美咲ちゃんがヒロインの二次創作もっと流行れ 作:ぷーある
あれから俺は奥沢という人間がどういう人物なのかストーカーにならない範囲で調べた。何故人1人の事を調べるのだけで人間というのはこうも騒ぎたてるのか。
奥沢が俺の教室に来た時もそうだ、なんの関わりもない女子に「奥沢さんと付き合ってるの?」って聞かれる始末だ。勿論しっかりと否定しておいた。傘を貸しただけで殆ど初対面だと言ったら何故か余計に騒がしくなったのはご愛嬌だ。
奥沢、フルネームは奥沢美咲。隣のクラスでテニス部に所属している。
友好関係は控え目だがしっかりと友達もいて陰ながら男子の人気もあるらしい。そりゃ可愛かったんだから当たり前だろ、とは思ったが何故陰ながらなのか。それには理由があった。
ここ花咲川にはある有名な女生徒がいる。その女生徒は「花咲川の異空間」と呼ばれ煙たがられているらしい。別にその女の子自体は悪い子ではないらしいのだが人間は理解出来ないモノを拒む、きっとその異空間と呼ばれる女の子は独特な感性を持っているに違いない。
そして奥沢はその異空間と仲が良く同じように少し避けられるようになったそうだ。まぁ元から仲が良かった人達はそうでなかったようで避けているのは噂しか知らず奥沢と喋った事も無いような人間だけらしいし特に気にするような事でもないだろうに。
「んでだ。お前奥沢をどうやって落とすんだよ?」
「そうだな。取り敢えずデートに誘って連絡先聞いてこい。間違えてもデート先はホテルにするなよ?」
「何故俺が奥沢にアプローチをかけることが決定しているんだ」
あれから何日か経った。以前として動きを見せない俺に2人はそんな事を言ってきた。何故どいつもこいつも恋愛事になるとこうも目の色が変わるのだろうか。こうなれば止める方法なんてなく面倒臭い事この上ない。
「さっさと告ってフラれてくれ。俺の為に」
「そうだぞ。フラれてくれ、いやフラれろ。俺たちの為に」
「いや何でだよ」
コイツら他人事だと思って好き勝手言いやがって。
「確かにちょっとドキッとしたが惚れたとは限らんぞ。俺には良くわからんが。取り敢えず今すぐにどうこうしようとは思っていない」
「なんだ。いつもにもまして真面目じゃないか」
「そうだな。余計に茶化したくなるよ」
ほんとお前らいい性格してるよ。
今思えば確かに俺は奥沢の微笑みにドキッとしてあの頃のように命を吹き返した、そんな感覚はあった。けれども今奥沢の事が好きか?と言われればそうだとは言い切れない。それは俺が本当に誰かを好きになって愛したこともないから分からないのもあるがやっぱり奥沢に感じたコレはただの一目惚れの様なモノじゃないように思える。俺もやっと最近になって自分の感情を整理してそう思ったのだ、何より自分の事は自分が良く理解している。
何でだよー、誘えよー、としきりにニヤニヤしながら言ってくるヤンチーとジャンボ。そろそろうざくなって来たな。無視しようと決めた時トントン、と肩を叩かれた。何となく既視感があるそれに振り向くと何時ぞやの女子生徒がニコニコしながらかコチラを見ていた。
何故そんなにニコニコしているのか、そんな事を疑問に思ったが直ぐに謎は解消された。
「木ノ原くん、奥沢さんが呼んでるよっ!」
「……なるほど。分かった」
ニコニコしながら指差す方を見るとやっぱりそこには奥沢がいた。しかし何処かバツが悪そうな表情をしている。何かあったのだろうか。
行ってくる、と一言2人に告げて奥沢の元に向かう。振り返りはしまい、絶対にムカつく顔でニヤニヤしているだろうからな。
廊下にいる奥沢の元へ行くと居心地が悪そうにしていて俺が来たのを見ると焦った様に目を逸らされた。
その対応は少し傷付くが何となく察した。さっきからヒソヒソと俺たちを見ている俺のクラスメイト達が気になるんだろう。そりゃ気のない男とそういう噂を立てられればたまったもんじゃない。逆の立場だったら俺だって嫌だし。
「ここじゃ視線がキツイ、移動しながらでいいか?」
「あー……うん、助かる」
取り敢えず宛もなく逃げるように2人で歩き出した。隣には奥沢がいる、やっぱり近くで見ると良くわかるがこの花咲川でも十分可愛い部類に入るだろう。だが少し緊張するだけでドキドキはしない。やはり一目惚れではないのだろうと己の中で結論を出す。
「えっと、いきなりごめん。けど何も聞かないで付いてきて。文句は後で聞くし謝るから、ほんっとにごめん」
「そこまで言われると逆に怖いんだけど。俺何処に連れてかれるんだ……」
そう本当に申し訳なさそうに言う奥沢。
逆にそこまで言われると怖いんだが。そんな恐怖心を抱いて何処に連れていかれるのかと思えば着いたのは1-C。俺のクラス1-Dのお隣のクラスではないか。
ふむ、わからん。ていうか奥沢さんや。何で自分のクラスなのにそんなに恐る恐る扉開けてんの?BOWでもいんの?
