美咲ちゃんがヒロインの二次創作もっと流行れ 作:ぷーある
「はぁ……結局振り出し、かぁ」
「まぁまぁ。私も一緒に探すからさ、頑張ろ?」
あれから事ある事に奥沢は俺の相談に乗ってくれた。あの日以降肩の荷が下りたというか俺の考えも変わった。いつまでもウジウジしてられない。奥沢のように、俺も普通の奴なりに前に進みたい。
しかし俺は気が付いた。
目標って言っても今の俺にあの頃のようにひたむきに一生懸命になれる事ってあるのか?
せっかく機会を貰ったっていうのに未だに俺は足踏みをしていた。
「その……なんだ。こんな頻繁に付き合ってくれてるのに成果もねぇし無理に付き合う必要もねぇぞ」
「いいのいいの。乗り掛かった船だし、それに……」
「それに?」
実の所は断られなくてほっとしている自分がいる。何だかんだで俺はこうやって奥沢といる時間が好きだ。元より俺は何もせず意味もなくぼーっとする事が嫌いではないし、それに奥沢は自分と似ていて親近感があるからか一緒にいて居心地が良かった。
ただ何となく奥沢とだべって、同じ景色を見て、たまには誰かの愚痴とか喋ったり、ご飯食ったり。そんな何でもないありふれた毎日を過ごすのもいいかも知れない。
けど、それでも俺は前に進みたい。
それに、から後の言葉が出て来ない奥沢はなんというか目が泳いでいて目を合わせてくれない。心無しか頬がほんのり赤みが指している気もする。チラッといじらしく上目遣いで俺をチラ見しては焦って目を泳がせる奥沢の変貌ぶり、というか小動物を思わせるソレに己の心臓が大きく脈打つ。
いやそれは反則だろうと。
「それよりもっ!何かやりたい事とかないの?そしたら割と目標って立てやすい思うんだけど」
何だか露骨に話題を逸らされた気がする。と言ってもここでそれを追求した所で気まずくなるのは分かっているので変に追求したりしないが。
やりたい事、やりたい事かぁ。
ぱっと思い付くのはやっぱりバドミントン。我ながら未練がましいというか情けないというか。
現状それは出来そうもないので置いとくとして他に何かないと考えた時ぱっと思い付くのは……
「えっと……何?」
「……えっ?あ、いややりたい事ってなんだろって考えたらぱっと思い付いたのが奥沢…………」
の隣りに居たい。と言おうとして思いとどまった。いや待て、まてまてまてまてちょっと待てや。
馬鹿なのか俺は。それをぱっと思い付いた自分もそうだが躊躇いもなく馬鹿みたいに正直に口にした俺は本当に馬鹿なのか。いや馬鹿だから口にしたんですね分かります。
これじゃまるで。
「あ、いやそうじゃなくてっ!えーっと……まぁ気にすんなや!」
「…………ぁ、う、うん」
俺が奥沢の事を好きみたいじゃないか。
ほれみろ奥沢が困ってる。そりゃいきなり異性にそんな事言われて平気な奴は相当モテる奴ぐらいだ。
いや確かに奥沢は学年の中でもかなり可愛いと思うし俺なんかの相談に乗ってくれたり面倒見もよく気も使える。これでモテなければ誰がモテるのか。
けどそれ以降、体育座りをして顔を足に埋めて縮こまられ殆ど会話のないままその日は解散した。
「なぁ。俺の取り柄ってなんだ?」
「ないな」
「ないね」
「おい」
コイツらに聞いたのが間違いだったのかもしれない。あれ以来奥沢と顔を合わせると何故か目を逸らされ早足で逃げられる。
分かる、分かってるさ。馬鹿な俺でも避けられてるって分かる。
自業自得だって分かってても少しショックだ。女子に避けられるのは年頃の男にとって堪える出来事である。
因みにジャンボとヤンチーにそれを言ったら「さっさと爆発して地面に埋まって死ね」って言われた。
解せぬ。
「と言われてもなぁ。ゲームは微妙だし勉強はそれなりだし運動もそこそこ、うん。モブAだな」
