GOD EATER 荒廃した大地の果てで   作:miker7

8 / 10
拙い戦闘描写が入ります。

わー、空き缶投げないで~・・・


第7話 課した命令、課された命令

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、ゆっくり通信している暇もありゃしない」

 

 

クソッと口汚く言葉を吐き捨て、額に溜まった嫌な汗を左腕で拭うシエロ。アリサとの通信をはんば無理やり切らざるを得なかったことに加え、先ほどの攻撃によって通信機器を取り落とし壊してしまったシエロ。

 

 

これで最早応援を頼むことはできないし、支部に知らせる手段といえば腕輪の生体反応と識別信号のみであり状況を伝えるとしてもそれは生死の判断のみだ。

 

 

腕輪の現在位置を把握することは支部に尋ねれば知ることはできるだろうが、応援が欲しいかと言われればシエロは正直欲しくないと答えるだろう。

 

 

「何なんだよ全く。極東支部じゃまだシャカの目撃例は0だったってのに、いきなりそれがパワーアップしたバージョンが出現って反則だろうが」

 

 

物陰に一時隠れ、とりあえず敵の目から逃れるシエロだが余裕は全くと言っていいほどなかった。それも当然だ。何せ、途中から救援に来た新人2人がシャカの洗脳を受けたばかりか、先程まで一緒に戦っていいた第5部隊の副官クラスの者まで洗脳を受けているのだ。

 

 

未だシャカの発見から2週間と経っていないのを考えれば、進化のスピードが早すぎる上に極東で初めて出現したシャカが堕天種クラスの力を持っているとはどういうことか。

 

 

シエロはそんな状況に混乱を受けながらも、冷静に事態を把握し対処しようと目を瞑って考えるが、直ぐにその隙を狙ったかのように上から降ってきた新人の1人がロングブレードの刃を振り下ろした。

 

 

「っおおお!!あっぶないなオイ」

 

 

咄嗟に横に飛んで攻撃を避けるシエロ。更に退きざまに銃型に切り替えた神機で足元を打ち抜き、砂煙を盛大に撒き散らせて目潰しを試みる。

 

 

とりあえずは一瞬の足止めに成功すると、再びバスターブレードに神機を切り替え即座にその場を撤退する。先程から、ずっとこのような攻防の連続だ。

 

 

洗脳されたからといって斬り捨てる訳には絶対いかないし、気絶程度のダメージでは洗脳を受けている為直ぐに起き上がってくるだろうことが予想できる。

 

 

操る対象が意識のあるないに限らず動かせるのかは知らないが、一様物事は最悪な方向に考えていたほうがそれ以上悪くならなくて済む。

 

 

何個目かの廃墟の曲がり角を曲がったところで、シエロは今度は新人ではなくショートブレードを携えた第5部隊の副官フェルナンデスと出くわしてしまう。

 

 

「ちっ、こっちもかよ!!早くシャカを倒さなきゃなんねーってのに!!」

 

「ウルァッ!!」

 

言葉を交わす間もなく始まる戦闘。ショートブレードの鋭く早い斬撃を、横に広い面積を持つバスターブレードを盾のように構えてシエロは受け止めると、そのまま力任せになぎ払いフェルナンデスを突き飛ばす。

 

 

一瞬体勢を崩して後退するフェルナンデスであったが、すぐさまショートブレードを構え直し再び特攻をかける。これまでの戦闘で大体の剣戟のリズムを掴んでいるシエロは、今度は神機を振るわずショートブレードの剣先の軌跡を読んで体勢を低くしてしゃがみこむ。そしてそのまま、カポエイラの要領で思い切り左足をフェルナンデスの顎めがけて蹴り上げた。

 

 

「うぐぉっ」

 

 

くぐもった悲鳴を上げて後ろに仰け反って地面に倒れるフェルナンデス。シエロは油断なく体勢を構え直し、スっと目を細めて5秒程そのままフェルナンデスを睨み据える。フェルナンデスはピクピクと手足を動かすものの、立ち上がれる様子はない。

 

 

どうやら脳に想像以上の衝撃が走り、立ち上がれるほどの気力はわかないようだった。

 

 

「・・・・・・今のうちだな」

 

 

シエロはそれを確認すると、すぐさま腰のポーチから太いワイヤーを取り出してフェルナンデスの両腕を後ろ手に縛り拘束する。若干気が引けるが、こうでもしないと回復した途端動き出し襲われるのは明白だ。

 

 