「こころ、連れてきたよ」
「待っていたわっ!」
「お、おう。初めまして?」
扉を開けた瞬間、びゅんっと空気を切り裂いたかのように突然目の前に綺麗な長い金髪を宙に舞わせながら女の子はそう言った。そんな女の子にめんをくらってると奥沢が
「こころ、ここじゃあれだし屋上に行こう」
「そうねっ!今日はいい天気だしそれがいいわっ!」
まだびゅん、と嵐が去っていくかのようにその女の子は廊下を走っていく。いや廊下は歩こうぜ。と何となく場違いな事を思っていると俺達が付いてきてないのに気が付いて金髪の女の子が戻ってくる。
「ほらっ、時間が無いわっ!早く行きましょっ!」
「ちょ、こころ待ってっ!」
奥沢が制止の言葉をかけるがこころと呼ばれた女の子は止まらない。奥沢と俺の手を握ったまま勢いよく駆け出す。そんなトンデモ展開に俺は冷静にあぁ、この子が弦巻こころなんだな。とっても明るくて太陽みたいな子だなとそんな事を思いながら手を引かれて走り出した。
「貴方が舞人ねっ!」
「まぁ、そうだけど。そういう君は弦巻こころだろ?」
「まぁっ!私のことを知っているのね、嬉しいわっ!」
「うん、分かった。分かったけどさ……近くない?」
「そうかしら?お話する時は近い方が絶対にいいもの」
いやそれはごもっともだけども。距離が異様に近い。手を伸ばせば抱き締めれるぐらい。いい匂いするしホントやめて欲しい、ほんとやめて欲しい(大事なことなので)
「けど俺は男で弦巻は女の子だ」
「???それは知っているわ、それに舞人にはそんな他人行儀な呼び方じゃなくてこころって名前で呼んで欲しいわ」
こてん、と首を傾げる弦巻。これは素でやっているのか?助けを求めて奥沢の方を見ると無言で頷かれた。あぁ、なるほど。こりゃ異空間と言われるだけあるな。
「ほらこころ。木ノ原も困ってるから少しコッチに来てよ」
「なら残念だけど仕方ないわね」
やっと少し離れてくれた。少し気に入らなかったのか残念そうな顔をしていたがあっという間にぱぁ、と顔が明るくなる。あの陽が昇るの早くないですか?夜の時間1秒もなかったよ。
「舞人に聞きたい事があるの」
「俺に?また何で」
「美咲があな、むぐっ」
凄まじいスピードで奥沢がこころの口を塞いだ。奥沢は心無しが顔を赤くして焦ってるようにも見える。ふむ、やっぱりよく分からん。
「こころまって。お願いまって。私もそんな気はしてたけどさ、けどやっぱり待って。それはダメ」
「何故なの?美咲が」
「あーあーあー!」
どんだけ待って欲しいんだ、とは突っ込まない。きっとここで俺が何か言っても悪い方向にしかいかない気がしたからだ。
「ホントに大丈夫だからっ!ほんとのほんとに大丈夫だからっ!」
「美咲がそこまで言うなら本当にそうなのね。それにさっきまでの美咲より今とってもいい顔をしてるものっ!」
「なっ!?」
何か俺置いてけぼりじゃね?
「舞人、私行くわねっ!また会いましょ」
そして嵐のように去っていく。
ふむ……やっぱり意味が分からん。俺は漫才でも見せられていたのか?ここ笑うところ?
「なぁ、俺は漫才でも見せられてたのか?」
「なわけないじゃん……あれがこころの素だよ」
なるほど。だからそんなに疲れてる顔してたんですね。そりゃ弦巻みたいな奴とずっと一緒にいたら疲れるわ。良い奴なんだろうけど何か色々とぶっちぎってるもん。
俺は奥沢が座っている場所から人一人分ぐらいの感覚を開けて座る。太陽が居なくなってしまったが外の太陽は元気なようで今日はとてもいい天気だ。
無言の時間が続く。だがこの静けさは寧ろ心地よい。
「木ノ原ってさ、中学の時バドミントンしてたよね?」
まるで頭にトンカチを叩きつけられたような衝撃だった。
何故それを?いやまぁ確かにちょくちょく新聞にもテレビにも出てたし知っている人は知っているのだろう。けど何となく俺は奥沢には知って欲しくないと思ってしまった。理由は分からない。何となく、そう思ってしまった。
「……あぁ、まぁ。今はもうやってないけど」
「そう、なんだ。ごめん」
それだけで察したのか奥沢は俺に謝る。いやそうじゃない、奥沢は何も悪くない。
「いや奥沢は何も悪くねぇよ。ネチネチと過去の事を引き摺ってる俺の方がよっぽど悪いさ。ほんとダサいよ」
そうさ。もう終わっちまった事なのにいつまでも俺は過去を引き摺ってる。過去って言っちまうには昔の事じゃないけれども俺はこうして今も目を逸らし続けている。そして今みたいに少しでも見てしまうと動揺して勝手に落ち込んじまう。本当にダサいったらありゃしない。
「そうかな。私はそれが普通だと思うけど」
「こんなにも惨めでダサいのがか?それは冗談キツイぞ」
