復讐とは、復讐したい相手に対する憎しみをぶつける事。
復讐する迄の行動力は凄まじいもの、まるで森を燃やし尽くす火のように勢いは止まらない。
しかし復讐を終えた際、ぶつける先が無い憎しみや怒りは虚無感へと変わる事もある。
喪失感、虚無感、この先どのように生きていくか考える事さえ出来ない。
中庸道化連に教えられた先は、金を積めばどんな汚い仕事をする盗賊団の洞窟。
皆殺しにする事自体は簡単だ、しかしこんな奴らに憎しみを奪われたかと思うと腸が煮えくり返る。
踏みつぶす前に盗賊団の頭に依頼者を問い詰めたが、この盗賊団も所詮は使い捨て。
更に仲介を通しての依頼だったので、詳しいことは分からない。
「ちっ、」
やれやれと落胆しつつ、虫を潰すかのように頭を踏みつぶす。
呆気ない幕切れ、声を上げる前に事切れた肉塊を蹴り飛ばして八つ当たりをする。
(畜生、畜生、畜生、畜生!)
怒る必要も無いのに感情が乱れる。
止められない負の感情が苛立ちを加速させる。
皆殺しにした盗賊団の洞窟から出ると、ここまで連れてきた道化達はいなくなっていた。
彼らも怪しいと考えるべきだが、いまの自分は考えが回らない。
(この先、私はどうしたらいいんだ)
人や魔物を倒す日々、自由を憧れていた筈。
しかし今は感情のまま誰かを殺し、苛立っている只の獣に成り下がっている。
(嗚呼、どうしたらいいんだよ)
いきなりつれて来られた世界で、家族もいなければ友人もいない。
わけも分からない力を与えられ、絶対服従でしたくもない殺しもしてきた。
足掻いて何時か自由を手に入れたかったと、そんな思いが叶った先で。
ぶつけたい怒りの矛先が無くなっただけで、狂いそうになっている。
(いっそ、自死でもすれば楽になるのか)
力なく地面に座り項垂れる。
さっきまで湧き上がっていた怒りは一転して、冷えきった黒い闇へと変化していく。
剣は無いので自分で自害する事も出来ない。
盗賊達のナイフでも奪ってこればよかったが、残っている自尊心がそれを許さない。
あんな奴らの使う物で死ぬなんて真っ平ごめんだ。
「絶望しとるなあ!あんたのそんな顔は初めてみたけど、いい顔してるわ!」
いつの間にかラプラスが目の前にいた。
言い返す気力もわかないので言葉を聞き流す。
「……言い返す気力もないか。まあええわ、そのままでええから聞いとき」
「いまのあんたはんはやることないやろ、けど殺したかった相手を殺した相手を殺したいやろ?」
言われて思うが、酷く絡まった事になっている。
殺したかった相手を殺した奴に復讐する、負の感情だけで形成されたような言葉だ。
「その復讐先、こっちで探したるわ」
「……今の所、お前らが一番怪しいってわかってる?」
「はははっ!そりゃそうや、けどなそんな奴がこんな堂々と提案しにくるわけないやろ?」
仮面の道化は嘲笑う、全てを見透かすような物言いに苛立ちながら立ち上がる。
「わかった、受けてやる」
「おっ、ええ返事やじゃあな……」
もうこうなったら、地獄の果てだって逝ってやる。
「スライムの所に、いってくれへんか?」
「……はぁっ?」