シエロの予想通り、例え気絶しても動くだろうということはほぼ明白。おまけに洗脳間は、洗脳されたものの意識を完全に刈り取るまでに成長したらしい。それに加え、脳内のリミッターまで外せるようになり洗脳者の身体能力の強化。

 

 

シエロは先程の攻撃を受けきったものの、未だ衝撃のショックを受けて痺れかけている両手のひらを開いたり閉じたりを繰り返し、その感触を確かめなおす。

 

 

幸い、まだまだ完全には痺れてないらしく平時と変わりない反応を起こす両手。シエロは早めに決めるべきだなと改めて決意し、拘束したフェルナンデスの懐から通信機を取り出してすぐさま番号を打ち込んでコールすると、2秒とたたず相手につながった。

 

 

『もしもし!!』

 

 

「アリサか。こちらシエロ、現在洗脳された第5部隊の副隊長を拘束した!!とりあえず一旦こっちに来て、回収頼む。そして回収したら即座に撤退しろ!!」

 

 

座標は送ると、反論を許さず通信を切るシエロ。アリサが何やら言っていたような気がしたが、シエロはそれらを無視してフェルナンデスを物陰に隠しそのままシャカのいる地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー!!応答してください、リーダー!!」

 

「むだだ、もう切れてる。それより今来た座標の位置に急ぐぞ」

 

「っ!!もう、帰ったら絶対文句言ってやります!!」

 

 

通信機を握りつぶさんばかりに握り締め、ソーマの言葉に頭を切り替えるアリサ。それを確認したその場の全員は、返事もなく駆け出し座標の位置に向かって走り出す。

 

 

洗脳されたフェルナンデスを拘束場所へ行かなければ、最悪打ち漏らしたアラガミや未だ拘束できていない新人2人に襲われかねない。

 

 

洗脳された人間の洗脳を解く方法はシャカを倒すことのみ。下手に動いて洗脳される人間を増やすより、シエロが捉えていく神機遣いを回収しシエロの帰りを待つことが今できる最大のチームワークだ。

 

 

心中ではシエロを心配してやまないアリサだったが、自分達がやるべきことを履き違えたりはしない。流石にベテランなだけあって、公私混同はしない。

 

 

「(お願いですから、無事で帰ってきて下さい!!)」

 

「大丈夫だってアリサ。シエロなら絶対無事で帰ってくるよ!!」

 

「当然です!!」

 

コウタの励ましの言葉を流し、アリサは更に走るスピードをあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・くそ、流石にしんどいな」

 

 

シエロは手に持った神機をその場に突き立て、滝のように流れる汗を鬱陶しそうに拭った。アリサ達に通信を入れて既に15分が経つ。シエロは先程もう1人の新人を拘束し、場所をアリサに送ったところだ。

 

 

もはや通話している余裕はなく、休む暇を与えないかのように攻め立ててきた新人2人よって凄まじい速度で体力を奪われていった。とは言え、弱音を吐くわけにはいかなかった。

 

 

残っている洗脳者は新人1人のみ。それならば余程のことでもない限り遅れはとらない。そして対象であるシャカの姿も、50メートル程先に彫像のように立ち尽くしている。シエロの存在に気づいた様子はなく、ピクリとも反応を示していない。

 

 

ここは銃による遠距離攻撃で仕掛けるかと、あまり狙撃には向かないが高威力を持つ自身のブラスト銃を構え、高威力・高射程の特性を持つ神属性のバレットを装填する。

 

 

「くたばりやがれ」

 

 

小さな声で呟くと同時に、銃のトリガーを絞るように引いたシエロ。まっすぐシャカに向かうバレットの弾が、間違いなくシャカの顔面を捉えたと思ったその時だ。

 

 

「ッ!!?」

 

 

ガンっと、固い者に弾が阻まれる音が響きバレットの弾が神機に装着されている盾によって防がれた。気配もなく現れた神機遣いが、シャカを狙った弾を阻んだのだ。しかもその人物は洗脳された残りの1人の新人ではなく、第5部隊紋章を胸に飾った人物だった。

 

 

「(もう1人いやがったのか!?)」

 

チッと盛大に舌打ちをして、とりあえず戦略的撤退をすべきかと判断したその時、ゾクッととてつもない悪寒が背中に走り下がろうとした足を前方に出し、そのまま前に走り抜けるシエロ。

 

 

その背中をゾリっと嫌な音を立てて、後ろから接近した新人のロングブレードの刃がシエロの背中の肉を浅く削り取る。

 

 

