GOD EATER 荒廃した大地の果てで   作:miker7

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2日ぶりの投稿です。仕事終わってから書いたのでもうくたくた。
文章的にかなり怪しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。


第6話 姉妹の実力、そして惨劇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシア支部からやってきた双子姉妹の紹介と、本部から来訪したロリっ娘の紹介が終わり一段落着いたシエロはその場に残っていた。その場には他にいたメンバーは既に去り、残っているのは部家の主である榊と合わせて2人のみだった。

 

 

部屋を去る際、ルチアがまた部屋に落ちていた紙を踏んづけて転ぶ等の事故を起こしたものの、フレイとスノーは拍子抜けするほど何もせずリンドウはタバコを手に嬉々として部屋を出ていった。

 

 

「で・・・どう思うネコ博士」

 

「ん?何がだね」

 

「とぼけないでもわかってるだろ?ルチア顧問のことだよ」

 

「ああ、彼女のことかい。そうだね、調書を見る限りかなり優秀だということは伺えるけど・・・」

 

 

何かを含ませる榊に、シエロは小さくため息をつく。こういう所が腹黒たる所以なのだと、うんざりして首を横に振るシエロ。

 

 

「どうにも対応が早すぎるとは思うんだが、本部は何を考えてるんだか」

 

「確かに対応が早いというのは同意するね。事が事だけに対応を急ぐのは当然としても、わざわざ顧問である本人が来るというのは少し思うところがある」

 

「通常なら事情を知る調査員を何人か派遣して、本人は設備もしっかりしている本部で研究する方が効率もいい。にもかかわらず顧問本人がくるってことは・・・」

 

「何か他に目的がある・・・そう考えるのが妥当といったところだね」

 

 

榊が不気味にメガネを光らせる。キレる寸前に起こる兆候だが、もう一つ何か腹黒いことを考えている時にも起こる現象だが相変わらず嫌な感じだと内心で悪態をつく。

 

 

ともあれ、シエロだけではなく榊もルチアになにか思うところがあるようだ。それがシエロが考えていることと同じなのかそうでないのかはわからないが、とりあえず改めて説明する必要はないかと無意識にタバコを取り出した。

 

 

「ここは禁煙だよシエロ君」

 

「・・・そうだった。でもなんでいきなり禁煙なんか」

 

「シエロくん、タバコの煙っていうのは吸ってる本人より吸わない周りの人間の方が被害が強いんだよ?副流煙は・・・」

 

「わかったって、だから長ったらしい説明はやめろ」

 

「そうかい?」

 

 

残念だよと嬉しそうに笑う榊。本当図太い神経してやがると、シエロは嫌そうに顔をしかめた。いちよう友人関係を築いているとは言え、こういったところはいつまでも苦手なままだった。もうここにいる必要もないかとシエロは判断すると、両膝を叩いて立ち上がる。

 

 

「おや?もう行くのかい?もう少しゆっくりして行ってくれてもいいんだけどね」

 

「用は全て済んだし腹も減ったからな、任務もいつ入るかわからんし」

 

「相変わらずたい焼きばっかり食べてるのかい?栄養バランスは考えたほうがいいと思うよ」

 

「余計なお世話だよ」

 

 

手をひらひらと振って支部長室を出るシエロ。榊は冗談めいた笑みを貼り付けていた顔をシエロが出て行くまでは続けたが、シエロがいなくなった途端表情を一変させた。

 

 

「・・・さて、また面倒なことになったものだ。彼女が来たことが吉とでるか凶とでるか」

 

 

いずれにせよ騒がしくなりそうだねと、榊は両肘を机について顔を下に向けた。そこには乃木坂ルチアの詳細な調書が広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~また凄いのが一緒に来たねスノーちゃん」

 

「ちゃん付けは止めて欲しいと言ってるわよね姉さん」

 

「いやいや、その振り上げている拳を下ろしてください妹様」

 

 