「異議なし。押しに弱くて頼まれると断れない厄介事に巻き込まれやすいモブAだね」
「まぁ……モブってのは否定しない。けど取り敢えずお前ら1発殴らせろや」
「まぁ落ち着けや。いうてお前本当に器用貧乏じゃん?」
う、痛い所を付いてきやがる。実際俺は器用貧乏だ。やろうと思えば並以上にこなせるが所詮は波程度しかない。飽き性でどんな事も相当楽しくなければ続かないし結局の所自分には取り柄と言えるほどのものなんかない。
━━━結局、俺にはバドミントンしかないのか
考えても答えは出ずぼーっとしたまま学校が終わり流されるように先生の手伝いをする。結局、結局自分は流されたにまま生きている。悪いことではない、そういう人生もある。けど自分は一体何をしているのかと思わずにはいられない。奥沢に言われ気付かされ自分は何が変わったのか。
いや何も変わっちゃいない、前に1歩すら進んでいない。
「木ノ原は、もうバドミントンしないのか」
ふと、先生がそんな事を聞いてきた。
「…………」
「腐る程聞いちゃいるとは思うがお前らぐらいの年なら、やっぱり何か死に物狂いでやってる方が絶対将来良かったって思える思い出になる、それにお前」
「分かっちゃいるんすよ、結局の所ウジウジ悩んでまだ自分の中で向き合えてないんです。ほんと、情けない話っすけど」
遮るように言葉を重ねる。
分かっている。自分の事なのだから自分が良く理解している。
時間が解決してくれる、そんな風に後回しにして。結局今何も変わってないじゃないか。
そうか、とそれ以降その話に触れないでいてくれる先生はやっぱり先生で大人なんだなって思う。
気が付けば手伝いも終わっていつの間にか自分は学校を出ていた。それすらも気が付かない程俺は考えに耽っていたらしい。
あぁ本当に情けない。
けどそんな自分を自分じゃどうしようも出来なくて。
こういう時はやっぱり気分転換をすればいいのだろう。しかし生憎と友達と言える友達は殆どいないし遊びと言える遊びをしてこなかった俺には趣味とも呼べるものもなければ遊び方だって殆ど知らない。
けど不思議と俺はそこに足を運んでいた。
「変わんねぇな、ここは」
街の細道を通り抜けて坂を上り辿り着いたそこはバルコニーの様な小さいスペースに簡素なベンチが置かれただけの場所。
俺がまだ小さくて街を歩いている時にたまたま発見した、子供風に言えば秘密基地みたいな場所。あの頃はここから見える街の風景に息を飲み目を輝かせていた。
それから俺はここの景色が好きになった。ちょくちょく来るようになってその頃ぐらいからかな。バドミントンを初めて簡易ネットを持ち込んで練習何かもしたりして随分とここにはお世話になったものだ。
何気にバドミントンのコートより少し大きいぐらいなのも良かった。
前に来たのが随分と昔のように感じる。前に来たのは確か、まだバドミントンをしていた時だ。
手すりにもたれ掛かる。生憎と今は曇り、綺麗な街並みの風景もその美しさは半減している。
良くこうしてぼーっと景色を眺めてたっけ。
肌に感じる風も遠くで擦れ合う草木の音も俺は好きだった。何より何もしないでここでぼーっと景色を眺めていると不思議とやる気が湧いてくる。
変わんねぇな、俺も、ここの景色も。
いや俺は変わったのかも知れない。
それは前に進んだとかじゃなくて悪い方向に。
ほんの前まで俺はバドミントン命の馬鹿野郎で寝ても冷めてもバドミントン、バドミントン。テレビも録画している自分の試合とか実業団チームの試合だとか常に見ていたり、家に帰っても特性の板に壁打ちやサーブ練習をするぐらい俺の日常にはバドミントンで溢れかえっていた。
単純に好きだった。もちろん対人スポーツである以上勝ち負けもあったけど勝つ負けるより俺は何よりバドミントンが大好きだったんだ。
けどやるからには勝ちたいだろ?