もしコンマ数秒でも反応が遅れていれば、背中をザックリと抉られていただろうことを想像しシエロは自分の勘と新人の神機がバスターブレードでなかったことに感謝する。

 

 

もしも新人の神機が重量と破壊力のあるバスターブレードであったら、そのままグシャリと潰されていたことだろう。状況はまさに前門の虎後門の狼だ。新人ならまだしも、眼前の第5部隊のベテランに背を向ければたちまち斬り伏せられるだろう。

 

 

「だったらもう攻めるしかねぇ!!」

 

 

痛む背中の傷を無視して、シャカのほぼ目の前で未だ盾形態に神機を構えた第5部隊の隊員に向かって走り出すシエロ。背中の傷のことと状況を考えて、この期を逸してしまえば状況はさらに悪くなる。

 

 

残り30メートル程度の距離を2秒ほどかけて走破し、既に横に構えていたバスターブレードでそのまま斬り飛ばそうとシエロは真横に神機を振り払う。

 

 

盾形態で神機の攻撃を防ぐ第5部隊の隊員だったが、たまらず真横に吹き飛ばされる。終わりだとシャカを眼前にし、超スピードでバスターブレードを振り上げるシエロ。

 

 

後はそのまま脳天から股下にかけて叩き斬るだけだとシエロがシャカを見据えたその時、シエロはシャカの開いた腹部を見て絶句する。

 

 

「(な・・・んだとォッ!?)」

 

 

第5部隊の隊員の背中に隠れてわからなかったせいか、シエロはシャカの開いた腹部装甲に装填された黒く細い槍を見落としていたのだ。

 

 

おまけにこんな攻撃は、以前戦ったシャカには備わっていなかった攻撃パターンだ。最早射出の準備は整い、槍が音を立てて軋むのが聞こえていた。全速で振り下ろしても間に合わない。

 

 

シエロは時が止まったかのような錯覚を覚え、面のような被り物をしていて表情など分かりようもない筈のシャカの口元が笑みの形を浮かべたのを見る。

 

 

「っそがぁあああああ!!」

 

 

シエロがそのまま神機を振り下ろそうとしたが、やはりそれよりもシャカの攻撃の方が早かった。急所を外れたものの、シャカの槍はシエロの腹部を貫きシエロは痛みのショックで神機を取り落とす。

 

 

遅れてシエロの喉奥から逆流してきた血液がせり上がり、吐き出した血がシャカの顔面に降りかかる。シエロの意識が一瞬飛ぶが、後ろに超接近してロングブレードの切っ先を真上に振り上げる新人の姿が映り込む。

 

 

このままではあと数秒もかからずにシエロの体は両断され、絶命することは必至だった。シエロはその状況に死を覚悟しようと目を瞑りかけたが、咄嗟に走馬灯のように頭の中に浮かんできた4年前リンドウに言った自分自身の言葉を思い出す。

 

 

「(生きることから逃げるな・・・か。自分で命令したことを、自分で守れないなんてんな傑作なことありえないよな)」

 

 

唇を噛み切るかのように噛み締め、シエロは生気を取り戻してギラギラと照りつく眼光をシャカに投げつける。感情があるかのどうかさえ怪しいが、しかしその時にシエロが見たシャカは殺気を叩きつけられ動揺しているかのようにも見えた。

 

 

「死ぬのは・・・てめぇだっ!!」

 

 

バランスを崩し片足を先に地面につけたシエロは腕の遠心力を活かし、そのままシャカを殴りつける。しかしその拳は僅かに遠く、シャカに届くことはない。仮に届いたとしても、ただの拳ではアラガミに対して有効なダメージは与えられない。

 

 

だからこそ、シエロの思惑はそこにはなかった。殴りかかったことによって、そのまま右斜め前に崩れ落ちるシエロ。それは即ち、今まさに脳天唐竹割りをされようとしていたシエロが、攻撃をかわしたことに他ならない。

 

 

そしてシエロがいない以上、その対象は必然と決まってくる。シャカはそこでようやくシエロの思惑に気づいた。しかしそれはあまりにも遅い理解だった。

 

 

咄嗟に後ろに下がろうとするシャカだが、その足をシエロの左腕がしっかりと掴んで動けない。おまけに洗脳したといっても、流石に物理法則までは曲げられない。

 

 

既に振り下ろしかかっている神機を止めようとしても、既に神機は重力に従いシャカの頭上にあった。そしてシャカはそこで目の前の神機遣いの目を直視する。

 

 