ささっと3歩後ろに下がってホールドアップするフレイ。スノーはそんな姉にゴキブリでも見るかのような視線を向け、無言のまま先を歩き出した。フレイはそんなスノーを恐る恐るみながら、一定の距離を保って歩き出す。

 

 

姉妹の立場が逆転しているがフレイは何も言わなかった。普段からのことだから何も言わないのか、それを認めているのかわからないがシエロに喰ってかかった時のような行動はしない。

 

 

「それにしても、あのルチアって顧問・・・なんかものすごく馬鹿っぽかったね~。結局出て行く時もドジやってたし」

 

「姉さんと同種ってことでしょ?」

 

「ちょ、ちょっとそれ酷くない?流石のお姉ちゃんも傷つくんだけど・・・」

 

「冗談よ。それよりもあの顧問、気を付けたほうがいいかも知れないわ」

 

 

スノーはピタリと両足を揃えて止め、サッと後ろを振り返った。両腕を頭の後ろで組んでとぼけた顔をしていたフレイだが、スノーの真剣な表情を見てスっと表情を一変させる。そんなフレイの様子を見て満足したのか、スノーは小さく頷いた。

 

 

「あの女からは嫌な気配を感じたわ。見かけに騙されると、いつか思わぬところで足元を掬われるかも知れない」

 

「警戒するのはいつものことだけど、今回は念入りにってことね。私からしたら、あの支部長も随分といい性格してそうだなって思ったけど」

 

「あの人は見た目もうさんくさそうだし、見るからに何かあるって感じだけどそんな怪しいことを考える人間ではないと思うわよ。残るはあの2人だけど・・・」

 

「沢田シエロと雨宮リンドウね。さらっと独立支援機構なんて組織を立ち上げて、まだ設立して数年だっていうのに噂はこっちにまで届いてたし行動は善意的。怪しいところはないでしょ?」

 

「そうね、あの2人はいい意味でも悪い意味でも裏はないと思うわ。むしろ、信用という意味では一番置けるかも知れない。特に沢田シエロ」

 

 

彼は中々ねと、スノーは珍しく笑みを浮かべて言う。フレイは小さく口笛を吹き、しかしシエロの言葉を思い出して嫌そうに顔をしかめた。まだ先ほどの事を根に持っているらしい。

 

 

文句を言ったのはお互い様だろうにと呆れるスノーだが、口に出すとまた話が進まないので口は出さなかった。代わりに鋭いケリをフレイのすねに叩き込んで悶絶させると、わざとらしくため息をついてフレイの目の前に立つ。

 

 

「兎に角、くれぐれも馬鹿な真似は謹んでください。あなたのせいでまた本部に呼び出しを食らったり、軍法会議処分になるのはごめんですから」

 

「い、イェッサー。気をつけます」

 

「よろしい」

 

 

いい子ですねとフレイの頭を撫でるスノー。完全にバカにされているのだが、何故かフレイは息を荒くして嬉しそうに感動していた。周りの者からみれば完全に変態か、嬢王様と犬だった。シエロに見られたらバカにされること確定である。

 

 

そのまま10秒ほどフレイで遊んでいたスノーだったが、通路に響いた足音を聞いてフレイ共々何事もなかったように揃って並んで歩き出す。流石に人目を憚るくらいの常識はあるようだった。

 

 

「・・・げっ」

 

「むっ」

 

「シエロ少佐でしたか」

 

 

歩いてきたのはシエロだった。シエロとフレイは早速お互いに顔をしかめ、ぴりぴりした空気が流れる。やはりこのまま一触即発かと思われたが、意外にも2人とも一瞬で冷静になると同時に笑みを浮かべた。そんな2人の態度に、特にフレイが冷静になったのが意外だったのかスノーが目を丸くしていた。

 

 

「まぁ、いつまでもお前といがみ合っていても仕方ない。俺は大人だからな、妥協してやろう」

 

「ええ、そうね。お互い結構偉い立場なわけだし、いちいちいがみあっていても周りの人間の評価が下がるだけ」

 