「私はさ、もっと木ノ原って凄い人だと思ってたんだよね。けどなんと言うか……やっぱり普通だよ」
そうやってくすり、と笑う奥沢にドキッとする。不意打ち良くない。何だかそれが面白くなく不貞腐れていると奥沢が言葉を紡いだ。
「ごめんごめん。気を悪くしたのなら謝る、けどほんとに悪い意味じゃないから」
「分かんねぇよ、俺には」
「なんというかさ……あの時の木ノ原って凄くて周りと違うなって思ってた。だって常に何に向かって、目標に向かって一直線に頑張ってたでしょ?」
「おま、何でそれを」
目に見えて動揺する俺に奥沢は優しく語り掛けてくる。奥沢はテニスの試合の会場がわからないでさ迷っていた時に中学の頃の俺、ラケットバッグを背負った俺を見付けてこっそり後を付けたらしい。会場が分からないのなら同行者について行くのは確かな手だ。確かにバドミントンとテニスのラケットバッグは種類によってはアホみたいに似ているから初心者の人は良く勘違いしやすい。
それで見事に間違った奥沢はバドミントンの試合会場、そして俺の試合を見たのだと。
「分かるよ。それぐらいキラキラしてたから、けど何となく自分と似てるなーって思って。けどあんなに凄い人が私と何処と似てるんだってあの時は笑い飛ばしてたけど今やっと分かったよ、やっぱりあの時のは勘違いじゃなかったんだ」
「…………」
「挫折したり悩んだり立ち止まったり。そんなの当たり前だよ、それが普通でそれを軽々しく乗り越えれる人は皆特別なんだ。きっとそういうのはこころみたいな人、なんだと思う。私たち普通の人は1人じゃ無理だから誰かに支えてもらってやっとなの」
確かに、弦巻なら軽く乗り越えていきそうだ。何故かそんな姿が簡単に想像出来た。俺は自分の事が特別だと思った事なんて1度もない。バドミントンだって努力してきたその結果だと胸を張って言える。あぁ、けど。
「そうか。俺のこれは普通だったのか」
「そう。そうやって悩んで自己嫌悪出来るだけマシだよ、そうやって本気で打ち込める事があったのは凄い事だと思う」
「けど、俺どうすればいいか分からねぇよ。ずっと前だけ見て来てひたすらに目標に向かって走ってきた。それが突然なくなっちまったんだ。それしか知らない俺はどうすりゃいいんだ」
そう、俺はそれしかしらない。そうやって前だけ見て走ってきた俺は1度足を止めて目標を見失った俺はもうどうやって前に進み出せばいいのかまるで分からない。こうやって同い年の女の子に聞くなんて情けなくてどうかしていると我ながら思うけれど、それでも俺は前に進みたい。また俺はあの頃のように、色褪せた世界じゃなくて毎日が充実したあの世界に戻りたい。
「それは簡単だよ。また次の目標を見つければいいの」
「次の、目標?」
「そう。将来はあの職業になるとかそんな適当なのでいいんだよ、その目標に向かって全力で頑張れることを探せばいいの。大丈夫、だって私にだって見付けられたから」
そうやって微笑む奥沢の笑みはとても綺麗でキラキラしている。
あぁそうか。そうだったのか。それを聞いた瞬間すとん、と素直に言葉が心に落ちてくるのを感じた。何て簡単な事だったんだろう。もう落ち込んで意気消沈する時間は終わった、あとは目標を見つけて走り出すだけだったんだ。
「なんか、悪いな。相談事みたいなの乗ってもらって」
「いいのいいの。なんて言うかさ、分かるでしょ?」
そうやってほんの少し上目遣いで語り掛けてくる奥沢。その何かを期待するような目。分かる、分かるさ。俺達は何処と無く似ている。だからほっとけなかった、何より同じように立ち止まっている俺に同族嫌悪というか手を差し伸べた。
あぁやっぱり奥沢も似てるって思ってたのか。
何だかそれが嬉しくてつい笑ってしまう。
「あぁ。何となく分かってたよ、もう嘘ついてまで傘貸しちまったくだりからさっきの弦巻の保護者っぷりを見てもう嫌って程な」
「何それ。木ノ原こそ先生にいいように使われてるくせに」
「お前そりゃ言っちゃダメだろ」
あぁ似ているな俺達。自然に笑顔になる。
それがどうしようも嬉しくて、気が付いたら2人そろって5限の授業に遅刻してまた騒がれる事になるのを2人はまだ知らない。
全部書けてあるけど美咲視点を入れるか悩んでる。
入れるなら次かその次あたり、うーん。まぁいいか(適当)
次回、目標作って頑張るっつってもそれがないからウジウジしてたんじゃね?なんも解決してないじゃん。という当たり前なことに気が付いてまたウジウジする主人公をお楽しみ下さい。
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デュエルスタンバイ