するとそこにあったのは洗脳された者の死んだような目ではなく、確かにアラガミを殺すという意志を持った人間の目だった。何故だとかそういったことを最早気にする間はなかった。

 

 

「オ・・・オレタチゴッドイーターヲ・・・・・・ナメるなーっ!!」

 

 

完全に光を取り戻した新人ゴッドイーターの一撃が、シャカの脳天から股下までを思い切り斬り下ろした。体を丁度半分にされ、オラクル細胞の決壊を始め出すシャカ。物言わぬ死体となったアラガミはただただ黒い靄を吹き出すばかりである。

 

 

その光景を目だけを動かして確認し、血に濡れた口元を嬉しそうに歪めてシエロは嗤う。

 

 

「ざまぁ見やがれってんだ」

 

 

そのままシエロの意識は闇に堕ちていく。随分と後方の方からシエロの名前を呼ぶ多数の声が聞こえた気がしたが、シエロはそれには応えず代わりに嬉しそうに表情を歪めて遂に意識をたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー!!しっかりしてください!!リーダー!!」

 

「おい余り揺らすな!!今とりあえず傷口のチェックするから落ち着け!!」

 

「お、落ち着けって!!」

 

「いいから少し頭冷やせ!!シエロなら大丈夫だよ、俺たちに生きることから逃げるなって命令した張本人だぞ?簡単に死ぬわけあるか!」

 

 

大粒の涙を流しすっかり動揺しきったアリサに、リンドウが叱咤して説得する。とは言えリンドウの表情も、決して穏やかではなく両腕には震えが走っていた。リンドウも動揺しているのは同じだ。

 

 

とりあえず焦ってばかりもいられないので、ソーマとコウタは気絶しているシエロの傷口を調べ致命傷を避けていることを確認すると揃って安堵のため息をつく。

 

 

「とりあえず致命傷は避けてるな。この分ならなんとかなるだろ。さっさとこのバカ連れて帰って、医務室に放り込むぞ」

 

「っ!!そうですね、急ぎましょう!!」

 

「了解だ。じゃあシエロは俺が担ぐとして、とりあえずこの刺さった槍はこのままにしたほうがいいか・・・下手に抜いたらそれこそヤバイかもしれん」

 

リンドウはそう言って慎重にシエロを横抱きすると、あたりの警戒をしてその場に立っていた洗脳が解けた新人と第5部隊の1人に声をかける。

 

 

「聞いての通りだ。話は後で聞くとして、急いでアナグラに帰投するぞ。あたりの警戒は怠るなよ、え~と・・・」

 

「第5部隊の四乃森です」

 

「第6部隊のフランツと申します」

 

「オッケー、四乃森、フランツ。遅れないでついてこいよ」

 

 

リンドウの言葉に敬礼して頷く2人。今回討伐したシャカのコア回収も済み、これで後は本当に帰るだけだ。咥えていたタバコをその場にプッと吐き捨て、リンドウは一足早くその場を走り抜けアリサもついでそのあとを追った。

 

 

それを皮切りに、その場にいた全員がアナグラに向けて走り出しスノーとフレイが殿を務める。

 

 

「それにしても、本当に厄介なアラガミね~。話では聞いてたけど、この目で洗脳された者を見て改めて認識したわ」

 

「確かにいい気分ではないし、実際に襲いかかられたらどうなるかってところかしらね。私達は殺すことには特化してるけど、手加減とか得意ではないし」

 

「そうそう。そこらへんを考えてみると、シエロ少佐の事は正直バカにできないっていうか・・・」

 

「尊敬する・・・かしら?」

 

「認めたくないけどね」

 

 

私達にはできない戦い方かもと、フレイは口元に笑みを浮かべていった。スノーはそんなフレイの言葉を聞いて面白くなさそうに口元を歪めたが、シエロに頭を撫でられた時のことを思い出して複雑そうに顔を歪めた。

 

 

そんなスノーの表情を見て、少し驚くフレイだったがあえて今は何も言わなかった。今はともかくふざけている場合でもからかっている場合でもない。

 

 

フレイも洗脳された者を殺さずに無力化し、今回は誰1人として戦死者を出さなかったシエロについては認めていた。正直実力については自分たちの方が圧倒的に優れていて、いくらシエロがやり手だといっても自分には遠く及ばないと思っていたのだ。

 

 

「これは私たちも余裕こいてらんないかもね」

 

「そんなことを考えてるのは、いつだって姉さんだけよ」

 

「ちょ、それ酷くない!?」

 