「ああ、あまりバカな口喧嘩ばかりしていたらバカだと思われるからな。と言っても、お前は単細胞だし直ぐにボロが出るだろうが」

 

「そうね~、私バカだから私生活でもアナタに迷惑かけちゃうかもしれないわ。例えば飲んでた缶ジュースとかこぼしてあなたにかけちゃったり」

 

「ハハハ、言うね~」

 

「うふふ、そっちこそ~」

 

 

全然冷静ではなかった。一瞬でも信じたスノーは、蛆虫どころかゴミでも見るかのような視線をフレイに向ける。するとフレイは何かを感じ取ったのかビクリと体を震わせ、急にガクガクと震えだす。

 

 

いきなりなんだとシエロはフレイの目線を追うと、スノーが物凄い目をしてフレイを睨んでいるのを見て大体を悟った。そしてその力関係を察すると、心のメモ帳にフレイの弱点はスノーと刻み込む。

 

 

「まぁいいや、ちょうどいいかね」

 

「な、何よ。用があるならさっさといいなさい、あなたと話してるとスノーち・・・スノーが怖いんだから」

 

「取り繕うの遅ぇよ。ちょうどイイってのは、お前らにうちのメンバーを紹介しておこうと思ってな。いちよう会議室に全員集まってたけど、あの時はあんま時間なかったからな」

 

「そういうことですか、わかりました。わざわざありがとうございます」

 

「じゃあラウンジへ行こうか、みんなそこにいるって言うしそろそろ昼だからな。今日はこっちへ来た引越し祝いって事で、俺が夕飯をおごってやろう」

 

「ありがとうございます」

 

 

スノーは心なしか嬉しそうに礼を言う。シエロは少し拍子抜けするが、フレイを相手にするより楽だなと頷く。そのフレイはというと、奢られるのは屈辱だがスノーには逆らえないとでも言うかのように悔しそうな顔をしていた。

 

 

そんなフレイの表情を見て少しだけ優越感に浸ると、シエロはスノーの頭に手を置いて軽くなでた。

 

 

「なっ」

 

「あばばばばば」

 

 

頭を撫でられ驚くスノーと、よくもそんな恐ろしいことをと青ざめるフレイ。シエロはそんな2人の反応に若干訝しみ、しかしあまり気にしないことにしたのか行くぞとだけいい、そのままラウンジに向かって歩き出す。

 

 

「あ、あの・・・スノーちゃん」

 

 

恐る恐るといったふうに、フレイがスノーの顔を覗く。下手なことを言ったら殺されるかなと、そんなことを考えるフレイだったがスノーの表情を見るなり、ギョッと驚きの表情をして固まった。

 

 

いつも冷淡で口を開けば毒しか吐かないスノーが、その真っ白な頬を赤く染めて下を俯いていたからだ。言うなれば、普通に照れている。

 

 

「ば、バカな・・・・・・フラグがたっただと」

 

 

とりあえずそんなバカな一言を聞いたせいでスノーの意識がスっと戻り、いつもの冷淡な表情に戻るスノー。それを見た途端、フレイの表情がサッと青褪め死期を悟った。

 

 

「姉さん?」

 

「ハイ、私死ぬんですね?わかります」

 

「そうですか?では」

 

 

死んでくださいと、ものすごくいい笑顔を浮かべるスノー。それが記憶が途切れる前に見たフレイの最後の記憶だった。目にも止まらぬ早さでスノーの右手が伸び・・・そこから先の記憶はフレイには残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・まず一言いい?何があったの」

 

 

ラウンジに入ってすぐ、シエロは途中でなぜかついてこなくなり大幅に遅れてラウンジに入ってきたスノーとフレイに言った。正確にはフレイの首根っこを掴み、ラウンジに引きずって入ってきたスノーに言ったが正解だ。

 

 

廊下の惨劇が起きて以降、フレイは気絶したまま意識を取り戻していなかった。尤も、その自体を知っているのもスノーだけだが。

 

 

「いつものことなので気にしないでください」

 

「いつものって・・・」

 

 

