美咲ちゃんがヒロインの二次創作もっと流行れ 作:ぷーある
今回はこころんのターン、次が本番だぞ。
「あのさ」
「なにかしら?」
「1つ聞いていい?」
「いいわよっ!」
「なんで俺達……空の上にいるんだ?」
俺は今空の上にいる。
え?何言ってるか分からないって?
安心して欲しい、俺もさっぱり分からない。
いつも上にある雲が下にあるって何だか不思議な気分だ。遮るもののない太陽はギラギラと元気に暑苦しいぐらいに俺達を照らしている。
すげぇよ、俺ヘリとか初めて乗ったわ。
あれよあれよと連れてこられたのは空の上。ラピュタは本当にあったんだ(棒読み)
ふぅ。現実逃避はこの辺にまでにしておくか。けどほんと、意味が分からん。なんかね、もう超展開過ぎて脳が動きを再開するまでに既にヘリに乗り込んでたわ。なるほど、奥沢はいつもこんな感じなんだな(遠い目)
「なに?此処で昼寝でもすんの?」
「せっかく空の上に来たんだもの、それじゃ勿体ないわっ!」
俺別に未来予知とか全然使えないけど何だか嫌な予感がびんびんなんだけど。
いやいや弦巻さんいい天気だからお昼寝しようよ、きっとヘリの中でする昼寝は斬新でかつてない挑戦だと思うんですよ。
あの、その、ホントに待って。ちょっと!襟首持たないで貰えますか?
「行くわよっ!」
「だろうと思ったけど事前に説明ぐらいしろやァァァァァァァァァァ!」
拝啓
お父様、お母様。
俺今空を飛んでます。
もう駄目かもしれないです。
開幕スタイリッシュ飛び降り自殺はどうかと思うんだ。命が幾つあっても足りんわ。というか俺がパラシュートの使い方分からんかったらどうするつもりだったんだ。
「でさ」
「何かしら?」
「どういう事?」
「そういう事よ!」
すみませーん、通訳さんいますかー?
どうやら俺は日本にいながら国境を跨いでしまったらしい。
「あのさぁ、ほんと説明して貰っていい?」
「もうすぐ頂上よっ!舞人!」
「あー、うん。そうだね」
分かったよ、俺の負けだ。降参だ。
「さぁ……落ちるわよっ!」
「そりゃジェットコースターだもんなぁぁぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
何でジェットコースターなのに下向きながら乗ってたんだよ。殺す気かよ、ていうか殺意しか感じねぇよ。もう飛んでいかないように必死に安全バー握りしめたわ。
考えた奴絶対性格悪い(確信)
「そろそろ説明、いいですか?」
「ドキドキするわねっ!」
「あー、はい」
まぁ確かにさっきからやたらといい匂いするし時たま腕に柔らかい何かが当たってすげぇドキドキしますね。
ってちげぇわ。そうじゃねぇわ。
そろそろね、いいと思うんですよ。予め言わせて貰いますとですね。
「キャーっ!」
「実は俺絶叫系ほんとダメなんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
本日落下3回目。
フリーフォールとか頭おかしい。ほんと頭可笑しい(キレ気味)
「…………」
「楽しかったわねっ!」
燃え尽きたよジョー。
最初から頭可笑しかったけどさぁ、後から来たここもわざわざ貸し切りにしてまでやる必要あった?俺に何か殺意でもあんのかね。
けどこんなクソ広い遊園地に俺達だけってのも何だか変な感じだ。遊園地ってのはタダでさえだだっ広いのにそこに黒服の方と俺達しか居ないってのはやっぱり寂しい。勝手なイメージだがこういう所は色々な人達の声や笑顔が溢れていて、歩いているだけでも楽しくて気が付けば自分も笑顔になっている。こう、何だか心がワクワクするのだ。そういう不思議な気分にさせてくれる。