「事実よ。私は油断なんかしないし、余裕なんて戦場に持ち込まない。目の前の敵をただ容赦なく殺して、圧倒的に皆殺しにするだけ」

 

「・・・・・・そうだね。私たちの役目は、アラガミの討伐。私たちは私たちのやり方でやっていけばいい」

 

「そういうことよ」

 

 

それっきりスノーは口を閉ざした。いつも以上に冷たい空気を身にまとい、味方でさえも警戒させるような冷たい空気を身にまといだした。

 

 

フレイはそんなスノーを見て、いつもはおちゃらけた表情を張り付かせている顔に暗い表情を纏わせた。

 

 

「(変わらないのは、その生き方もか)」

 

「何か言ったかしら姉さん?」

 

「ん?いや何も言ってないよ」

 

 

フレイは首を横に振って否定する。スノーは何かを含ませた瞳でフレイを見るが、結局何も言わなかった。アナグラに帰投するまでの間、双子の間には何とも言えない空気が漂い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シエロが任務で重症を負い、手術を受けて早いこと既に3日。今日も今日とて、朝一番にアリサがシエロの医務室の扉の前で立っていた。とその時、扉の退出音が鳴り中から白衣を着た人が出てきた。

 

 

 

「ドクター!!リーダーの容態は!!」

 

 

医務室から出てきたドクターを見るなり、アリサが鬼気迫る顔で言った。

 

 

「うわっ!?ちょ、いきなり何よ」

 

「いきなりでもなんでもいいです!!リーダーの具合はどうなんですか!!手術が無事終わってもう3日経つのに、未だ面会謝絶状態なんて!!」

 

「えっ?あ、ああシエロ君ね。無事よ無事、面会謝絶期間なんてもうとっくに終わってるわよ?」

 

「はっ!?いえ・・・だって扉にプレートが・・・」

 

 

アリサが唖然とした顔で扉を指差すと、女ドクターは釣られて扉を見てそして固まった。確かに扉にはプレートが取り付けられていて、そこに『面会☆謝絶』と何故か微妙にデコレーションされた文字で刻まれていた。

 

 

女ドクターはひくひくと口元を引きつらせるとズカズカと音を立てて扉の前に立ち、ふざけたプレートをむしり取って膝で叩き割るとノックもせず病室の扉を全開にした。

 

 

「コラァ!!沢田ァ!!勝手に病室にへんなもんはりつけてんじゃねぇよ!!」

 

「・・・ドクター、言葉言葉。もういい加減いい年なんだから、そんな喋り方してたら男の1人もよってきませんよ」

 

「余計なお世話だっ!!」

 

 

バシンと持っていたボードでシエロを殴りつける女ドクター、その名も鶴見美香30歳。医者としての腕は確かだが、人格と性格おまけに生活態度に問題ありで、美人なのに未だに嫁にいけない残念系女子である。

 

 

「そんなに怒らないでくださいよ、傷に響きますから。ん、たい焼きうまい」

 

「勝手に固形物とってやがるし、お前ほんと1回死んでこい」

 

「やだなぁ。死んじゃったら生き返れませんよ。俺は少なくともドクターが結婚するまでは死にませんよ?あっ、結婚できないから無理か・・・ごめんちゃい」

 

「さりげなくディスってんじゃねえよ」

 

「ディスってないでしょ?っていうか、病室は禁煙」

 

 

シエロがそう言いながら、備え付けのデスクに置いてあった灰皿を差し出す。相変わらずドクターとしての自覚が薄いらしい。シエロは意外にもタバコは吸っていないらしく、灰皿は新しいままであった。

 

 

「・・・・・・リーダー」

 

「んっ?なんだ、アリサか」

 

 

久しぶりとそのまま続けようとして、シエロの表情が固まった。いきなり静かになったシエロを訝しみ鶴見はシエロを見て、それからその視線の先のアリサを見て同じく固まった。

 

 

長くなったタバコの灰部分がポロリと灰皿に落ち、ついでに指に挟んでいたタバコまでが落ちる。その瞬間、アリサの怒りが爆発した。

 

 

「なっに・・・やってんですかこのバカはぁああああっ!!!」

 

「うぉおおおおおおお!?耳が、耳が潰れるぅ!?」

 

「うるさいですよ!!それくらい我慢してください!!っていうか、何なんですかあのプレートは!!人が散々心配して、夜も眠れずに枕を濡らしていたというのに!!いざ入ってきてみればたい焼き食べて寛いでるってなんですか!?喧嘩売ってるんですか!?」