支部長室での出来事を思い出し、シエロは遠い目をして頷いた。大方フレイがドジを踏んだのだろうと納得し、話が進まなくなるのでそこについてはつっこまないことにする。

 

それじゃあさっさと皆の紹介でも始めようかねとシエロが頭をかいたところで、スノーがクイクイとシエロの服の袖を掴んだ。

 

 

「ん?何だ、先にトイレにでも行きたいのか?」

 

「違います、女性にそんな事を聞くなんて死にたいんですか?」

 

「すみません」

 

 

シエロはスノーの冷酷な視線を受けて速攻で頭を下げる。心なしか、その場にいた女性陣からの視線が痛かった。

 

 

「話を戻します。先程は何故あんなことをしたのですか?」

 

「あんなこと?何かしたか俺?」

 

「・・・ハァ」

 

「なぜそこでため息をつく!?」

 

 

あからさまに呆れているスノーに、シエロはガーンとショックを受ける。本気で分からないのかとスノーはさらに呆れるが、これがシエロの人柄なのかとスノーは何となく察しそれ以上は何も言わなかった。

 

 

代わりにシエロは何が何だかわからず悶々とする事になるが、わからないことを気にしすぎるのも良くないなと5分もすればそんなことは忘れることにした。

 

 

「まぁいい、とりあえずはそこのバカを・・・起こさなくてもいいかな」

 

「そうですね、起こすとうるさいですし」

 

「いやいや、仮にも姉なのに酷くない!?」

 

「チッ・・・起きたんですか?おはようございます姉さん。心配したんですよ」

 

 

思い切り舌打ちをしておいて、しかもアッサリ嘘を吐くスノー。フレイはフレイで記憶を失う直前のことを思い出し顔を真っ青にすると、取り繕うようにスノーのご機嫌を取ろうと必死になっている。

 

 

目の前で見ているとものすごく哀れだなと、シエロは若干可愛そうな目をフレイに向けた。それからこのままでは話が始まらないと悟ると、スノーとフレイの間に仲裁入った。

 

 

「はいはい、お話はそこまでね。さっさと本題に入ろうか、時間も無駄にはできないんだから」

 

「・・・そうですね。私もお腹がすきました、バカ姉の為に空腹を我慢するのは忍びないです」

 

「やっぱりひどい・・・けど、概ね同意だからつっこまないことにする」

 

「そうしてください」

 

 

呆れるスノーに、フレイは申し訳なさそうに頭を下げる。その時だった。

 

 

「フレイさん!スノーさん!」

 

「およ?もしかしてアリサちん?」

 

「もしかしてじゃなくてもアリサさんですよ。記憶力までミジンコ並みとか、恥ずかしいから止めてください」

 

「・・・なんか、昔のアリサみたいじゃない?」

 

 

いつの間にか近寄って来ていたコウタが、しみじみとコメントする。奇しくも同じことを思ったシエロだが、口には出さなかった。代わりに、そういえば知り合いとか言ってたっけなぁとそんなことを思い出す。

 

 

あまり親しくないと言っていた割には妙なあだ名で呼ばれている所を見るに、予想以上に仲が良いのかとシエロは一人頷く。

 

 

「お久しぶりですねアリサさん。昔のような不安定な感じじゃなくて結構です。トラウマは乗り越えられたんですか?」

 

「え?ええ、4年前にいろいろあっておかげさまで。スノーさんは相変わらずですね」

 

「自分でもこの性格は死んでも治らないと思ってますから。あと姉さんも相変わらずですよ」

 

「うわ酷いよ。でも事実なだけに言い返せない」

 

「ハハハ」

 

 

苦笑するアリサ。どうやらこの姉妹の関係は昔から変わらないようだ。一体どんなふうに育ったらこうなるんだと、シエロもそんなことを考えるようになる。

 

 

「まあ、形式上ですが一様挨拶しときます。スノー・テスタメントです。階級は特佐です、改めてよろしくお願いします」

 

