死ネタかもしれない 封印指定になったぐだ子ちゃん
・ぐだ子ちゃんが逸般人というか千里眼持ち
・捏造独自設定その他
・色々酷い
・書きたいところだけ書く式ネタ
「必ず生きて帰ってこいよ、小間使い」
「善処する」
カルデアから出る直前に賢王からかけられた言葉に、彼女は肩をすくめた。
魔術協会は彼女を封印指定とさだめ、実験への協力を要請する。つまりは、絆を召喚のための触媒とすることで、望みの英霊の召喚をなしとげるための技術の確立である。
ぐだぐだと偉そうに回りくどく言われたことを彼女が要約して理解したことによると、そういうことである。ついでにいえば、一般人である彼女が100を超えるサーヴァントを従えているのはおかしいとか、名門の立派な魔術師の方がマスターに相応しいとか、そんなようなことも言っていたような気もするが、どうでもいいので聞き流した。
当然ながら、彼女に己の絆を他者に売り渡せと言われて従うつもりは毛頭ない。カルデアやマシュを人質にとられようが、従う事の出来ないものはある。それが、彼女のマスターとしての矜持である。否。どんなに困っても友人を売る事は出来ないのである。
「もちろん、聡明な君ならば承知してくれるね?」
相対する十三人の魔術師たちの内の一人の有無を言わさぬ問いかけに、彼女は失笑する。
他の魔術師たちが魔術による干渉で契約に頷かせようとしていることを知覚して、更に笑う。
堪え切れないというように、挑発するように、彼女は笑う。
「魯鈍なあなたたちにも解るようにシンプルに言おう。答えは当然ノーだ。私の全ては私のものであり、何の恩義もない相手に捧げるものはない」
魔術を刻んだ短剣を喚び出してサインを求められたスクロールを切り裂くと同時に、干渉しようという魔術を振り払う。そのまま自分の喉を突こうとして、思い直したように魔術を紡ぐ。
「神よ、この身を捧げます」
短剣を媒介にして魔術的に空間を切り裂き、時空の狭間に身を投げる。繋がる先は何もない、虚無、虚数空間と呼ばれる場所。魔術師であっても心得のないものが単独で向かって生きて帰れる場所ではない。悪くすれば意味消失を起こして消え去るのみだ。
虚無に身を投げて幾らの時間が経ったのか、彼女には認識することが出来なかった。そのまま消え去るのが当然のはずであるのに、前世でのならいで無意識に存在確立を行って己を保ってしまっているのか、彼女はまだ存在していた。
とりとめなく彼女は考えていた。
およそ一年ほどのグランドオーダーのこと。カルデアのこと。サーヴァントのこと。大切な後輩の事。
そこまで考えて、思い出した。
「…やっべ。これじゃ死ねないじゃん。一つ目様の呪いが完遂できてない」
彼女は"自分の選択に満足して、己の懐刀により死ぬ"と告げられている。しかし、選択はともかくこの場に彼女の懐刀はなく、懐刀により致命傷を負ったわけでもない。
つまり、呪いの状況に当てはまっていないので、生き残ってしまう。
彼女の懐刀とは何か。それは、彼女の一番大切な後輩のことだと、彼女は考えている。別に、後輩本人に手を下させなくとも、後輩の武器(デミサーヴァント化した時に佩いている剣だとか)を借りればいいだろう。
「あー、かっこわるい。かっこわるいけど、仕方ないか。お別れは大事だもんね」
彼女はやれやれと肩をすくめて、後輩の元へと空間を繋げた。
「というわけで、僕を殺してほしいんだけど」
「そんな…そんなこと、できません!!私の手で、先輩を傷つけるなんて、そんなことっ…!」
「マシュの剣を貸してくれればそれでもいいよ。自分でやれるから」
「ダメです!…嫌です!先輩ッ…先輩が死んでしまわれたら、私は生きていけません!」
「そんなことないよ。マシュは素敵な女の子だもの。これから幾らでも素敵な人に会えるよ」
「だとしても、それは先輩では、あなたではありません!」
「まあ、僕は僕一人しかいないからね」
少し困ったような顔をして、彼女は言う。
「んー…マシュがダメなら…誰ならいけるかな。ジャックちゃんとかかな」
「!」
彼女をマスターにしたマシュほどではないが、ジャックとも長い付き合いである。それに、頼んだら普通に殺してくれるだろう。元々、ジャックは胎内回帰願望からマスターたる彼女の事さえ切り裂きたがっている。多少苦しむ可能性もあるが、彼女がジャックを懐刀と認めてその刃を受け入れれば死ねるだろう。
「うん。初期刀は初期刀であって懐刀とは限らないしね。いけるいける」
「まって…待ってください、先輩」
「うん?」
「先輩は、どうしても死ななければならないのですか」
「んー。頑張れば生きて切り抜ける方法はあるかもしれないけど、正直しんどいかな。一応、僕の役目は終わったらしいし?あの人たちが困っても僕は困らないし?もう死んでいいかなって」
正直なところ。まだ厄介な事態が残っている予感自体はしているのだが、今回の事で彼女は"世界を救うとか、割に合わないな"と天秤が傾いてしまったので。
魔術師たちが、彼女がマスターでなくとも世界が救えるというのなら。そうしてみればいい、と、そう思うのだ。やれるものならやってみろ、と。
元より、彼女は世界を救うだとかそういう高尚な志とは無縁である。ただ、マシュや、ドクターや、カルデアの職員たちが、必死に生きようとあがいていたから、自分一人だけ面倒くさいから嫌だ、とか放り投げられなかっただけなのである。今はもう、最悪他を探せる状況だ。放り投げることに禁忌感はない。
勿論、彼女がそれを選ぶことで少なからずカルデアで騒動が起こる事等承知している。しかし、それも含めて放り投げると決めたのだ。魔術師たちに対する迂遠ないやがらせである。
「ごめんね、マシュ。僕、人と争うのは嫌いなんだ」