※気分悪い内容になっているので注意してね!
ーー傀儡国、ジスターヴ。
使い物にならなくなったので捨てた筈の魔物、それが今では力をつけて笑顔を浮べている。
何と滑稽な、思わず口にしながら高揚する気持ちを止められずまた笑ってしまう。
利用できる物は何度だって利用する。
価値が無くなれば
「何笑ってるの?」
いつの間にか涙目のティアがクレイマンの覗く水晶を横から眺めていた。
映っている人物を視認すると、ティアも可笑しくなったのか笑いながらクレイマンの方を向いた。
「あははっ!まだ、生きていたんだねぇ!」
「そうです、しかもかなり重要な位置にまでいてくれている……あの時に
ねぇ、そうは思いませんか?
フラスコの小人よ。
「けど、これって別のモノになっているんじゃないの?」
あの時に飲ませた薬、そして魔国連邦での出来事はあの場所に忍び込ませている者に調べさせ、内容を把握している。
クレイマンはティアに一言だけ「大丈夫ですよ」と伝えながら立ち上がる。
「形はどうであろうと、心は変わりません。少しでも心にヒビが入れば、あとは思うがままですよ」
心臓を掌握して従わせるように、心を掌握して傀儡にしてしまえばいい。
そしたら、名前も、記憶も、自我も、全てを捨てさせればいい。
今から自分の元に帰ってくる日が待ち遠しくなる、あの魔物はその姿を見て憎悪するのだろうか、楽しみだ。
(その時の絶望する顔が見れないのは残念ですが……まぁ、いいでしょう)
とても面白い、劇を盛り上げるに最高の
クレイマンにとって最高の舞台になる為、舞台の幕が開くのであった。
町の中が騒がしかった、何時ものように賑やかな騒がしさではなく混乱による落ち着きのない騒がしさ。
何があったのかと、心配になりながら騒動の場所に向かうと目を疑うような状況が飛び込んできた。
二人の男に一人の女、明らかにこの町には似つかない者達がシュナさんや町の魔物達に殺気を向けている。
人間を襲わないというルールがある以上、どうにか彼らには出ていって貰わないといけない。
(っ、)
身体が重い、全身に虚脱感を感じる。
どうして足が一歩前に進まない、目の前で起きる事を止めようと駆け出せずいるのだ。
騒動が大きくなろうとした時、三人の襲撃者を守るように騎士団が現れた。
彼らはファムルス王国の正規騎士団と名乗り、襲撃者を匿い言い分に耳を貸した。
まるで茶番ではないか、あきらかにこいつらはグルで最初から仕組まれている。
「魔物が国を興したと聞いて調査に来てみれば、この騒ぎは何事ぞ!人類の法に従い、我等は無辜なる民である貴君達に加勢致す!」
騎士団は剣を抜く。
騎士団は周囲に押しかけていた魔物の兵士どころか、成り行きを見守っていた只の住人にまで手を出し始めた。
(やめろ、やめろ、やめろ!)
止まっていた足は動き出し、重い体を引きずるように走り子供に剣を振るおうとした騎士の一人を殴り飛ばす。
何人かの騎士がこちらに視線を向け、剣先をこちらに変える。
(リムルさん、すみません。見逃せません、守れなくてすみません)
普段ならば簡単に躱せる攻撃も躱せない、守れる命が守れない。
今まで培って来た事が活かせず、心の中の憎い感情が全てを黒く染めていく。
許せない、こいつらも許せないがあの三人は絶対に許せない。
バラバラに引き裂いても気持ちは収まらない、目の前で踏み潰しても心が晴れる事はない。
満身創痍になって、身体がぼろぼろになった頃には騎士団は撤退してここを滅ぼすという言葉を残していった。
許せない、許せない、あいつらを追わないといけない。
「イブキ、怪我が……!」
誰かが声をかけてきたけど、傷だらけの身体であの騎士団や襲撃者達が去って行った方へと走り出す。
止める声が響くが、これだけの事を仕出かした奴を許すわけにはいかない。
気味が悪い結界の前で立ち止まる、ここを超えなければあいつらには追いつけない。
これだけの規模の結界だ、生半可な力で通る事は出来ないのは予測できる。
(
躊躇なく結界を通り抜ける為に突っ込む。
全身が焼けるような痛みに襲われ、傷だらけの身体がさらに痛ましい姿へと変貌していく。
全てを捨ててでもいい、この場所を汚したあいつらを許さない。
痛みに耐え続け、大事な何かを犠牲にして結界の外へと飛び出す事が出来た。
結界の外にいた誰かがいたが、見向きもせずに駆け出す。
止めようとしてきたが、それを振りほどいて進み続ける。
もう追いつけないかもしれない、頭の片隅で悪魔が囁く。
けれど、運は味方している。
何故か一人、あの町を襲った騎士が歩いているではないか。
罠かもしれない、けどいるならば殺さなければならない。
飛びついて、殴って、殴って、殴って、殴って、殴って、噛み付いて、最後には首を絞めて折ってしまおう。
泣きわめいて、命乞いをしていてもワタシにはお前が人に思えない。
良心が痛まず、騎士の命を絶つ事が出来た。
(は、ははっ……結局、何も変わっていないじゃないか。守る事も出来ず、信じる事もできず、しまいにはまた誰かを殺してしまう)
亡骸の上で一人、項垂れていた。
自ら制約を破り、殺意に駆られた結果は酷く虚しいモノだった。
自分で場所を捨て、手に入れたぬくもりを放棄した。
(お前には何もない、名も、記憶も、意味も。お前は最初から何もなかったんだ、異世界からこちらにきて、帰るべき場所があるなんて作り物の記憶だ。)
頭の中に男性の声が響く。
何処かで聞いたことがある憎たらしい声、顔を上げて辺りを見回すが声の主は見つからない。
(いい夢をみれたか、ならば目を覚ますといい。本当の君は、
嗚呼、忘れていく。
あの笑顔や温もり、思いやりが全部誰かに支配されていく。
一つ、忘れていく中で思い出した。
この憎たらしい声の主は、何も無いワタシを買い取った……とある男だった事を。