ベンチに座って項垂れていた顔を上げるとまだ余韻に浸っているのか弦巻は笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねている。
楽しそうだなぁ、というか弦巻は何時でもたのしそうだ。けどその何時もにも増してその笑顔は輝いて見える。
その笑顔を見ていると、絶叫系はやっぱり苦手だが乗って良かったって思える。自分何かと一緒に乗るだけでこれだけ楽しんでくれているんだ、この笑顔を見れただけでもこうしてグロッキーになってまで乗った甲斐があったってもんだ。
そんな弦巻を見ていると急にくるっと回ってこっちを向いて、
「やっと笑顔になったわね、舞人っ!」
「まぁなんだ。絶叫系は苦手だが今回悪くなかった、サンキューな」
弦巻は弦巻なりに俺を元気付けてくれたのかもしれない。それにしちゃやり過ぎだって思わなくもないが気持ちは素直に有難い、何時でも他人の優しさってのは落ち込んでたり悩んだりしている時は良く身に染みるもんだ。
自分の事のように喜んで笑い掛けてくれる弦巻に何だか気恥ずかしくなって目線を逸らし頬をかく。
そういえば遊園地に来るのは久しぶりかも知れない。ずっと自分はバドミントン漬けだったし。けどデートで女の子にせがまれて来たことがあったっけ。
デート、恋人。
本来であればそういう関係の者たちの多くがこういう場所にデートに来るのだろう。
もちろん俺と弦巻は彼氏彼女でも何でもない。
チラッと弦巻を見る。
文句なしで可愛いしスタイルも良い。彼女の周りは常に笑顔で溢れていて、彼女の力強くて太陽の様な笑顔は色んな人を毎日照らしている。
まぁ確かにすげぇ理解し難い奇行に走る事もあるがそれも彼女の魅力なのだろう。
はっきり言ってとても魅力的な彼女だが恋人って言われると何だか違う気がする。
もし恋人にするならこっちの考えている事何となくを分かってくれて、俺みたいな情けない奴を側にいて支えてくれる。面倒みも良くて気が使えれば完璧だ。
そうそう、そんな奥沢みたいな……
「ってうぉぉぉぉっー!何考えてんだ俺はっ!」
「急にどうしたの?」
「あ、いや何でもない。何でもないんだ」
恥ずかしくなって叫んじまったよ。顔が馬鹿みたいに熱い。きっと今の俺の顔はゆでダコのように真っ赤になっているに違いない。
「じゃあ、舞人。また明日来るわねっ!」
「あ、うん。また明日ー……また明日?」
何かめっちゃ嫌な予感するんですけど。
―――――――――
「さぁ、舞人っ!一緒にキラキラ輝ける目標を見つけましょ!」
「どうしてこうなった」
何か学校終わった瞬間捕まって連行。気が付けばグランドにいた。何で俺が目標探してるって知ってんの、とか思わなくないが考えるのは止めた。きっと弦巻の事で深く考えたら負けだと思うんですよ。
「今度は何するんだ?」
「これよっ!」
うん。その白と黒のボールはどう見てもサッカーボールだな。
「サッカー、やるわよっ!」
「いや2人しかいないんだけど」
「行くわよっ!」
「話聞けやっ!ってあぶなっ!」
「避けちゃダメよ舞人、ちゃんとゴールを守らなきゃ」
「ばっかお前あんな殺人シュート止めれるわけねぇだろっ!」
何だよそのスマイルトルネードとかいうシュートは。俺の目がおかしくなければ何かボールに凄い星のエフェクトが付いてるような気がするんだが。
まずボールの勢いだけで砂煙舞ってる時点で止められるわけないよね。ゴッドハンドでも使えばいいの?