「改めまして、フレイ・テスタメント特尉よ。これからよろしく!!あっ、階級についての説明はそっちの隊長さんに聞いてね」

 

「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。今はクレイドルに所属してます」

 

「聞いてますよ。クレイドルの活躍は、こちらの支部にも届いてましたから」

 

 

その会話を皮切りに、アリサはスノーと話に花を咲かせていた。完全に出遅れたフレイは、楽しそうにアリサと話しているスノーの2人の仲には入れず、とぼとぼと肩を落としてシエロの前にやってきた。

 

 

「何だよ?随分落ち込んでるじゃないか」

 

「うぅ、うるさいわよ。本当はアンタのとこなんかきたくなかったんだから」

 

「じゃあ来んなよ。ってか、さっきまで図々しかったのに随分としおらしい態度じゃねぇか」

 

「わ、私だって花の18歳よ?繊細な所もあるわ!!」

 

「繊細な少女が、この職場で働けるかよ」

 

 

やれやれとため息をつくシエロ。一方でフレイはシエロの言葉に思うところでもあったのか、らしくない暗い表情を浮かべていた。その違和感に気付いたシエロが何か言おうとするが、その前にフレイがパッと表情を再び変えて頬をピシャリと叩いた。

 

 

「まぁいいわ。ともかく、ほかのメンバーを紹介して頂戴!!あんたと雨宮リンドウは知ってるからいいわよ」

 

「んじゃまぁ、俺の隣にいるのが藤木コウタ。俺の同期で、現在極東支部通称アナグラのエース部隊第1部隊隊長で俺の後任でクレイドルメンバーだ」

 

「今俺の紹介サラッと言われちゃったけど、まぁいいか。俺は藤木コウタ、シエロと同じで堅苦しいの嫌いだからコウタでいいよ」

 

「よろしくね~コウタ。じゃあ私もフレイでいいよ。いちようこれでもスノーの双子の姉だから、そこのとこ覚えとくように」

 

「あ、うんよろしくフレイ。っていうか、双子なのにあんま似てないよね」

 

 

しかも妹より立場弱いしと、コウタは笑いながら言うがフレイは空笑いをして誤魔化す。立場が弱いというのは否定できないところが、とても悲しいと思うフレイだった。

 

 

「で、あとここには今いないけどサクヤさんと、向こうにいるソーマとリンドウさんを合わせて、旧第1部隊のメンバーだったのさ」

 

「へぇ、サクヤさんってあれでしょ?調書に書かれてたリンドウさんの奥さんの」

 

「そうそう。子供ができるまでは現役で俺たちと一緒に隊を組んでたんだ。最近じゃ戦闘は無理でも、クレイドルの事務仕事を手伝ってくれてるし」

 

「というか、手伝ってくれなきゃリンドウがデスクワーク進まないんだよ」

 

「なるほどね~。っていうか、デスクワーク苦手そうだもんねリンドウさん」

 

「お前が言うなよ。お前も絶対苦手だろ」

 

 

シエロが白い目を向けるが、フレイは口笛を吹きながら無視を決め込む。この性格といい命令違反とかおこしまくったんだろうなぁと、苦労をかけられたであろうスノーに生暖かい視線をシエロは送った。

 

 

視線を向けられたスノーは感づいてシエロを見返すが、シエロはサッと視線を逸らしてフレイに向きなおった。しかしそんな視線を向けられてスノーが黙っているはずも無く、スノーはアリサといつの間にか会話に加わっていたソーマとリンドウを引き連れてシエロのもとにやってきた。

 

「なんですかシエロ少佐。気持ち悪い視線をこちらに向けて」

 

「いや、悪い意味じゃないよ。ただまぁ・・・苦労してるんだなぁと思って」

 

「何だ、そんなことですか。姉さん関係で苦労するのは当然です、なにせ脳筋ですからね」

 

「ぶ、ぶれない。スノーちゃん、すこしぐらい私のことを擁護してくれても・・・」

 

「ないです」

 

 

