捏造展開、終章後 終章バレ
・マー→ぐだ、ゲー→ぐだ?っぽい表現あり(恋愛感情を持っているとは言っていない)
・といいつつほぼゲーティアとソロモンしか出てこない
・独自設定とか捏造とかによる雑談ネタ
・バレンタインより前
・大体他のSSでの彼のマーリンに対する暴言に対する補足
カルデアの最後のマスターである少女に召喚された、ただの人間として過ごした記憶を持ったソロモン王は、万能ではない、普通の人間として過ごす事を気に入っている。
しかし、普通の人間として過ごすのに、千里眼は邪魔になる。故に、考えた。
「というわけで、僕がこちらの姿で過ごす時はゲーティアに私の能力を預けておこうと思うんだけど」
「我が王は本当に自由になりましたね…」
人間味のなかったソロモン王が彼らの思っていたのとは別の意味で人間味を得ていく様は喜ぶべきか嘆くべきか判断に迷うところである。しかしまあ、少なくとも、本人はそれで良いのだろう。思い切り現世を満喫しているようである。
「要不要ではなく、好き嫌いで物事を判断しても良いというのは、楽しいことだと思うよ」
それは、上に立つ者として許される事ではない。故に、ソロモン王に好き嫌いで物事を考える自由はなかった。しかし今、カルデアの一サーヴァントとして此処にある彼はそうした責任を持たない。だから、好き嫌いでいい加減な事を言ってもそれ自体で咎められることはないのだった。
「だからといって、甘味ばかり食べているのはどうかと思いますが…」
「失礼な。確かに甘いお菓子の方が多いけど、おせんべいはしょっぱいお菓子だから甘味ではないんだぞう」
「五十歩百歩という言葉を知っていますか、王よ」
確かに、現在の彼はサーヴァントであり、受肉しているわけではないのだから、多少栄養の偏った食事をしたところで体調を崩したりはしない。食べ過ぎたところで太る事さえない。寧ろ、食事をしなくても肉体的な問題は生じない。
しかし、それと不健康な食生活を送ることが許されるかどうかはまた別問題である。主に、子供の教育上よくないという意味で。
「大体、肉と酒だけで食事を済ませる海賊とかの方が子供の影響に悪影響だと思うんだよね」
「子供たちが真似をする危険性があるのは食事をお菓子だけで済ませようとする事の方だと思われるそうですが」
「僕はきちんと歯磨きをしているから虫歯にはならないぞう」
「話題を先取りしないでください」
ちなみに、ソロモンとゲーティアやエミヤなどとのこうした不毛なやり取りのことを、マスターの少女は「彼は我儘を言って叱られる、ということを楽しんでいるんだよ」と評している。
少なくとも生前のソロモン王は、周囲の人間とこのようなやりとりをしたことは一度もなかったのだろう。ゆるふわ王なんて印象を周囲に与えてはいたが、本質的に彼はゆるふわなんてとんでもない。そう振る舞えば相手から望む反応を引き出せるからそうする、というだけの非人間である。
その是非について問うのは、野暮というものだろう。結局のところ、彼はそうあることを望まれたからそうなったにすぎないのだから。
「で、千里眼のことに話題を戻すけど…マーリンみたいに悪用はしないようにね?アイツの場合は見えるのが現在の事だけだから四六時中見つめてるだけだけど…たとえば、千里眼で未来を見て相手の行く先々に現れるのは、やっぱり現代で言うところのストーカーとおんなじだからね」
「そんな事をしてるんですか、あの夢魔は」
「してるみたいだよ。何時かは知らないけど、アイカちゃんに観測遮断礼装使われて「マスターが見えなくなった!?」って泣きついてくる光景がさっき見えたから」
おはようからおやすみまで、寧ろ夢の中までずっと見守りたい、って普通にドン引きだよねー、などとどうでもいい事の様な顔でミカンを剥きながら言っているソロモン王に、ゲーティアはどういう反応を返せばいいのか分からない、という顔をした。
「ゲーティアはしないとは思うけどさ」
「…しませんが」
「マシュにも、アイカちゃんにも、他の誰かにも、そういう度を越した使い方をしたらダメだからね」
そうまで念を押されると、そのつもりがなくともゲーティアの目が泳ぐというものである。なにしろ相手は未来が見える相手だ。もしかすると、千里眼で何か疑われる光景でも見られたのかもしれない、と疑心暗鬼にもなる。
「正直、マシュに振られたからって恋敵であるアイカちゃんに気持ちが行くってのもどうかなって僕は思うんだけど」
「いえ、私が彼女を我が宿敵、我が運命と呼ぶのはそういうことではありません」
「え?違うの?そういうことじゃないの?つまり、一緒に生きたいのはマシュで、一緒に死にたいのはアイカちゃんだってことじゃないの???私には理解できないけど」
ソロモンの問いにゲーティアは全力で否定の意を示す。
「いえ、その…確かに、あの時の私の気持ちで言えば、その言葉も全くの間違いではないのですが、振られて心変わりしたというわけではなく」
「じゃあまだマシュが好きなの?」
「・・・」
どう返答するべきか、という顔で眉間にしわを寄せて押し黙ってしまったゲーティアをしばらく眺めて、ソロモンは興味をなくしたようにこたつの上に積まれたミカンを消費する作業に戻ってしまった。
「…そもそも、私がマシュに対して持っていた感情は恋情ではないのですが」
「だろうね」
恋も愛も知らず、ただ人を憐れんだからこそ、ゲーティアは
もっとも、見方によってはその憐憫も行き過ぎた人類愛だったと言えなくもないのだが、それはそれ。個々に対する愛や慈しみを伴った感情ではないのであんな極端な事になるのだ。
「…そして、彼女に対する感情は」
ゲーティアはその先を言葉にはしない。本人も明文化できないのか、口に出すのが躊躇われるだけなのか。いずれにせよ、彼が彼女に対して、他とは違う感情を持っているのは確かだし、逆に、彼女が彼に対して唯一の感情を見せたことも事実である。
ゲーティアは、彼女がその手で殺した唯一の"人間"だ。己の存在の潰える時を知り、"人"となって、それが無意味な事であると知りながら彼女の前に立ちふさがった彼を、彼女は殺した。グランドオーダーの中で、どんな人間であろうと手にかけなかった彼女が何故そうすることを選んだのか、本当のところは本人に聞かなければわからないだろう。けれど、それが憎悪からではない事だけは確かだった。
「お前も割と難儀な性格をしているよね」
「…あなたほどではないと思いますが」