたフレイのほうはカエルが潰れたような声を上げてシエロの方をタップする。その内見ていられなくなったソーマとコウタが止めに入ると、渋々といった様子でシエロは手を離すが呪い殺すような視線はやめないままだった。

 

 

フレイはわざとらしく怯えるふりをすると、スノーの後ろにそそくさと回り舌を出して「ごめんごめん」と謝る。全然誠意が感じられなかった。リンドウはそんな2人を見てやっちまったなと言わんばかりに、頭をかきながら笑っている。そんな状態を破ったのは、フレイの妹であるスノーだった。

 

 

「いい加減にしてくださいバカ姉。来てそうそう問題を起こすなといつも言ってるでしょう?」

 

「ぐへっ・・・スノーそれきついから」

 

「馬鹿な姉には制裁が必要ですから」

 

「相変わらず厳しいな~。ま、いいか。ごめんね~シエロ君。きたばっかでテンション上がっちゃって」

 

「ぜ・・・ぜんぜんんん?気にィ・・・してないから~?大丈夫デスヨ」

 

 

思いっきり気にしてんだろと、ソーマは喉まででかかった言葉をシエロの恐ろしい表情をみて引っ込めた。コウタも触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに、そっぽを向きながら口笛を吹いてごまかしていた。

 

 

そんな状況を見て先が思いやられるとスノーは首を振ると、支部長である榊の方に向かって歩き口を開く前に小さくお辞儀をする。

 

 

「騒がせて申し訳ないです。とりあえずこの場での挨拶はこれで終わりとさせていただきます。都合が合うようでしたらこのまま支部長室に伺いたいと思うのですが・・・」

 

「うん、そうだね。いろいろと手続きがあるからその方がありがたいね。シエロ君とリンドウ君も一緒に来てくれるかな?」

 

「わかりました。シエロは責任もって連れてきます」

 

「お前は俺の飼い主か」

 

 

言ってヤクザキックをリンドウにかますシエロ。攻撃を食らったリンドウは情けない声を上げて尻餅をつく。シエロはそれでも怒りが収まらない様子だったが、平常心平常心と声に出してブツブツと呟くと飲み物買ってくると告げて一旦部屋を出て行く。

 

 

そのあとを追うようにしてリンドウが出て行くと、支部長は気まずそうに咳払いをいくつかするとフレイとスノーに声をかけて会議室を後にした。そしてその場に残る静寂。暫くの間誰もがその場を動かなかったが、そんな中タツミがぽつりと呟いた。

 

 

「・・・一体、何だったんだ?」

 

 

結局、その言葉に答えられたものは誰もいなかった。そして、良い事なのか悪いことなのか会議室中に漂っていた負の念は突然の珍妙者の登場によって吹き飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぉおおおおおおお、な・ま・い・き・だ~!!!」

 

 

憤怒の念一色にその表情染めたシエロが、まだ中身入りのアルミ製の飲み物を凶悪な握力で握り潰し頭をガンガンと壁に叩きつけていた。後ろに居るリンドウはどうしもないなと、ベンチに座ってタバコを吸っていた。

 

 

会議室から出て今いる休憩所にたどり着いてから既に10分が経過しているが、さっきからずっとこの調子である。唯一の禁句である言葉を吐かれて腹が立ったのはわかるが、いささか見ていて恥ずかしいとリンドウは呆れるばかりだ。辺りの2人を見る目がかなり痛かった。

 

 

「ここまでの屈辱は生まれて初めてだ・・・おのれ・・・あのアバズレポニーテール・・・もはや名前でなど呼んでやらん!!あいつは今日からズレテールだ!!」

 

 

「ぶほぉっ!?」

 

 

いきなりのトンデモ発言にむせ返るリンドウ。一度湧いてきた笑いは中々収まらず、しばらく肩を震わせていたがやがてフレイを擁護するようにシエロを諭しだした。

 

 

「まぁでも初対面だったんだ。1度くらい許してやれよ、な?」

 

「お前はあふぉなのか?あいつの目を見て言ってみろ」

 

「は?何か気付いたのか?」

 

「気付いたよ、ああ気付いたよ。あのズレテール俺を見て謝ってるときでさえ目が笑ってやがった。絶対悪いなんて思ってない。後で覚えてやがれ」

 

 

絶対復讐してやると、シエロに憧れているものには絶対見せられない姿を晒すシエロ。リンドウはだめだこりゃと諦めて短くなったタバコを灰皿に押し付けた。それから暫く不気味な笑い声を上げていたシエロだったが、唐突に真面目な表情になってタバコを1本吸い出す。

 

 

あまりの豹変ぶりにいつものことながら驚かされるリンドウだったが、こりゃ何か気付いたのかなと自身も新しく1本のタバコに火を点ける。それから一際大きく息を吸い込んで吐き出すリンドウの姿を見て、まるでその時を待っていたかのようにシエロが真面目な口調で話しだした。

 

 

「それにしても・・・あの性格はともかく、あの2人相当やるな。纏う空気が半端じゃなかった」

 

「あ?そうだったか?そりゃまぁ変な奴らだなぁとは思ったけどよ」

 

「どこに目をつけてんだか。歩き方一つとっても相当なもんだったぜ?その証拠に、俺はあいつらが部屋に入って声を上げるまで気配さえ感じなかった」

 

「・・・・・・そういえばそうだな」

 

「いずれにせよ、何の意図もなくロシア支部が貴重な戦力を回すとは思えない。気をつけといたほうがいいかもな」

 

 

杞憂に終わって欲しいものだとシエロは小さくため息をつく。まだ火を点けて数口しか吸っていないタバコだったが、あっという間にフィルター部分にまで火が迫っていた。

 

 

「嵐の幕開けか・・・・・・ほんと、どうしよ」

 

 

珍しく弱気なシエロの発言。誰も知らない内に、最悪な事態はこくこくと迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 




シエロ君大暴走の回。
本来はもうちょっとシリアスにしようとしたのが、結果2人の登場によってぶち壊されてしまいました。

ここらでいちよう設定資料を作成しようと思います。
できればそちらの方も目を通してもらえるとありがたいです。

ああ、明日は仕事が休みだ!!
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