だから俺は本気で日本一になるって目標を立てて練習をしていた。それは学生の中って訳じゃなく正真正銘の日本一、全日本総合という大人のプロも含めた大会で勝つ事を目標にしていたんだ。
それ相応に努力をしていて文字通り血反吐を吐いたりぶっ倒れるぐらいの練習もしたりしていたけど、それでもバドミントンが大好きだった俺は苦もなくそれをこなしていった。
その成果もあって全国の学生の大会で優勝して着実に実力を伸ばしていってるんだという実感もあった。
真っ直ぐ目標に向かって一直線に。
ただ楽しくて仕方がなくて。毎日が輝いていたのは間違いない。
あっという間に時間は過ぎて、気が付いたら俺は全日本のコートに立っていた。本当に、本当にあっという間だった。
良くテレビで見る選手が目の前にいて興奮しながらも俺はその中で戦い勝ち上がった。
勝って勝って勝って。
気が付けば決勝戦、身体が嘘のように軽くてショットは嘘みたいに狙い通りに飛んでいって、ネット際の駆け引きも手に取るように転がせた。
あぁ、楽しい。楽しくてたまらない。俺はどこまでも飛んでいける。そう思った矢先だった。
足に違和感を感じた。最初は捻挫かと思ってアドレナリンにものを言わせて試合を続行。けど次第に違和感は大きくなり、さっき感じていた身体の軽さは嘘のように重くなり。
けど俺は諦めなかった。当たり前だ、俺は今この時の為に必死に、全身全霊全力全開でここまで駆け抜けてきたんだ。こんな簡単に終われない、終わらせはしない。
そんな思いとはうらはらに身体は重く言う事は聞いてくれない。どんどん離されていくスコアに焦りを覚える。いや、やれる。俺はまだ飛べるんだ。あきらめない、諦めたくない。
ここで簡単に諦めてしまったら今までの努力が全て無駄になってしまうようで。
頑なに諦めない俺に監督がまだお前は若いからチャンスはあると、寧ろここで大怪我をして選手生命に支障をきたした方が問題だと諭され、涙を流しながらも俺は試合を棄権した。
悔しかった。全力を出し切れなくて、けれどもゴールは目前で届かなかった。こんなにも悔しい事があるだろうか。
結局俺の怪我は重症で怪我のせいで治ったとしても全力で動けるのはせいぜい1時間程度、それ以上は危険だと医者に言われた。
辛いと言えば嘘になる。けど別にバドミントンが出来なくなる訳ではない。だから俺は特に気にしなかった。プレイが出来るのなら形は違えど日本一になる方法は幾らでもあるのだから。
だから俺は手術後必死にリハビリをして、またコートに舞い戻ってきた。
また俺は飛べる、どこまでもいけるんだ。
そう思っていた。
脳裏に浮かぶのは足に違和感を感じたあの屈辱の試合。
足が動かなかった。
まるで床に縫い付けられてしまったかのように動かない足に俺は漠然としたまま立ち尽くす。
何故動かないんだ、なんでなんでなんでっ!
何度試してみても駄目で落ちていくシャトルをひたすら眺めるだけ。
俺の足はそれ以降、また怪我をするのではないかという恐怖に縛られ動いてはくれない。
ずっと俺はあの頃から足を止めたままだ。
「ほんと、情けねぇなぁ」
自重するようにポツリと呟く。
もうあの頃のように日本一になるという目標に熱も感じられず。大好きなバドミントンは恐怖で足がすくんでしまって出来ない。
大事なモノ全てが抜け落ちてしまったかのようで、今の俺は正しく空っぽだ。
あぁ、目標が……頑張る理由が欲しい。今を生きて熱を感じていたい。
「舞人っ!また辛そうな顔をしているわ、けど大丈夫っ!私が貴方を笑顔にしてあげるっ!」
そんな時、曇り空から太陽が顔を出した。
上司「インフルで病欠多いからお前今月休み無しな」
わい「アッハイ」
そんな感じでした。