そうやって殺人シュートの雨を浴びせられたり。
「楽しいわっ!」
「速攻でシュート打ってんじゃねぇよ、というか入んのかよ……」
バスケで1on1してドリブルすらせずその場でボール投げるだけで全部入れられて無双されたり。
「えぇーいっ!」
「ちょっ、やめ……あべしっ!?」
剣道でボッコボコにされて男の尊厳をボロボロにされたり。というか何で竹刀が分身すんだよ。
そんな感じで弦巻に毎日毎日何かとボロボロにされ続けた。最初の方はヤンチーとかジャンボに「二股とか死ねや」ってボロカス言われてたが今はもう肩に手を置かれ「頑張れよ」と応援される始末。
そんなん言うなら助けろよ、なんて言うと目を露骨に逸らされ逃げられた。アイツらいつか絶対しめる。
「ってのがあってさ。弦巻の奴、運動神経どうなってんだよ」
「ふーん……」
「……今日は都合が悪かったか?」
そんな弦巻に連れ回され雑巾のように転がされる毎日。当然のように俺は奥沢に愚痴っていた。俺の為ってのは分かるし何やかんやで楽しいのだがあそこまで無双され続けると1人の男として堪えるものがある。同じように弦巻に振り回されている奥沢なら俺の苦労も分かってくれる、そう思っていたのだが。
しかし奥沢の反応は鈍い、なんと言うか不機嫌な気がする。
「別に、そんなんじゃない」
ならどうしてそんなに不機嫌なんだ?
そう喉まで出かかっていた言葉を何とか押し留める。他人に何故不機嫌なのか聞くなんて愚の骨頂、それが自分のせいなら尚更でそれは鈍感糞ラノベ主人公のする事である。
普段なら何となく分かる奥沢の考えている事も今はまるで分からない。けど何となく不機嫌なのは自分のせいなのだということは分かる。そうでなければ自分のことより他人を優先しがちな奥沢がこうも俺に不機嫌そうな態度を取るはずがない。
いつもは心地よい筈の沈黙が今はピリピリとしている。何とかしなければ、と思う。けど何を言って行動したところで逆効果なのではないのか。そう思うと俺は最初の1歩を踏み出せない。
「悪い。今日は解散するか」
結局また俺は逃げる事を選んだ。
何も言わず帰って行く奥沢を見届けて俺は屋上の手すりに体重を預ける。何とも言えない、それこそどうしてこうなったんだと思う。
「ほんとダメダメだなぁ、俺って」
自己嫌悪を幾ら繰り返せばいいのか。何とかしなければいけないというのは分かっている。バドミントンの事も、もちろん奥沢の事も。
けど。俺にはどうすればいいのかも、何を選べば正解だったのかも何もかも分からない。
奥沢に近付きたくてこうやって頑張って。けど、どうしてか奥沢の機嫌を損ねてしまって。それだけでこんなにも身体が重くなるのか。
というか何で俺はこんなにも奥沢の事ばっか考えているんだ。
ふとした時。奥沢の事を考えている事がある。そんな事を言えばキモイって言われるかもしれない。けどどうしても奥沢の、言葉や笑顔が脳裏にチラつくのだ。だからこそ俺は前に進もうも足掻けていたんだと思う。
奥沢は俺は普通だって言うけれど。皆も俺みたいにこんなに悩んで苦しんで、それでも前に進んでいるのだろうか。
そうだと言うなら俺は普通じゃなくて半端者だ。逃げて、逃げて。仲良くなれたと思っていた奥沢とは気まずくなって。
あぁ苦しい。こんなクソみたいなループを繰り返すならばいっそ何も考えないで逃げ出すのもいいかもしれない。それも1つの人生、そう自分に納得させて。
「それはダメよっ!」
「弦巻、か」
此奴は本当にエスパーか何かか?