ズバンと即答するスノー。フレイはギャグかなにかのように吐血し、その場に膝を着いた。周りにいる者から流石に同情を感じてしまうが、生憎と声をかける者はいなかった。

 

 

「・・・ま、そろそろご飯にしようか。これ以上会話してると何かこっちまで泣けてくるし」

 

「そうだな。うまいものでも食えば気分も変わるだろうし」

 

「というより、これ以上暗くなられてもこっちの気分が落ちてくる」

 

 

ソーマの言葉を皮切りに、その場にいる全員が席に着き出す。フレイも涙を流しながら席に着き、メニューを見て注文を決める。その時だった

 

 

『緊急事態発生!!緊急事態発生!!外部居住区の防壁を破り、小型アラガミの群れが侵入!!支部にいる神機遣いは至急現場に向かい、迎撃に向かってください!!繰り返します』

 

まるでその時を狙ったかのように、緊急放送が入る。放送を聞くやいなや、嫌そうな顔をしながらその場にいるシエロ達は顔色を変えて席を立ち上がる。

 

 

「やれやれ、早速これだ」

 

「ぼやいてる暇はない。さっさと退治して、終わったら飯にするぞ」

 

「・・・・・・そうね。この鬱憤はアラガミに向けるとしましょうか」

 

「姉さんに同意するのはしゃくですが、そうですね。私達の実力を見せるいい機会です」

 

 

現場に向かいましょうと、表情をより一層冷たくしたスノーが声色まで冷たくして言った。いよいよ双子姉妹の極東支部に来ての初陣が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 

アラガミが多数侵入し、死地と化そうとしていた戦場に猛々しい雄叫びが響き渡った。その声は女性のものであるものの、とでも女性の声とは思えなかった。その声の主は、数時間前に極東支部に訪れた双子の姉であるフレイのものだった。

 

 

「おいおい、とんでもねぇな。もう何匹目だ」

 

「しらねぇよ。ただ分かることは、もはやどっちが狩猟者かだとか、どっちが化物だとかわからねぇってことだけだ」

 

 

数えるのもバカバカしいと、ソーマは自分の周りに集まっているアラガミの屍のコアを捕食しつつ言葉を吐き捨てた。その視線の先では、死の嵐とでも言えばいいのか雄叫びを上げながら数秒ごとにアラガミの死体を増やしているフレイとスノーが戦場を跋扈していた。

 

 

数がいくら増えようと関係なく、寧ろ数が増えれば増えるだけその犠牲を出しているようなものだった。あたりはもはや原型をとどめず黒い靄を発生させて消えるアラガミの死体と、アラガミが上げる断末魔の叫びだけでそこに人間が上げる犠牲の悲鳴は存在しない。

 

 

ただひたすら、フレイの殺気と雄叫び、そして大地を抉るどころか叩き割る地響き音とアラガミを叩き切る生々しい肉音が聞こえるのみだ。

 

 

「単純だが・・・いや、単純ゆえに凄まじいな。あいつらの殺り方は」

 

「双子だからかねぇ。息がぴったりだし、全く無駄がない。これで18歳だって?自信無くすぜ」

 

プッとリンドウは先が短くなったタバコを吐き捨てる。そんな動作の間にも、フレイとスノーはアラガミの死体を増やし続けていた。

 

 

もはや2人の前に、守るもの文字はなくひたすらに殺し尽くすという文字しか存在しなかった。苦戦や接戦などという状況は存在せす、ただただ作業とでも言えば良いのかひたすら反復動作で存在する獲物を神機の糧とする、そんな戦い方だ。

 

 

フレイがバスターブレードの重さと破壊力を利用して、アラガミをひと振りで巻き込めるだけ巻き込み轢殺し、打ち漏らした分をすぐ後ろに控えていたスノーがショートブレードで息もつかせぬ高速の連続切りで皆殺しにしていく。

 

 

またあるときはスノーが高速の連続切りでアラガミの動きを止め、大量の数の雑魚をまとめて一箇所に集めるとそこをフレイがチャージクラッシュを叩き込んで皆殺しにする。

 