 

「お、落ち着けアリサ。仮にもそいつ怪我人だから、あんまり揺らしたら・・・」

 

「大丈夫です!!たい焼き食べながら寝転がってる人ですよ?コレくらい平気です」

 

「・・・ああ、ソウダネ」

 

 

「おいコラ医者ぁ!!」

 

 

あっさりと見捨てた鶴見を、シエロが珍しく本気で睨みつけるがアリサに睨みつけられてうっと大人しくなる。ギギギと音を立てて横を見れば、物凄くいい笑顔を貼り付けたアリサの顔が。

 

 

「(目が笑ってない・・・俺、このままだと殺されるかも)」

 

「リーダー♥」

 

「ハイなんでしょう」

 

「私のお願い、聞いてくれますよね?」

 

シエロに拒否権はなかった。ちなみにこの時のお願いとやらは、また後日判明することになるがそのアリサのお願いというのが、アナグラにとんでもない悲劇をもたらすことをまだ誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん、やっぱまだ一度に3~4人が限度なのかな。まだしょぼわねぇ」

 

 

真っ暗な部屋の一室で、ルチアは唯一の光源であるテスクトップの画面を見てつまらなそうにため息をついた。口にくわえていた棒付きのキャンディが噛み砕かれ、バリボリという音が妙に響く。

 

 

デスクトップに映されているのは、シエロが戦っている映像データだった。一体いつ撮影していたのかと他の人間が見れば思うことだが、生憎とルチア以外の人間はこの部屋にはいない。

 

 

存在するのはルチアのみで、あとはひたすら機材と資料の山とアラガミのものと思われるコアがいくつかであった。

 

 

「数が多すぎれば洗脳が中途半端になって、高い感情値が発生すれば破られて失敗になると・・・う~ん、やっぱまだ実用化には程遠いのかな~。とりあえずコーヒー飲もう」

 

 

普段はかけていないメガネを一旦外して机の上に置くと、真っ暗な部屋にもかかわらずルチアは迷うことなくドリッパーの前までたどり着き、そして手際よくコーヒーを淹れる。

 

 

やはりコーヒーはドリップに限ると、そんなことを考えながらコーヒーがカップに溜まるのを待ち、溜まりきったら砂糖もミルクも入れずそのままブラックのままぐいっと一口啜る。

 

 

「でもまぁ、予想以上にやるわねシエロ少佐も。初めて戦った時は2人も巻き込んで殺したって言ってたのに、結局今回は死者はだしてないし。やっぱ計画の障害になるのはこいつなのかしら」

 

 

ふふっと嬉しそうにルチアは笑うと、机の上に乱雑に積まれた調書のファイルの中から1冊を迷うことなくつまみ出すとペラペラと開き、とある1ページで手を止めてバンっと机の上に放り出した。

 

 

ページに載っているのはシエロの詳細な資料であり、そこにはおよそ出生の頃から現在までの事が事細かに記されていた。

 

 

「例えどのようなゲームでも、ライバルの存在っていうのは必要不可欠よね。でないとゲームは成り立たないし、一方的な勝利ほど虚しい勝利はない。同じ勝利を掴むなら、やっぱり楽しいのが一番」

 

 

くくっと、外見に似合わず妖しく艶のある笑みを浮かべて調書からシエロの写真を抜き出してパソコンに掲げるルチア。

 

 

「あなたはどちらかしらね?沢田シエロ少佐。つまらない敗北者と成り果てるのか、それとも・・・・・・私の希望を粉々に打ち砕いて狂おしいほど欲してやまない敗北の蜜の味を私に与えてくれるのか。さあ・・・勝負の始まりよ?」

 

 

ルチアはこれ以上なく嬉しそうに笑い、パソコンの電源を落としてコーヒーを飲みきると、真っ暗な部屋の中から退出してまっすぐシエロの病室を目指して歩き出す。

 

 

誰もいなくなったルチアの部屋で、外からの光を受けて妖しく反射するアラガミのコアが、不気味そうにひっそりと輝いていた。

 

 

 

 

 




シエロさん負傷するの回でした。
戦闘描写はやはり難しいです。特にゴッドイーターはスピード展開なので、そこのところが上手くかけないというか・・・描写難しすぎwwって感じですね

最後にちょろっとでてきたルチアさん。若干ヤンデレちっくなルチアの目的とはなんなのか。
次回はちょっと明るい話かもしれません。
アリサのお願いがあきらかに!!
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