というより俺がウジウジとしている時に現れてこっちの気も知らずに強引に、それでいて優しく照らしてくれる。
「さぁ、舞人。行くわよっ!」
「何処に……」
「体育館よっ!」
こうして俺は結局また流されて行動する。
輝く太陽に手を引かれて、それを苦しそうに、悲しそうに見詰める誰かの目にも気付かないまま。
いつかはそれに向き合わなければならない日がくるってのは弦巻に連れ回されていると何となく分かっていた。
体育館に入るとそこには俺にとって懐かしい光景が広がっていた。150cm程度のポールにかかったネット、どう見てもバドミントンのネットでコートだった。
あぁ、遂に来たかと思う。これだけ色々な事をやっていればいつかはと思ったが今日だったとは。実に間が悪い、いつもの調子なら弦巻の勢いに任せて頑張れたのかもしれない。けど今の俺にはそんな気力はなかった。
理由は分からない。
いや嘘だ、本当は何となく分かっている。
「今日はバドミントンをやりましょっ!」
「……すまない。バドミントンだけは、勘弁してくれ」
いつもと変わらない馬鹿みたいに真っ直ぐで眩しい笑顔でそう言う弦巻に俺は目を逸らして俯いて。
弦巻には悪いが今の俺にはバドミントンと向き合えるだけの気力も理由も何も無い。
「大丈夫よ、バドミントンをしている貴方はまるで夜空に輝くお星様のようにずっとキラキラしていたわっ!あんなに楽しそうにしていたら見ていた私も笑顔に、そして何よりバドミントンをやりたくなったわ!」
「見た、のか」
見られてしまったか。まぁそんなことだろうとは思っていた。実際ネットで調べれば俺の試合なんてそれこそ無数に存在している。
自分でも良くあそこまで楽しそうにプレイ出来てたもんだと思う。当時良くあそこまで楽しそうにプレイしてる奴なんてお前ぐらいなもんだって言われてたぐらいだし。まぁ言われてる本人からすればよく分からないが見ている人はそう見えていたのだろう。
「間違いなく舞人は皆を笑顔にしていたわっ!」
「仮にそうだったとしても今はそんな事出来やしねぇよ。何より、もう俺にはラケットを握ってシャトルを追い掛ける意味も理由もない。熱を感じないんだよ」
あんなに楽しかったバドミントンも今ではそれをする理由も意味も無くなって、昔感じていた全身を掛けていく熱も感じられない。何より足が動いてはくれない、イップスなのかまた別のものなのか病院に行ってドクターに見てもらう事もなく怖くなって逃げ出した今じゃもう分からないが。
「なら何で舞人はそんなにも苦しそうな顔をするの?」
「そりゃ……やりたくても出来ないし何一つとして上手くいかないんだから当たり前だろ」
「違うわ。どうしてそこまでして苦しみながら舞人は前に進もうとするの?」
「それは…………」
どうしてだろうか。何故俺は前に進もうとこんなにも苦しみながらもがき続けているのか。諦めてしまったモノに焦がれて、こうして苦しんでいるのはどうしてだったか。
━━━━大丈夫、だって私にだって見付けられたから。
脳裏に浮かぶのはそうやって笑顔を浮かべる女の子の姿。
あぁ、そっか。
「……奥沢みたいになりたくて、近くに居たくて俺は前に進む事にしたんだ」
「なぁんだ。ちゃんと頑張る目標が舞人にもあるじゃないっ!」
「ぁ…………」
何だよそれ。結局気がついてなかっただけで俺には目標があってそれなのに勝手に自滅して。
くっそダサいなおい。
「ふふふっ、ははははははははっ!ほんとバッカみたいだな!いや俺は間違いなく馬鹿だわ!」
「よく分からないけど舞人が笑顔になって良かったわっ!」
馬鹿だ、ほんと馬鹿だ。
けど良かった。俺はまだ頑張る理由がある、目標がある。それだけで、それが分かっただけでなんだろう。今は何だか身体が熱くて軽い。
生きている、今俺は生きて頑張れている。結果はどうとかまだ全然だけれど目標さえ見えていれば馬鹿な俺でさえどうすればいいのか分かる。そうやって昔から俺は走り続けるのだけは得意だったから。
「そうだわっ!美咲を呼んでくるわねっ!」
「…………は?あ、いやちょっとまって!色々と男の子にも準備が……ってまじで待てやコラ!」
こころんのヒロインムーヴ
可笑しいどうしてこうなった、分かったぞ。次はこころんを流行らせればいいという御託宣だな。
という訳で次が本番です。