 

そんな単純作業を移動しながら繰り返してアラガミを駆逐する。そんな様を見て、かつて人類がアラガミに捕食され尽くされる以前に起こったという第一次世界大戦前後、限りない虐殺をしてみせたというドイツ帝国の移動する虐殺アインザッツグルッペン。

 

 

かの双子の部隊に付けられた名前としては、相応しくはあっても誇大すぎるとはとでもではないが言えない働きだった。事実、リンドウやソーマなどは殆どやることがなく、2人が移動したあと湧いた少数のアラガミを駆逐するだけにとどまっている。

 

 

「ハッハハー!!どいつもこいつもノロノロしやがって雑魚がっ!!もっともっとかかってきやがれ!!」

 

「別にかかってこなくてもいいですよ姉さん。そこにいるだけで駆逐対象なのですから」

 

「冗談じゃないわよ!!私達は動かない肉の塊を斬ってるんじゃないわよ?動いて意志を持って、こっちを殺そうとしてる身の程知らずの雑魚神を殺し尽くしてるんだ!!もっと命をかけてこっちに挑んでこないと全然釣り合わないっつーの!!」

 

 

最早姉に対する言葉遣いを完全に忘れて爆発しているフレイ。その口元は殺戮の愉悦に染まり、ギラギラと光る瞳は目に映る動くもの全てを殺害せんかの勢いだった。

 

 

フレイを窘めるスノーもスノーで、それは建前だけのように数だけで言えばフレイよりも多くのアラガミを狩り尽くしていた。

 

 

辺にいるものを全て巻き込んで、命あるものは敵であれば例外なく殺し尽くす。最早そこにあるのは生命の輝きでなく、死の舞踏。さながらトーテンタンツとでもいうべきか。

 

 

少し離れた場所から見ているアリサやコウタでさえ、その戦い方には畏怖の念を抱き体を震わせていた。今のフレイとスノーからは少女らしさを微塵も感じない。いうなれば戦乙女、アマゾネスとでもいうかのようだ。

 

 

そんな時、雑魚があらかた散ったフレイとスノーの目の前に大きな影が地面に現れ、数秒後に上から巨大な姿が振りたった。

 

 

「んぁっ!!ディアウス・ピター!!大物じゃん!!」

 

 

ラッキーと、とてもバスターブレードを持っているとは思えない俊敏な動きでディアウス・ピターに迫るフレイ。近づいてきたフレイを見て怒りの雷球を連続で飛ばすが、野生の本能とでも言うかのような動きでフレイは即座に真横によけ、しかしスピードを緩めずそのまま振り上げたバスターブレードを顔面に叩きつけた。

 

 

「グゥオオオオオオオ!?」

 

 

たまらずディアウス・ピターは絶叫を上げ、大きく体を仰け反らせた。大きな隙ができる。そしてその隙を見逃す双子ではなかった。

 

 

「さっさと死んじゃってください!!」

 

 

フレイ以上の速度で突っ込み前足に高速の12連激を叩き込むスノー。一瞬でピターの足はズタズタに引き裂かれ、黒い靄を吹き出しながら前足が宙を待った。

 

 

前足が切り飛ばされたことで体勢を崩し、まるで土下座するように地面に頭を差し出すディアウス・ピター。そしてそこにはチャージクラッシュのモーションを終えたフレイが待ち構える。

 

 

「終わり・・・だよォオオオオオ!!」

 

 

今度は断末魔の声すら上げる余裕が存在せず、ディアウス・ピターの首が宙を待った。そこですかさずクイックモーションでの捕食を行うスノーが現れ、かつてリンドウを苦しめたアラガミが僅か十数秒の事で始末をつけられる。

 

 

「・・・・・・マジかよ」

 

 

最早感動の言葉しかもれなかった。リンドウを始め、ソーマにアリサにコウタは3人とも声も出せない様子だった。圧倒的な強さと戦闘センス。これらの要素が一挙に見られた今の戦闘は、噂の任務成功率100%という数字が紛れもない真実だということを証明していた。

