死んだら天国や地獄に逝ける、そんな事を一度は考えた事がないだろうか?
それとも死んだら魂は違う場所で
死んだ先の事は死んだ本人にも分からない、他の人間だって分からない。
だからこそ生きる事に必死にもなる、生きる事に絶望して自殺する者もいる。
とても
肩で息をしながら先程まで生きていた魔物の首を落とす。
襲いかかる魔物を何十体、何百体倒したか分からない。
手にしていた剣はとっくに使い物にならず、全身に返り血を浴びて気味が悪い。
この世界に
自分を喚んだ召喚者が死ぬまで、召喚の際に課せられた呪いは解ける事は無い。
この世界に来てから何十年、高齢になった召喚者はそろそろくたばりそうだが死ぬ前に自分を殺すのが普通だろう。
積み上げてきた実績、栄えさせた家に対して復讐され根絶やしにされる可能性が高いだろう。
召喚された数年間は殺す事だけを考えていた、けれど召喚者の所の子供を見たときにやはり残忍になれる事はなかった。
死なずにいれたらどこか静かな場所で一息つきたい、それから身の振り方を考えればいいだろう。
「ば、化け物めっ……!」
生き残りの魔物が恐怖に顔を歪めながら、震えた口で言葉を漏らす。
化け物、今の自分に一番似合った言葉を口にされて思わず口元が上がる。
理不尽につれて来られ、理不尽に戦わされ、最後には化け物と言われる。
「っ、くくっ……、そうだ、化け物だ、言われなくてもわかってるさ」
震える魔物を背にして、唯一の生存者を残した戦場から帰路へとつく。
後ろから叫ぶ声が聞こえるが耳障りなので、使い物にならない剣を大きく後ろに投げ捨てる。
運が良ければ避けれる、運が悪ければそれが突き刺さって終わりだ。
「あ゙っ、」
濁ったうめき声と肉が裂ける音、運が悪かったようだ唯一の生存者は飛んできた剣を避けられず戦死した。
可哀想にと心にもない事を思いながら、血まみれの服を脱ぎ捨てる。
「化け物か……さもありなん」
何時になったらこの地獄の様な日々に終わりが来るのだろう。
一抹の不安はある、この環境から脱した所で幸せはあるのだろうかと。
もっと地獄の様な日々が待ち受けて、暗闇の中を歩いて行く事になるのではないかと。
「おやおや、いつも辛気臭い顔しとるなあ……そんなんじゃ夕飯が美味しくないで!」
「
「相変わらず口悪やな!」
頼んでもいない新しい服を片手に胡散臭い道化こと、
飄々とした態度が気に食わないが持ってきた服を掻っ攫って服だけは綺麗にする。
「今日も快勝だね!よっ!」
「いたい、いたいっ」
次に現れたのは可愛らしい仮面をつけた道化、
その後ろに
ティアは肩に飛び乗ってきて血だらけの髪や顔を拭いてくれるが、手加減してないので普通に痛い。
「お前らが来るって事は、何か悪い事でもあったのか?」
ティアを強引に引き剥がし、フットマンに投げつけながら質問する。
空中で何回転しながらフットマンに受け止められたティアは小馬鹿にするように笑う。
「ふふふっ、実はね……実は!!」
「あんたの召喚主の屋敷は焼き討ちされ、あんたは晴れて自由の身になりましたってわけや」
「あっーー!!ラプラス!!アタイが言おうとしたのにーー!!」
「はっ……?」
唐突な事で思考が停止する。
焼き討ちされて全て灰になった、自分を召喚したアイツは誰か知らない奴らに焼かれ死んだ?
自分が殺したかった、殺す理由があった自分が殺せなかった。
自由の身になって、気にする相手ではなくなった筈なのに黒い感情がぐるぐると渦巻く。
これは嫉妬なのか、羨望なのか最早自分でもわからない。
けれどーー
「なあ、ラプラス」
仮面の下でラプラス、ティア、フットマンは笑っている様に見えた。
自分が滑稽だと嘲笑っているかもしれない。
けれど、そんな事を気にする余裕もない。
「自由の身にしてくれた、命の恩人に会いたいんだけどさ……教えてくれない?」
このぶつけようのない感情を、誰かにぶつけなければ生きていけない。
醜い化け物になってしまう前に。
「ええで、教えたるわ」
「じゃあ、ついてきて!」
三人の道化に連れられ、血まみれの戦士は歩いていく。
その先にどんな未来を孕んでいるのかも知らず、衝動のままに進んでいく。
フットマン喋っとらんやん…。