 

 

正直、この2人がいるだけでかつての第1部隊の戦闘力に優っているとしか思えないほどの戦いっぷりだった。

 

 

「ふぅ・・・でも、やっぱ最前線っていうだけあるね。ここ最近で1番多く敵を狩ったかもしれない」

 

「狩ったかもしれないじゃなくて、狩ったわよ。数にして2人で1000と13体。最近じゃダントツでトップよ」

 

「本当に自信無くすぜ」

 

 

敵わんよとリンドウは新しいタバコに火をつける。最早あたりに敵は存在せず、荒方は目の前の2人に皆殺しにされたことを示していた。ソーマやアリサ、コウタもとりあえずは肩の荷を下ろすように脱力しきっていた。

 

 

「それにしても、本当すごいじゃん!!俺なんてほとんど出る幕なかったし」

 

「まぁ、銃型の神機は基本サポートだし仕方ないじゃん。それに私達2人がでたんだもん、出番がなくて当然よ」

 

神機を肩に担ぎ、首を鳴らすフレイ。身にまとう風格は、リンドウ以上の威圧感を放っていた。

 

 

「それより、シエロ少佐に連絡をとった方が良いのでは?向こうはシエロ少佐と新人の2人しか人手がいなかったはずですし、被害状況と敵の数を考えると向こうの方が大変ではないでしょうか?」

 

「そ、そうですね。確かにリーダーに一度連絡を」

 

 

取りましょうとアリサが言い切る前に、リンドウの通信機がけたたましい音を立てて通信を知らせてきた。突然のことに持っていたタバコを取りこぼし、もったいねぇとぼやくリンドウが通信機の通話ボタンを押した。

 

「はいこちらリンド『今すぐその場を離れろ!!』ってうわっ、何だ!?」

 

 

通信機に出た途端に響いた怒号に、リンドウはビクッと体を震わせた。しかし通信機から響くシエロの怒声に、どうやらただ事ではない事態が起きているのだと理解が及ぶ。

 

 

「どうしたシエロ!!一体何があった!!」

 

『詳しく説明している余裕は、ってうおっ・・・危ねぇ、当たるところだったぜ』

 

「ちょ、リーダーどうしたんですか!!何が起こってるんです!!」

 

『くっ、アリサか。そっちには全員いるのか!?返事はいらない!!全員集まってるならその場をさっさと離れてアナグラへ戻れ!!民間人がいるなら・・・連れて帰れ!!』

 

 

ブオンと神機の風切り音が通信機器越しにも聞こえて来る。それとほぼ同時に聞こえて来るのは、錯乱して何かを叫ぶ人間の声。

 

 

何かとんでもないことが起きているのは確かなようだ。そして恐ろしく嫌な予感が、アリサの胸をせり上がって心臓を痛いくらい締め付ける。

 

 

「リーダー!!何があったのか詳しく教えてください!!」

 

 

アリサが絶叫するように大きな声を通信機器に向けて上げる。しかしその返答は暫くなく、10秒ほどタイムラグを置いた後に返事が返ってきた。

 

 

『じゃあ単純に起こったことだけを教えてやる!!ヤツだ!!会議で話した接触禁忌が出やがって、新人2人ともう1人ッテ・・・くそ、ゆっくり話してる暇もねぇ!!とりあえずそういうことだ!!通信してたら殺されかねんから切るぞ以上』

 

 

ブツっという切断音が聞こえたと同時に、通信の終了を知らせるブザーが虚しく鳴り響く。そしてシエロの言葉に青ざめて震えるアリサ。

 

 

シエロの考えていた最悪の事態が、あっさりと極東支部に襲いかかった。




シエロさん大ピンチかもの回です。
そして無自覚に双子の妹スノーに手を出すシエロ。
ピンチに陥ったのはその天罰か!?という嘘予告をしてみたり・・・すいません、ふざけたりして。
とりあえず次回はシエロさんがピンチをどう乗り越えるかというところですかね。
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